money-economy

物々交換の限界を打ち破ったものが貨幣 貨幣と日本の決済システム

「複雑でわかりにくい金融の基本用語や仕組みを丁寧に説明していきたい」著者は語りかける。ここでは、岩田規久男『金融入門 新版』を9回にわたって要約し、日本の金融の担い手や機能、私たちとのかかわりについて理解する。第1回は、貨幣と日本の決済システム。

1 交換経済と貨幣

交換と分業

近代の市場経済は分業を前提として、各々の人が特定の仕事に特化・専門化することによって、その労働生産性を飛躍的に高めることに成功した。労働生産性の向上こそ、経済成長・発展の原動力である。

 

交換手段としての貨幣の登場

物々交換の範囲の限界を打ち破ったものが貨幣である。貨幣の本質的な機能は交換手段、決済手段である。金のようにそれ自体に使用価値を持つものを商品貨幣と呼ぶが、それを使用する者が交換価値を認めていれば貨幣として機能しうる。

 

現金通貨と預金通貨

今日では、現金で決済するのは代金が小口の場合に限られており、一定額以上の決済は預金講座への入金とそれからの引き落としという方法が採択されるのが普通である。最近(1998年)の現金通貨と預金通貨の比率はおよそ1対3である。現金決済には紛失・盗難のリスクがつきまとうため、取引コストが高い。

 

外貨

外国通貨(外貨)は通常預金通貨の形で持つのが一般的である。その理由は、外貨を国内で持っていても決済手段として使えず、現金の場合は輸送コストがかかるからである。

 

電子マネー

電子マネーとは、預金を現金ではなく、ICカードに埋め込まれた情報を決済手段として用いられるものである。電子マネーはパソコンなどを使えば、インターネットによる決済にも使用できる。

 

2 銀行制度と決済システム

日銀券の流通と還流

日銀券は日本銀行によって発行され、民間銀行(以下、銀行)を媒介として個人や企業の手元に届く。流通している現金の一部は銀行に預金され、ある一定額はそのまま現金で保有するが、それ以上の現金は日本銀行に預け入れる。

 

日本銀行と銀行の預金取引

日本銀行と銀行の取引に利用される決済手段は、日本銀行当座預金である。日銀当座預金とは銀行が日本銀行に預けている預金のことである。

 

日銀ネットによる銀行の決済

銀行間の資金の貸借取引は日銀ネットによって行われている。コンピュータを介して銀行に設置された端末からの入力によって実施される。

 

内国為替決済制度

内国為替決済制度とは、企業や個人が銀行を通じて相手先の銀行口座に貨幣を振り込むための仕組みである。送金取り込みの案内通知は全銀データ通信システム(全銀システム)に伝送される。全銀センターがオンラインによって日銀ネットに対して振替依頼を通知することで、両銀行の片務的契約状態を解消する。

 

3 貨幣創造機関としての銀行

銀行の貸出と預金創造

銀行は預金を受け入れるだけではなく、預金を作り出すという機能も担っている。預金の一定割合はいつでも当該の銀行にとどまるという大数の法則を利用して、預金証書を発行して決済手段を個人や企業に供給する。受け入れている預金を本源的預金といい、貸出(銀行信用)を通じて作り出された預金を派生預金という。

 

現金引き出しがないケース

あらゆる決済を預金の振替によって行う場合、銀行は無限に預金を作り出すことが可能になる。しかし現実には、預金者は一部を現金で引き出して、それを決済手段として使おうとするため、銀行の預金創造はある程度抑制される。また、すべての企業が同じ銀行の預金者ではないため、ある程度の日銀当座預金を持っている必要がある。この日銀当座預金の総額をコントロールするのが金融政策である。

 

最後に

物々交換の限界を超えるために貨幣が生まれ、預金通貨や電子マネーなどへと発展していった。銀行制度は日銀ネットと内国為替決済制度によって維持されている。銀行は預金を受け入れるだけでなく、貨幣創造機関でもある。労働生産性の向上こそが経済成長の原動力

次回は、貨幣の機能、資金調達と運用 資金の貸借と金融についてまとめる。

金融入門 (岩波新書)


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>