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イワン・バーン 創造的な家が見つかる場所

「人はどんな環境でも生活でき、家を作ることができます」イワンは語りかける。ここでは、110万ビューを超える Iwan Baan のTED講演を訳し、創造的な家が見つかる場所について理解する。

要約

トーレ・デ・ダビはベネズエラ、カラカスの中心に建つ45階建ての未完の廃ビルです。8年前から、人々がこのビルに移り住み始めました。写真家イワン・バーンが、トーレ・デ・ダビのアパートや、ナイジェリアにある水上の街、中国の地下の村などを案内しつつ、どのように人々が思いもよらない場所に家を建てているかを教えてくれます。これらの素晴らしい写真の数々は、人がどんな環境でも生活できること、家を作れることを物語っています。

Photographer Iwan Baan captures the many ways people shape their shared built environment — from glossy starchitecture to handmade homes.

 

1 人々が都市を作り変える

キャリアを通じて 私は幸運にも世界中のすぐれた建築家の 仕事を記録し 彼らの仕事がどのように 都市に影響を及ぼすか 観察することができました。ドバイのような新しい都市や ローマのような古代都市に建つ ザハ・ハディッドの 国立21世紀美術館 そして ここ ニューヨークは ハイラインの開発によって 大いに影響を受けました。

しかし 私が最も感銘を受けるのは 建築家や都市開発者が去ったときに 人々が都市を作り変えることです。例えば インドのチャンディーガルは 建築家ル・コルビュジエが 隅々まで設計した都市です。それから 60年を経た今人々は街を 当初設計された目的とは 全く別の方向で使用しています。例えば この人たちは 集会所の窓を椅子代わりにしています。また 数年間にわたって北京に建てられた レム・コールハースの 中国中央電視台本部ビルや ヘルツォーク&ド・ムーロンの オリンピックスタジアムの建設現場を追いました。これら中国の大規模な建設現場では 労働者が 建設期間中 住みこむための臨時宿泊施設を作ります。建設期間が何年にもわたると 雑然としていながらも街としての機能を備えた 労働者の集落ができます。彼らが建築している洗練された建物とは対照的です。

 

2 人口の70%がスラムに住むベネズエラのカラカス

この7年間 私は 作られた環境の魅力にとりつかれてきました。私を知っている人なら「そんなものに魅せられているから 年中スーツケース暮らしなんだ」と言うでしょう。常に移動しているということは 非日常を捉える機会に恵まれているということでもあります。例えばここ ニューヨークが ハリケーン・サンディに襲われた翌日などです。

3年前 私は初めてベネズエラのカラカスに行きました。上空から街を見て 私は 隅々までスラムが 広がっていることに驚きました。この街では人口の70%が 文字通り 山を覆っている スラムに住んでいます。地元の建築家やシンクタンクの方から トーレ・デ・ダビの話を聞きました。カラカスの中心に位置する 45階建てのオフィスビルです。このビルは 90年代初頭に ベネズエラの経済が崩壊し 開発者が亡くなるまで建設が続けられていました。8年ほど前からこの廃墟ビルに 人々が移り住み始め― この作りかけのビルの 支柱の間に家を作り始めたのです。この建物には 小さな入口が1つあるだけで そこを 3,000人もの住人が 1つのドアから出入りします。住人たちは 力を合わせて共同のスペースを作り 未完成のビルではなく 居心地の良い家になるよう工夫しています。ロビーの壁を塗り替え木を植えました。バスケットボールコートも作られました。しかし よく見ると エレベーターなどの機能があったはずのところに 穴が開いていることがわかります。

 

3 与えられた環境に完全に適応した家を作り出す

この未完成のタワーで 生活していく上で 出てくる諸問題に対して 住人たちは様々な解決策を編み出しました。このタワーは 建築や設計に関する知識のない 住人たち自身により 独特のやり方で設計されたエレベーターのない 45階建のビルです。住人たちがそれぞれ独自の適応方法を見出すことで このタワーはミクロ経済と中小ビジネスが活発な 生きた街のようになるのです。才のある人たちは 予想もしないところに商機を見出します。例えば この立体駐車場は 住人たちが部屋まで歩く距離を 短くするための タクシーの通り道になりました。

タワーの中を散策すると 住人たちが どのようにして タワーの内部に仕切りや換気ルートを作り 内部の透明性や物流を 確保したかを見ることができます。すなわち 与えられた環境に 完全に適応した家を作り出したのです。タワーに新しく越してくる人は 屋根はすでにあるので 住みたい場所を カーテンや敷物で区切ります。そして徐々に 拾いものを使って 壁が作られありあわせのもので出来た スペースが出来上がります。

 

4 自らの手で家を建てることが家族の誇りになる

デザインをする上での彼らの下す決断には目を見張ります。例えば 赤い煉瓦で家が出来ている場合 煉瓦の上に さらに煉瓦の模様の壁紙を貼って 綺麗に見えるようにする人たちもいます。

