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マルコ・アンヌンツィアータ インダストリアル・インターネット 人と機械の融合

「機械が見て、感じて、反応し、より効率的な運転が可能になります」マルコは語りかける。ここでは、120万ビューを超える Marco Annunziata のTED講演を訳し、モノのインターネットがもたらす未来について理解する。

要約

誰もが話題にする「モノのインターネット」、私たちの将来にとって、どんな意味があるのでしょうか? この思慮に富んだトークで、経済学者マルコ・アンヌンツィアータは、技術が産業セクターをどのように変えつつあるか語ります。機械が見て、感じて、反応し、より効率的な運転が可能になるのです。考えてもみてください―航空機の部品が補修が必要なときに自らアラートを送ったら? 風力発電のタービン同士が調整し合い、全体としてより多くの発電をできるようにしたら? これこそ、私たち皆に素晴らしいことをもたらしてくれる将来です。

The Chief Economist at General Electric, Marco Annunziata is a financial virtuoso with a passion for technology.

 

1 人と機械の結婚「インダストリアル・インターネット」

アインシュタインは言いました 「私は未来のことなんか考えない。もう すぐそこに来ているのだから.」まったく その通りでした。今日 皆さんには その未来が どのような形で 訪れつつあるのか 考えていただきたいと思います。この200年の間 世界は2つの大きな イノベーションを経験しました。1つは 産業革命で 機械や工場 鉄道 電気 航空機をもたらし 私たちの生活は一変しました。そして インターネット革命が起こり 私たちは 演算能力や 情報ネットワーク 開かれた情報へのアクセス 通信手段を手に入れ またも 生活は一変しました。

現在 私たちはさらなる 変革を経験しつつあります。インダストリアル・インターネットです。インテリジェント機器を 高度な分析手法 さらに 人々の創造性と 結び付ける いわば 「人」と「機械」の結婚です。私たちの生活は一変します。

今 私は仕事で 技術がどのように産業を 変えつつあるか間近に見ています。それも 経済や生活に 大きな関わりのある― エネルギー、航空、輸送、医療 といったセクターです。経済学者にとって これは非常にまれで 大変面白いことです。なんといっても これは 産業革命か それ以上の 力を持つ変革です。しかも 産業革命前には たいした経済成長は ありませんでした。

 

2 情報自体もインテリジェントな世界

では インダストリアル・インターネットとは 何でしょうか? 産業機械は より多くの電気センサが付けられ 以前にも増して 視覚、聴覚、触覚を持つようになり 桁外れのデータを 生み出しています。ますます高度化する分析手法で そのデータを選別することで 私たちは 全く新しい方法で さらに効率よく機械を 運転できるように なってきています。そして 個々の機械だけではなく 機関車や飛行機群 送電網や 病院といった システム単位のものもです。資産の最適化であり システムの最適化でもあります。もちろん 電気センサは 新しいものではありませんが あることが変わったのです。センサの価格が 急激に下がり クラウド・コンピューティングも 進んだおかげで データの保存・処理にかかるコストも 瞬く間に下がりました。

今 迎えつつある世界では 共に働く機械が 単にインテリジェントなだけでなく 卓越しています。機械は自己認識し 予測行動ができ 反応できると同時に 社交性があります。ジェットエンジンや機関車 ガスタービン 医療機器が 互いに そして私たちと 途切れることなく意思疎通します。この世界では 情報自体も インテリジェントになります。必要なときには 自動的に情報が提供され 私たちは わざわざ 探す必要はありません。産業システム全体に 取り込もうとしているのは 自動可視化 マルチコア・プロセッサ技術 高度なクラウド・コミュニケーションや 機械の機能が ソフトウェアで可視化される― ソフトウェア基軸の 機械インフラで これにより ハードから機械ソフトを分離し 遠隔的かつ自動的に 産業機器を監視 管理 改良できるようになります。

 

