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赤の他人と1対1で交流できるサイトは子どもから離せ ネットと規制

前回は、手放したらどうなるか実験したかった 2ちゃんねる譲渡の理由についてまとめた。ここでは、赤の他人と1対1で交流できるサイトは子どもから離せ ネットと規制について解説する。

クラウドコンピューティング≒Web2.0の法則

クラウドコンピューティングとは、グーグルのエリック・シュミット会長が「ネット上から情報が降ってくる状態が、上空の雲(クラウド)から恵みが降ってくるのと似ている」という意味で初めて使った言葉である。誰が見ても同じ情報ではなく、個人に向けたウェブアプリケーションで、ネット上から個々のユーザーに合わせて情報をカスタマイズして示してくれるものである。

そもそもインターネットのサービスは、基本的にサーバが何らかの動作をして、そのサーバが作り出した計算結果がユーザーに届き表示されるものである。こうしたサービスは昔からあったが、それが今ではクラウドコンピューティングと言われることもある。つまり、クラウドコンピューティングとはWeb2.0という言葉が陳腐化してしまったため、新しい商売のために生み出された言葉にすぎないのだ。「婚活」ビジネスと同じで、命名することによってそのビジネスを生み出しているだけなのだ。

 

「Web2.0」の本当の意味

Web2.0の提唱者であるティム・オライリーに、直接Web2.0の意味を聞いてみた。彼は「ユーザーが、いろいろなデータを簡単にネット上に上げられるようになった。そのデータを蓄積したデータベースを使って、統計的結果を出すことで新しい情報が生まれることがポイントだと思っている」と語った。つまり、「データ収集→データ解析→データ創作」という一連の流れの結果がWeb2.0であり、そのための手段がクラウドコンピューティングだといえる。

 

間違ったCGMで集合知はパー

CGM(Consumer Generated Media)とは、インターネットを活用してユーザーがコンテンツを作成するメディアである。CGMが流行ることで、企業がユーザーに商品を宣伝するブログを書かせてネット上に口コミで情報を増やし、その商品の認知度を広めようというマーケティングが流行った。すると、ある商品を検索した際に、知りたい商品の機能を説明したサイトのほかに、ブログに掲載された広告までが検索結果に表示されることが多くなり、本当に正しい情報が埋もれてしまったのである。

 

進みすぎた技術力は世界マーケットではKY

日本で昔から使われている携帯電話は「ガラパゴスケータイ(ガラケー)」と呼ばれている。高機能だが高価なため、世界マーケットではほとんど売れていない。製品の成長をマーケットの成長に合わせることが重要なのであって、決してガラケーが悪いわけではないのだ。

 

携帯電話がゲーム市場をも食い荒らす

今後の日本の携帯電話のヒントはブラジルにある。ブラジルではゲーム機にソフトウェアを配信するインフラが整っていない。そこで、携帯電話の電波を利用して、ゲームソフトを配信しようとしているのだ。ソフトウェア自体をすべて配信形式にすることで、ファイル共有ソフトによるコピーのリスクを回避することができる。

 

フィルタリングなしの携帯電話は子どもに持たすな

フィルタリングとは、閲覧できるケータイサイトを制限するというものだ。最近は子どもが携帯電話を持っていることが多いが、子どもは興味を持つと善悪の判断なしに行動に移す傾向があるため、子どもに対してだけはフィルタリングを行ったほうがいいだろう。

 

フィルタリングのフィルターは穴だらけ

ただし、ケータイサイトをフィルタリングするフィルターの基準には穴がある。例えば、モバゲーなどのゲーム系コミュニティサイトはフィルタリングから外されているが、実際は出会い系サイトよりも援助交際などの温床になっていることが多い。つまり、こうした赤の他人と1対1でコミュニケーションをできる機能を持ったサイトは、子どもが利用できないようにすべてフィルタリングすべきである。なぜなら1対1のコミュニケーションとは、悪い大人が利用すると簡単に子どもを騙せてしまうからである。

また、フィルタリングされるケータイサイトのリストを作成しているのは、社団法人であるモバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)などの業界団体である。こうした業界団体にお金を払っている企業が、モバゲーを運営しているDeNAやSNSのmixi、GREEなどである。つまり、監視されるべき側の企業が監視する側に回っているのだ。

 

名指しの2ちゃんねると名なしのゲームサイト

「携帯電話向けゲームサイトで児童買春が行われた」というニュースが出ることがあるが、そのゲームサイトの名前が出ることはない。しかし、2ちゃんねるで犯罪予告が行われてニュースになると、名指しで報道されるのだ(最近ではLINEが顕著)。これは、前述のような団体を作ることで、被害を減らす方向ではなく、隠蔽する方向に力が働いているのである。

 

情報のフィルタリングは教育で

情報のフィルタリングは教育で行うべきである。つまり、親や教師が子どもが知るべき情報をフィルタリングし、余計な情報はシャットアウトすべきである。「2ちゃんねるを見せない」というフィルタリングをするのではなく「2ちゃんねるを見せても大丈夫な教育」をすればいいのだ。

 

「学校裏サイト≒ロサンゼルスのダウンタウン≒危ない」の誤解

学校裏サイトやロサンゼルスのダウンタウンが危ないというのは、経験していないことからくる不安であろう。学校裏サイトというものが「得体の知れないもの」と感じているから騒がれるのである。仮に「学校裏サイトという掲示板を作ってはいけない」という法律が制定されたとしても、掲示板はメーリングリストというものに形を変えるだけだろう。いじめようとする人との気持ちがなくなるわけでも、いじめの絶対数が変わるわけでもないのだ。

また、実際にロサンゼルスのダウンタウンに行けばわかるが、そこにいるすべての人が攻撃的で危険なわけではない。ただ単に、地面に座っている黒人が多いだけである。こうしたことは、メディアが「学校裏サイト=悪いもの」という画一的な報道をすることも影響しているだろう。

 

ダウンロード違法化で何が起きるか

違法ダウンロードに関して、著作権法を改正し「違法にアップロードされたファイルをダウンロードする行為も違法」として、厳罰化する動きになっている。しかし、こうした動きはコストが高くなるだけで、根本的な解決にはならないだろう(違法ダウンロード刑事罰適用でもソフト売上伸びず…日本レコード協会に見解を聞いてみた参照)。むしろ、別の方法で利益を上げようと考えればいい。例えば、ネットを使った生ライブをメインにして課金する方法や、グッズやコンサートによって稼ぐモデルもある。規制強化によってもたらされるメリットとデメリットを考慮しなければならない。

 

最後に

クラウドコンピューティングは、新しい商売のために生み出された言葉。Web2.0の本当の意味は、データ収集→データ解析→データ創作という一連の流れの結果のこと。携帯電話の電波を利用して、ゲームソフトを配信すればいい。赤の他人と1対1でコミュニケーションをできる機能を持ったサイトは、子どもが利用できないようにすべてフィルタリングすべき。大人の不安を子どもに押しつけるな。ダウンロード違法化はコストがかかるだけムダ。臭いものにフタをするよりも、臭いものを見ても大丈夫なように教育しよう

次回は、ネットは番組や作品の認知度を高めるツール ネットと広告についてまとめる。

僕が2ちゃんねるを捨てた理由 (扶桑社新書 54)


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