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パオラ・アントネッリ パックマンをMoMAに収蔵した理由

「デザインは創造的な表現の最も高度な形です」パオラは語りかける。ここでは、75万ビューを超える Paola Antonelli のTED講演を訳し、パックマンをMoMAに収蔵した理由について理解する。

要約

ニューヨーク近代美術館(MoMA)が14本のビデオゲームを収蔵すると2012年に発表した時は、大騒ぎになりました。MoMAの建築・デザイン部門のシニアキュレーターであるパオラ・アントネッリは、幅広い話題について深く洞察しながらも楽しく紹介する中で、芸術や美術館に対する先入観を打ち破ろうとしている理由、そしてデザインについての理解を広げたいという思いを熱く語ります。

Paola Antonelli is on a mission to introduce — and explain — design to the world. With her shows at New York’s Museum of Modern Art, she celebrates design’s presence in every part of life.

 

1 デザインは創造的な表現の最も高度な形

私は 熱狂的な信者のように 新しい世界が来ると信じています。それは“デザインの時代”です。私はいつも 天気が良ければ “良いデザインの日だ”と思います。展覧会に行って特にすてきな作品を見かけると “デザインが考慮されているからすばらしい” と考えたりします。

私が固く信じているのはデザインは― 創造的な表現の最も高度な形だということです。そこで今日は デザインの時代についてお話ししていきます。デザインの時代になっても デザインといえば おしゃれな家具ポスター スポーツカーなど こうしてMoMAでご覧いただけるものです。ですが 皆さんに本当にご紹介したいのは ロボットが作った椅子なんかが 非常におもしろいという事です。例えば このダーク・バンダー・コーイの椅子 冷蔵庫の部品を再生利用したペースト状の材料を ロボットが絞り出していきながら椅子の形に作り上げます。常に使われ 生活の一部になったコンピューターのフォントも 良いデザインだということです。デザインとは すてきな椅子に限りません。暮らしの中で あらゆるものに使われていることを お見せしたいのです。

 

2 インタラクションデザイン関係

面白いことに今晩の話題の多くは インタラクションデザインに関係するものです。私はこの数年間インタラクションデザインを MoMAに収蔵しようと取り組んでいます。曖昧なものでなく はっきりと分かりやすい作品から始めました。マーティン・ワッテンバーグの作品は コンピューターがチェスの手を考える様子を表現しています。“OLPC(世界中の全ての子どもにPCを)”のプロジェクトで採用されている― リサ・ストラウスフェルトらのインターフェイス「Sugar」 岩井俊雄が作った楽器「TENORI-ON(テノリオン)」 フィリップ・ワーシントンの「シャドーモンスター」 ジョン・マエダの「リアクティブ・ブック」 ジョナサン・ハリスとセップ・カンバーの「I Want You To Want Me(愛を求めて)」 これらは インタラクションデザインの考えを世に広めた― 最初の収蔵品の一部です。

最近はインタラクションデザインを もっと掘り下げることに取り組んでいます。例えば 感情に強く訴えるものや インタラクションデザインをほぼ完璧に説明するものです。ワッテンバーグとヴィエガスの「ウィンドマップ」は すばらしい発想です。アメリカの領土が 小麦畑のように見えますがこれは風の流れを表しています。アメリカで吹いている風のイメージを 見事に伝えています。

そして最近 MoMAはビデオゲームの収蔵を始めましたが このことでは 大変面白い騒ぎになりました(笑) いまだに 高級か低級かにこだわる人がいます。本当に面白いと思ったのは ビデオゲームを収蔵した際の様々な反応です。まずは おなじみの『ニューヨーク・マガジン』 右上にランクされています。“インテリ” “すばらしい”との評価です。よく言ってくれました。ちなみに いつもはもっと高いランクですが… いいえ もちろんうれしいです。

 

3 デザイナーは良いデザイナーになりたい

でも 美術評論家のコメントはすごいですよ。まずは 『ガーディアン』のジョナサン・ジョーンズ “MoMAには悪いがビデオゲームは芸術ではない” 私が“芸術”だと言いましたか?“インタラクションデザイン”です “『パックマン』や『テトリス』をピカソやゴッホに並べて展示” 実際は2フロア離れています(笑) “芸術の真の理解はゲームオーバーになる” 私が芸術の世界を終わりにするんですね。新しい世界の話をしましたがもうすぐです。

