「イスラエルとイランの戦争が緊迫状態にある中、フェイスブック上では愛の物語が広がっていました」エドリーは語りかける。ここでは、180万ビューを超える Ronny Edry のTED講演を訳し、イスラエルとイランの愛の物語について理解する。
要約
イスラエルとイランの戦争が緊迫状態にある中、イスラエル人グラフィックデザイナーのロニー・エドリーは自分と娘が写ったポスター『イラン人の皆さん・・私たちはあなた方を愛しています』をフェイスブックでシェアします。他のイスラエル人もすぐに自分のポスターを同じメッセージで作ると、イラン人も同じやり方で返事をしてきたのです。シンプルな意思伝達が「イスラエルはイランを愛する」ページや「イランはイスラエルを愛する」ページ、さらには「パレスチナはイスラエルを愛する」ページといったフェイスブックコミュニティを呼び起こしたのです。
Ronny Edry of Israel created The Peace Factory, an online movement for peace in the Middle East, when he posted a Facebook image that declared “Iranians, we will never bomb your country.”
1 2012年3月14日、フェイスブックにポスターを投稿した
2012年3月14日 フェイスブックに このポスターを投稿しました。写っているのは私と イスラエル国旗を握った私の娘です。なぜこのポスターを投稿したのか 背景を説明したいと思います。数日前 食料品店での行列に 座って並んでいたとき 店主とお客さんの一人が 喋っていました。そして店主はお客さんに 1万本のミサイルがイスラエルに飛んでくると説明していました。それに対して お客さんは「違う 1日1万本だよ」と言うんです (笑)1万本のミサイルという言葉がイスラエルの現状を象徴しています。イランとの戦争危機は もう10年になり 怖がる人たちも当然います。毎年がイランとの交戦を回避する 最後の機会のように思えます。今行動しないと永遠に手遅れになると言って かれこれもう10年です。
2 過去最多のお知らせが待っていた
いつかは行動する必要があるので グラフィックデザイナーの私はポスターを作り 先ほど見せたポスターを投稿しました。ポスターを作るとたいていフェイスブックに投稿して 友だちの反応を見ますが たいていは無視してシェアも 何もしてくれません。そんな毎日です。なので眠りにつきました。私にとってはこれだけのことでした。私は日々 夜遅くに起きるという 生活を送っています。いつも通り起きて フェイスブックを見ると 過去最多のお知らせが待っていたのです (笑) どうしたんだ?と思って 中身を見渡してみると たくさんの人が私に話し掛けていました。その多くは全く知らない人で イラン人からの投稿もありました。何事?って感じですよね。なぜならイスラエルでは イラン出身の人とは喋ることなく 普通 知り合いはいないんです。フェイスブックの友達というのは 近所の人たちがほとんどです。しかし今回は イラン人が話し掛けてきます。
3 反射的に取った最初の行動はこの話をみんなに共有すること
というわけで私はこの女の子に返事を書くことにしたんです。ポスターを見た彼女は家族を呼んでポスターを見せました。パソコンは家に1台でした。家族みんなでポスターを見た後リビングに座り込んで泣いたそうです。驚いた私は 妻を呼んで この話を見せました。家族が泣いているという話を読むと 妻も泣き始めました。みんな泣いてしまったのです(笑)何をすべきか分からずグラフィックデザイナーとして 私が反射的に取った最初の行動は この話をみんなに共有することです。そしてみんなも共有し始めたのです。翌日には とても大きな話題になりました。すると妻が自分のポスターも欲しいと言うのです。これが妻です(笑) あなたが成功したんだから今度は私を入れてって(笑)少し真面目に言うとこのポスターは効き目があるから 私だけではなく 意見を述べたいイスラエルの人々が使えると思いました。だから知り合いで 賛同する人を みんな ポスターに入れて共有しようと思いました。
4 写真をくれたらポスターを作るよと話して回った
