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国税庁、金融緩和不足、新成長戦略 財務省・日銀タッグと無策民主党

前回は、霞が関埋蔵金と公務員制度改革の頓挫 かすかな希望と官僚組織の逆襲についてまとめた。ここでは、国税庁、金融緩和の不足、新成長戦略 財務省・日銀タッグと無策民主党について解説する。

1 財務省はなぜ「最強官庁」と呼ばれるのか?

デフレを容認し、増税に突き進む財務省の思惑

財務省が政治家たちに消費税増税を働きかける論理は「税収不足だから国の借金が増える」→「不足を補うには増税しかない」という二段論法である。しかし、消費税率を引き上げたところで税収が増えるとは限らない。こうしたことを知りながらも消費税増税に固執するのは、その方が自分たちの利権が増えるからである(護送船団方式と拙速なゼロ金利解除 政治主導不在と経済無策参照)。

 

民主党が「政治主導」を実現できなかった本当の理由

財務省が「最強官庁」と呼ばれる理由は、国の予算をすべて牛耳っていることや、各省庁や国税庁、天下り先の特殊法人などを通じて、民間のあらゆる情報が財務省に集中する仕組みができ上がっているからである。特に、国税庁は独立した組織とされているが、歴代の国税庁長官や幹部の多くは財務省OBが務めており、実質的には財務省の下部機関といっても過言ではない。その意味で、民主党が「政治主導」を実現できなかった本当の理由は、民主党の鳩山由紀夫元首相が、母親から7年間にわたって贈与された約12億円の資金について税申告をしていなかったことを目こぼししてもらったからともいわれている。

 

2 いつまでも世界レベルに達しない日本銀行

デフレの”実行犯”日銀が犯した3つの失敗

日銀はバブル崩壊後の「失われた20年」の間に3つの失敗を犯している。1つは、2000年8月のゼロ金利解除、2つ目は2006年3月の量的緩和解除、3つ目は2008年9月のリーマンショック以降に量的緩和を行わなかったことである。1つ目と2つ目はデフレを脱却する前に金融引き締めをしてしまったことで、3つ目は相対的に外貨の供給量が大きく膨らんだことで急激な円高を招き、デフレを長引かせてしまったことである。

 

海外に比べて不十分な取り組みだったことが敗因

日銀の敗因は、海外に比べて不十分な取り組みだったことである。例えば、2008年のリーマンショック以降、米国をはじめとする世界の中央銀行は競って量的緩和を推し進めたが、いずれもバランスシートを「兆ドル」単位で拡大させるというスケールの大きなものだった。これに対し、日銀の金融緩和は、せいぜい「兆円」単位と桁が違っていた。

 

日銀には目標達成に責任を持たせるべき

日銀が物価安定を達成できないのは、達成しなくても責任が問われることのない制度に大きな問題があるのではないか。海外では、責任を全うできなかった中央銀行総裁は交代させられるのが当たり前である。また、イングランド銀行では2013年7月、300年余りの歴史で初めて外国人の総裁が就任する。カナダ銀行の総裁を務めたマーク・カーニー氏だ。物価を安定させてくれれば国籍は問わないという英国人の懐の深さが感じられる。

 

3 事業仕分けは結局何をもたらしたのか?

政治主導のはずが、結局は官僚に敗れる

事業仕分けとは、仕分け対象として選んだ事業の担当職員を各省庁から呼び、行政刷新会議議長が指名した国会議員や民間有識者、担当府省の副大臣・政務官からなる仕分け人(評価者)が質問や議論を行って、ムダな事業なのか否かを判定するというものであった。「政治ショー」とは非常におもしろく、見応えもあった。しかし、結果は「負けるふり」をした官僚の勝ちだったと言わざるを得ない。

 

評価するだけでなく、結果を出さなければ何の意味もない

事業の廃止や見直し、予算削減といった結果にほとんど結びつくことはなかったのである。閣議決定をすれば、大臣間の協議なので仕分けに基づく処分は7〜8割の確率で実行されるはずである。しかし、仕分けレベルで終わるのならば、決まった内容は上の立場の官僚らにいとも簡単にひっくり返されてしまうのだ。

 

「政治ショー」から単なる「お笑いショー」に

そもそも官僚たちは、事業仕分けになんら強制力がないことに最初から気づいていた。事業仕分けを取り仕切る行政刷新会議自体が、法律ではなく閣議決定によって設置された会議だったからである。その結果、事業仕分けによって削減できると評価された予算額は、わずか7000億円程度にとどまったのだ。

 

4 デフレを進行させた民主党の罪

できの悪い日銀総裁を選んだのがそもそもの失敗

打率の悪い白川方明日銀総裁を選んだのは、民主党である。当時の福田康夫政権は、日銀の副総裁を務めていた武藤敏郎氏を総裁に格上げすると決定していた。しかし、武藤氏が元財務事務次官だったことから、民主党が「財務省OBを日銀総裁にするのを認めない」と反発し、日銀の生え抜きだった白川氏が選任されたのである。

