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ネイサン・ウルフ 探検すべきものに何が残っているのか?

「ウイルスを発見したのは100年ちょっと前の話で、未だに未知の生物は存在するのです」ウルフは語りかける。ここでは、65万ビューを超える Nathan Wolfe のTED講演を訳し、残っている探検すべきものについて理解する。

要約

私たちは月に行き、大陸を地図に記し、海の最も深い部分にも到達しました—二回も。次の世代が探検すべきものとして残っているものとは?生物学者で探検家のネイサン ウルフは答えを示します。:ほぼ、ありとあらゆるもの。私たちは始められる、彼は言います、目に見えない小さな物の世界とともに。

Armed with blood samples, high-tech tools and a small army of fieldworkers, Nathan Wolfe hopes to re-invent pandemic control — and reveal hidden secrets of the planet’s dominant lifeform: the virus.

 

1 20世紀の偉大な冒険家ロイ・チャプマン・アンドリュース

最近ウィスコンシン州のベロイトに行きました。 そこに行ったのは20世紀の偉大な冒険家 ロイ・チャプマン・アンドリュースを称えるためです。 アメリカ自然史博物館にいた間、 アンドリュースはゴビ砂漠のような、未知の地域において さまざまな探検を指揮しました。 彼は相当な人物で 後にインディアナジョーンズのモデルになったとも言われています。私がベロイトにいたとき、 中学生たちに公開講義をしました。 ここで言っておきたいのですが、 TEDで講演するより足がすくむことがあるとすれば、 1000人もの12歳児を45分間 飽きさせないで講義することでしょう。 おすすめしません。。

 

2 「私たちはどこを探検すればいいの?」

講義の終わりに彼らはたくさんの質問をしてきましたが その中に一つだけ心に残っているものがあります。 ある女の子が立ちあがって こんな質問をしてきました。 「私たちはどこを探検すればいいの?」思うに、私たちの多くは 地球探検の黄金時代は終わり、 次の世代は 宇宙か深海に行かなければ 探検に値する発見はないと認識しています。 でもそれは本当でしょうか? 探検に値する場所は地球には もう残されていないのでしょうか?

 

3 マルチヌス・ベイエリンクが名付けたウイルス

この出来事で思い起こしたのは 私の憧れである、生物学の歴史上の探検家の一人 不可視の世界の探検家、マルチヌス・ベイエリンクです。 ベイエリンクはタバコモザイク病の原因を突き止めようと 試みました。 彼は感染したタバコの葉から汁を抽出し 何度もフィルターで濾していきました。 そしてある結論に至りました。 当時すでに知られていた最小の生物 — バクテリア それより小さな何かが存在するはずだと。 バクテリアより小さい物質 彼はこの謎の物体にふさわしい名前を考え ウイルスと呼びました– ラテン語で「毒」という意味です。 そしてウイルスを解明していく中で、 我々にまったく新しい世界を切り開いてくれました。

 

4 ウイルスを発見したのは100年ちょっと前の話

現在知られるように、ウイルスは 地球上の遺伝情報の大半を占めており それは他の生物の遺伝情報を 全て合わせても、それ以上です。 そしてもちろん、この分野に関連した、とても多くの実用化が なされてきました– 天然痘の根絶であったり、 その多くがヒトパピローマウイルスが原因だと知られている 子宮頸がんのワクチンの誕生などです。ベイエリンクの発見は、 500年も前にあったようなことでありません。 ウイルスを発見したのは 100年ちょっと前の話なのです。 つまり、我々は車は持っていたのに、 地球の遺伝情報の大半を占める 生物については知らなかったのです。

 

5 大規模シークエンシングができること

いまや不可知の世界を調べる 素晴らしい機器があります。– 例えば大規模シークエンシングは、 ある特定の種の表層を調べ 個々のゲノムを観察する以上に 全体的なメタゲノム、すなわち 私たちの体内、肌、周囲に存在する、あふれんばかりの微生物のコミュニティーを観察し これらの遺伝情報を全て記録することができます。 こうした技術は土壌から肌、 その間に存在する全てに適用できます。我々の団体が現在、定期的に行っているのは 大発生した感染症の原因、 不確かな発生源を突き止めることです。

 

