penguins

ディー・ボーズマ ペンギンに注目

「ペンギンは真のアスリートで、見張りとしての素質も科学的に優れています」ボーズマは語りかける。ここでは、30万ビューを超える Dee Boersma のTED講演を訳し、海の番兵ペンギンのメッセージについて理解する。

要約

ディー・ボーズマンは海洋の変化を最前線で目の当たりにするペンギンを海の番兵だと表現しています。ディーは、ペンギンの生き方と文化を通じて、ペンギンの発するメッセージに私達が耳を貸すことへの必要性を説きます。

Dee Boersma considers penguins ocean sentinels, helping us understand the effects of pollution, overfishing and climate change on the marine environment.

 

1 根本的な問題は大量消費と人口増加

今日はペンギンの話をします。まず初めに伝えたいことは 海と地球のために 新しいオペレーティングシステムが必要です。40年以上前にガラパゴスに来たときは ここに住んでいた人は 3000人程でしたが 今では3万人を超えています。当時サンタクルーズにはジープが2台あるだけでした。今では数千のトラックや バス そして車がひしめいています。つまり根本的な問題とは 大量消費と人口増加です。ガラパゴスの問題も同様ですが もちろん ここは他の場所に比べて深刻です。理由はガラパゴスの人口が1960年と比べて 二倍を少し上回るまでに増加したことです。しかし世界の人口は67億と言われていて 消費を嫌う人はいないのです。主要な問題の一つは 私達のオペレーティングシステムが 正しくフィードバックを返していないことです。私達の行動に対して 環境に十分な対価を支払えていないのです。

 

2 ペンギンは真のアスリート

22歳の時フェルナンディナに引っ越してきましたが それ以前にはキャンプの 経験はありませんでした。一人暮らしをしたことも ありませんでした。いびきをかくアシカと 夜を過ごしたこともありませんでした。更に言えば 無人島生活が初めてでした。プンタ・エスピノーサで一年を過ごしましたが 私達はそこを無人島と呼びました。他に人がいなかったからです。しかし動植物は豊かで 無人と言えないくらいでした。この40年の間にいろんなことがありました。

私がガラパゴスに来て学んだことは 未開拓の自然や野生生物が 大切だという事と ペンギンの素晴らしい特性です。ペンギンは真のアスリートです。1日で173kmを泳ぎ ペースを落とすこともありません。オリンピック選手も敵いません。これは1時間に7kmのペースで 泳ぎ続けることができるということです。しかし本当に驚くべきは彼らの泳ぐ水深です。皇帝ペンギンは500m以上も 潜ることが可能です。更に23分も息を止めていられるのです。私の研究しているマゼランペンギンは 水深約90mまで潜ります。約5分間もそこに いることができます。人が足かきなしで水深90m地点で 4分も潜っているなんて 皆さんの中にできる人はまずいないでしょう。訓練なしでは不可能でしょうね。ペンギンは素晴らしいアスリートなんです。

それと ペンギンが嫌いという 人には今まで出会ったことがありません。ひょうきんさ 直立歩行 勤勉さも持ち合わせています。忘れてならないのが美しい身なりです。つまり人を引き付ける 条件をすべて兼ね備えているのです。しかし科学的に優れている点は見張りとしての素質です。彼らは地球の特に海について 違った視点から教えてくれるのです。

 

3 4分の1のペンギンは私たちが40年前に数えたもの

これはガラパゴスペンギンの写真です。ゴムボートの先端にちょこんと立っています。彼らが私の研究目的でした。このペンギンの社会的行動を研究するつもりでしたが ご存知の通り とても希少な種なんです。世界的にも稀なペンギンなんです。なぜこんな研究ができると思ったのかはわかりませんが 初めてここを訪れた時から 人口は急激な変化を遂げていました。初めてペンギンの人口調査を したときには ただ見つけられる限り ペンギンのくちばしを数えていきました。2000程数えたところで実際は何匹いるのか 分からなくなってしまいました。もしこれを今やれば国立公園は 500とカウントするでしょう。なので4分の1のペンギンは 私たちが40年前に数えたものなのです。 地球上の生態系によく見られることですが 動植物の頭数は減少しており ほとんどが劇的な減少を続けています。なぜそうなるのか説明したいと思います(鳴き声)

 

