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DIYで保険ポートフォリオを作成しよう 生命保険と税金

前回は、義理・人情・プレゼントから合理的思考へ 保険会社の仕組みについてまとめた。ここでは、DIYで保険ポートフォリオを作成しよう 生命保険と税金について解説する。

6 定期付終身保険と転換セールス

Lの悲劇

Lの悲劇とは「定期付終身保険」の支払い保険金額を図にしたときの形がアルファベットのLを横に倒したような形になることから生まれた、業界スラングである。定期付終身保険は終身保険を主契約とし、それに定期保険を組み合わせ、損害保険や疾病保険を特約として加えたもので、「定食型生命保険」ともいえる。日本の生命保険の大半の契約だが、支払い総額が高いことが伏せられてきた。

 

おかずが多いのも困りもの

パッケージ型の「定期付終身保険」の問題点は、ほとんどすべての人に1種類のメニューしか提供していないことである。そのときどきの家族構成や資産状況などによって必要な保険金額は変わるが、そうしたニーズには応えにくい商品である。

 

更新のたびに保険料が上がる

もう1つの問題点は、定期付終身保険についている定期保険が、多くの場合10年単位の短期間で自動的に更新されていくことである。しかも、最初は月額1万5000円だったのが更新のたびに3万円、5万円と保険料が上がってしまうのである。

 

定期付終身保険の問題

定期付終身保険の問題点をまとめると、以下の4つが挙げられる。

  1. 加入者に必要な保険金額に対して、定期保険の保険金が大きすぎる。子どもの成長と資産形成によって必要な保険金は減るが、その視点が欠落している
  2. 定期保険の期間が一般に10年と短い。保険期間が15〜20年あれば、中途解約である程度の返戻金が戻ってくる
  3. バブル期に契約した「定期付終身保険」は5〜5.5%の運用利回りを前提に設計書が作られているため、解約返戻金の見積額が実際の3倍以上になっている
  4. ほとんどの「定期付終身保険」に特約として医療保険が加えられているが、この保障も更新制なため、年齢が上がるごとに保険料が高額になってしまう

 

定期付終身保険をリフォームする

そのため、定期付終身保険を改善するとしたら、以下の5点を行えばよい。この知識を活かした営業が、外資系生保の手法である。

  1. 定期保険は子どもの成長にしたがって保険金額を見直し、不要な部分は解約する
  2. 定期保険を全額解約し、保険料の安いネット生保の定期保険に乗り換える
  3. バブル期に契約した「定期付終身保険」の終身部分は予定利率の高い「お宝保険」なので、これはそのまま維持する
  4. 家族特約や損害特約などは本当に必要かどうかを見直し、不要であれば解約する
  5. 「定期付終身保険」の医療保険は貧弱なので、必要であれば新たに単独の医療保険などに加入して補完する

 

悪名高き転換セールス

転換セールスとは、逆ざやに陥っている主契約の終身保険部分を現在の低い予定利率のものに乗り換えてもらうために、定期保険を現在の安い商品に変更することで保険料を減額し、その分の余ったお金で終身保険を予定利率の低い商品に乗り換えさせるというものである。これまでも多くの雑誌等で批判されていたが、1999年の春先から朝日新聞が生命保険の転換セールスについて大きな批判キャンペーンを行い、周知の事実になってきている。

 

7 DIYで保険ポートフォリオを作る

割安な生命保険を探せ

DIY(Do It Yourself)で保険ポートフォリオを作る際に最も重要なのは、「必要な保険にだけ加入する」ことである。たとえ10億円の定期保険に入ったところで、保険期間満了まで無事に生きていれば1円のお金も入ってこないからである。

また、本来の保険商品は単なる「契約」であるため、営業経費(人件費コスト)の高い国内生保や外資系生保の保険よりも、ネット生保や共済を利用するほうが割安である。ノン・スモーカー割引なども活用して、必要な保障を最低の保険料で確保できるように工夫するのがよい。

 

逓減定期と逓増定期

逓減定期は保険金額が徐々に減っていくタイプで、逓増定期は保険金額が徐々に増えていくタイプの定期保険である。以前述べたように、一般に子どもが大きくなるにしたがって必要な保険金額は減っていくため、逓減定期は合理的な商品である。また、逓増定期は法人の節税法として使われているものである。

 

年払いを活用する

保険料の年払いを活用することで、年3〜4%の金利分を節約する効果が期待できる。もちろん個々の商品によって異なるため、月払い、年払い、一括払いの保険料と試算して行うことをおすすめする。

