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ダイアナ・ローファンバーグ 「失敗に学ぶ」

「情報源としての役割をもう果たさない学校に、なぜ子ども達を通わすのでしょうか?」現役の教師ローファンバーグは語りかける。ここでは、60万ビューに及ぶ Diana Laufenberg のTED講演を訳し、経験からの学習、学生の発言権、失敗からの学習を取り戻す重要性を理解する。

要約

ダイアナ・ローファンバーグが、失敗に学ぶ重要な洞察を交え、彼女が教育について学んだ三つのことをお話します。

Diana Laufenberg teaches 11th-grade American History at the Science Leadership Academy in Philadelphia.

 

1 情報源は学校から家の中に変わった

私は教育界に長く従事しています。教育を通じて 子どもと 学習に関する知識体系を学びました。より多くの方に生徒たちの可能性について 理解をしていただきたいと思います。写真左下に見えている 私の祖母は1931年に8年生を卒業しました。情報を得るために学校に行っていました。学校が情報源だったからです。本の中 先生の頭の中など 情報を得るには学校へ行く必要がありました。これが当時の学習でした。少し時代を遡って見ましょう。これは私の父が通っていたオークグローブの 教室が1つしかない学校です。彼も学校に行っては先生から 情報を集めてはの頭の中の 揮発性メモリーに入れては持ち帰る この手の作業が必要でした。当時はこうして世界中で先生から学生に 情報伝達が行われていたからです。私が子どもの頃は皆 自宅に百科事典のセットを持っていました。私の事典は私の生まれ年に購入したもので 多いに役立ちました。情報収集にも図書館に行く必要がありませんでした。情報源は家の中にありました。素敵でした。これは私の前の世代の 経験とは異なっており 小さなところでも私の情報との 関わり方に影響していました。情報は私の身近にあって いつでもアクセスが可能でした。

 

2 自治体の選挙フォーラムの運営課題を与えた

私が高校生だった頃と 私が教育に従事し始めた― 時の間に 遂に インターネットがその幕を開けました。学習教材として インターネットが普及すると同時に 私はウィスコンシンを離れ カンザスに引っ越しました。そこの小さく愛らしい町の カンザス学区で 教師になりました。そこで私の大好きな教科 米国政府の教鞭をとりました。1年目 やる気に満ち溢れていました。私は政治システムが大好きでした。12年生の子ども達はそれほど 米国の政体について 興味を示しませんでしたけどね。2年目 少し学習して作戦を変更しました。実経験の場を提供して 自発的な学習を促しました。目的も方法も告げませんでした。彼らにちょっとした課題を与えました。彼らの自治体の選挙フォーラムの運営です

 

3 期待することを毎週生徒に話した

彼らはチラシを作り 事務所に問い合わせ スケジュールを確認し 秘書たちと話をして 候補者をよりよく知ってもらおうと 選挙フォーラムの冊子を作成しました。彼らは夕方のある ディスカッションに皆を招待しました。政府や政治に始まり 道路の建設計画のよしあし― について話し合う体験学習です。私より経験のある高齢の先生は 私を見てこう言いました 「あら かわいい 頑張ってるわ」 (笑) 「なにをしていいのか分からないのね」 しかし子ども達が成果をあげてくれることを 知っていましたし 信じていました。私の期待することを毎週彼らに話しました。その夜90人全ての生徒が 正装し彼らの職務を全うしました。私はただ座って眺めていただけです。すばらしい実体験の機会となりました。彼らに何かを残せたことでしょう。こうして彼らは成長していくのです。

 

4 驚くほど多種多様な子どもたちと一緒に過ごせた

私はカンザスから美しいアリゾナへ 引越しフラッグスタッフで数年教えました。今回の相手は中学生でした。幸運にも今回は政体の授業ではなく もっとおもしろい地理を教えることになりました。今回も学ぶことにわくわくしていました。しかし私のこのアリゾナでの 仕事で面白いと感じた点は 公立の中学校で 驚くほど多種多様な子ども達と 一緒に過ごせたことです。こういった体験は皆さんもされるべきです。私達は ポール・ルセサバギナという 『ホテル・ルワンダ』のモデルになった 男性と話す機会がありました。彼は 隣の高校でスピーチすることになっていました。バスに乗る必要もなく歩いていける距離で 費用もかからない絶好の遠足でした。

 

5 「あなたの人生を他の人に役立てるにはどのような計画を立てますか?」

しかし問題が浮上してきました。7、8年の生徒に集団殺害の話をし どうすれば彼らは責任と敬意を 持ってこの問題を理解できるでしょうか。何をすべきか諭すことが出来るでしょうか。そこでポール・ルセサバギナを 人生をかけて問題解決に取り組む 模範的な男性の例として取り上げ、子ども達に人生の中 話の中 もしくは世界で何か類似した活動をしている 人物を探してその人物についての 簡易動画プレゼンを課しました。これは初めての試みで 誰もパソコン上での 動画作成の経験などありませんでした。しかし やる気を感じたので自らの意見も入れるよう指示しました。自分の声で周りに 語りかけることは 実は 子ども達も望んでいることであって 私に大きな発見をさせてくれました。最後の課題の質問はこうです。あなたの人生を他の人に役立てるには どのような計画を立てますか?子ども達に発言の機会を与え こちらが聞く耳をもった時には子ども達は 素晴らしいことを言うものです

 

6 情報に囲まれていったい何をしますか?