3 予防的な状態監視保全を可能にしている

なぜ これが重要なのでしょうか? まず すでにこれらは 予防的な状態監視保全を 可能にしています。つまり 壊れそうなときを 察知して 修理作業をすることで 定期的なメンテナンスで 時間を無駄にしなくて すむのです。これにより 計画外の休止時間がなくなり 停電やフライト遅延とも 無縁になるわけです。これら卓越した機械が 稼働している事例を いくつかご紹介します。ささいに見えることも 明らかに奥深いものもありますが すべてに大きな影響力があります。

まずは 航空産業から 現在 フライトの欠航、遅延の10%は 予期せぬ障害により 計画外で メンテナンス作業を したことが原因です。これによって 80億ドルもの損害が 全世界の航空産業で 毎年 発生しています。当然のことながら 私たちも ストレスを感じ 不便を強いられ 会議にも参加できず ただ なす術もなく ターミナルで座りこむことになります。インダストリアル・インターネットで 何ができるのでしょう? 私たちは 予防保守プログラムを 開発しました。どんな飛行機にも導入でき 自ら学習し 人間のオペレータも見落としてしまう― 問題も予測することができます。航空機は 飛行中 地上の技術者と連絡を取り合い 着陸までに技術者は 何を保守すべきか 知ることができます。このシステムがあれば アメリカだけでも 毎年6万件以上の遅延や欠航を 防ぐことができ 7百万の乗客を時間通りに 目的地に届けられるようになります。

 

4 産業データは2020年までに全デジタル情報の50%以上となる

次に 医療です。今 看護師は平均して 1回のシフトのうち21分を 医療機器を探すために使っています。たいしたことないようですが これにより 患者に向き合う時間が 減っているのです。テキサス州ヒューストンの 聖ルカ病院は インダストリアル・インターネット技術を導入し 電子的に 患者とスタッフ 医療機器をモニターし 結びつけたところ ベッドから離れる時間を 1時間も減らせました。手術を考えたら 1時間は大きいですよね。つまり より多くの患者を治療し より多くの命が救えます。ワシントン州にある 別の医療センターは スキャナやMRIの医療画像を クラウドで分析することができる アプリケーションを 試験導入し より良い診断を より低いコストで 提供しています。

ここに重傷を負った― 患者さんがいて 複数の専門家の診察が 必要だとしましょう。神経医と心臓専門医 外科医の治療が必要です。もし 彼らが全員 その場で同時に スキャン画像を見れたら より良い医療を より早く提供できます。これらは より良い医療につながり さらには 大きな経済的利益を もたらします。今の非効率さを たった1%なくすだけで 全世界の医療産業全体で 6千億ドル超の支出を減らせます。それは九牛の一毛でしょう。持続可能で 手頃な医療を提供するのに するべきことは 山ほどありますから。

同様の進展は 再生可能エネルギーを含む― エネルギー産業でも 起こりつつあります。風力発電地帯には 新しい遠隔監視・分析機能が備えられ 風力タービンが互いに情報共有し 全体的な発電効率を高めるよう タービン翼の向きを 風の吹き方にあわせて調整します。それにより発電コストは キロワット時 5セント以下になります。10年前の発電コストは 30セントで 現在の約6倍でした。

このような事例は 枚挙にいとまがありません。産業データが 急激に増えているからです。2020年までには それらは全デジタル情報の 50%以上となるでしょう。

 

5 私たちの日々の仕事への影響

でも これはデータの話に とどまりません。そこで視点を変え 私たちの日々の仕事に どんな影響があるか お話しします。この新しいイノベーションは 新しいツールや アプリケーションをもたらし 私たちが よりスマートに速く 連携できるようにしています。仕事を 単に効率的にする以上の 利点があります。例えば 風力発電施設の フィールドエンジニアは 携帯端末を見るだけで どのタービンの補修が必要か 分かります。予め 問題が分かっているので 必要な補修部品も持っています。もし何か予期せぬ問題があっても 同じ携帯端末で サービスセンターの同僚と連絡を取り 自分が見ているのと 同じものを見せ 診断に必要なデータを 送信すればよいのです。同僚が必要な修理手順の 説明ビデオを送り 機械を直すための どんなに複雑な手順でも 一つ一つ 伝えることが出来ます。こうしたやり取りは記録され 検索可能なデータベースに 保存されます。