 

保険金の減額と払い済み

保険や金融商品は実体のない商品なため、保険金の減額や払い済みというものを活用できる。途中から保険料を引き下げて保険金額を小さくすることもできるし、終身保険などで途中で保険料を支払うのをやめてしまっても、解約返戻金で一括払いの保険に入り直せば保障を続けることも可能になる(払い済み)。

 

団体保険を活用する

また、団体保険を活用することで割安な保険に入ることもできる。基本的な仕組みは、生保会社からキックバック(販売奨励金)を受け取る代わりに、保険料を割り引いた商品を団体員(組合員やカード会員など)に向けて営業するものである。

 

変額保険を利用する

生命保険に貯蓄性を求める場合、定額保険ではなく変動保険を選択する方法もある。一部の外資系生保が扱っており、リスクは高まるが現在のような低金利化では一考してもいい。

 

生命保険と税金

生命保険に入るメリットは、税金面で有利なことである。生命保険の場合、①保険料を支払う人(保険契約者)、②保険の対象になる人、③保険金を受け取る人、④解約返戻金(満期借款金)を受け取る人、の4人の当事者が契約書に登場する。①の「保険料を支払う人」を本人とした場合、「保険の対象になる人—保険金を受け取る人—解約返戻金を受け取る人」の組み合わせとして以下の6つが考えられる。

  1. 本人—遺族(相続税)—本人(一時所得)
  2. 本人—遺族(相続税)—本人以外(贈与税)
  3. 本人以外—本人(一時所得)ー本人(一時所得)
  4. 本人以外—本人(一時所得)—本人(一時所得)
  5. 本人以外—本人以外(一時所得)—本人(一時所得)
  6. 本人以外—本人以外(一時所得)—本人以外(贈与税)

最もシンプルな1.(本人が死亡して遺族に保険金が支払われる)場合は相続税の対象になるため、基礎控除5000万円+法定相続人ひとりにつき1000万円の控除が原則となる。生命保険金を相続する場合、こうした規定とは別に「法定相続人ひとりにつき500万円が非課税」となる。

 

養老保険が得な理由

養老保険が得な理由は税制上のメリットを最も大きく受けるからである。例えば、10年前に200万円の養老保険に加入し、満期償還金が300万円になった人の課税対象額は、「(300万円−200万円−50万円(一時所得の特別控除))×1/2=25万円」となる。自営業者や個人事業主であれば、この25万円をほかの所得と合算して税務申告し、サラリーマンであれば確定申告の際に医療費控除などと一緒に申告・納税する。所得税額は10%か20%の人が多いため、実質税率は2.5%もしくは5%と他の金融商品に比べて大きなメリットがあるのである。

 

雑所得と贈与税

雑所得には一時所得のような特別控除枠はなく、他の所得と損益通算することもできない。そのため、雑収入から経費を除いた額(雑所得)をそのまま加算して、総合課税で申告する。贈与税は110万円の基礎控除を除いた全額に対し、10〜50%の税率で課税される(前述2.のケース)。そのため、満期償還金や解約返戻金の受取人を本人以外で契約するメリットは少ない。

 

保険料の支払者と保険対象者が異なる場合

3.のケースは、親が子どもを保険対象にして学資保険に加入するような場合で、保険期間満了時に親が満期償還金を受け取ることになる。この満期奨励金も一時所得として処理されるため、税務上大きなメリットを受けることができる。反対に、満期奨励金の受取人を子どもにする(4.のケース)と、贈与税の対象になるためほとんど行われていない。

5.、6.のケースは、保険対象者と保険金の受取人をともに第三者にしているもので、例えば夫が妻の保険料を支払い、妻が死亡すれば保険金は子どもに支払われるようにしているというものである。この場合も一時所得として処理される

 

最後に

生命保険と税金は大きく関係している。生命保険金の相続は通常の相続税控除とは別に、法定相続人ひとりにつき500万円が非課税にできる。贈与税の対象になると110万円の基礎控除のみになってしまう。一時所得は50万円の特別控除があるが、雑所得は特にない。なお、平成24年以降の生命保険料控除が最大12万円に増額されている(生命保険料4万円+介護医療保険料4万円+個人年金保険料4万円)。保険の対象になる人—保険金を受け取る人—解約返戻金を受け取る人の組み合わせで対策が異なり、非常にわかりにくい。税金をもっとシンプルにしてほしい

次回は、国民年金、厚生年金、厚生年金基金 年金と医療保険についてまとめる。

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