ジョナサン・ジョーンズの記事に対して同じ『ガーディアン』に反論が出ました “ビデオゲームは芸術か?あり得ない議論 ゲームは芸術ではないという先週の記事の主張は正しいのか? そして それは問題か?”まさに そのとおりです。繰り返しますがこれが大きな問題なんです。デザインは芸術だと誤解する人や デザイナーは芸術家と呼ばれたいと考える人が実にたくさんいます。それは誤解で デザイナーは良いデザイナーになりたいのです。そんな時 助けに来てくれたのが ジョン・マエダです。彼は堂々と― MoMAでゲームを収蔵する理由を説明してくれました。とても うれしかったです。

 

4 先入観との闘い

ところが また別の立派な記事が 『ニューリパブリック』に掲載されました。リエル・リーボヴィッツ“MoMAは ビデオゲームを芸術だと誤解している 『パックマン』をピカソに並べている 全くの的外れだ” いいえ あなたの方が的外れです。さらに ここです“ビデオゲームは芸術か? 答えは明らかに「ノー」だ。ビデオゲームは芸術ではない全く別のもの 「コード」だ” では ピカソは油絵の具だから芸術じゃないんですね。

とても面白いのは なぜ こうした激しい反論が出るかということです。一方 こちらの「ネコ動画映画際」に対しては あまり批判はなかったようです(笑) すばらしいですね。ウォーカー・アート・センターが実施して 大成功だったようで本当にうらやましいです。私の好きなフロベールの言葉があります “俗世間から離れて暮らしたいのに 煩わしいものが次々にやって来て邪魔をしようとする” “煩わしいもの”とは私のことでしょうか(笑)(拍手)

よくあることなんです。1930年代にも MoMAは 抽象芸術の展覧会の準備をしていました。ところが これらの作品は芸術ではないとして 税関の役人から差し止められたそうです。こうした先入観との闘いは今後も起こるでしょう。ですが今は 『パックマン』をMoMAの― 収蔵品と呼べることを大変誇りに思います 『テトリス』も同様です。ソビエトのオリジナル版です。アレクセイ・パジトノフは ソビエト政府機関に勤めていた当時『テトリス』を開発しました。そのアレクセイがゲームの全体を再現して 当時のブラウン管を模倣したディスプレイまで提供してくれました。ちょっと時代を感じさせますが すばらしいです。

 

5 美術館に作品を収蔵するには膨大な作業が必要

美術館に作品を収蔵するにはやはり膨大な作業が必要です。MoMAとしては大衆文化を扱う際にも インタラクションデザインの1つとして取り組みます。MoMAの収蔵品とするには調査が必要なのです。エリック・シャイの『アウターワールド』を選ぶ際には 専門家の委員会を立ち上げて検討しました。そして 私とケイト・カーモディポール・ギャロウェイを中心に 1年半の間これに取り組みました。大勢の方が協力してくれました。ゲームデザイナーや 雑誌『キルスクリーン』のジェイミン・ウォーレンたち そして ケヴィン・スレーヴィン 皆さんに大変お世話になりました。

私たちはゲームの素人ですので 相談する必要があったのです 『シムシティ』シリーズからは 特に『シムシティ2000』を選びました。こうした選択基準は 大変厳しいものにしました。展示や保存の基準も定めました。私たちは 軽い考えではなく真剣にこの収蔵に向き合っています。今後の生活にますます欠かせなくなるものを どう保存し展示するかを考える必要があるためです。私たちは現在デジタルの世界だけや 現実の世界だけで暮らしているわけではありません。両方を混ぜたスープのような世界にいます。

 

6 メトロカードの自動販売機はインタラクションの傑作

インタラクションはまさに そこにあり だからこそ重要なのです。インタラクションについて説明するためには いかに生活と関わっているかを認識してもらう必要があります。そこで ビデオゲーム以外の例もお話ししています。ビデオゲームは 最も純粋なインタラクションですので 機能や結果にとらわれていないからです。メトロカードの自動販売機は インタラクションの傑作だと思います。インターフェイスが見事ですね。がっしりした地下鉄職員が出てきた感じです。手袋をしたままカードを買えますよね。ATMのインターフェイスは使いにくいものが多いと思います。つまり 私が強調しているのは インタラクションの捉え方が分かれば良し悪しが見えるということです 『シムピープル』の展示では 特に伝えようとしていることがあります。このゲームをプレーする場合には 『たまごっち』と同様に責任感を伴うということです。

