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公務員改革、大阪都構想、地方分権、失言報道 日本政治と報道の真相

前回は、年金、税制、雇用、空洞化、格差、生活保護 社会保障の真相についてまとめた。ここでは、公務員改革、大阪都構想、地方分権、失言報道 日本政治と報道の真相について解説する。

19 改革は大阪から始まる

大阪ダブル選で公務員・教育改革が動き出した

公務員制度改革が実現可能か不可能かは、誰が行政のトップに立つか、国民が誰を選ぶかにかかっている。地方で公務員制度改革をめざしているのが、大阪市長の橋下徹氏だ。2011年11月の大阪府知事、大阪市長のダブル選挙では、橋下氏・松井一郎氏の維新連合が勝利した。民意も公務員制度改革を望んでいることの証拠である。

橋下氏は、公務員でも職務命令違反などで懲戒免職処分を可能とする「職員基本条例案」を大阪府知事時代に打ち出した。また、知事と教育委員会との協議を経て設定した目標について、教育委員がその実現への責務を果たさない場合、罷免できるといった内容を盛り込んだ「教育基本条例案」も提出している。

 

事務次官が100%生え抜きだから官僚主導になる

各省のトップである事務次官に就くのは、その省庁の生え抜きだが、これは世界的に見てかなり珍しい。生え抜きの事務次官は、自分たちの職員と組織を守る方に意識が働く。これが官僚主導となる要因で、大臣がやりたいことができなくなるのである。反対に、大臣が外から事務次官や局長を連れてこられれば、大臣の任期中に成果を出そうと懸命に働く。つまり、連れて行けるようなブレーンがいない人は大臣になってはいけないのである。

 

大阪都構想は「地方分権・公務員改革」の試金石となる

大阪都構想は、かつての東京府、東京市を東京都としたように大阪府、大阪市などを廃止し、新たに大阪都を設置する構想である。政令指定都市である大阪市・堺市と大阪市周辺を特別区とし、行政機能や財源を大阪都に移譲・統合して大阪府と大阪市の二重行政を解消するという。

大阪都構想の実現には、地方自治法の法律改正が必要となる。そのため、橋下氏には各政党との協議が必要であり、各政党は本物の地方分権への意欲が試される。公務員制度改革の実現も国政に影響を及ぼすだろう。

 

20 地方分権なら不公平を減らせる

沖縄の校舎も南向き?中央集権の笑える弊害

海外の先進国には、地方にいろいろと指図する総務省に相当する中央官庁はまずない。中央集権の弊害の例として、「小学校の校舎の窓は全国一律に南向き」というものがある。地域によってはよいが、沖縄にとっては暑くてたまらない。以前は「天井高規制」というものもあり、教室の天井は普通の建物より高くしなければならなかった。この規制によって階段に踊り場が必要となり、ムダなコストをかけてムダなことをしていたのだ。

 

中央集権が国民の無関心を醸成している

中央集権のもとでは身近である教育も文科省任せで、みんなが無関心・無責任となる。米国では文科省のような組織はとても小さく、教科書も全国一律ではない。基本的には地域ごとに教育が異なるが、代わりに住民にも責任が生じる。面倒なのだが「みんなが自分たちのことを真剣に考えるようになる」というメリットがある。

できることはなるべく身近でできるようにした方がいいという「補完性の原則」がある。身の回りでできることは市町村(将来は30万人程度の基礎的自治体)、市町村で難しければ都道府県(将来は道州)、そこでもできなければ国とするのが望ましい。

 

地方分権なら不要な支出を回避できる

日本では、市町村ですべての業務をやろうとすると、国や県から補助金を受けなければならない。そうすると、人間の意識はお金が出てくる方に向いてしまい、中央省庁の意向を重視してしまいがちである。一方、中央の役人はお金を集めてお金を地方に配ることで、権限を確保している。