4 エルニーニョはペンギンにとって一大事

これはペンギンの鳴き声です。私達がペンギンに対して 注意を払う必要を叫んでいます。もっとも重要なのは 初めて 聞いた時ペンギンだとわからなかったことです。初めてフェルナンディアで寝るところを想像してもらえればわかりますが 寂しい、悲しげなこの鳴き声を聞いて 私はペンギンが大好きになりました。そして私の人生を大きく変えました。研究して分かったのは ガラパゴスがどう変化したかが 重要なのです。エルニーニョはご存知だと思いますが これはペンギンにとっては 一大事なんです。こちらは水温が低下する ラニーニャと呼ばれる現象です。青と緑の部分は水温がとても低い地点です。そしてこれを見れば分かると思いますが ペルー海流は ガラパゴスに向かって流れてきています。この赤道潜流と呼ばれる海底海流は ガラパゴス周辺で海面へ浮上をします。この海流が流れ込み ガラパゴス周辺の海水が冷やされると 栄養価の高い食料がとれるようになります。

 

5 上昇流がなくなるため食糧が無くなってしまう

激しいエルニーニョが発生すると ガラパゴスの辺りは 全て赤色に染まり 緑がなくなってしまいます。上昇流がなくなるので 食糧は無くなってしまいます。まるで砂漠のように ペンギンだけでなく、アシカやイグアナたちも 餓死する可能性がでてくるのです。しかしペンギンを研究している間 私達はガラパゴスがこんな影響を受けているとは知りませんでした。ペンギンを見ようとガラパゴスを訪れても エルニーニョの最中だと ペンギンがいないこともありうるわけです。ペンギンは出産もしません。同じ場所でウミイグアナの研究もしましたが 私たちはこれが世界の問題だと気づいていました。

これは私が今働いているアルゼンチンの海岸線です。プンタトンボという場所があります。ここは世界最大のマゼランペンギンの生息地です。ここより南へ44度下がった所に とても面白い場所があります。ある年には冷たい海水が ブラジルまで注ぐのに ラニーニャの年にはそうはなりません。海洋はいつも同じように活動するわけではないんです。しかしペンギンはこの変化と 乗り越える必要があります。これは簡単なことではありません。ペンギン研究の為に訪れた時は 何も問題はありませんでした。ペンギンはたくさんいました。

 

6 1987年から21%ほど減ってしまった

これは2月のプンタトンボの写真です。ビーチ中にペンギンが確認できます。日本人にペンギンを獲ってくれと頼まれて行きました。高価なゴルフグローブや プロテインや油にするためです。幸運なことに誰もペンギンを捕獲することはありませんでした。毎年10万を超える観光客がペンギンを見にきます。しかしペンギンの人口は減っています。その減少率は相当なもので 調査を初めて 1987年から活発な巣を比較すると 21%程減ってしまいました。プンタトンボはここにあります。ペンギンは密集した場所で育種します。長年の研究により 明らかになりました。そして科学は何か決断する際とても役立ちます。そして私たちがどのように変わっていき どのような方向へ進むのか導いてくれます。

 

7 環境に配慮した正しい勘定体系の創設を目指している

私達はこの27年間でたくさんの出資者や 野生生物保全論研究会のもと ペンギン保護プロジェクトを創設し このような地図を作成することができました。そしてガラパゴスペンギンだけでなく マゼランやその他のペンギンも 問題に直面しているのです。そこで世界規模でペンギンの苦境を 軽減するための保護活動を始めています。ペンギンにとって厄介なものの一つに油濁があります。ペンギンは油が嫌いで その中を泳ぐのも嫌います。幸いにもアルゼンチン周辺を見てみると 表面的には油濁が起こっていません。しかし実際にはアルゼンチンへ行くと 油にまみれたペンギンを 頻繁に目にしました。彼らはそうせざる負えなかったのです。油を含んだバラスト水の中を泳いでしまったのでしょう。タンカーで油を輸送する際には どこかで溜まった水を放出する必要があります。油がない時はブラスト水を入れ 港に戻った際にこの油まみれの ブラスト水を海に流しているのです。なぜこんなことを?環境への 配慮を割愛してコスト削減ができるからです。このコストは大抵不要ですが 環境に配慮した対価を支払うべく 正しい勘定体系の創設を目指しています

 

8 60%以上のひなが油まみれだった

アルゼンチン政府は初めこう返答しました 「ありえん。油まみれのペンギンなどいない。ここには法律があり 違法投棄をすることは禁じている」 それから油まみれのペンギンが いると納得させるのに9年がかかりました。ある年には今年のように 80%以上の大人の ペンギンが油に絡んで 死んでいるのをビーチで見つけました。青い点はひなの数を表しています。この調査を毎年3月に行っています。ひなが外にいるのは 1月から3月だけです。つまりこの三か月で油の 被害を受けている可能性があるのです。ある年は60%以上の ひなが油まみれでした

