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内閣一元管理、政官接触、キャリア制、労働基本権が争点 壮絶な国会論戦

前回は、人事の一元化による大臣の人事権の強化 第二次公務員制度改革の目的についてまとめた。ここでは、内閣一元管理、政官接触、キャリア制、労働基本権が争点 壮絶な国会論戦について解説する。

政府案はほぼ渡辺案通り

2008年4月4日に国会に提出された政府の公務員制度改革基本法案は、当初の渡辺案がほとんどそのまま採用された。これは、自民党国家戦略本部の後押しと、行政改革推進本部での若手の活躍によるものだった。

異なる点は、幹部職員の所属が「内閣人事庁と各省に所属」となったことと、労働基本権が「協約締結権の付与について検討」となった。

 

国会論戦が始まった

公務員制度改革基本法案が国会へ提出されてからも、論戦が行われた。まず、基本的な改革の柱について、2008年5月14日の衆議院内閣委員会において、民主党の松本剛明氏からの質問に対し、渡辺大臣は以下の3つを提示した。

第一に、現在の官僚内閣制から、内閣が国家と官僚の結節点となる議院内閣制への転換を目指す。第二に、現行のキャリアシステムを廃止する。第三に、各省割拠主義の打破を目指す、というものである。

 

官僚は答えのある問題は得意

前後しばらく日本は、欧米に追いつく過程であり、欧米の例をまねていればよかった。その意味で官僚制は有効であった。しかし、現在は、経済が順調に成長していく正の富の分配の時代から、負担を分かち合うという負の富の分配の時代になった。責任を取り得ない官僚では手に負えない問題ばかりである。責任を取りうる政治家が主導していくしかない。

 

渡辺氏、改革を吠える

渡辺大臣の持ち味は、独特のアドリブである。2008年5月21日の衆議院内閣委員会での質問に対して、以下のように答えている。

例えば、「日本は法治主義の国でございますから、総理大臣のカリスマ性の度合いによって政治主導がうまくいったりいかなかったりというのでは困るんだろうと思います」と語り、誰が総理大臣になっても内閣が主導できる体制・制度をつくるとしている。議院内閣制についても「本邦法律の中で初登場した言葉」とし、「真の政治主導というものを回復しようと試み」るとしている。

 

「日の丸官僚」の育成

現在の公務員制度の最大の問題点は、各省割拠主義とも言うべき縦割り行政である。この縦割りは、行政の無駄や行政のすき間を生み出す。そこで、渡辺氏は日の丸官僚の必要性を言っている。

福田政権下の第二次公務員制度改革の政府案では、総合職は採用の段階では内閣人事庁採用することとなっている。採用後は、幹部職員のための幹部候補育成課程をつくり、内閣人事庁が統一的な基準を作成し運用管理し、幹部候補育成課程対象者については内閣人事庁が各府庁横断的な配置がえの調整を行っていく。内閣一元管理が重要であるとした上で、幹部職員については、内閣人事庁による適格性審査、幹部職員候補者名簿の作成などという公務員人生の入口・中間ステージでの管理を通じて、省庁横断的な日の丸官僚育成を行うこととなっている。

 

キャリア制度の廃止

キャリア制度の廃止も公務員制度改革の目玉である。公務員の生涯保証システムはキャリア制度が中心になっている。しかし、キャリア制度の法的裏付けはなく、慣例にすぎない

「キャリア官僚」の原型は、1893年に発足した文官高等試験(高文試験)の合格者である。戦後、文官高等試験は廃止されたが、キャリア官僚の昇進スピードが速いなどの特権は生き残り、国家公務員Ⅰ種試験(上級試験)合格者に引き継がれている。

各省庁キャリア官僚のトップは事務次官である。そして、省庁間を越えたキャリア官僚のトップは内閣官房の内閣官房副長官(事務担当)である。こうしたポストについて、採用段階で幹部候補を絞り込むことをせず、能力・実績主義によって柔軟に抜擢される仕組みにすることが、キャリア制度の廃止である。

 

各省割拠主義の廃止

各省割拠主義を打破するには、渡辺氏のいう「日の丸官僚(各省の利益代表にならない人)」が必要である。今回の公務員制度改革では、政治任用(日の丸官僚)に近いものとして、国家戦略スタッフの導入が盛り込まれている。