だから近所や友人 私の生徒を訪ねて 写真をくれたら ポスターを作るよと話して回ったんです。このようにして始めました。すると突然 フェイスブックの人たち― 友達も そうでない人も 自分が関与できると分かったんです。一人の男だけでなく みんなでポスターが作れると分かり彼らは写真を送って頼んできました。「私をポスターにして 投稿してほしい。そしてイラン人に伝えてほしい。イスラエルの私たちは愛してるよって」 そしてとても大げさになりました。つまり 写真があまりに多いため友人たちに来てもらい― 多くはグラフィックデザイナー仲間です― 一緒にポスター作りをしました。大量の写真があったので うちのリビングは数日間こんな感じでした。
5 「青い星の旗 好きよ」
イスラエル人のポスターや写真を受け取る一方で たくさんのコメントやメッセージをイランからいただきました。そしてこれらのメッセージを元にポスターを作りました。人は文章は読みませんが画像は見るものです。画像のメッセージは読むかもしれません。これらはほんの一例です(初めてのイスラエルの友)(バカな政治家はいなくなればいいのに)(青い星の旗 好きよ)このメッセージはとても感動的です。送信者はイランで育った少女ですが 毎朝学校に入る際にイスラエル国旗を踏ませられていました。そして今回 私たちが送ったポスターを目にして 心が変わったと彼女は言いました。そして彼女は今 青い星の旗― イスラエル国旗が好きなんです。さらに彼女は 私たちと会えることを願っていました。最初のポスターを投稿してからほんの数日後のことでした。
6 「あなたは敵ではない。戦争なんて嫌だ」
それ以降 イラン人たちは 彼ら自身のポスターで返事をし始めました。グラフィックデザイナーが向こうにもいたんです!(笑) やばいですね(笑) 顔は見せたがりませんがそれでもメッセージを伝えたいんです。返事をして 同じことを言いたいのです。これはもうコミュニケーションです。イスラエル人とイラン人がお互いに同じメッセージを送る 双方向のストーリーなんです。(あなたは敵ではない 戦争なんて嫌だ)これは前例のないことです戦争の一歩手前にいる状況で 従来なら敵同士の私たちが 突然フェイスブックを通して言うんです。「こいつ好きだよ。あんたたちを愛してる」 この話はどんどん盛り上がり、そしてニュースにもなりました。中東では悪いニュースしか報道されません。しかし突然湧いた いい知らせは メディアの注目を浴びたのです。「これはネタになる」って。そして色々な場所でニュースになりました。
7 人々がお互いに愛を捧げるというメッセージ
ある日 妻のミハルがジャーナリストと喋り 質問をしていたことを覚えています 「こんなもの誰が見るの?」「みんな見るさ」「みんなってパレスチナの?それともどこ?イスラエル?誰のこと?」 「みんなはみんなさ」「シリアは?」「シリアも」「レバノンは?」「レバノンも」 こんな会話が続き ジャーナリストは「今日4千万人が見るんだ。つまり みんなさ」 これは中国語版です。これは物語の単なるスタート地点でした。他にもすごいことが起こりました。ドイツ アメリカ その他の国々で この話題を取り上げるたびに 新たなフェイスブック・ページができ同じロゴと物語が共有されます。まず最初は テヘランにいるイラン人からのメッセージ 「イランはイスラエルを愛してる。ではイスラエルはイランを愛してる? イスラエルへの愛を捧げます」 パレスチナからの愛もあります。レバノンからの愛も数日前にありました。ここに並んでいるフェイスブック・ページは 全て同じメッセージを掲げています。それは人々がお互いに愛を捧げるというメッセージです。
8 中東に対する見方を変えることに成功した
実はこの時 すごいことが起きていました。ある友だちが言ってきました。「『イスラエル』って検索してみてよ」 当時「イスラエル」か「イラン」で検索すると これらの画像がグーグルで最初にヒットしたんです。人々の中東に対する見方を私たちは変えることに成功しました。つまり普段は 中東について知ろうとして 「イスラエル」と検索しても悪い事ばかりヒットします。しかし数日間だけ素敵な画像がでました。「イスラエルはイランを愛する」ページは 今では 80,831人がいいね!と言い先週は200万人がページを訪れ シェアしたり いいね!と言ったり 写真にコメントをくれましたこんな感じで もう5か月の間私とミハルと友達で画像を作っています。単に画像を作るだけですが 私たちは新しい現実を見せています。なぜなら それが世界の見方だからです。中東のイメージは悪いものばかりでした。だから私たちは 良いイメージを作ろうと取り組む・・ただそれだけです。
