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ハーヴィ・ファインバーグ 新進化の準備はできていますか

「進化には今後3つの道があります。進化が止まる、自然に進化する、人間の進化を操作するというものです」ファインバーグは語りかける。ここでは、88万ビューを超える Harvey Fineberg のTED講演 を訳し、私的に決めて選択できる新進化について理解する。

要約

医学倫理学者のハーヴィ・ファインバーグはこれまで進化してきた人間という種が今後向かうであろう3つの道を示します。①進化が完全に止まる、②自然に進化する、③人間の進化の次のステップを操作する(遺伝子変革を行うことで我々はさらに賢く、速く、そして上質になれる)。新進化は我々の手の内にあります。我々は新進化と共にどうなっていくのでしょうか。

Harvey Fineberg studies medical decisionmaking — from how we roll out new medical technology, to how we cope with new illnesses and threatened epidemics.

 

1 創造力、記憶力…どうやってよりよい自分になりたいですか

どうやってよりよい自分になりたいですか。例えば 遺伝子を少し組み替えるだけで 記憶力をよくできます。より明確で 素早く正確に思い出せます。あるいは より健康的で強くなりたいですか。スタミナつきで とても魅力的で自信のある人になりたいですか。健康的で長生きするのはどうでしょうか。あるいは あなたはいつも 創造力を欲していたかもしれません。どれが一番気に入りましたか。1つだけ可能なら どれを選びますか (男: 創造力) 創造力 創造力を選択する人はどれくらいいますか 手を挙げてみせてください。少しですね ここにいる独創的な人の数と大体同じですか。いいですね。記憶力を選ぶ人はどれくらいいますか。かなり増えましたね。健康はどうでしょうか。少し減りましたね。長寿はいかがですか 大多数ですね。1人の医者として非常に嬉しいです。もしこれらの内の1つでも得られたら。とても違う世界になるでしょう。ただの空想ですか。それとも可能でしょうか。

 

2 進化の光に当ててみなければ、生物学のどんな知識も意味をもたない

進化はここTEDにて 繰り返される主題ですが 今日は医者としての見解を 皆さんに伝えたいと思います。20世紀の偉大な遺伝学者 T.G. ドブジャンスキーは ロシア正教会の 受聖餐者でもありました。かつて彼はある随筆を書きました 「進化の光に当ててみなければ 生物学のどんな知識も意味を持たない」 さて もしあなたが 生物進化の証拠を受け入れない人ならば これはとても良い時間になりますよ。あなたの補聴器をオフにし あなたのコミュニケーション装置を取り出し どうぞ取り出してください。そしてキャサリン・シュルツの「間違っている」をもう一度読む必要があるのかもしれません。なぜならこれから話す内容は 全くをもってあなたに関係ないものですから (笑) しかし もし生物進化を 受け入れるなら これを考えてください。それは単に過去のことなのか それとも未来のことなのか。周りに当てはまることか あるいは我々のことか。

 

3 大半の部分では我々の遺伝子の基盤はほとんど違わない

これは命の樹形図の別の見方です。この図の中で 私は茂みを中心から全方向に伸びるように書きました。なぜなら もし命の樹の端を 見たとき 枝の先に書かれている すべての生存種は 進化用語で言う成功です。つまり生存しています。それは環境に対しての適応度を 示しています。枝端のひとつである 人類の部分は もちろん 我々が最も興味のあるところでしょう。我々は約600~800万年前に 共通の先祖から 現代のチンパンジーへと分岐しています。その過程の中に おそらく20~25種類の異なる 原人がいます。新種がきて そして消えていきます。我々はこの世界に約13万年もいます。それはまるで我々は他の生物種とは かけ離れているかのようです。しかし実際は大半の部分では 我々の遺伝子の基盤は ほとんど違わないのです。

 

4 身体中にある細胞の数より多くのバクテリアを内臓内にもっている

お気づきでしょうか。我々は共通のバクテリアの基盤を搾取して活用し 糖尿病治療用にヒトインスリンのタンパク質を 作ることが出来ます。これはヒトインスリンではないですが 同じタンパク質であり 人間の膵臓から生成されるタンパク質と 化学的な区別が出来ません。バクテリアと言えば 我々は身体中にある細胞の数より 多くのバクテリアを 内臓内にもっていることにお気づきでしょうか。およそ10倍多いです。つまり考えてみてください アントニオ・ダマシオが自己イメージについて尋ねたとき あなたはバクテリアについて考えますか。我々の内臓はバクテリアにとって素晴らしいくらい 親切な環境なのです。暖かくて暗くて湿気もあり とても住みやすいです。そしてバクテリアは望む全ての栄養を手に入れられるのです。努力することなく それはバクテリアにとって安楽生活なのです。たまに予想外に出口へ流れていく 妨害がありますが それを除けば あなたはバクテリアにとって素晴らしい環境なのです。ちょうど我々の生活にそれらが必要なように バクテリアは必須栄養素の消化を手助け あなたを特定の病気から保護します。

 