この住人たちは文字通り 自らの手で家を建てます。そして この愛情に満ちた努力が このタワーに住む多くの家族の誇りになるのです。彼らは与えられた環境の中で 自分たちのスペースをなるべく 綺麗で居心地よくしようとします。タワーの中では 色々なサービスを 目にします。たとえば理髪店や 小さな工房 そして各階に 小さな食料品店や店があります。教会さえあります。30階にはジムがあり 重りやバーベルには 備え付けられることのなかった エレベーターの滑車を使っています。外から見ると 目まぐるしく変わる外観の裏で 固定されたコンクリートの梁が 自分たちの必要に合わせて 住人たちが 自然な直感に従い家を建てるための 枠組みになっていることがわかります。

 

5 水上に15万人の人が住むナイジェリアのマココ

さて アフリカはナイジェリアの マココというコミュニティーに話を移しましょう。ラゴス・ラグーンの水上で 15万人の人々が生活をしているスラムです。完全に秩序のないところに見えるかもしれませんが 上空から見ると 何やら 全ての家をつなぐ整然とした 水路と運河が見えます。人々はメインデッキから長い木のカヌーに乗り 自分の家やお店のある 広大な地域を移動します。水上に出れば 彼らの生活が この特別な生活様式に 完全に順応しているとわかります。カヌーが雑貨店となって 女性たちが家から家へと 歯みがき粉から果物まで何でも売りまわっています。窓やドアの向こうから 幼い子どもたちがこちらを覗き見ており マココは人で溢れている一方で 実は 何より驚くのが 全ての建物が子どもで溢れていることです。特にマココのような地域でのナイジェリアの人口増加は 物事が手に負えない状態に なってきていることを象徴しています。

 

6 漁業やボート作りが一般的な職業

マココでは ほとんどインフラ設備が整っていません。電力は間に合わせ程度で新鮮な水は あちこちに作られた自作の井戸からしか手に入りません。ここの経済活動は全て 水上での生活に適応してきたため 漁業やボート作りが 一般的な職業です。この地域にビジネスを構える 実業家たちもいて 理髪店やCD・DVDショップ 映画館や仕立て屋などあらゆるものが揃っています。写真館まであり そこを覗けば 陸上の家に住みたいという憧れや スウェーデンのホテルのような遠い場所への憧れが垣間見えます。

この夜はたまたま お揃いのTシャツを着た バンドに遭遇することができました。彼らは運河の中を 発電機を乗せた大きなカヌーで移動しながら コミュニティーの人々を楽しませていました。日が沈むと あたりはほぼ真っ暗です。小さな電球や 松明の灯りを除けば。

私がマココを訪れたそもそもの理由は 友人のクンレ・アデイェミが マココの子どもたちのために立ち上げた 三階建ての水上校舎を作る プロジェクトに参加するためでした。村全体が水上に作られているため 公共の場は限られていたのですが この学校が出来たおかげで 1階は子どもたちの遊び場になりました。学校が終われば 甲板は町の広場さながら 漁師たちが網を直し 水上の商人が船を泊める場所になります。

 

7 人はどのような環境にも適応できる

次に ご紹介するのは カイロに住むザバリーンです。彼らは40年代に北エジプトから 移住してきた農民の子孫です。現在 彼らは カイロの住人から収集したゴミをリサイクルして 生計を立てています。長年の間 ザバリーンの人々は仮設の村に住み 地方行政を避けるため 遊牧民のような生活をしてきました。しかし 1980年代初頭に カイロの東の辺境に位置する モカタム岩に定住しました。現在 この地域には 5万から7万人の人々が住んでいます。彼らは自分たちで建てた 複数階の家に住み 多くて3世代までがひとつ屋根の下に暮らしています。彼らが建てたアパート群を見ると 計画性や正式な区分けがないように思えますが それぞれの家庭がある種のリサイクル事業に特化していて 各アパートの1階は リサイクル用のゴミ置き場に そして 上の階は生活スペースと決まっているのです。ここの住人たちが まるで ゴミの山がないかのように生活しているのはすごいと思います。例えば この威厳のある男性はゴミが背後から 溢れ出している中でポーズをとってくれました。そして この二人の青年は 大量のゴミに囲まれながら座っておしゃべりをしています。私たちのほとんどは これだけのゴミに囲まれては 暮らせないでしょうが ザバリーンの人々にとって この状態は普通なのです。

今日紹介した これらの場所を見ると 実は「普通」などないということに 感銘を受けます。そして 人はどのような環境にも 適応できることを証明しています。一日を通して 婚約パーティーのような小規模なパーティーに 路上で行き会うことがあります。ここの伝統では 花嫁になる女性が 花婿の男性のもとに持っていく 全ての持ちものを展示するのです。このような集まりは興味深い対比を浮き彫りにします。新品が飾られている一方で 新居の調度品を展示するための 小道具としてゴミが混在しているのです。マココやトーレ・デ・ダビのように ザバリーンにも 典型的な町にある施設は全て揃っています。販売店やカフェ レストランなどそしてこのコミュニティは キリスト教コプト派なので 教会はもちろんのこと 至るところで宗教関連の図像を 目にすることができます。あらゆる日常のサービス― 電化製品の修理店や 理髪店まで 何でもあります。