また、官民交流も各省割拠主義を抑えるのに有効である。各省割拠主義は純血主義が前提であり、官民交流がそこに風穴を空ける可能性があるからである。仕事面でも、官庁は前例踏襲で新しい考え方はあまり受け付けない。外の新しい人を入れて、世間との常識の差を埋めることも必要だろう。

 

労働基本権は野党の攻めどころ

民主党は党内に労働組合信奉者を抱えているので、労働基本権は存在感を見せたいところだった。2008年5月14日の衆議院内閣委員会で、渡辺氏は質問に対して「専門調査会の答申を尊重する思いを込めたつもり」と、建設的な答弁をしている。

専門調査会とは、2006年7月から審議を始めた政府の行政改革推進本部専門調査会(座長:佐々木毅学習院大学教授)のことである。専門調査会は延々と結論を出さなかったために渡辺氏が座長を変え、1年半で結論を出してもらった。専門調査会が結論を出さなかった理由は、公務員の労働基本権を認めたくない一部の与党議員と、労働基本権に制約があることで存在意義がある人事院が抵抗していたのである。

 

政官接触規制をめぐる攻防

政官接触規制をめぐる攻防では、渡辺氏は政務専門官というポストをつくり、そこを政と官とのつなぎ役にしてコントロールしようと考えていた。しかし、与野党ともに「情報収集に支障が出る」として反対論が多かった

ただ、与野党とも表面的な反対理由は同じであるが、その中身には若干の差があった。与党の場合は、政策決定に参加しているので、何かと意思疎通が必要である。一方、野党の場合は、与党を国会で追及するために、役人の中からの内通者が必要ということである。

 

天下り、官民人材交流センターでの民主党の勘違い

民主党案は、官民人材交流センターを「天下りバンク」と言い切り、天下り(再就職)こそ諸悪の根源であるという世間のイメージに合致させた。しかし、この案では全員が定年まで役所にしがみつくことになり、さらには年功序列制を明確に否定していないため、人件費が巨額になってしまう

また、官民人材交流センターも権限がないので、注意して制度設計すれば天下りバンクにはならないのである。

 

国会の一寸先は闇

国会での審議は裏表さまざまなやりとりが錯綜する。5月15日に福田総理が自民党大島理森国対委員長と公明党漆原良夫国対委員長を官邸に呼んで「今国会での成立」を指示した。しかし、与党の一部では5月23日の伊吹文明自民党幹事長の発言「参院で廃案になったら、いちばん総理の意向に反する」など、この指示を無視するかの動きもあった。

しかし、渡辺氏が5月27日13時頃に山岡賢次国対委員長と会談するなど、水面下の交渉によって合意に至ったのである。

 

官僚たちの抵抗を乗り越えた

2008年5月28日の衆議院内閣委員会において、政府案に対し、自民党、民主党・無所属クラブおよび公明党の共同提案による修正案が提出された。そして、民主党の大畠章宏氏から「国家公務員制度改革基本法案」に対する修正案について趣旨説明が行われた。

こうした与野党の間の修正は、政治家の決断で与野党を越えて目的意識を共有した点で画期的だった

 

与野党合意案の評価はどうか

与野党合意案の評価としては、①労働基本権を協約締結権拡大の措置を講ずる(法制上の措置は3年以内)と明確にしたこと、②幹部候補者名簿を内閣人事局で一元的に作成することにしたこと、の2点については改善された

一方、①一括採用の規定削除、②内閣人事庁を内閣人事局に格下げ(内閣法制局より一段下)、③「幹部職員は内閣人事庁と各省の両方に所属」の規定削除、④政官接触の規制なし、と修正されたのは評価できない。

 

憲政史上画期的な修正案

修正協議について、渡辺氏は2008年5月30日の参議院本会議で与野党の努力を高く評価している。特に労働基本権について、政府案の「検討する」から「自律的労使関係制度を措置する」となったことで、「3年以内の法制上の措置を講ずることが政府の責務」としている。

 

最後に

内閣人事局を新設、幹部人事一元化 公務員制度改革の基本方針決定と、再び公務員制度改革が動き始めている。しかし、高橋洋一氏が公務員改革は降格人事が必要と述べているように、能力・実績主義を定着させなければ改革は進まないだろう。公務員制度改革に与野党対立は関係ない

次回は、上級公務員の能力主義・業績給への移行は必然 先進国の公務員制度改革についてまとめる。

霞が関をぶっ壊せ!


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