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道州制、金融政策、増税、省庁再編 大阪都構想の真相

「なぜマスコミは、橋下徹や大阪維新の会を気にするのか。それは道州制という日本全体を変革する可能性を持ったビジョンがあるからである」ここでは、高橋洋一『大阪維新の真相』(中経出版)を5回にわたって要約し、維新の会の目的を理解する。第1回は、大阪都構想の真相。

1 日本全体の仕組み、お金の流れを変える起爆剤

「都構想の本質」をマスコミは伝えようとしていない

大阪都構想は、単に大阪という1つの都市を変えるための構想ではない。その先に「道州制」というビジョンを据えている。

 

日本のマネジメントには「道州制」が不可欠

道州制とは、国、都道府県、市区町村となっている現在の国の構造を、既存の市区町村を再編した「基礎的自治体」、基礎的自治体の集合体である「道州」、そして「国」という三層構造にすることである。

日本は人口規模では世界10位である(世界保健機関「World Health Statistics 2013」より)。日本ほど大きな国になると、全国一律で行政をするのは難しい。その対策として出てきたのが道州制である。

 

東京に住む大臣が「原発は安全」と言っても説得力がない

例えば、原発問題1つをとっても、原発がない地域の人が原発問題について語っても現実感がない。地元に住む人が中心となって判断を下すのが筋である。

 

国に「現場をわからせる」のは無理

また、八ッ場ダム(群馬県)や鳥インフルエンザの問題も同じである。国が関与して現場を見たりするよりも、地元の人に権限を与えて動いてもらったほうが効率がいい。

 

本来「国がやるべき仕事」はごくわずか

道州制の基本は、最初に基礎的自治体が仕事を取り、残りが出たら道州に任せるというものである。原発のように、影響が半径50キロ、100キロという広域に及ぶ問題は基礎的自治体を超えるため、道州単位の課題になる。道路も広範囲に及ぶが、これも道州に任せればいい。

 

2 大阪は一里塚。これを機に道州制が始まる

大阪都構想は1つの「プロセス」でしかない

道州制に移行すると、地域の再編が必要になる。効率性を考えると基礎的自治体は人口30〜50万人程度がよく、目配りが利いて業務がやりやすいといわれている。その点で、規模が大きすぎるのが大阪市である

大阪市の人口は267万人以上(2012年6月現在)。これを人口30万人程度からなる7〜9の基礎的自治体に分割し、さらに大阪都を含む関西州を構築するというのが大阪都構想である。つまり、大阪都構想は大阪以外にも関係があることである。

道州の適正規模は1000万〜2000万人とされている。今の都道府県だと小さすぎるため、地域主権型道州制国民協議会では13の州に分けることを提言している。

 

都構想が物議を醸すのは「役人のポストを減らす」から

都構想が進められると、それぞれの都道府県に1つずつの知事ポストが大幅に集約される。このように、道州制を頭に入れながら大阪都構想を見る、大阪維新を見ることが重要である。

 

3 国に出る幕なし。必要なのは地方の裁量だ

国の最善の成長戦略は「何もしない」こと

国の最善の成長戦略は「何もしないこと」である。過去の実績から見ても、国が産業振興をしてよい結果をもたらしたケースはほとんどない。そのために、行政を国から道州に移管すれば国の権限は減り、成長を阻害するものがなくなる。そして規制緩和も同時に達成できる

オールジャパンでやろうとするとひいきになるが、選挙の洗礼を受ける地方でやれば地域の実情に合わせた有効な手を打つだろう。

 

地方ごとに「どこからお金を引っ張るか」が変わってくる

規制を緩和して財源も地方に移せば、お金が効率的にまわる。税収や雇用を確保するためにカジノを誘致する自治体も出てくるかもしれない。こうした地元の施策も道州制にすれば地域の人が決められる。

 

地方に権限を持たせたほうが、国力は充実する

小さな港をたくさんつくったのは、国が地方を上から目線で捉え、全国平等にやるという思想があるからである。そのため、日本の港湾は規模が小さく、アジア諸国に取扱貨物量のシェアを奪われるのである。

 