9 「深くお悔やみ申し上げます」
これを見てください「イランはイスラエルを愛する」ページです。これは私が作ったものではありません。作ったのはテヘランに住む男性で 戦死したイスラエル兵の追悼日に イスラエル兵の画像を載せたんです。従来なら敵ですよ どういうことでしょう?(深くお悔やみ申し上げます)イスラエル側も負けていません。私たちはお互いに敬意を表しています。お互いに理解し 思いやりを示しています。そして友達となるのです。時には フェイスブックの友達になったり 私生活での友達にもなります。外に出て会うこともできます。私は数週間前 ミュンヘンにいました。イランに関する展示会を開催するために行きましたが フェイスブック・ページの人たちと出会いました 「ヨーロッパにいるんだね。なら行くよ」 フランス オランダ ドイツから もちろんイスラエルからも集まり 私たちは実際に初めて出会いました。従来なら敵同士の私たちが初めて会いました。そして握手をして コーヒーを飲み 食べ物やバスケの話をして 素敵な会話を楽しみました。それだけのことです。一番最初の画像を覚えていますか? ある日 ポスターを描いた二人が現実世界で会って友達となるんです。
10 「この戦争で死にたくない」運動
逆のパターンもありえます。フェイスブックで会った少女は イランで生まれ育ち ドイツに住んでいます。イスラエルを訪れたことはなくイスラエル人を恐れています。それが彼女にとっての現実だからです。数か月間インターネットでイスラエル人と会話をした後 彼女はイスラエルに来る決心をしました。飛行機に乗って ベングリオン空港に到着すると 「なるほど たいしたことないものね」と言いました。数週間前 緊迫状態が増しました。なので新しい運動を始めました。「この戦争で死にたくない」運動です。伝えたい内容はそれ程変わりませんが 今回は少し積極性を加えようと思いました。また素晴らしいことが起こりました。前回の運動ではなかったことです。最初のポスターでは足や横顔だけしか見せず 素顔を露わにしなかった イラン人たちが 正面を向いて語りだしました 「問題ない。私たちも賛同するよ。お互いに味方同士だから」 どこの人たちか みてください。イスラエル人とイラン人が 交互に写っています。みんな ただ写真を送ってくるんです。クレイジーでしょ?
11 イスラエルは民主主義で発言の自由がある
では・・ (拍手)皆さん疑問でしょう?この男は誰なんだって? って。私はロニー・エドリーと言います41歳のイスラエル人です。二人の父親であり 夫でもあります。私はグラフィックデザイナーで学校で教えています。私はそんなに純真ではありません。よくお願いされますが 私の反応は「うん いや だけどね これはきれい事だよ 花束を送るような・・」私はかつて陸軍に所属し3年間は空挺旅団の配属でした。そのため 地上からの景観が分かります。どれだけ酷く見えるかが分かるんです。私にとって これは勇気の必要なことで 手遅れになる前に反対側に到達しようとしました。手遅れになったら本当におしまいです。時には戦争は避けられません。しかし努力すれば回避できるかもしれません。みんなで協力すれば可能かもしれません。特にイスラエルは民主主義で発言の自由があります。こういった小さなことで何かを変えられるかもしれません。自分自身が大使として発言できるんです。ただメッセージを送って幸運を祈ることもできます。
12 『平和を愛するイスラエル人』
妻のミハルに舞台に上がってもらい 皆さんと一緒に画像を1つ作りましょう。画像がすべてなんです。もしかしたら この画像が役に立ち何かを変えられるかもしれません。このハートを掲げてください。私は今から写真を撮って それをフェイスブックに投稿します。タイトルはそうですね・・『平和を愛するイスラエル人』なんて素晴らしいんでしょう。泣かないで。ありがとうございました (拍手)
最後に
2012年3月14日、フェイスブックにエドリーとイスラエル国旗を握ったエドリーの娘のポスターを投稿した。見知らぬイラン人からも反応があり、イスラエル人とイラン人がお互いに写真を送り合うようになる。人々がお互いに愛を捧げるというメッセージ。『平和を愛するイスラエル人』
和訳してくださった Naoki Funahashi 氏、レビューしてくださった Akira Kan 氏に感謝する(2012年9月)。
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