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ロバート・ゴードン イノベーションの死、成長の終わり

「2世紀にわたって成長してきたアメリカ経済は終わりを目の当たりにしているのでしょうか?」ゴードンは語りかける。ここでは、85万ビューを超える Robert J. Gordon のTED講演を訳し、イノベーションの死について考える。

要約

アメリカ経済は2世紀に渡って成長してきました。私たちは成長の終わりを目の当たりにしているのでしょうか?経済学者ロバート・ゴードンが、増える負債や広がる格差を詳細に説明しながら、アメリカの成長が減速しているかもしれないことを示す4つの理由を展開します。これによって、イノベーションを起こしても抜けられない停滞期に、アメリカが追い込まれるかもしれないと言います。 エリック・ブリニョルフソンによる反対意見と合わせてご覧ください。

Robert J. Gordon is among the most influential macroeconomists in the world. And the big picture he sees is not altogether rosy.

 

1 人口変動、教育、負債、格差という4つの逆風

1900年には旅行と言えば こういうものでした。幌なし馬車です。暖房はありませんし 空調もありません。馬が荷車を引いていき 速さは音速の1%です。轍のある泥道だと 雨が降る度に ぬかるみにはまってしまいます。こちらはボーイング707です。馬車から60年経っただけで 707 だと 移動速度は音速の80%です。今現在も これが 最速の旅行となっています。なぜなら超音速で飛ぶ 航空ビジネスは 破綻したからです。

不思議に思って 考え始めました。アメリカの経済成長が 最も好調だった時代は 終わってしまったのでしょうか? これは 経済成長が 停止したのかも知れないという 提言につながります。その理由の一部でありながら 議論されていない事があります。実はアメリカ経済には 4つの逆風があって それを 真正面から もろに受けているんです。その向かい風は人口変動 教育 負債 格差 です。これらは すごく強力なので 成長を半分に削いでしまいます。削減された分を補うのに 多くの革新が必要なのです。私の論題はこうです。この向かい風を考慮すると もし過去150年間と 同程度の 革新がもたらされたとしても 成長率は半分に減ります。もし革新が 昔ほど強力でなく 偉大で素晴らしいものを 発明できない場合 成長率は これまでの半分より さらに低くなります。

 

2 過去の記録に基づく予測曲線

さて これは8世紀分の 経済成長のグラフです。縦軸は毎年の成長率を パーセント表記しています。下から毎年0% 毎年1% 毎年2% です。白い線はイギリスの成長率で そして 1900年以降は アメリカが経済を主導する座に着き そこから― 線の色が 赤に替わります。当初の4世紀には ほとんど成長がなく たった0.2%なのが分かります。その後 どんどん成長して 1930年代 40年代 50年代で ピークに達して 減速が始まります。ここで1つ注意があります。下落する赤い線の 最後の1段は 実際のデータではありません。この部分は6年前に 私が予測したもので 成長が減速して 1.3% になるというものです。でも 実際には どうなったでしょう? 過去6年間でアメリカの 1人あたり収入の成長率は どうなったでしょう? マイナスでした。

こんなことを思いつきました。この過去の記録に基づき 予測曲線を引くとしたらどうでしょうか? 私は好きなところに 曲線の終わりを持ってこられますが 0.2%のところに決めました。グラフの最初の4世紀分の イギリスの成長と同じくらいです。これまで成し遂げてきた歴史では 私たちは 全体で平均すると 毎年 2.0% の成長をしてきました。1891年から2007年のものです。そして2007年以降は 少しだけマイナスが続いています。しかし 成長が減速した場合には ひと世代ごとに生活水準の豊かさが 倍になった今までと違って 今後この国では 豊かさが 親世代の倍になる事は望めません。それどころか 4分の1でさえも 期待できません。では話を移して 1人あたりの 収入の推移を見てみましょう。今回の縦軸は 千ドル表記で今の価値に置き換えています。左端の1891年には 約 5,000ドルぐらいだったと わかると思います。現在は1人あたり生産量は 44,000ドルくらいです。では 過去の 2%台での成長を 今後の70年間でも続けられるとしたら どうでしょうか? 数学的に求められます。2%成長を続ければ 70年後には生活水準は4倍になります。44,000から180,000ドルに なるであろうことを意味します。まぁ そうはならないです。理由は 向かい風です。