原発という不良資産は国が買い上げよ

脱原発がしにくいのは、原発を使わなくなると原発が不良資産になってしまうからである。一企業ではリスクを背負い切れないのだから、原発を再稼働させるならば国の責任でやればいい。

 

4 増税なしの再建の道が大阪にはある

維新政治塾で話した「金融政策の基本」

インフレ率が下がると経済が不活発になり、失業率が上がる。「フィリップスカーブ」として知られているが、失業率とインフレ率には「逆相関」の関係がある。つまり、一方が増えるともう一方が減るという関係である。

 

「為替レートに左右されない経済構造」は簡単につくれる

金融政策では、為替レートを適切な水準に維持して輸出企業の業績に悪影響を与えないようにすることが重要である。それは、ドルに対する相対的な円の量を増やせば円高は是正できる。外需依存との批判もあるが、どこで稼いだとしても国内が豊かになれば関係がない。

 

小泉首相の「増税せずに再建」との注文への回答

「増税せずに財政再建」するために経済を上向きにさせ、それを保ち、その余波で構造改革を行った

 

道州知事の腕次第では経済メリットが生じる

財政再建をするには経済成長するのが最も簡単である。例えば、金融緩和によって失業率が下がるとしても、どの地域で雇用が発生するか、どの地域がメリットを受けるかは道州知事の腕次第である。

 

5 数学的に見ると、府市の役割は分けるべき

大阪市は行政区の規模が小さすぎて効率が悪い

大阪市24区の平均人口は11万人で、20ある政令市の中でも新潟市8区の平均人口10万人に次いで2番目に少ない。東京都23区の平均人口は39万人である。行政区の人口が多いほど、人口1人あたりのコスト(人件費・物件費)が抑え、行政を効率化できる

例えば、政令市における「清掃工場の規模」と「清掃工場がカバーする区数」の関係を見ると、大阪市や堺市は標準的な数より大きい。つまり、大阪市と堺市は区の統合を行ったほうが効率がよいのである。

 

政令市がインフラ事業を手がけると無駄が生まれる

社会インフラ、交通インフラはある程度規模を大きくしたほうが合理的である。例えば、東京都では上下水道・消防のような広域事業は都の役割になっているので、大阪でも水道事業は大阪市から大阪府(大阪都)に移管されていい。地下鉄やバス事業も大阪府が行ったほうがよい。

 

6 経産省、国交省は海外にはない

今は「国の仕事」が多すぎる

現在は国の仕事が多く、都道府県が担っている仕事は少なすぎる。例えば道路や空港も、道州制になれば知事が選挙などで訴えればよい。同時に、管理も各道州が担うことになるため、運営がシビアになる。その意味で責任が重大になるため、道州制をいやがる知事も出てくるだろう。

 

国がコストを負担するから無駄な空港ができてしまった

大阪府には関西国際空港と大阪国際(伊丹)空港があるが、伊丹空港はコストとリスクに見合った利便性はない。しかし、現在は国交省が管理しているため同省の許可を得なければならない。

道州制になれば、空港の発着料や空港利用料もすべて道州に入るようになるが、その管理コストもすべて負担するため、存続か閉鎖を自分のこととして考えられる。

 

中央の国交省、農水省、文科省、経産省は不要になる

道州制になれば、国交省、農水省、文科省、経産省はいらなくなる。仕事がいらないのではなく、仕事が国から道州政府機関に移るのである。公務員の待遇等も首長が決めるようにし、最終的には住民が決めればよい。

 

国は「国にしかできない大事な仕事」を担う

国交省や経産省のような役所が中央政府に存在する国はほとんどなく、その役割は地方政府が担っている。文科省による教育もそこまで一律ではない。国は保険の原理から年金制度程度を担えばよい。医療制度は道州がよいだろう。

 

分権はしても通貨は同一のままがベター

日本の規模・経済範囲では道州で通貨を分けたりするより、1つの通貨のほうがやりやすい。つまり、金融政策は国が担えばよい。

 

最後に

大阪都構想の先には道州制というビジョンがある。道州制とは、国、都道府県、市区町村という国の構造を、基礎的自治体、道州、国という三層構造に再編すること。地方にできることは地方がやろう

次回は、財源、地方交付税、消費税、新たな利権 大阪維新の経済政策についてまとめる。

大阪維新の真相


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