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新聞、TPP、橋下徹、経常収支、規制緩和 マスコミとグラフ

前回は、デフレ、量的緩和、日銀の打率、通貨供給量 日銀とグラフについてまとめた。ここでは、新聞、TPP、橋下徹、経常収支、規制緩和 マスコミとグラフについて解説する。

21 新聞は増税しても被害はゼロ

デフレ下でも価格が下がらない新聞

新聞業界の特殊性は、再販制度という独禁法適用除外のカルテルによって、デフレ下でも価格下落を免れていることだ。一般物価と新聞価格の推移を見ると、1970年から2008年までに一般物価は3倍になったのに対し、新聞価格は5倍と上昇率が高い。また、新聞の新規参入について「日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律」という商法の特例によって、新聞社の株式を取得することはできず、事実上新規参入はできない。つまり、新聞業界は既得権の保護業種であり、長期的には衰退していくだろう。

 

22 「TPPは例外なき関税撤廃」は妄想

貿易自由化は長期的に見るとプラス

貿易自由化は長期的に見るとプラスであることは、200年の経済学の歴史で実証されている。国内消費者の利益は国内生産者の損失額を必ず大きく上回り、消費者利益の一部で損失額の穴埋めもできるのだ。具体的には、TPPによって国内生産者余剰(所得減少)は起こるが、消費者余剰(他の財サービスの購入で所得増加)によってGDPは大きくなるのである。

 

メリットは11兆円、デメリットは8兆円

TPP参加のメリットは約11兆円(経産省試算)、デメリットは約8兆円(農水省試算)で、ネットのメリットが約3兆円(内閣府)となる。このプラス部分をどのように再配分するかは政治家の仕事だが、いずれにせよ国内の誰も損をしない状況を作ることができる。

 

サクランボと米から学べること

サクランボと米の事例から学べることは、自由化をしても生産額は拡大可能であり、反対に自由化を避けると瀕死状態になるということだ。前者はアメリカンチェリーの輸入自由化を行ったが、国産サクランボを高級品への転換で差別化し、自由化以降に生産額は1.5倍に増加した。後者は低い生産性や農業従事者の高齢化の波にさらされ、ジリ貧になっている。TPPの議論の有無にかかわらず、農地法を廃止し、農地の集約化、新規参入の促進などを可能とする新農業法を策定し、抜本的な農業強化を図らなければならない。

 

「TPPは例外なき関税撤廃」は本当か

「TPPは例外なき関税撤廃」はあり得ない。どんな国際交渉でも例外はある。従来のTPP(4カ国参加)にも1%程度の例外品目があった。また、即時撤廃ではなく、段階的撤廃も可能である。さらに、交渉を行っても最終的に参加しなくてもよい。なお、TPPにかかわらず、輸出を強化するならば円安にする必要があり、その意味でも金融緩和を行うべきである。

 

23 大阪市の改革はアメリカ型の自治体を作るもの

大阪市長選挙はアメリカ型かEU型かを選んでいた

橋下徹氏と平松邦夫氏の一騎打ちだった大阪市長選挙は、新たな制度作りによる「アメリカ型」か、現在の制度の枠内を利用した「EU型」の選択だった。橋下氏は、いまの行政区を特別区にして市役所から区長を派遣するのでなく、区長公選を打ち出している。反対に平松氏は、財政単位がバラバラの自治体が広域連合を組むとした。結果は橋下氏が勝利し、問題解決の早い「アメリカ型」の自治体をめざす構想が選ばれた。

 

大阪市の区はいくつが適正か

大阪市には行政区が24もあるが、その平均人口は11万人と小さい。政令指定都市20の中でも、新潟市8区の平均10万人に次いで、2番目に少ないのだ。東京23区の平均人口が37万人であることを考慮すれば、24区を7区くらいに集約して効率化しなければならない

20政令指定都市の1人当たり人件費・物件費と1区当たりの人口の間には、負の相関がある。つまり、人口が多いほど人口一人当たりの公務員の人件費・物件費が少ないということだ。一方、地方公務員の給与水準(ラスパイレス指数)は、行政区当たりの人口と正の相関がある。つまり、人口が多いほど公務員の給与水準も高くなるのだ。

また、20政令指定都市の清掃工場の規模とカバーする区数の関係を見ると、大阪市は清掃工場のカバーする区が多すぎることがわかる。傾向線上に乗るためには、大阪市は現在の24区から17区へ、堺市は今の7区から5区に減少させなければならない。効率的な清掃工場は、発電をして地域のエネルギーセンターにもなるため、住民サービスと一石二鳥になる可能性もある。

 

