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ダン・メイヤー 「数学クラス改造計画」

「私は高校数学教師です。失敗元々の商売です」メイヤーは自虐的に今日の数学教授法を批判する。ここでは、110万ビューを超える Dan Meyer のTED講演を訳し、生徒たちが問題の定式化を行う教授法を提起する。

要約

今日の数学はペイント・バイ・ナンバー型演習が当然で、その演習が得意になるように教えられており、子どもは問題を解くよりも大切な定式化能力を失っている。TED×NYEDでダン・メイヤーは立ち止まって考える実証済み数学教授法を披露してくれる。

Dan Meyer is exploring the way we teach teachers to teach kids.

 

1 高校数学教師は失敗元々の商売

大好きなものを 思い出して下さい。映画 アルバム 歌 本など それを好きな人に 本気で勧めたとします。相手の反応を期待して待ちますが 返事は正反対という結末。前置きなのですが この状態こそまさしく 6年間毎日経験した事です。私は高校数学教師です。要らない人に 法律なので、とモノを売るのです。失敗元々の商売です

 

2 代数IIの期末試験の合格率は25%以下

説明に便利な生徒の典型例があります。皆さんにも当てはまるかもしれません。代数IIの期末試験を行うとします。合格率は 25%以下だと思います。これは皆さんや生徒の事より アメリカの数学教育の現状を 物語っています

 

3 計算は世界に対する数学的プロセスの適用

まず数学を2つに分類します。1つは計算。お忘れだと思います。例えば、2次方程式の因数分解です。1より大きい首位係数のものです。この手の問題は 数的推論の基本が出来ていれば すぐ思い出せます。世界に対する 数学的プロセスの適用です。教えるのは難しいですが 数学を志すかどうかに関わらず 生徒に身につけて欲しい項目です。現在のアメリカの教え方では まず身に付かないでしょう。今日のテーマは そんな教育に対して何ができるか、です。なぜ現代が数学教師にとって 驚くべき時代なのかにも触れます。

 

4 間違った教授法の兆候は5つ

学校で間違った方法で 数的推理が教えられている兆候が 5つあります。1つは率先力欠如で、自ら学習しません。説明が終わるとすぐに 生徒5人が手を挙げ また全て説明してくれと言うのです。忍耐力も欠けています。記憶力もありません。3ヵ月後にはまた全部説明です。文章題への嫌悪感もあります。生徒の99%はそうです。残りの1%は 公式が当てはまらないかと 一生懸命に探っています。目も当てられない状況です。

 

5 「決断できないじれったさ」に耐えられない

「デッドウッド」の創作者のデイビッド ミルチ氏は これを上手く説明します。彼は 現代を舞台にした 現代劇の創作を止めました。「チャーリーシーンのハーパーボーイズ」を 毎日4時間も見ていると 特殊な神経経路ができ、単純問題を期待するようになるというのです。彼の言う「決断できないじれったさ」です。すぐ解決しないものに我慢できないのです。22分で問題解決するホームコメディー式を望みます。CM3回と笑い声付きです。このように話していますが 解決価値のある問題は単純ではありません。心配しているのは 将来生徒の指揮下で暮らすのですよ。自分自身の未来と福祉に 役に立たないことをしているのです。教えながら 現在の教科書、特に—全国版の教科書で数的推論と 問題解決を教えるなら 「ハーパーボーイズ」を観るのと同じです。

 

6 教科書のどこに何があるかだけを学んでいる

さてこれが例です。物理の教科書です。数学に当てはまります。まず見て頂きたいのは この3つの情報で この1つ1つがやがて公式となり 最終的には生徒が それを使って計算します。現実生活では違います。解決価値のある問題は どんなものを解決したことがありますか。情報を全て入手している場合ですよ。情報が余分にあれば取捨選択したでしょう。情報が不十分なら 自ら探しに行ったはずです。有価値の問題でそのようなものは皆無です。教科書も生徒の思考力を阻害しています。理由はこれをご覧下さい。練習問題です。問題に取り組む段になると こういう問題が控えています。数字と内容を少しいじっただけです。それでも出題元がわからない場合は 公式が載っている例題を 親切に教えてくれます。そうやって1つの単元を 文字通り通過します。物理は全く学ばず 教科書のどこに何があるかだけを学びます

 

7 傾斜角とスロープの長さを求める手順

もう少し具体的に数学で検討しましょう。ここに好都合な問題があります。スキーリフトを使って 傾斜角とスロープの長さを求めます。4段階の手順があります。どなたかその4つの手順がわかりますか。生徒には凝縮して 一度に提示されるのですよ。それでじれったい問題解決が起こります。実際に解いてみましょう。図があります。皆さんは数学の基礎知識もお持ちです。格子、長さ、名称 点、軸などのことです。また分割して考える手順もご存知です。どの部分が最も険しいですか。

 

8 誘導的な問いと解答を組み立てる

話が見えてきたと思います。私達は誘導的な問いと 解答という形をとっています。しかし問いから問いへと まっすぐな道を整備してやり 途中の小さな割れ目をうまく 踏み越えれば褒めてやります。ただそういうことなのです。もし違うやり方でこれらを分解して 生徒と一緒に組み立てるなら まさに問題解決の理想形になるのです。

 

