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ジャック・アンドレイカ 「有望な膵臓がん検査」

「インターネットを使えば、何も知らない15歳でも画期的ながん検査を開発できます」ジャックは語りかける。ここでは、110万ビューを超える Jack Andraka のTED講演を訳し、膵臓がんの早期発見を可能にする有望な方法を開発した過程を理解する。

要約

85%以上もの膵臓がんが2%未満の生存率しかない手遅れの状態で発見されます。なぜこんなことになるのか? ジャック・アンドレイカが、膵臓がんの早期発見を可能にする有望な方法を開発した過程を語ります。超安価、効果的、かつ侵襲性の低い方法を、なんと16歳の誕生日を迎える前に作り出しました。

A paper on carbon nanotubes, a biology lecture on antibodies and a flash of insight led 15-year-old Jack Andraka to design a cheaper, more sensitive cancer detector.

 

1 13歳のとき、家族で親しくしてた人がすい臓がんで亡くなった

みなさんはこんなことを経験したことがありますか? とにかく辛くて混乱するような事に遭遇し 起こったことをできる限り調べて なんとしても理解するしかないという気持ちになった経験はありますか?13歳のとき家族で親しくしてた 叔父さんのような人が すい臓がんで亡くなりました。本当に身近な人がこの疾患に襲われ もっと知らなければと感じたので ネットに繋いで答えを探しました。

 

2 すい臓がんの85%が手遅れな段階でしか発見されず、患者はたった2%以下の生存率しかない

インターネットを使ってすい臓がんの 色んな統計を見つけました。その統計は衝撃的なものでした。すい臓がんの85%が手遅れな段階でしか 発見されず 患者はたった2%以下の生存率しかないというのです。なぜ すい臓がんを見つけるのがこんなにヘタなのか? 理由?現在の現代医学が 使っている技術は 60年前のものを使い続けているからです。うちの父さんよりも年上です(笑)。

 

3 費用も800ドルと高価で、すい臓がんの30%以上を見落す

それだけでなくてかなり高価です。判定毎に800ドルかかって その上 検査はなはだしく不正確で すい臓がんの30%以上を見落としてしまいます。担当医が検査の指示を出すには バカバカしくなる程 患者を がんと疑う必要があります。これを知って もっと良い方法があるはずだという確信がありました。そして すい臓がんを効果的に検出するために センサーが満たすべきと考える 科学的な基準を決めました。センサーは安く 速く 簡単で 高感度で判定度が高く 低侵襲でなければなりません。

 

4 がん検査が60年間も新しくならなかった理由

実は がん検査が 60年間も新しくならなかったのには理由がありました。それは すい臓がんを検出しようとするときには 体内を流れる血液を調べて 既に山のようにある豊富なタンパク質の中から ごく少量に存在する ある特定のタンパク質に発生する 微妙な量の違いを探します。ほとんど不可能なことです。

 

5 ティーンの楽観的な想いはそんなことに屈しない

でも ティーンの楽観的な想いはそんなことに屈しません (拍手)。ティーンの「親友」のGoogle とWikipedia を開けて 調べ始めました。宿題をするときはこの2つを使えば何でも分かります。こんな記事を見つけました。すい臓がんになると検出される8,000種のタンパク質を 納めたデータベースがあるという記事でした。そして 新しいミッションができました。タンパク質データを全て調べて この中のどれかがすい臓がんを見つける バイオマーカーとなるか調べることにしました。自分自身にとってよりシンプルにする為に 科学的な基準を作ることにしました。こんな基準です。何よりも第一にそのタンパク質の血中レベルが ごく初期の段階から全てのすい臓がんの患者で高くなり がんである場合のみ変化が見られるものでなければいけません。

 

6 4000種を確認したところでメソテリンを発見した

僕は超膨大な作業をどんどん淡々と進めて行き 4,000種を確認したところで 正気を失う寸前でしたが ついに タンパク質を見つけました。やっと突き止めたこのタンパク質は メソテリンと呼ばれています。どこにでもある ありふれたタンパク質です。すい臓 卵巣 肺のがん でない場合はです。がんになっている場合は大幅に増加して発現します。これが重要な鍵となるのは 疾患のごく初期に見つかることで 患者に100%に近い生存率がある そんな時期です。

 

7 画期的な突破口は予期しない所でやってきた

検出に使える信頼性の高いタンパク質を見つけたので 次は どうタンパク質を検出し、つまりはすい臓がんを 見つけるのかということに焦点を移しました。画期的な突破口は予期しない所でやってきます。恐らく最も不釣り合いな所です。高校の生物の授業中 イノベーションが最高に抑制されている所(笑)(拍手)

 

8 カーボンナノチューブと抗体を組み合わせられるかもしれないと気付いた

カーボンナノチューブのこの記事を こっそり持ち込んでました。炭素でできた長くて細い管です。原子1個分の厚さです。みなさんの髪の毛の直径の50,000分の1です。極めて小さいものですが 非常に素晴らしい特性があります。材料科学のスーパーヒーローみたいなものです。生物の授業中に僕がこっそりとこの記事を 机の下で読んでいた一方で きちんと聞くべき授業で 扱っていたのは 抗体という 別の 素晴らしい分子についてでした。抗体がすごいのはたった1つの タンパク質にだけ反応することです。でもナノチューブほどには興味を引かれませんでした。まぁだから ただ授業を受けていたのですが 突然ひらめきました。この読んでいたカーボンナノチューブと 授業で考えているべき抗体を 組み合わせられるかもしれないと気付きました。本質的には 大量の抗体をナノチューブの網構造に 編み込んで 特定のタンパク質にだけ 網構造が反応するようにした上で ナノチューブの特性を利用して存在するタンパク質の量に応じて 電気特性が変化するように できそうだと気が付きました。

