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販売手数料、信託報酬、信託財産留保額 投資信託は手数料のかたまり

前回は、元本保証と老後の不安につけ込む悪質かつ合理的な商品 年金保険についてまとめた。ここでは、販売手数料、信託報酬、信託財産留保額 投資信託は手数料のかたまりについて解説する。

株式投資信託

家電製品と金融商品の広告効果の違い

家電製品などの製造業の広告と金融機関の広告効果の違いは、前者は広告が効果を発揮すれば規模の経済が働いて販売価格が安くなるが、後者は広告が単純にコストになってしまうことである。製造業は研究開発や製造設備にかかる固定費用が巨額になるため、販売量が増えれば1台当たりの製造コストが低下する。しかし、金融商品は広告効果で販売量が増えても、一般的にその商品の収益率は上昇しないのである。

 

株式投資信託の手数料(一般的なタイプ)

株式投資信託とは、専門家が株式や債券などで資産運用してくれる金融商品である。一般的な投資信託の手数料は、①販売手数料、②信託報酬、③信託財産留保額の3つである。販売手数料は購入時に販売会社(証券会社など)に払うものである。信託報酬は運用期間中に販売会社・運用会社(投資信託会社)・信託銀行へずっと支払うものである。信託財産留保額は解約時に払うものである。また、販売手数料と信託報酬には消費税もかかる。通常の株式投資は基本的に販売手数料しかかからないため、投資信託よりは手数料が割安である。

 

手数料の二重徴収(ファンド・オブ・ファンズ)

一般的な投資信託よりも信託報酬が余分にかかる構造の投資信託もある。ファンド・オブ・ファンズと呼ばれるもので、客からおカネを集めた運用会社が自分では運用せずに、ほかの投資信託会社が運用する投資信託をいくつか選んで投資するものである。ファンド・オブ・ファンズでは二重に運用会社を経由してから株式や債券などで運用されるため、運用会社に支払う信託報酬も二重になるのである。

 

使い古されたトリック

投資信託の広告などで使い古されたトリックとして、都合のいい結果が出たときにだけ、それをアピールするという手法がある。たまたま運用に成功したときにだけ運用実績を誇示するような広告を出し、失敗したものについては触れないというものである。実績はあくまで過去のものであり、これから先もその実績を出せるかどうかはわからないのである。なお、投資信託は運用が途中で打ち切られるリスクもあるため、注意が必要である。

 

手数料の安い投資信託(バランス型、ETF)

手数料の安い投資信託の例として「バランス型」と「ETF」がある。バランス型とは、株式や債券などにバランスよく投資するタイプの株式投資信託である。このタイプの商品は「スイッチング(投資信託の運用切替)の手数料が無料」の場合が多い。その理由は、債券や短期金融資産(銀行などが主に1年以内の資金を貸し借りする市場の資産)の場合、信託報酬などの手数料が安くなるからである。つまり、信託報酬の手数料が安くできるのにそれを行わず、その分でスイッチングの手数料を無料にしているのだ。同様に、手数料を安くできるインデックス型(特定の株価指数に基準価額が連動するような仕組みで運用する株式投資信託)を組み合わせた商品も売られている。

ETF(Exchange Traded Funds)とは、株価指数連動型上場投資信託のことで、証券取引所に上場して取引されているため、信託報酬が格段に安いのが特徴である。ただし、日本でよく用いられている日経平均株価(日経225)とTOPIX(東証株価指数)には問題(入れ替え作業や計算方法の変更など)もあるため、注意する必要がある。

 

最後に

製造業の広告は規模の経済性が働いて収益率を上げるが、金融機関の広告にはそれがない。一般的な株式投資信託には販売手数料、信託報酬、信託財産留保額の3つの手数料がかかる。投資信託によっては手数料が二重にかかるものや、本来かかる手数料分以上の信託報酬を払わせるものもある。「勉強(努力)はしたくないけど儲け(成果)は手に入れたい」という願望に負けないで

次回は、毎月配分型投資信託、ゼロ・クーポン債、マンション投資、REIT 流行の投資信託1についてまとめる。

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