 

8 緻密に注意深く設計・装飾されている家

ザバリーンの家々を訪ねると さらなる驚きが待っています。外から見ると これらの家は街のどこにでもある 手作りの建造物ですが 一歩足を踏み入れると多様な部屋の設計と 内装を見ることができます。空間もお金も限られているにもかかわらず この地域の家は緻密に注意深く 設計・装飾されています。アパートはそれぞれ個性的で 各家庭が置かれている環境 そして大切にしている価値観を物語っています。多くの人は自分の家と その内装に関して真剣で細部までこだわり 労力と気配りを惜しみません。共有スペースにも同じようにこだわりが見られ 壁が大理石調に塗られたりしています。

しかし これらの手の込んだ装飾とは裏腹に これらのアパートは時折予期せぬ使われ方をしています。例えば 私の注意を引いたのは 泥や草が文字通り 玄関からはみ出ている部屋でした。中に入れてもらうと どうやらこの5階建てアパートは 畜産場に改造されていたようです。6~7頭の牛が元々 リビングだった部屋で草を食べていました。しかし この牛小屋の向かいにある 部屋には新婚の夫婦が住んでおり 地元の人曰く この地域で最も素敵なアパートらしいです。

細部に凝った装飾には驚きました。この家の主人が誇らしげに 案内してくれたアパートの中は 床から天井まで装飾が施されていました。もし 変に嗅いだ覚えのある 気持ちの悪くなるような臭いさえ 部屋の中に入ってこなければ 牛小屋の隣 かつ ゴミの埋め立て地の上にいることは 簡単に忘れることが出来るでしょう。さらに私を感動させたのはこの一見― 住むのに適さない環境の中でも 彼らは私を 愛情と気配り そして惜しみない情熱が注がれた家に あたたかく迎え入れてくれたことでした。

 

9 約4千万人が地中の家に住んでいた中国の山西省、河南省、甘粛省

少しまた場所を変えて 中国の 山西省 河南省 甘粛省を見てみましょう。柔らかく多孔性の黄土高原の 土で有名なこの地域では ごく最近まで約4千万人が地中の家に住んでいました。この住居はヤオドンと呼ばれています。この引き算の建築物 ヤオドンは文字通り地面に埋め込まれています。これらの村では 完全に人工的に作られた光景を目にします。これらの土山に隠れているのは 地下7メートルに位置する 正方形や長方形の家です。なぜ このように家を地中に 作るのかと尋ねると 貧しい小麦やリンゴ農家である 彼らには建築資材を 買うお金がなく土を掘り出すことが 最も合理的な暮らし方なのだと答えました。

 

10 均一性という病が生きる喜びを奪っている

マココからザバリーンまでこれらのコミュニティーは 自分たちや近隣の地域の 計画や設計 管理を 自らが置かれた 環境や状況に上手く適応する形で行っていました。これらの特殊な空間に 暮らし 働き 遊ぶ人々によって作られているため こうした地域はその環境を十分生かすように 直感的に設計されています。これらの地域のほとんどは 無政府状態で 住人達には あるものだけで生活する以外の選択肢はありません。これらの地域は不利益を被っている一方で 素晴らしい創造性を示しており 私たちには どんな状況にも 適応する能力があることを証明してくれています。トーレ・デ・ダビのような場所が 特に注目に値するのは このような骨組みだけの構造物が 人々が創造力を発揮する 基礎を提供するからです。もし このすでに創造力あふれたコミュニティーが 基本的なインフラを与えられたら 何を生み出しどれほど的確な解決策を― 見出すか想像してみてください。

現在では 大勢の人々に 規格化された住宅を提供する 大規模な住宅開発計画を目にします。中国からブラジルまで これらの計画は なるべく多くの住居を提供しようとしていますが それらの住居は極めて典型的で 人々の個々の要求に応えうる 解決策にはなりえません。

最後に 私の友人であり インスピレーションの源である ジータ・コブというニューファンドランドの フォーゴ島を拠点にする ショアファスト基金の創設者の言葉を引用したいと思います。彼女はこう言いました「均一性という病が― 生きる喜びを奪っている」 まさにその通りだと思います。ありがとうございました(拍手)

 

最後に

人口の70%がスラムに住むベネズエラのカラカス。水上に15万人の人が住むナイジェリアのマココ。約4千万人が地中の家に住んでいた中国の山西省、河南省、甘粛省。人は与えられた環境に完全に適応した家を作り出す。自らの手で家を建てることが家族の誇りになる。人はどのような環境にも適応でき、人々こそが都市を作り変える

和訳してくださったMakoto Ikeo 氏、レビューしてくださった Moe Shoji 氏に感謝する(2013年9月)。

世界の家


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