 

3 労働時間の縮小と教育費のインフレ

1つ目の向かい風は 人口変動です。明白なことですが生活水準は 生産力や時間当たりの生産よりも 早く上昇します。ただし平均労働時間数が 上昇する事が前提です。幸いにも この現象が 70年代や80年代には 女性が労働し始めることで 起こりました。しかし 今は 事態がひっくり返りました。今は労働時間数の縮小が 続いています。理由の1つ目は ベビーブーム世代が 引退しているから。2つ目は学歴の分布で 下位半分に属している 働き盛りの 成人男性が 劇的に労働人口と みなされなくなって来ているからです。

次の向かい風は 教育です。教育システムもあちこちに問題があります 「トップへの競争」– 政策があるにも関わらずです。大学の高等教育では 教育費のインフレが起きています。医療費のインフレも 小っちゃく見える様な規模です。高等教育では学生ローンの負債が 1兆ドルも抱えています。おまけにアメリカの大学修了率は カナダの修了率よりも 15%ポイント低いです。そして多大な負債があります。2000年から2007年で 私たちの経済は成長しましたが 消費者がとてつもない過剰債務を 負うことで成しえました。今度はその債務を 返済しなければならないため 経済回復を滞らせる 主な理由の一つになっています。もちろん だれもが知るように 対GDP比での 連邦政府の債務率は ものすごい勢いで 膨らんでいます。これを阻止する唯一の方法は 移転支出とも呼ばれますが 増税の速度を速め 社会保障給付額を抑えることを 組み合わせて行うという方法です。これが成長率1.5%のところから 教育のところまでを考えると 1.3%にまで引き下げます。

 

4 政府債務率と格差の拡大

さらに4つ目には 格差があります。経済危機以前の 過去15年間では 収入の分布で下位99%の人の 収入の伸び率は これまでに話してきた平均よりも 0.5% 低くなっています。残りは全て 上位1%の物になりました。これが成長率を下げて 0.8%となります。この0.8%でも大きな壁です。わたしたちは 0.8%で 成長するのか? そうなるには わたしたちの革新が 過去150年に起こったものと 同じくらい重要なものとなる 必要があります。では これらの過去の革新を 見てみましょう。

1875年だと 夜 読書したい時には 灯油かガスのランプが必要でした。燃料は汚染を起こし 匂いもします。扱いも難しく 薄暗いあかりで 火災の元となり危険でした。1929年までに 電灯は どこででも見られるようになりました。摩天楼が現れ エレベーターの発明がありました。これでマンハッタン中心街の高層ビルが 可能になりました。そして これに加えて 同じ時期には 手で使っていた道具は どんどん電動工具か電気機械へと 置き換えられました。すべて電気によって 達成されたのです。

 

5 電気は女性を家事から解放した

電気は女性を解放するのにも 非常に力を発揮しました。19世紀後半当時の女性は 週2日を 洗濯に費やしてました。洗濯板を使っており 衣服を乾かすのに 外に干してから 取り込む必要がありました。この洗濯に1週間の内2日を 費やしていたのです。そして 電気洗濯機が 使えるようになりました。1950年までに いたるところに普及しました。それでもまだ女性は 毎日買い物する必要がありました。しかし これも必要無くなりました。電気が電気冷蔵庫を もたらしたからです。

19世紀の後半は 家を暖める熱源は ほとんどの場合 料理と暖房に使う 台所の大きな暖炉でしたから 寝室は寒く 暖房なしでした。1929年までに いえ確実に1950年までには セントラルヒーティングが どこでも使われるようになりました。

 