ビデオゲームは無心にやっていても とても意味深い場合があります 『塊魂』では 塊を転がして 制限時間内にできるだけ多くのものを巻き込みます。うまくいけば星になります。私は 星にできたことはないのですが… 『ビブリボン』は アメリカでは販売されませんでした。プレイステーションのゲームで主に日本向けでした。自分で音楽を選べるという― 最初のビデオゲームの1つです。プレイステーションに自分のCDを入れると ゲームが その音楽に応じて変化します。

 

7 勉強になったり見た目のよさも重要

『EVE Online(イブオンライン)』は人工的な宇宙の世界です。ベンガジでスティーブンス大使と外交官らが殺害されましたが 外交官の1人は『EVE Online』で有名でした。現実の世界の外交官が 外交の考えなどを ゲームで試していたのかもしれません。しかも その事件の爆撃の第一報は 『EVE Online』上で発せられていました。その後 ゲームの中のいくつかのパーツには 彼にちなんだ名前がつけられたそうです。私はつい最近レイキャビクで開催された― 『EVE Online』のファンフェスタに参加しました。奇妙に思われるかもしれませんが ゲームの体験を語り合い大変勉強になりました。もちろん もっと勉強になるゲームもあります。

『ドワーフフォートレス』はある意味で 理想の大規模マルチプレーヤーオンラインゲームでしょう。開発者のアダムス兄弟もレイキャビクにいて 『EVE Online』のファン全員に大歓迎されていました 確かにすばらしいゲームです。ご覧のように MoMAのような美術館の収蔵品には 見た目の美しさも大変重要です。こうしたゲームを選ぶ際も同様です。

 

8 デザインにおいては見たとおりに受け取られる

バルブが開発した『ポータル』は ある種の暴力が含まれるビデオゲームの一例です。これには とても大きな問題がありました。ビデオゲームの収蔵にあたっては 暴力をどう扱うかを議論する必要があったのです。方針を決めなければなりません。実を言うとMoMAの芸術部門には 暴力を表現した作品がたくさんあります。私が19年前 MoMAに来た時ベレッタ銃を展示したいと言ったら デザイン部門に 銃は置けないと言われました “なぜ?”と思いました。それで分かったのですがデザインにおいては 見たとおりに受け取られるということです。デザイン部門に銃があれば殺す器具として受け取られます。芸術部門の中にあれば 殺す器具を批評するものになるかもしれません。興味深いところです。デザイン部門でも この批判的要素を取り入れつつあるので いつか 銃を収蔵できるかもしれません。このゲームについてはケイトやポールと相談して 無意味な暴力とは取られないと判断しました 『ポータル』で壁を撃つのは 空間をつくるためです 『ストリートファイターII』も武道なので大丈夫ですね (笑) 『グランド・セフト・オート』の収蔵は考えていません。私の見解の影響かもしれません。私がやると 車を衝突させてしまったり いやな人を撃ったりしてしまうので ともかく建設的じゃないからです(笑) ちゃかしてしまいましたがこの問題については 長い間 話し合いました。今でも迷いがあります 『flOw(フロー)』などは迷う必要がありません。穏やかで雄大なゲームです。海の生物になった感覚を体験できます。画面が平行移動する古典的なゲームもあります。収蔵品は多彩です。

 

9 美しさは常に重要

最初に14本のゲームを収蔵しましたが 収蔵予定のものもいくつかあります。まだ収蔵していない理由はゲームだけではなく メーカーとの関係も必要なためです。私たちが入手したいのはソースコードです。もちろん 入手は難しいのですが コードがあれば ビデオゲームを長期間保存できます。それが美術館の役目です。後世に伝えるためでもあります。ただし ビデオゲームのメーカーは あまり協力的でないこともあります。コードを入手できない場合はメーカーとの関係を築き 先方がやめない限りずっと続けていくつもりです。そして いつかコードを入手します(笑)