 

6 イノベーションはそもそも成長

ちょっと考えてみましょう。これは重要なポイントです。この新しいイノベーションの波は 私たちの働き方を 根本的に変えます。このイノベーションが仕事に与える 影響を心配されているでしょう。失業率はすでに高く イノベーションが仕事を奪うと 恐れられています。イノベーションは破壊的です。でも ここで2点強調させてください。1つは 私たちはすでに 農業の機械化 産業の自動化を生き延び 雇用は増えました。イノベーションは そもそも成長なのです。製品はより手頃になり 新しい需要や仕事を生み出しました。2つ目に 懸念されているのは 将来 仕事は 技術者やデータ科学者 その他の高度専門職にしか 仕事がなくなることです。私も 経済学者として それは怖いですよ。でも 考えてみてください。子どもが簡単に iPadを使いこなせるように 産業アプリケーションは どんなレベルの 労働者にも使いやすいはずです。将来の労働者は むしろ アイアンマンで チャップリンの『モダン・タイムス』にある姿 ではないのです。そして 確実に 新たな高度専門職も生まれます。機械とデータを両方理解する― デジタル・メカニカルエンジニアもそうで 自らの業界や分析論も 理解できる経営者は 技術を最大限活用し ビジネスを再構築します。

 

7 技術変革は変革の力を持っている

さて ここで一歩引いて 全体像を見てみましょう。現在のイノベーションは ソーシャルメディアや くだらないゲームのことばかりで 産業革命のような変革する力など ちっともないと言う人もいます。成長を生むイノベーションは とっくに― 終わったというのです。これを耳にするたび 石器時代でさえ そんな人がいたんだろうと思います。たき火のまわりに 陣取って ぼんやりしている― 穴居人たちが ほかの穴居人が石の輪を転がして 丘を上り下りしているのを見て こんなことを言うわけです 「あー あの輪っかは おもしろいけど 火に比べたら たいしたことはない。偉大な発見は もう終わったんだ」 (笑)

この技術変革は これまでにないほど 素晴らしい 変革の力を持っています。人間の創造性とイノベーションは いつの時代も 私たちの原動力となり 仕事を生み出し 生活水準を押し上げ 私たちの生活をより健康で 価値のあるものにしてきました。産業を席巻し始めている― このイノベーションも 同じなのです。アメリカだけで見ても インダストリアル・インターネットは 平均所得を 今後15年で 25から40%押し上げ ここしばらく なかった高成長率で 世界のGDPを 10から15兆ドル増やします。それは 現在の アメリカ経済全体と同じ規模です。

 

8 すぐそこにある未来を考えよう

でも これは約束された 未来ではありません。今はまだ変革の初期の段階で 打ち砕くべき障害 乗り越えるべき障壁があるでしょう。新しい技術への投資が必要で 組織や経営慣行も 適応させなければいけません。堅固なサイバーセキュリティーで 機密情報や知的財産を保護し サイバー攻撃から 重要なインフラを守る必要があります。学生が ふさわしいスキルを 身に付けられるよう 教育も変わらなければいけません。簡単なことではないでしょう。しかし それだけの価値はあります。今 直面している 経済的課題は厳しいものです。でも 私は現場をまわり 人間と 卓越した機械が互いに 結びつけられつつあり また それにより 病院や空港 発電施設が 変わるのを見ています。私は単に楽観的なだけではなく 情熱的なのです。この新しい技術革新は すぐそこまで来ています。ですから未来を考えましょう。すぐそこにある未来を。ありがとうございました(拍手)

 

最後に

人と機械の結婚「インダストリアル・インターネット」。情報自体もインテリジェントな世界。予防的な状態監視保全を可能にしている。産業データは2020年までに全デジタル情報の50%以上となる。イノベーションの波は私たちの働き方を根本的に変える。技術革新は変革の力を持っている。すぐそこにある未来を考えよう

和訳してくださったYuko Yoshida 氏、レビューしてくださった Makoto Ikeo 氏に感謝する(2013年10月)。

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