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清濁併せ呑めないと殺される 地方自治体の危ない世界

前回は、「人の不幸は密の味」 日本をダメにするマスコミの正体についてまとめた。ここでは、清濁併せ呑めないと殺される 地方自治体の危ない世界について解説する。

嬉しくない市長としての初仕事

市政に対する信頼を揺るがすこととなり、市長として深くお詫びします」地方市議会での謝罪が市長としての初仕事である。もちろん悪いのは著者ではなく、市長選挙で現職の高秀秀信氏を当選させるために、公務員でありながら後援会のカネを配った市長室長が公職選挙法違反で逮捕されたことを詫びたのである。

 

全国初のクールビズに猛反発

国が始める3年前、全国初のクールビズを行ったのは横浜市だった。市長就任直後の2002年7月「夏は夏らしく・ノーネクタイ運動」を始めた。「服装指導ではなく、冷房温度を環境省推奨の28度にする。だからネクタイをはずしませんか」という提案である。横浜から神奈川県全域、関東圏に広まり、環境大臣の小池百合子氏によって全国区に広まった。

小池氏もネクタイ業界から「死活問題だ」と批判されたが、著者も横浜市議会から反対された。ただし、反対のための反対で「中田のやることを認めるわけにはいかない」というものだった。その証拠に、横浜市議会は著者が退いた2009年にクールビズに移行している。

 

退職金を増やすために、退職前日に昇給していた

退職時一時昇給という”慣行”とは、どの職員も退職する最後の1日だけ昇給することで、退職金を増やしていたのである。こうした慣行を正すと同時に、公務員の定数削減や自身のボーナスの40%カット、交際費の全面公開などを行った。業務の見直しを行い、3万4000人いた市の職員を2万7000人まで減らしたのである。

 

続々と届く職員からの「死ね」メール

「おまえはバカだ」「おまえみたいな野郎はとっとと消えろ」「バカ市長、調子にのるな」「死ね」すべて実際に送られてきたメールの文面だ。民間会社ではあり得ないことだが、こうしたメールを市長にどんなに送ろうと公務員はクビにはできない。地方公務員法という法律で権利が守られているからである。

丁寧に所属部署や実名まで書いてあることが多かったが、個人の問題にはせず、部署全体に注意をするように言い渡した。組織全体でそうした職員の存在や言動を共有することが、職場内での注意喚起につながるからだ。

 

脅迫容疑で職員が逮捕される

「市長の命を狙っている」2007年、横浜市の秘書部に何度も脅迫電話がかかってきた。その犯人が水道局の市職員だったのである。背景には行財政改革への逆恨みがある。当時、水道局には76億円の累積赤字があったため、18の営業所を統合して9営業所体制に再編し、特殊勤務手当を廃止、職員の新規採用も停止したのである。また、各営業所の夜間収受業務も廃止し、コンビニ支払にした。この事件も、”人員削減”を断固拒否する労働組合の動きの1つである。

 

笑うに笑えない部下からの提訴

「1ヶ月定期を半年定期にするのは規則違反だ」として「一部賃金取戻請求」で訴えた者がいた。行財政改革の際、職員の通勤定期が1ヶ月ごとになっているのがわかり、それを半年定期にしたからである。民間企業では当たり前のことも、当時の横浜市では反発を受けたのである。しかも、こうした訴訟を起こされた場合の費用負担の規定がなく、弁護士費用は著者の自腹となった。

 

横浜から東京に行ったら出張扱い

横浜から東京に行ったら出張扱いで、1700円の出張費がもらえた。市外に行く場合は出張扱いとなり、100キロ以上の場所ならば1700円、100キロ未満ならば850円が出張費と決まっていたのだ。その後、廃止した。

 

特殊勤務手当という名の”第二の給料”

特殊勤務手当とは、文字通り「特殊な勤務をする人に手当する」ものだが、2002年当時の横浜市では55種類もの手当があった。例えば、保育手当、給食業務手当、戸籍登録事務従事手当などである。見直しには労働組合の反発が強かったが、人事部が折衝に当たり、2006年までに原則としてすべてを廃止とした。これによって年間29億円以上もの経費削減をすることができた。

 

公務員の給料は現金支給が原則

公務員の給料は地方公務員法で決まっており、現金支給が原則である。ただし、横浜市役所の場合は振込の人が9割である。しかし、残りの1割の人のために現金を数えて封入し、保管する職員が発生するという行政のムダが発生しているのだ。

 

2年にわたる右翼の街宣車による嫌がらせ

2年にわたって右翼の街宣車による嫌がらせを受けた。平日の14〜16時くらいに毎日現れて「中田市長はー!」などと大音量を発しながら市役所を5〜6周していくのである。それでも無反応を続けていると、いつしか街宣車は来なくなった。

 

清濁併せ飲めないと殺される

「清濁併せ吞む」という言葉がある。これは善も悪も区別なく、あるがままに受け入れると言う意味で、その人の度量の大きさを表している。しかし、著者は「清濁併せ吞むのが政治家だ」と割り切ることはできなかった。そう観念してしまえば「濁濁」になってしまうと考えており、生きているだけで、政治家をやっているだけで、すでに清濁併せ吞んでいると思えてならないのである。

 

市民の血税は何に使われているのか

市民の血税は、市長や市の幹部と労働組合との交際費、5分でも会議に出席すれば1日1万円の費用弁償などに使われていた(現在は廃止)。また、横浜市議会議員の場合、給与は年約1600万円、政務調査費が約660万円支給される。地方議会の場合、低投票率であることが多いが、議員定数の削減などの改革案は否決となるのである。

 

不発に終わったイベントはトップの責任

横浜市長在任の最終年2009年に、開港150周年を記念した「開国博Y150」というイベントを開催した。多様化する価値観の中で「横浜は開港から始まった」という歴史を市民が共有し、わが町への愛着や誇りを高めることが今日的な目的で、その効果は確かにあった。しかし、有料会場には当初500万人の入場者を見込んでいたが、実際には約124万人に終わり、25億円の赤字となった。こうしたすべての結果に責任を持つのが市長である。

 

嫌われる理由は性格にある

著者が嫌われる理由は、愛想がよくないことである。思ったことをすぐ口に出してしまうし、頭に血も上りやすい。例えば、ある講演会において「これからは家なんて買う時代ではない」という持論を話した後、不動産業者の人に「あんな話をされたら困ります。営業妨害です」と質問を受けた。その際にも「そうですか。でも実際、そういう時代になっているというのが現実です。それを念頭において仕事をした方がいい」と言って、女性を怒らせてしまったのである。

 

政界は「相手の顔色をうかがう人」だらけ

政治家は本当のことを有権者に伝えて、理解を求めることが必要である。例えば、横浜市長のとき、建設業界に対して向こう3年で公共事業費を毎年5%ずつ、計15%削減するということを発表した。毎年の予算編成時に陳情と要望を繰り返すよりも、中期的な方針を出すことで経営方針を立てられるようにする方が、よほど事業者に対して親切だと考えるからである。しかし、業界や議員の反発は大きかったのである。

 

最後に

「政治家は本当のことを有権者に伝えて、理解を求めることが必要」これは維新の会の考え方に通じる。一部の公務員の横暴をつぶしてきた歴史。愛想がよくない中田宏@NAKADAHiroshi氏を応援する

次回は、次世代に対してやるべきことがある 史上最悪の市長に振り回された人々についてまとめる。

政治家の殺し方


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