6 鼻腔の遺伝情報の約20%は今までに見たことのあるどれにも合致しない

どのように行うのかと言いますと、 今、皆さん一人一人から鼻腔用綿棒で採取したとして、 これが、インフルエンザのような呼吸器ウイルスを 検出するのによく用いる手法です。 最初に見えるのは 途方もないほどの遺伝情報です。 この遺伝情報を詳しく調べ始めると、 お決まりのものを多く見ます– 大量のヒトの遺伝情報はもちろん、 バクテリアやウイルスの遺伝情報、 ほとんどが鼻腔内では完全に無害です。 しかし、とても驚くべきものも目にします。 この遺伝情報を調べ出すと、 鼻腔の遺伝情報の約20%は 今までに見たことのある、どれにも合致しないのです– 植物、動物、真菌、ウイルスやバクテリアにもないです。 つまり、これが何なのか、全く分からないのです。

 

7 内臓の40-50%もの遺伝情報が生物学的暗黒物質

そして、この種のデータを研究している私たちグループ内で この遺伝情報をこう呼ぶ人が出てきました。 生物学的暗黒物質と。 今までに目にしたことのないものです。 これはちょうど未知の大陸みたいなもので 私たちヒトの遺伝情報の中にあるです。 そしてたくさんあります。 鼻腔内の遺伝情報の20%が生物学的暗黒物質で 相当な割合だと考えるなら 内臓を調べた場合、 40~50%もの遺伝情報が生物学的暗黒物質なのです。 比較的無菌の血液でさえも、 1~2%の遺伝情報が暗黒物質なのです。– 分類不可で、いかなる発見済みのものとも合致しません。

 

8 今だに未知の生物は存在する

当初は、機器が不正確なのだと思っていました。 大規模シークエンシングは比較的新しいものでしたので。 しかし、機器がどんどん正確さを増すにつれ、 私たちは、この情報は何らかの生物、 少なくともいくつかは生物なのだという結論に達しました。 そして生物学的暗黒物質の存在を説明する仮説は まだ生まれたばかりですが、 その存在の可能性に大きな興奮を感じさせてくれます。 この生物に、この遺伝情報の中に埋もれているのは 今だに未知の生物が存在する、という証です。 これらの、アデニン、チミン、シトシン、グアニンの配列を調べることで、 この全く新しい生物種を解明できるかもしれません。 ベイエリンクのように、生物学の本質に関する 私たちの認識を根本的に変えることになります。 それによりおそらく私たちを苦しめるガンの原因の特定や、 未だ知られていない感染源の特定、 あるいは分子生物学における新しいツールの開発などが可能になるかもしれません。

 

9 未知は私たちの周りにあふれていて発見されることを待ち望んでいる

嬉しいお知らせがあります。 スタンフォード大学、カリフォルニア工科大学、カリフォルニア大学、そしてサンフランシスコ校の同僚たちとともに 新たな生命体の存在、 生物学的暗黒物質の研究に向けた取り組みをスタートさせました。百数十年前、 人は地球の遺伝情報の多くを占める生物である ウイルスについて知りませんでした。 今から100年後の人たちは ひょっとしたら自分たちの鼻の中にいる新たな生物種について 全く知らなかったことに驚くかもしれません。

確かに地球上の全ての大陸はもう地図に記され、 哺乳類は残らず発見されたかもしれません。 それでも地球上で探検する領域がもう無い訳ではありません。 ベイエリンク達は 新世代の探検家たちに重要な教訓を示しました– ベロイトで会った少女の様な人たちにです。 この教訓は言うならば、このようなものでしょう。 今、私たちが認識するものが全てだと決めつけないこと。 探検すると決めた領域の暗黒物質を追求すること。 未知は私たちの周りにあふれていて 発見されることを待ち望んでいるのです。ありがとうございました(拍手)

 

最後に

「私たちはどこを探検すればいいの?」少女は語りかける。マルチヌス・ベイエリンクが名付けたウイルス。ウイルスを発見したのは100年ちょっと前の話。鼻腔の遺伝情報の約20%は、今までに見たことのあるどれにも合致しない。内臓の40-50%もの遺伝情報が生物学的暗黒物質。未知は私たちの周りにあふれていて、発見されることを待ち望んでいる

和訳してくださったTakahito Sugeno 氏、レビューしてくださった YUTAKA KOMATSU 氏に感謝する(2012年2月)。

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