9 数学は議論に役立つがその逆はない

この図から始めましょう。すぐに質問をします。どの部分が最も険しいですか。こう切り出すのは 解答が2つあるようになっているからです。こうして互いに議論させます。友人同士で ペアになって記録もとります。そのうち気づきます。スキーヤーは目障りなだけだと。画面の左下あるいは 真ん中より少し上の絵です。またこう感じます。A~Dに名称があれば 話が簡単になるのにと。勾配の意味を定義し始めるとき その基準となる数値があればいいと気づきます。そのとき初めて 数学的思考法を投げ与えます。数学は議論に役立ちますが 議論は数学に役立ちません。その時点で10クラスの内9クラスが 問題への準備ができています。必要なら生徒自身が 小ステップを考えることもできます。

 

10 問題の定式化が肝要

これが辛抱強い問題解決 数的推論を生み出すのです。私の実践では明白でした。ここでアインシュタイン君に発言権です。これは当然ですよね。彼は問題の定式化が肝要だと言います。でも米国の私の授業では ただ生徒に問題を与えるだけです。生徒は問題の定式化に関わりません

 

11 水タンクを満たすのにかかる時間は?

週5時間の準備時間の 90%を使い かなり誘導的要素をもつ問題を 教科書から選んで 数的推論と問題解決の練習用に再編します。それはこういうことです。水タンクの良問です 満たすのにどれだけ時間がかかりますか。真っ先に小ステップを排除します。生徒が自分で考え 定式化しなければなりません。そこにある全情報が必要と気づくでしょう。どれも解答の邪魔になりません。ここで生徒が考えます—高さや大きさは大事かな? バルブの色は?ここで何が重要でしょう。教科課程では提示されていません。ここに水タンクがあります。満たすのに時間は?それだけです

 

12 「おい、一体どれだけかかるんだよ」

21世紀である現在 私達は現実世界をありのままに見ます。それは教科書でよく目にする線アートや クリップアートではありません。外に出て、写真を撮ります。現実を扱っているのです。満たすのにどれだけかかりますか。ビデオを撮ればもっといいでしょう。誰かがタンクを満たしているところです。腹立たしいほどゆっくりで 退屈です。生徒は時計を見ています。ある時点でこう思います 「おい、一体どれだけかかるんだよ」(笑)。こうして問題に食いついたのです

 

13 模範解答から解答を得ず、ビデオの結末を見る

ここからが本当に面白いのです。冒頭で言いましたように 私は経験が浅いので 最も遅れている子どもに教えています。数学の話には参加しない子どももいます。誰かが公式を知っており 私よりその使い方を知っているからです。だからそれについて話しません。でもここでは皆同じ直観力を持っています。何かを水で満たした経験は皆ありますから どれだけかかるか子どもに答えさせます。数学も会話もうまくできず、話に入るのを 怖がっている子もいます。そこでボードに名前を書き、推測させます。すると食いついてくるのです。それから今までの過程を踏みます。この方法の最もよい点は 教師マニュアル巻末の模範解答から 解答を得るのではないことで その代わりにビデオの結末を見るのですが(笑)これは恐ろしいことですよ。マニュアルの模範解答で 常にうまくいく理論モデルは それはそれでいいでしょう。でも理論が現実に合わないとき 誤りの原因を話すのは怖いものです。それでも授業中の会話は 最も貴重なものです。

 

14 数学を怖がらずにゆっくりと再定義する

生徒は楽しんで学習しました。クラスの初日にウイルスに 感染した子たちです。今新学期に入っていますが 全く新しいもの見たことのないものを ボードに書くと 年度当初よりも3、4分長く 議論します。とても楽しいですよ。もう文章題を嫌っていません。どんなものか再定義しましたから もう数学を怖がっていません。ゆっくりと再定義しているからです。これは素晴らしいことです。

 

15 マルチメディアを使い生徒自身に問題を作らせる

数学教師はマルチメディアを使って下さい。現実世界を教室に引き入れるからです。高解像度とフルカラーでです。同一条件で直観力を開発させます。できる限りの短い質問をさせ 特定の質問が議論で出てくるようにし 生徒自身に問題を作らせます。アインシュタインもそう主張しています。最終的に生徒の手助けはしません。教科書の方法は間違っています。問題解決と数的推論を教える義務感から 自らを解き放ち生徒の手助けをしません。

 

16 数学教師は上質の教科課程のツールを持っている

今数学教師であるのが素晴らしい理由は 上質の教科課程のツールを 手にしているからです。至るところにあり、安価です。オープンライセンスで 自由配布されるこの道具が 現在こんなに安く簡単に手に入るのです。ブログにビデオシリーズを載せたところ 2週間で6,000件のビューがありました。ある国の教師はメールでこう言います。「素晴らしい。実のある議論になりました。ところで、こう改良したらどうでしょう」 素晴らしい提案で 最近ブログにこの問題を載せました。店でどのレジの列に入るかです。カート1台に19品の者と 4台のカートに3、5、2、1品の者です。この線形モデルは教室でも利用でき 「グッドモーニング アメリカ」に出演しました。変ですよね。

 

17 数学は直観力の表現手段

ここから結論できるのは 生徒だけではなく、人は—こういうことを切望しているのです。数学は世の中を理解します。数学は直観力の 表現手段です。教育にどんな利害関係があろうとも 生徒 保護者 教師 政治家であろうとも よりよい教科課程を作成してほしいのです。忍耐強く問題解決する人が必要なのです

 

最後に

「問題の定式化が肝要である」(アインシュタイン)。あなたは何を問題だと捉え、何を解決しますか?

和訳してくださった Hideki Kamiya 氏、レビューしてくださった Yuko Osugi 氏に感謝する(2010年5月)。

アインシュタイン150の言葉


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