お金を出す人と便益を受ける人が違うと、不公平、不公正なことが起きやすい。一番シンプルなのは、便益を受ける人が負担することである。資金をどこかに転嫁せずに自分たちで負担することにすれば、本当に必要なことしか要求しなくなる。それが地方分権のメリットである。

 

21 新聞にも既得権益が存在する

新聞社が消費税増税を歓迎している理由

新聞社が消費税増税に反対しない理由は、軽減税率の対象になることを狙っているからである。新聞は生活必需品ということで、英国では新聞の消費税率はゼロ、ほかの欧州の国でも税率が軽減されていることを知っているのだ。こうした利権の裏にはほとんど天下りがあり、前財務事務次官は大手新聞社の社外監査役に就いている。

 

様々な規制に守られる新聞社の既得権益

新聞社の既得権益となっている規制の1つは再販制度(再販売価格維持制度)である。独占禁止法適用除外のカルテルによって、デフレ下でも値下がりを免れている。こうした再販制度はほかの先進国ではまず例がない。

また「日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律」という商法の特例で、普通の人は新聞社の株式を取得することはできない。新聞が民間企業についてガバナンス(企業統治)が効いていないなどと書くことがあるが、最もガバナンスが効いていないのは新聞社である。同法は新聞の新規参入の障壁にもなっており、事実上、新規参入はできない。新聞業界は既得権を持った保護業種なのである。

 

オリンパス報道の裏側

オリンパスの損失隠しをスクープしたのは某大手経済新聞の元記者で、それを掲載したのも同社出身の人が発行人の「FACTA」という月刊誌だ。オリンパスの社外取締役には同社から天下りしていたこともあり、現場記者が記事を書いても新聞に載らなかったのではないか。残念ながら、世界の基準からすれば日本の新聞は十分なレベルには達しておらず、ジャーナリズムの流儀もわきまえていないのだ。

 

22 揚げ足取りより政策を問え

オフレコ発言はマスコミ操作の手段

政治家や官僚が記者にオフレコと言って話すのは、情報を誘導したいからである。一定の役職以上になったキャリア官僚は、政治家やマスコミと接触しながら情報を収集したり、工作することを仕事にするようになる。オフレコ報道では「政府首脳」は官房長官、「政府高官」は官房副長官、「政府周辺」は首相秘書官などをさし、「○○省筋」は課長や課長補佐であることが多い。自分の名前が出ないから責任を取る必要がないのだ。

 

信念を貫くには力のあるブレーンが必要

政治家の真の役割は、全部はできないということを自覚して信頼できる人物に任せ、「責任は私が取る」と腹を決めることである。政治家には優れたブレーンが絶対に必要である。小泉純一郎元総理は「おれは経済はわからないから竹中(平蔵)さんに頼んだ」などと発言していた。丸投げと言われても「そうだよ。わからないから頼んでいるんだよ」と意に介さない。「総理にできることは、解散と人事しかない」とも言っている。会社の経営者や組織のトップに立つ人にとって最も重要なのは、誰に、どう頼むかということなのだ。

 

ブレーン選びを重視する政治家が政策を実現する

優れたブレーンを連れてくるには、大臣になってからでは遅い。誰を登用すれば描いている政策を形にし、実現できるか。そういう意識で常に人を見て、人と接していくことが重要だろう。そして、本当に力になるブレーンは3人以内で、そういう人は外に対して自分がブレーンだということは言わない。相手が求めるときだけ対応するのが本物のブレーンである。

 

最後に

公務員制度改革は橋下徹・松井一郎両氏らによって大阪から始まっている。大阪都構想は行政のムダをなくし、地方分権と公務員制度改革の試金石となる。地方分権すれば不要な支出を回避することができる。新聞にも既得権が存在し、ガバナンスが効いていない。失言報道で揚げ足を取るより、政策を問え。ブレーン選びを重視する政治家が政策を実現する

日本経済の真相


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