5 地球上の生命は1つの尺度

しかし未来はどうなるでしょうか。我々は種の進化の均衡地点に いるのでしょうか。あるいは我々は 何か違うものに変わる運命なのでしょうか。もしかしたら今まで以上に環境に適応したものに なるのでしょうか。では少し時間を遡ってみましょう。140億年前のビッグバン 約45億年前の 地球と太陽系の形成、だいたい3~4億年前の 地球上の最初の原生生物が現れ だいたい8億年前から 10億年前までに 誕生した多細胞生物、そして13万年前に ついに誕生した 人類 この終わりのない宇宙のシンフォニーの中で 地球上の生命は一つの尺度です。動物界も 一つの尺度でり 人間の命もまた 一つの優雅な切れ端です。我々です。それはまたこの話の面白い部分でもありますので 楽しんでもらえればと思います(笑)

 

6 我々の身体の死の不可避性は進化の時に現れる

さて私が大学1年生のとき 初めて生物学の授業を取りました。生物学の優雅さと 美しさに私は魅了されました。私は進化の力に夢中になり 何かとても根本的なものに気づきました。実存するほとんどの生命体の中で 原生生物の中では それぞれの細胞が分裂し その細胞のすべての遺伝エネルギーが 両方の娘細胞に受け継がれます。しかし世界に複合細胞が出てくると 物事は変わり始めます。有性生殖が入ってきます。とても大事なことですが 有性生殖が行われるということは 有性生殖はゲノムを伝達し 残った身体は 使い捨てにされます。実際こう言えるかもしれません。我々の身体の死の不可避性は 有性生殖と同じ時に起こる 進化の時に 現れます

 

7 「激しいセックスをしに来たのよ」「構わないが私はスープを飲む」

今なら私は認めます。大学生だった頃 性か死 性か死 性のための死と考えていました。当時はそれが道理の通ったことだと思っていました。しかし年が経つにつれ 疑いを持つようになりました。だんだんジョージ・バーンズの気持ちが分かってきました。彼は今もなおラスベガスで活動中です。とっくに90代ですが ある夜 彼のホテルの部屋にノックがありました。彼はドアを開けます。そこに立っているのは薄着の華麗な女優でした。そして彼を見て言います 「激しいセックスをしに来たのよ」「構わないが私はスープを飲む」と彼は応えました(笑)

 

8 進化とは最も環境に適応した生物を表している

私は内科医として 気づきました。私は目標に向かって働いていますが それは進化の目標とは異なっていました。正反対ではないのですが単に違ったのです。私は身体を守ろうとしていました。健康的であることを望み 病気から回復することを望み そして長寿と健康的な生活を望みました。進化というのはゲノムを次の世代へと伝え 適応して 世代を通して 生き延びていくことなのです。進化という点から観てみると 我々はロケットブースターのようなものです。遺伝の観測機器を次の軌道に送り その後は海に落ちていくように 設計されたようなものです。我々は皆 ウッディー・アレンが述べたような気持ちを理解していると思います。彼は言いました 「私はこの研究を通して不死を成し遂げたいのではない。私は死なないことでこの研究を成し遂げたいのだ」(笑)進化というものは必ずしも 長寿を表していません。また必ずしも 最大や最強や最速 もしくは世界一の賢さですら 表していません。進化というのは 最も環境に適応した生物を 表しているのです。それは生存と成功の 唯一の試練です。海底では 好熱性で 蒸気から出る熱に耐えられるバクテリアが 環境を適応させることに成功しています。蒸気から出る熱は 普段は魚を 真空調理するために使われているような熱です。

9 進化の必須条件である孤立になることはもはや不可能

これは何を意味するのでしょうか。我々は進化の過程を顧みて 進化の中の人間の位置を 再び考え そして特に次の段階を 予見します。私が思うに 数多くの可能性が存在します。1つ目は我々は進化しないということです。我々は一種の均衡点に 達したのです。その背景理由としては まず我々は医療を通じて 本来なら排除され取り除かれてしまう たくさんの遺伝子を 保護することに成功しています。さらに 1つの種として我々は 環境に適応する一方で 環境自体を我々に適応させるために 変えることができます。ところで我々は移動と循環と交流を 何度も行っているので 進化の必須条件である 孤立になることは もはや不可能なのです。

 

10 自然の力によって引き起こされる伝統的な種の進化が起こる

2つ目の可能性は 自然の力によって引き起こされる 伝統的な種の進化が起こることです。ここでの論点は 進化の回転は徐々に収まっていますが 止まることはないということです。我々は1つの種として 離れた惑星を占領した時に 孤立化と環境変化が起きます。そして孤立という環境がある限り 進化は自然な形で 起こり得るのです。

 