インタラクションデザインの選択基準として 見た目の美しさは大変重要です。この『Core War(コアウォー)』は初期のゲームです。プロセッサーの性能が限られていたことを生かしていて 美しいですね。このきれいな壁のようなものも 技術的な制約の中で巧みに表現されています。美しさは常に重要です。

ゲームにおける空間も重要です。名作とされるビデオゲームには 有能な建築家が関わっていると思います。建築家ではないとしても 建築学をきちんと学んで理解している人です。空間をどう展開するかは極めて重要です。そして時間ビデオゲームでは 他のインタラクションデザインと同様に驚くような時間の体験ができます。 現実の時間とゲーム内の時間があるのです。例えば 『どうぶつの森』では 現実の世界と同様に季節が変化します。

 

10 最も重要なのが挙動

時間 空間 美しさ そして最も重要なのが挙動です。インタラクションデザインで中核となる問題は 挙動です。インタラクションデザインでの挙動は 私たちの今後の生活に影響を与えます。デザインされる挙動は画面上のものに限りません 『マーブルマッドネス』は見た目も美しいゲームです。このゲームではトラックボールを使って 画面上のボールを動かしていきます。操作していると ボールを実際に動かしている感覚になります。このように ビデオゲームは インタラクションデザインの最も純粋な側面です。インタラクションとは何かを説明するのに大変役立つのです。

ただし ビデオゲームの機器が並ぶ― ゲームセンターのような展示にはしたくありません。もし一緒に展示するならコードです。これは ベン・フライが『パックマン』のソースコードを 描写したものです。

私たちのゲームの収蔵方法は変わっていて 一般的ではありません。椅子など 他のデザインの作品と並べて展示しています。ゲームセンターの雰囲気はなくスクリーンと― コントローラーを置いている程度です。体験してもらうためにはコントローラーは欠かせません。意外だったのですがゲームをする人からは 大きな批判はありませんでした。私の意図をお話ししたところ理解していただけました。フィリップ・ジョンソンは1934年デザインの意義を伝えるため 展覧会を開催しました。MoMAの展示室でプロペラの羽根や機械を― ブランクーシの彫刻のように白い台座の上に並べたのです。この見慣れない展示空間は人々に衝撃を与え― デザインの魅力や重要性に対する認識を広げたのです。私は ビデオゲームで同じことをしたいのです。汚いカーペットやたばこの吸い殻などの 子ども時代のイメージを取り除く必要があります。そして ビデオゲームがデザインの重要な形であることを 理解していただきたいのです。ビデオゲームやフォントなどはある意味で― デザインの意義についての認識を広げるのに役立っています。

 

11 デザインの概念にも入れ替えが必要

夢の収蔵品があります。この数年考えていて今 最も収蔵したいものの1つは ボーイング747です。ただし 所有したいわけではありません。実物は MoMAに置くのではなく飛んでいてほしいのです。ここでいう収蔵とは MoMAが航空会社と協定を結び ボーイング747は飛ばせ続けるということです。

数年前に収蔵した“@”マークも同様です。パブリックドメインのものを収蔵した最初の例です。例えば チョウが飛んでいると壁に影が映ります。その影を捉えて展示するというわけです。誰も所有できない非常に重要なものの場合は それが形に現れたものを展示しているのです。話すと長くなりますので 詳しくは MoMAのブログをご覧ください。@マークが デザインの優れた例である理由を説明しています

一方で 椅子を何脚か処分しなければなりませんでした。デザインの概念にも入れ替えが必要なのです。多くの方が 展覧会に足を運んでくださっています。そして 皆さんからはこのデザインの発展に対して 多くの反響とご理解をいただいています。デザインは 至る所にあり何にも劣らず重要です。デザインは 多様であり 私たちの生活で中心的な役割を担っています。より多くの方が 職業や趣味や自分の文化の一部として デザインに目を向けてくださるとうれしいです。ありがとうございました。

 

最後に

デザインは創造的な表現の最も高度な形。美術館に作品を収蔵するには膨大な作業が必要。メトロカードの自動販売機はインタラクションの傑作。デザインにおいては見たとおりに受け取られる。美しさ、空間、時間、そして挙動が重要。デザインの概念にも入れ替えが必要。先入観との闘い

和訳してくださったMaiko Kosaka 氏、レビューしてくださった Yuko Yoshida 氏に感謝する(2013年5月)。

MoMA スカイアンブレラ 傘


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