私が今いるペンシルベニアまで話を早送りしましょう。私はサイエンスリーダーシップアカデミーという フランクリンインスティチュートとフィラデルフィアの学区との 提携校で教えています。私たちは公立校12のうち9番目ですが 他校とはだいぶ異なっています。当初私の理解する子ども達の 学習方法を立証できる学習環境に 身を置くためここに移動しました。過去のパラダイムや 私の祖母 父 私が 学校にいた当時の 情報不足を過去のものとして 忘れ去れるなら、情報があふれかえる今日 私は目の前にある可能性を 調査したいと考えました。情報に囲まれていったい何をしますか? 情報源としての役割をもう 果たさない学校になぜ子ども達を通わすのでしょうか?

 

7 間違いを犯すことを容認する

フィラデルフィアでは「ノートパソコン1人1台プログラム」を 実施し、生徒が常にノートパソコンを携帯し 情報へのアクセスを常に確保しています。そして生徒達に情報獲得の道具を 与える際には 折り合いを つけなくてはいけないことがあります。子ども達に学習過程の段階で 間違いを犯してしまうことを 容認するということです。「答えは常に一つ文化」に溺れる 私たちが相手にしているのは、正しくマークされるべき回答欄がある 選択式問題にあふれた教育システムです。皆さんにもご理解頂きたいです。これは学習のあるべき姿ではありません。子ども達に間違いをしてはいけないと 言うことそれ自体が間違いです。常に正解を求めることは彼らの 学習動機を高めることになりません。これは私たちが始めた プロジェクトの作品の1つです。人には滅多に見せないんです。失敗という問題点がありますからね。

 

8 原油流出事故に関するポスター作成

年末に行った授業で 生徒達は原油流出事故に関する ポスターを作製しました。私は彼らにマスメディア上に溢れる このような図表を手に取り どんな要素が興味をそそるか考察させ、米国史に残るこの人災について 彼らの手でポスターを 作るよう指示しました。彼らにも判断する能力はありましたが 初の試みで皆どうしていいのか 確信が持てず 少し躊躇していました。もちろん彼らは話せますし 文章作成能力も十分です。しかし いつもと違うコミュニケーションの方法に少し戸惑っていたようです。そこでこの作業専用に部屋を用意し 「ここでポスターを作ろうよ」「できることを考えてみよう」と促しました。根気強く視覚にこだわった ある生徒の作品は皆に気に入られました。作業には2、3日程かかりました。これは生徒達が協力して作り上げた作品です。

 

9 失敗することが学習につながる

生徒を座らせて「誰の作品が一番?」と問うと 全員すぐに「これー」といって 内容も読まずに「これー」でした。私は聞きました「どこがいいのかな?」 すると「デザインがいいし 色使いが上手 それからね…」 そこで「読んでみて」というと 彼らは「あぁ これあんまりよくないね」と 言って別のところに行きました。視覚的にはパッとしないが情報に富むものです。この学習過程について1時間話し合いました。なぜならこれは作品が完璧か否か 何が作れるのかという種の話でなく 自ら何を作りたいかを問うものだったからです。生徒たちに失敗させ 考察を促し 失敗からの学習機会を与えました。今年同じ活動をもう一度やる時には 彼らはより円滑に作業できるでしょう。学習というものは 失敗を包括しているべきだからです。失敗することが学習に つながるからです

 

10 本当に興味の持てる質問をする

ここには百万もの写真があって 慎重に選ぶ必要がありました。これは私のお気に入りの1つです。生徒たちの学習、学習のありかたを考える際 生徒が情報獲得のために学校へ 来るべきという考えを取り払い 情報の活用法を問いましょう。本当に興味の持てる質問をしてください。そうすれば彼らは裏切りません。外に連れ出してください。彼ら自身の目で見て 実際に体験したり 遊びを通じて考えるのです。これもお気に入りの1枚です。これは火曜日に撮られたものです。私が投票に行くよう指示した日です。この子はロビー。この日は初めての投票で 皆と共有したかったようです。しかしこれも学習ですね。外の現実世界に出るように言っていますから。

 

11 経験学習、学生の発言権、失敗からの学習を取り戻そう

要点は我々が 教育を学校に足を運び 情報収集することとみなし、経験からの学習― 学生の発言権や 失敗からの学習を見逃すことは 学習の趣旨に反するということです。そして我々の提案とは これらの価値を重視できない教育システムが 存在する限り実現不可能なのです。「答えは常に一つ文化」や標準化された テストが障害となるからです。改善法を理解した今こそ 改革の時なのです(拍手)

 

最後に

現役の教師が「答えは常に1つ文化」を批判している。しかし、数学や言語学習など、基礎の積み上げが必要なものもある。こういったものはカーンアカデミーなどのオンライン教育に任せ、応用や実践的な演習問題を教師に依頼するのがよいだろう。全員にとって重要な「時間」を有効に使おう

和訳してくださった Takahiro Shimpo 氏、レビューしてくださった Mina Kiyuna 氏に感謝する(2010年12月)。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)


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