選択は我々をより無力に、より不満足にしている心理学者バリー・シュワルツ氏のTEDでの講演。以下は趣旨の要約。
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心理学者バリー・シュワルツが、選択の自由という西欧社会の根幹をなす教義に狙いを定めます。シュワルツの推定によると、選択は我々を更に自由にではなくより無力に、もっと幸せにではなくより不満足にしています。Barry Schwartz studies the link between economics and psychology, offering startling insights into modern life. Lately, working with Ken Sharpe, he’s studying wisdom.
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シュワルツ氏によると、選択の自由には以下の2つの負の影響がある。
1 無力感
非常に多い選択肢を前にすると、選択することが難しくなること。たとえば定年後の年金投資計画。会社が提示する投資信託が10件上がるごとに、参加率が2%減少した。50件の投資信託を提示すると5件提示したときと比べ、10%も減少するということ。
他選択例
・スーパーでのドレッシング。175種の味、10種のオリーブオイル、12種のバルサミコ酢から選ぶ。
・患者の自己決定権の尊重。医師から「この病気だと○○という治療法、××という治療法がありますが、どれにしますか」と言われる。
・結婚やキャリア。いつ、どこで、誰と結婚するか。子どもはどうするか。早く結婚して子どもを産む、という選択肢しかなかった頃に比べ、選択肢が多い。課題を出すよりも重要な選択。
・仕事。ネットとパソコンがあれば世界中のどこでも仕事ができる環境にある。iPhone等でもできる。子どものサッカーの試合中でもできる。
2 不満足
自分の選択を後悔することによる、満足感の減少のこと。機会費用(ダン・ギルバード)。選択肢が多いことから後悔が生じやすい。
たとえば仕事をしているときにはゴルフのことを、ゴルフをしているときにはセックスのことを、セックスをしているときには仕事のことを考えたりする。
期待値の増大。ジーンズの試着を数多くした着心地のよいものが見つかったとき、気分は最悪だった。選択肢がないときには期待していなかったが、あることにより期待値が上がってしまった。
みんなある程度の金魚鉢(限界)は必要である。
★★★
キャリアに関しては、「アンコモンセラピー」(ジェイ・ヘイリー) のライフサイクルを思い出した。誕生、親離れ、友人形成、恋人形成、家族形成、子離れ、死…といったサイクルの方が、生きる上では重要であるということ。
また少しでも心理をかじった人ならば、下記の用語や著書を思い出すかもしれない。
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・学習性無力感(マーティン・セリグマン)・自己効力感(アルバート・バンデューラ)
・「自由からの逃走」(エーリヒ・フロム)
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いずれも人が自由や不自由な状況に置かれたとき、どのような行動を選択しがちか、その結果どのような効果があるか、ということへの示唆が含まれている。
やさしくいえば「個人の主体性の強さに応じて、選択肢を用意しよう」だし、
厳しくいえば「選択の重圧に耐えられるだけの意志を持て」となる。
ドM的に言えば後者が好きである。仕事では妥協しない。
しかし、家族・友人といった人間関係においては、ある程度の限界をもって接するのが、お互いにとってラクな気がする。
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