 

雇用のためにデフレを克服するのが左派政党の常識

欧州では、労働者を支持基盤とする左派政党は、雇用を維持するために物価を安定させることを中央銀行に要求するのが当たり前である。失業率とインフレ率が逆相関関係にあることを示した「フィリップス曲線」が一般認識となっているからである(大蔵省の「財テク」規制が株価暴落のきっかけ バブル崩壊と不良債権参照)。

しかし、「連合」(日本労働組合総連合会)などの労働者団体を支持基盤とする民主党は、そうした取り組みを行わなかった。雇用と物価の関係について無知であったことが、デフレの長期化を促したのである。

 

5 「世界一の借金大国」の裏に潜む真実

「アベノミクス」は1本の矢だけで十分

アベノミクスの3本の矢(金融緩和・財政出動・成長戦略)のうち、実質的に経済成長に資するのは金融緩和だけであり、財政政策はやり方次第、成長戦略は役立たずとなる可能性が高い。ただし、金融緩和によって雇用や所得が改善されるまでには1年程度の時間がかかる。そのため、即効性のある財政出動をあえて盛り込んだと見ることもできる。

 

隠された資産の規模も実は世界一

「国の借金」は1000兆円を超えているのは事実だが、国が保有する資産も約650兆円ある。土地や建物のほか、特殊法人や独立行政法人への貸付金および出資金、現預金などで構成され、数年以内に現金化が可能な資産だけでも300兆円以上に及ぶ。国家破綻論者たちは、バランスシートの片側(負債)だけを見て世論をあおっているにすぎない。

 

シロアリ退治をきちんとすれば、借金を減らせたはずだった

借金を減らすための有効な手段は、ムダな資産を整理・売却して、その分を借金の返済に回すことである。国の財政に当てはめれば、官僚の天下りとしてしか機能していない特殊法人や独立行政法人をなくし、それらの法人の補給されている多額の貸付金や出資金を借金の返済に回すことによって、負債をかなり減額できる。こうした「シロアリ退治」を行えば、200兆円以上もの負債を減額することができたのだ。

 

6 ほとんど無意味だった民主党の「新成長戦略」

国の支援を受けて成長した産業は存在しない?

自動車産業やマンガやアニメーションといったコンテンツ産業は、国の支援を受けて成長したわけではない。民主党の「新成長戦略」では、以下の7つの戦略分野を設けてプロジェクトを掲げていた。しかし、実質的に役立つのは「法人実行税率引き下げ」や「オープンスカイの推進」などの語句限られたプロジェクトだけである。

  1. グリーン・イノベーション(環境・エネルギー)
  2. ライフ・イノベーション(健康・医療・介護)
  3. アジア
  4. 観光・地域
  5. 科学・技術・情報通信
  6. 雇用・人材
  7. 金融

 

目標を達成させるには、金融緩和の方がよっぽど有効

成長率が高まればGDPが拡大する。経済のパイが大きくなれば取り分が増えるので、多少のデコボコはあっても各産業がまんべんなく成長できるはずである。その意味でも、成長戦略よりも金融緩和の方がよっぽど効果的だと言える。

 

7 日銀法改正はなぜ論議の的になっているのか?

「目標の独立性」が与えられているのは日銀だけ

現在の日銀法は1998年に改正されている。この改正のポイントは、財政政策と金融政策を分離し、日銀が政府から完全に独立した立場で自ら目標を決め、独自に金融政策を実行できるようにすることだった。こうした独立性を「目標の独立性」という。

しかし、「目標の独立性」が与えられている中央銀行は日銀だけである。独立性には目標と手段の2つがあり、通常「手段の独立性」だけが与えられている。その理由は、政府が全体的な経済政策を進める上で、金融政策のコントロールが非常に重要であると言うことが十分に認識されているからである。

 

日銀が「共同声明」に沿って金融緩和を進めるかどうかに注目

日銀は政府との「共同声明」によって2%のインフレ目標を達成させることを決定したが、声明に沿って積極的な金融緩和に取り組まなければ、安倍首相は日銀法改正という手法をとることになるだろう。

 

最後に

財務省が「最強官庁」と呼ばれる理由は国税庁を下部組織として持つから。日銀は目標達成に責任を持たせるべき。事業仕分けには法律論がなく、単なる「政治ショー」だった。雇用と物価の関係を知らなければデフレは脱却できない。実質的に経済成長に資するのは金融緩和だけ。「新成長戦略」はほとんど無意味。中央銀行に与えられるのは「手段の独立性」だけ。財務省・日銀タッグに無惨に敗れた民主党

次回は、2%のインフレ目標、歳入庁、消費税の地方税化 日本経済復活へについてまとめる。

経済復活 金融政策の失敗から学ぶ


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