 

9 ナノチューブの網構造は極端にもろい

ただし 問題がありました。ナノチューブの網構造は極端にもろいのです。網構造はとても壊れやすいので維持する支えが必要でした。この為 紙を使うことにしました。紙から がんの検査紙を作るのは チョコクッキーを作るくらい簡単にできます。大好物ですが まず用意した水にナノチューブを加え 抗体も加えてかき混ぜます。そこに紙を持ってきて浸し 乾かしたら これだけでがんが検査できます(拍手)

 

10 がんの研究をするには家のキッチンではできない

そこで 急に気が付きました。僕の素晴らしい研究計画にちょっとした影を落とすようなものです。がんの研究をするには家のキッチンでは できないということです。母にも不便かもしれません。そこで その代わりに研究所で研究しようと決めました。そして 材料一覧 予算 研究予定表 研究手順を書き上げました。そして それをジョンス・ホプキンス大学と 国立衛生研究所の 200人の教授にメールしました。基本的に すい臓がん関係の研究者全員です。こんな了解のメールが送られてくるのを待ってました 「きみは天才だ! これでみんなが救われる!」

 

11 200件の送信メールに199件の却下メールが届いた

そして― (笑)でも 現実は甘くなくて 1ヵ月ほどの間に 送った200件のメールに199件の却下メールが届きました。ある教授は 研究手順の全てを細かく確認して ― 一体どこにそんな時間があったのかと思いますが ― 手順の1つ1つ全てこんな酷いものは無いという風に 指摘してきたのです。僕の研究構想を自分で思っていたほどには 教授たちが高く評価していないのは明らかでした。でも 希望の兆しがありました。ある教授から 「私のところで キミのこと手助けできるかもしれないよ」 とのメールが届いたのでそっちへ向かいました(笑)。子どもに だめと言うな!というのに従うようでした。

 

12 20人の博士と教授が研究手順に穴を開けようと質問攻めにされた

それから 3ヵ月後 この人が絶対会える日をやっと取りつけて 彼の研究室へ行きました。僕は もの凄くウキウキしてイスに座り 口火を切って話し始めると 5秒もしないうちに別の博士を呼びます。こんな狭い研究室に博士が何人も集まってきて 僕を質問攻めにしました。最後には すし詰めの満員電車かのようでした。20人の博士と僕と教授が この小さな研究室に詰め込まれ みんなで質問を次から次へと投げかけて 研究手順に穴を開けようとします。こんなことってありますか?どうとでもなれです(笑)

 

13 1つの小さな検査紙で、費用は3セントで5分でテストできるようになった

しかし この尋問にさらされながらも 全ての質問に答えました。かなりの数に勘で答えましたが正答でした。そうこうして ついに研究場所を手に入れました。でも その後すぐに気づくことになりました。一時は輝かしい手順と思えた手順には おびただしい数の間違いがありました。7ヵ月以上の時間をかけて 1つ1つ丁寧に全ての間違いを直していきました。どうなったかって?1つの小さな検査紙で 費用は3セントで5分でテストできるようになりました。この方法なら168倍速く 26,000分の1以下の費用で 400倍の感度で検査できます。現在の標準的な検査方法と比べた場合です(拍手)

 

14 2〜5年以内にすい臓がんの生存率を5.5%から100%近くに引き上げる可能性がある

でも 最高なのはこの検査紙が 100%に近い正確さで検出できることと 患者が100%に近い生存率がある ごく初期のがんを検出することができるところです。ということは今後2〜5年以内には この検査紙がすい臓がんの生存率を 悲惨な5.5%から100%近くに 引き上げる可能性があり 卵巣や肺のがんでも同じように生存率を上げるでしょう。

 

15 抗体の種類を変えることで違う疾患を検出できる

でも これで終わりではありません。抗体の種類を変えることで 違うタンパク質を検出する様にすれば 違う疾患を検出できます。潜在的に 世界中のどんな疾患でも検出出来るでしょう。心臓疾患に始まり マラリヤ HIV AIDSまで。また 他の種類のがんだったり何にでも使えます。

 

16 インターネットを使えば何だって可能

いつの日かこうなればと願います。以前は助からなかった1人の叔父さんが助かり 母親が助かり兄弟が姉妹が助かり 愛すべき家族の一員が助かるよう願います。すい臓 卵巣 肺のがんの疾患のことを考えて悩まされ 心配することがなくなるようにそしてどんな疾患にも 苦しまなくても良くなるようにと願います。インターネットを使えば何だって可能です。理論を人に伝え共有しても良くて 価値あるアイデアと評価されるのに 複数の学位を持った教授である必要はありません。中立的な場所で 見た目や年齢やジェンダーが何であれ 影響はなく アイデアだけが重視されます。僕の場合にはインターネットに対して 全く新しい見方をしたのが全てでした。ネットはもっと別の使い方ができて 皆さんのふざけた顔の写真をアップロードする以上に 使い方によっては 世界を変えていけるかもしれないと気付きました。もし すい臓が何かさえも 知らなかった15才の子が 新しいすい臓がんの検査法を発見できたとしたら 皆さんなら何ができるか想像してください。ありがとうございました(拍手)

 

最後に

カーボンナノチューブと抗体を組み合わせれば、がん検査が簡単になるかもしれないと気づいた。研究の結果、3セントで5分で検査ができるようになった。何も知らない15歳でも、インターネットは中立な立場で、アイデアだけが重視される環境を提供してくれる

和訳してくださった Akinori Oyama 氏、レビューしてくださった Akiko Hicks 氏に感謝する(2013年7月)。

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