前回は、世界にモノを売る手段としてネットを活用せよ テレビと映画の将来についてまとめた。ここでは、世界規模の広告モデルか魅力的なモノの課金モデルか 土屋敏男×ひろゆきについて解説する。
第2日本テレビ立ち上げ時の社内の反応
第2日本テレビ立ち上げ時は、真剣にネットをどうするかを考え出しており、社内の反応はトントン拍子だった。一番初めに有料配信したのが松本人志のコント。売上は10万本程度あったが、制作費分は回収できていない。当初は有料課金モデルを目指していたが、現在はユーザーは無料の広告モデルとなっている(日テレオンデマンド)。ネット上のコンテンツをテレビで放送しようという発想で進めている。
ずっと一緒のことをやっているのがおもしろくない
テレビ局に勤めているにもかかわらずネットのような競争の激しいところに行くのは、ずっと一緒のことをやっているのがおもしろくないから。ネットが出てきたことによってテレビの公共性が厳しく問われるようになり、規制が厳しくなっているのも大きい。しかし、テレビとネットでは視聴者の数に差がありすぎて、心が折れそうになることもある。テレビは視聴率1%で60万人が視聴した換算。ネットだと1万人集まれば御の字。
テレビ局もお金を稼ぐ方法を考える必要がある
今のテレビ局にはスポンサーの広告収入に頼る方法しかない。しかし、映画にはテレビ局が出資して制作し、映画館でまずお金をとり、その後DVDにしてもう一度お金をとるという仕組みがある。ネットを使ったテレビ放送も、最終的には課金モデルに行かざるを得ないだろう。ただし、当面は今のテレビにネットをつけるメディアミックスとして広告費を稼いだほうが手堅い。
実は社内組織上の居場所がない…
土屋氏は52歳(当時)だが、プロデューサーとしての金の計算や、管理職として部下の面倒もみれない。だから、別のトピックスを作る必要があった。テレビ局でネット放送のモデルを作るのは、過去の経験や実績がない。しかし、その分やりようがあり、おもしろい。
コンテンツのインターナショナル化が起こる
土屋氏が作っているネットコンテンツは、世界市場をみている。例えば、「アースマラソン」は英語のSNSサイトも同時に動いているし、動画も英語に翻訳して「Joost」に出している。しかし、笑いのレベルやツボが違うため、うまく適合させる必要がある。ネットの特性は、日本にこだわる必要がないこと。ネットコンテンツのプロフェッショナルを世界中に作りたい。
最近のテレビのことは全然わからない
土屋氏は昔からテレビをあまり観ていない。テレビを観るのが好きだからテレビ番組を作りたいわけではなく、おもしろいものを作りたいだけ。特に情報収集を行っているわけではなく、企画を考えてすき間を埋めることを考えている。
言葉を浴びて考えがブレるのはいいこと
ネットであろうとなんであろうと、言葉を浴びることで考えがブレるのはいいこと。そのブレをどのぐらい取り入れれば一番おもしろくなるのか、ブレをどう見せていくのかが、新しいドラマや動画の進行の仕方だと思う。
本質は作り手の執着心や狂気
制作の本質は作り手の執着心や狂気。「エンタの神様」が当たっているからお笑い番組を作ろう、では結局自滅する。熱意を持って裏側にこだわってコンテンツを作れば、それは伝わる。テレビに字幕を入れるのも土屋氏が始めたが、それをなんのために入れているかを理解していないのはダメ。
テレビは99.7%ぐらいが国内消費
テレビは99.7%ぐらいが国内消費。ネットを使って海外でも成功するためには、どこまで広告を取り込めるかが鍵。日本も海外に出せるコンテンツを考えないといけない。映像にお金を払ってもらうためには「やりようと、わかりやすさと、正当性」が必要。結局は、課金システムを超えたいと思えるくらい魅力的なものを作らなければならない。
多言語のバラエティ番組を作ってみたい
最初は多言語のバラエティ番組みたいなものを作ってみたい。コンテンツを英語で作ってYouTubeに出すと、グルジア語なりほかの言語に翻訳してくれて、しかも笑えるように訳してくれるものを使う。YouTubeを嫌うテレビ関係者も多いが、まずはそうやって突破口を開く必要がある。
テレビはコンテンツホルダーが出すものを利用する。一方、ネットはユーザーがおもしろいコンテンツを作って1000人が観たとして、そのコンテンツが100個あれば、その数は10万人になる。「合算すればユーザーが多いから広告ください」という方向にしていきたい。
「リストラされたら西村さんのところに相談に行こうかな」
「もし会社にリストラされたら西村さんのところに相談に行こうかな」と土屋氏は話す。それだけテレビとは違う映像制作がやりたい。テレビの電波は免許事業だから、公共のものを借りて民間企業として利益を出している。そのため、文句を言われると自粛せざるを得ないが、誰にも文句を言われないおもしろいものはないだろう。そして、たいていのお笑いは「いじめだ」と言われたら対応に困る。
今までは文句を言われたら頭を下げて、周りが鎮まるまで沈黙していたが、今後は自分たちの考え方もちゃんと言うべき。抗議に対してどうするのかまでを、すべて公開してやっていくべきだろう。
土屋さんはビジネスモデルとコンテンツの両方を1人で作ろうとしている
土屋氏はずっと変わっているのが好き。そのままの場所でずっと安定していること自体が性格的にダメなのだろう。テレビは日本テレビを作った正力松太郎の遺産で食っている。ネットがファーストウィンドウで、テレビがセカンドウィンドウという考え方にしていく必要がある。「ネット上で2万人が観ているから、それなりにおもしろいんだ」と評価されているものが、テレビで放送される。ビジネスモデルとコンテンツの両方を1人で作ろうとしている土屋氏だからこその発想である。
最後に
ネットの特性は、日本にこだわる必要がないこと。ブレをどう取り入れて見せていくのかが、新しいドラマや動画の進行の仕方。熱意を持って裏側にこだわってコンテンツを作れば、それは伝わる。テレビの今後は、抗議に対してどうするのかまでをすべて公開してやっていくべき。ネットがファーストウィンドウで、テレビがセカンドウィンドウ。感覚的な土屋敏男と、論理的なひろゆき。
次回は、1%のひらめきを99%の努力ができる他人に任せる ひろゆきのルーツについてまとめる。
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