11 我々が私的に決めて引き起こす進化「新進化」

しかしまだ3つ目の可能性もあり それは興味をそそる恐ろしい可能性です。新進化と私は呼びます。新しい進化ですが 自然に起こるものではなく それは我々が 私的に決めて 引き起こす進化です。これはどのように起こるのでしょうか。どうやったら我々はそんなことができるのでしょうか。まずは現実を考えてください。いくつかの文化では今日 子孫を選択することができます。ある文化では 女性より多くの男性をもつことを選んでいます。社会にとって必ずしも良いとは言えませんが それが個人とその家族が選択していることなのです。考えてください。選択が可能な場合を 選択と言っても単に子どもの性別を選ぶのではなく あなたの身体の中の 遺伝子を調節することで 病気の予防や完治ができる選択です。遺伝子変化でこんなのはいかがでしょうか。糖尿病やアルツハイマーを取り除き 癌のリスクを減らし 脳卒中を食い止めます。あなたの遺伝子を そのように変えたいと 思いませんか。将来を見据えると これらの変化は ますます起こり得ます。

 

12 ヒトゲノムが1000ドルで使えるようになる時代は近い

ヒトゲノム・プロジェクトは 1990年に始まり 13年掛かりました。27億ドルのコストです。2004年にそれが完了した次の年には あなたは同じ作業を 2000万ドルで3~4ヶ月を使ってできたのです。今日ではヒトゲノムの 30億もの塩基対の完全な配列を 約2万ドルのコストと 1週間でできてしまうのです。ヒトゲノムが 1000ドルとなり 皆が使えるようになるまで それほど長い時間はかからないでしょう。ちょうど1週間前 全米技術アカデミーは ドレイパー賞を送りました。フランシス・アーノルドとウィリアム・ステマーに この2人の科学者は別々にある技術を発達させました。その技術は進化の自然作用を速め 好ましいタンパク質をもたらします。効率のいい方法で それをフランシスは「進化分子工学」と呼びます。2年前 山中伸弥さんは ラスカー賞を受賞されました。彼の研究では 大人の皮膚細胞である線維芽細胞を 使用し 4つの遺伝子を操作することで その線維芽細胞を 多能性幹細胞に変化させます。多能性幹細胞は体内の どんな細胞にも成り得るのです。

 

13 健康な子どもを欲しくない人がいるでしょうか

変化は到来しています。バクテリア内に ヒトインスリンを作るのと全く同じ技術で ウイルスが作れ 単にそのウイルスからあなたを保護するだけではなく 他のウイルスの抗体まで作れるのです。驚くことに 煙草の葉の細胞内で育てられた インフルエンザのワクチンの 実験検査が現在行われています。煙草から良い物が生成されるなんて想像できますか。これらは現実なのです。将来的にはさらなる可能性があります。想像して下さい。他の2つの小さな変化を 体内の細胞を変えられるわけですが あなたの子孫の細胞を変えるとしたらどうしますか。精子と卵子を変えられたらどうでしょうか。あるいは受精卵を変えて 子孫に健康な生活の機会を与えるのは どうでしょうか。糖尿病や血友病を取り除き 癌のリスクを 減らすこともできます。健康な子どもを欲しくない人がいるでしょうか。そして これと全く同じ分析技術ですが 病気を予防する変化を 起こすことができる 同じ種類の科学的動力によって 我々はまた 記憶力を良くするために 容量を増やすといった 超特性を得られるのです。ケン・ジェニングの速い理解力を 備えてみませんか。特に次世代のワトソンマシーンと クイズ対決をする時に 速く そして 長く走ることを可能にする ピクッと動く筋肉を備えてみませんか。長生きしてみませんか。これらはとても魅力的です。

 

14 新進化の準備はできていますか

我々が次世代にそれを与え そして自分たちが望む特性を備えられる時代に 我々が到達した時 旧来型の進化は 新進化に 変わっているでしょう。我々は通常なら 10万年を必要とするであろうプロセスを 1000年に圧縮することができます。100年にすらできるかもしれません。これらはあなたの孫や そのまた孫が 生前から持つことになる 選択なのです。我々はこういった選択を 社会を良くしたり 繁栄させたり 便利にするのに使っていいのでしょうか。あるいは 我々はそれぞれが欲しい特性を 自分たちのためだけに選び取り 他には関与しないべきですか。退屈で 決まりきった社会 あるいは 活気があって変化のある社会を 我々は作るのでしょうか。これらは我々が将来的に 対面する質問です。そして何よりも重要な事ですが 我々はこの知恵を発達し 受け継がせることを 賢い選択の上でできるのでしょうか。良いのか悪いのか あなたが考える以上に早く これらの選択がやってくるでしょう。ありがとうございました(拍手)

最後に

進化の光に当ててみなければ、生物学のどんな知識も意味を持たない。大半の部分では我々の遺伝子の基盤はほとんど違わない。身体中にある細胞の数より多くのバクテリアを内臓内にもっている。我々の身体の死の不可避性は進化の時に現れる。進化とは最も環境に適応した生物を表している。孤立になることは進化の必須条件。あなたは私的に決めて選択できる新進化を行いますか?

和訳してくださった Naoki Funahashi 氏、レビューしてくださった Kyizom Lily Yichen Shi 氏に感謝する(2011年3月)。

ヒトの進化七〇〇万年史 (ちくま新書)

人体 失敗の進化史 (光文社新書)


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