大阪市民と大阪府民の選択は正しかった

今の問題は今の制度で解決できなかったからあるわけである。自民党府連と民主党府連は平松氏を支持したが、大阪市民・府民が橋下氏を選んだのは賢明だったといえる。

 

24 経常収支が赤字になってもそれだけで国債は暴落しない 

原文を読めば日銀のウソは一目瞭然

2012年1月25日にFRBがインフレ目標を導入した。これに対して当時の日銀は「インフレ目標ではない」などと言っていた。しかし、バーナンキFRB議長の発言の原文(同日の記者会見)を読めば、そのウソは明らかである。ドイツの記者から「物価の安定はゼロでないか」「インフレ目標か」との2つの質問があった。バーナンキ議長はその質問に対し、以下のように回答した。

「統計上の上方バイアスやその他の問題もあって、インフレ率0%は物価の安定と整合的でない。(中略)まず半分くらいデフレ圧力の中で生活しなければならない。デフレは経済パフォーマンスを悪くし、雇用環境も悪くすることが多いので、0%のインフレ目標はFRBの責務に反する。(中略)インフレ率2%は、欧州中央銀行(ECB)その他のほとんどの中央銀行が使っている数字だ。それはほとんどの中央銀行で行っていることと少しも違いはない」

2番目の質問には「もし、インフレ目標が物価を最優先して雇用などを二次的なものとするということを意味するのであれば、その答えはNOだ。というのは、FRBは2つの責務(物価の安定と雇用の最大化)を持っているからだ」と答えたのだ。

 

過去の事実のねつ造にまで加担するマスコミ

マスコミは過去の日銀の「理解」の情報操作にも加担している。物価「目標」について既に日銀が行っていると報道し、物価の安定について「理解」(責任なし)しているにすぎなかった日銀を擁護したのである(2月11日の日経、NHK、毎日新聞)。

 

三菱東京UFJの「国際暴落シミュレーション」報道の裏側

金融関係で当局のリークとおぼしきものには、12年2月2日付の朝日新聞でも報じられた。三菱東京UFJ銀行による「日本国債暴落シミュレーション」といわれるものだ。16年には10年もの長期国債の利回りが現在の1%から3.5%に上がることで、国際の暴落が始まるというものだ。しかし、銀行全体の資産から見れば2%である国債の価格低下を、このように大きく報じる必要性はほとんどないのだ。

また、今後日本の経常収支が赤字に転落して、赤字国債を国内貯蓄でまかなえなくなり、金利上昇が起こって国債が暴落すると話すエコノミストもいる。しかし、各国の経常収支対GDP比と実質GDP成長率・実質金利の関係を見れば、経常収支が赤字でも経済成長率が高く、金利も低い国はたくさんあることがわかる。こうした誤った報道を流すくらいならば、むしろ一切報道しない方が国民のためになる。

 

25 規制緩和によって事故率は上がっていない

規制緩和で事故は増加したのか

2012年4月29日未明、関越自動車道で高速バス事故が発生し、7人の乗客が死亡する惨事となった。この原因として「行き過ぎた規制緩和」がマスコミなどで騒がれたが、実際はどうなのか。高速バス事業者数の推移を見ると、貸切バスは規制緩和(免許制から認可制へ)によって新規参入が促進された。その結果、貸切バスでは料金値下げがあったが、乗合バスではそれほど価格の低下はない。規制緩和前後の高速バスの事故率を見ると、規制緩和以降に事故が大きく増えたとはいえない。むしろ最近では低下傾向にある。

そもそも免許制と認可制では、行政実務については大差がない。認可制から登録制になると、行政裁量がなくなって参入業者は飛躍的に増えるが、この規制緩和はそれほどではない。

 

道路管理者の責任はどうなる

規制緩和を責める前に、他に危険因子がないかを確認することが大切である。国交省は旧運輸省案件として、バス運行会社の監督面ばかりを強調しているが、旧建設省として道路管理者の責任はないのだろうか。例えば、防音壁と直前に設置されたガードレールの間の大きなすき間が、全国に5100カ所ほどあることが事故後の調査でわかった。バスは運悪く防音壁に刺さってしまったが、すき間を埋める安全管理を徹底していれば、ここまでの大惨事にはならなかっただろう。

 

最後に

新聞は再販制度と商法の特例で保護されているため、増税しても被害はゼロ。「TPPは例外なき関税撤廃」は妄想であり、貿易自由化は長期的に見るとプラス。大阪市の改革はアメリカ型の自治体を作るもので、大阪市の区は7つが適正。経常収支が赤字になってもそれだけで国債は暴落しない。規制緩和によって事故率は上がっていない。誰にメリットのある報道かを考えよう

グラフで見ると全部わかる日本国の深層


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