6 内燃機関、地下水路の普及の効用

1879年に発明された 内燃機関は どうだったでしょうか。アメリカでは 自動車の前は 移動手段を都市部の馬に 完全に依存していました。馬はためらうことなく 毎日10から20キログラムの糞を 道に落としていました。4リットルほどの 尿と共にです。都市部になると この量が 1平方キロメートルあたりで 毎日2トンから4トンになりました。馬はアメリカの農業用地の4分の1を たっぷり食べてました。これは馬を食べさせるために 必要とした アメリカの農業用地の割合です。もちろん 自動車が発明された後は 1929年までに 自動車はいたるところで 見られるものになりました。それで馬用農業地は 人間の為に使えるようになりました。輸出に使ってもいいでしょう。興味深い比率があります。アメリカでは 1900年には0だった 世帯あたり自動車保有台数の比率が 30年後には90%に達します。たった30年の間にです。

世紀が変わる前までは 女性は 別の問題も 抱えてました。調理 掃除 風呂に使う すべての水を 手桶やバケツで何度も 屋外から汲んでくる必要がありました。これは1885年の歴史上の事実ですが 平均的なノースカロライナの主婦は 年に238キロも歩き 35トンもの水を運んでいました。1929年までには この国の都市では 地下水路が引かれました。地下下水道のパイプも 敷設されました。これらの結果 19世紀末には 最大のわざわいの1つだったコレラなどの 飲料水媒介病が 無くなり始めました。技術楽観主義の人たちが 驚くかもしれない事実があります。20世紀の前半部分だけは 平均寿命の 伸び率が 19世紀後半に比べて 3倍速く上昇したという事実です。

 

7 電気による革命の具体例

ものごとが100%を超えられないことは 明白な事実です。幾つか例を挙げましょう。わたしたちは音速の1%から 90%までやってきました。電化 セントラルヒーティング 自家用車 これらはすべて 0%から100%になりました。都市環境が整ったことで 人々の生産性が農地よりも高くなりました。戦後まもなく 都市部の割合は 25%から75%に進行しました。

電気による革命は どうだったでしょうか? これは初期の コンピュータです。素晴らしかったです。メインフレームコンピュータが 1942年に発明され 1960年には 電話代請求書や銀行口座報告書は コンピュータが作るようになっていました。初期の携帯電話やパソコンは 1970年代に発明されました。1980年代には ビル・ゲイツがDOSをもたらしました。ATMが銀行の窓口職員に とって代わって バーコードスキャナーが 販売業の雇用を縮小させます。90年代を 早送りで見ると ドットコム革命があり 生産性の上昇が 一時的にあっただけです。

 

8 私は20世紀の発明にオスカーを授与したい

皆さんと ひとつ実験をしましょう。選択肢AかBを 選ぶとしたら? (笑) 選択肢Aは過去10年までの 発明品を使えます。グーグルもアマゾンも使えます。ウィキペディアも使えます。水道や屋内トイレもあります。選択肢B は昨日までの 発明品を使えて フェイスブックやiPhone は使えますが 屋内トイレをあきらめて 屋外トイレに行き そして水を運ぶ選択肢です。ハリケーン サンディによって 多くの人が20世紀を奪われました。おそらく数日間 1週間という人もあったでしょう。そして 電気 水道 暖房 車のガソリン iPhone の充電を奪われました。

わたしたちが直面している問題は これまでの偉大な発明に 匹敵するような発明を 今後もしなければならない事です。それ程の発明はできないという 私の予測通りだと もともとの2%の成長率を 0.2%にまで押し下げます。最初に思いつきで引いた線と一緒です。

そうです これだと 馬車の時代に戻ります。私は 20世紀の発明に オスカーを授与したいと思います。グラハム・ベルに始まり トーマス・エジソンや ライト兄弟などにです。皆にこの舞台に上がってもらって そこから問いかけてもらいましょう。私たち並の成果が出せますか? これがみなさんの課題です。どうも ありがとう(拍手)

 

最後に

人口変動、教育、負債、格差という4つの逆風。労働時間の縮小と教育費のインフレ。政府債務率と格差の拡大。電気は女性を家事から解放した。内燃機関、地下水路の普及の効用。私は20世紀の発明にオスカーを授与したい。偉大な発明に匹敵するような発明を今後もしなければならない

和訳してくださったAkinori Oyama 氏、レビューしてくださった Misaki Sato 氏に感謝する(2013年2月)。

現代マクロエコノミックス〈上〉

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