やっと政府が聞く耳を持ち 驚くことに法律改正をしてくれました。政府が貨物線の航路を 陸から40km離れた所へ変更すると 違法な放水は減少しました。その結果油まみれになっている ペンギンの数は激減しました。なぜ完全になくならないのでしょう? チュブ州というプンタトンボのある 地域の問題は解決したんですが これは海岸沿いの 約1000kmに当たります。アルゼンチン北部や ウルグアイ ブラジルではまだ未解決だったのです。

 

9 気候変動によるペンギンへの影響

今からペンギンへの影響に移って話を二つします。まず気候変動この研究は面白いですよ。マゼランペンギンの背中に 衛星通信タグ取り付けました。寄付者を説得するため数千ドルを渡して 通信タグを取り付けました。ペンギンの生息範囲を知るため10年以上この調査をしています。約30km範囲の 海洋保護区域が必要と考え ペンギンにチップを付けました。この調査では 2003年に孵化をした ペンギンが移動した地点を この点として記録しました。ご覧の通り巣から800kmも離れた 場所まで移動するペンギンもいるのです。つまり 両親の片方が 巣で卵を温める間に もう一方は食料を探すのです。巣を開ける時間が長ければ 巣の状態は一層悪化をします。これはもちろん悪循環となって 育てる ひなの数は減少します。

 

10 10年前との比較では平均で40km以上も範囲が拡大している

ご覧の通り2003年では 巣一つにつき0.5匹を 少し上回る数の ひなしか育っていません。さて 2006年には 巣一つあたりのひなの数は 0.75匹程に上昇しました。プンタトンボ付近に点在していることが確認できます。つまり遠くへは行ってないのです。この前の2009年には ひなの数値は0.25程に 激減しています。巣から900km以上も 離れているペンギンも見られます。シカゴで働いていたのに セントルイスに転勤に なったようなものです。こうなれば交際相手は これから支払うフライト代と 遠距離恋愛を不満に思うでしょう。同じことがペンギンにも当てはまります。10年前との比較では 平均で40km以上も範囲が拡大しています。

こういった情報は公開していくべきなんです。そこで小説を出版するような形で 最新の科学情報を伝えている Society for Conservationとの 共同出版を開始しました。私達は情報を抽出し分かりやすく 書きまとめることができる 優れたライターにも恵まれていました。最新科学と賢い 保全活動に興味があるなら 私達の11のパートナーと共に活動しましょう Nature Conservancy等ここにいらしている団体もいます。ぜひ雑誌を読んでみてください。というのも情報を一般の方にも情報発信を しなくてはいけないからです。

 

11 ペンギンも人間も変わらない

そして最後に おそらく 皆さん全員が 犬や猫といった動物と 今までに触れ合う中で 動物にも個性があると気づいたでしょう。家族の一員だと考える人もいるでしょう。もしペンギンと触れ合えばをもったら 同じことを感じると思います。ペンギンは素晴らしい生き物で あなたの世界感を変えるはずです。ペンギンも人間も変わりないからです。必死に生きようとしています。子育てには必死に取り組みます。この世界で生き抜こうとしています。

この写真は、ペンギンのターボです。ターボは餌付けされたことがありません。こいつは私達と会ったときに 私のディーゼルトラックの ターボトラックの下に立ったんです。それでターボと名付けました。ターボはくちばしでよくドアを叩いてきます。そうすればドアを開けて中に入れてやります。お見せしたかったものがあります。ターボがある日友達を 連れてきた時の映像です。こちらはターボです。私の大学院生に近づき羽をパタパタしています。これは本来ペンギンが雌にする行動です。噛みつこうとしているわけではないんです。友達の方は初めてここに来たので 何が起こっているのか探っているんです 「こいつ何してるんだ? 変なやつだな」 もうすぐこの 生徒が… 見て下さい。一生懸命に 羽をバタつかせています。友達の方は生徒の方を見て 「本当に変なやつだな」という感じで 噛みつこうとしましたね。ペットの犬やネコのようにペンギンにも それぞれ個性があります

 

12 自分を変えることができるのは自分自身

情報収集とコンピュータ・リテラシーの 強化にも私達は取り組んでいます。巣にコンピュータを設置して そこに情報を書き込んでいます。そしてペンギン達は良くも悪くも 私たちの研究を手伝ってくれています。これにはRFIDシステムを採用しています。バーコードの記載された米粒大の機器をペンギンに 付けることで位置を特定できます。パッドの横を通れば個体識別がされます。

今からペンギンが数匹やってきますよ。このペンギンは巣に帰るところです。みんなこの時間には帰ってくるんです。こいつはゆっくり歩いていますね。急いだメスのペンギンがやって来ました。急ぐ理由は暑さとえさを 待っているひな達です。もう一匹ゆっくりと帰ってきましたね。こいつは太ってますね。彼もひなにえさを与えるために戻ってきたんです。そして私はペンギンが 箱で遊んでいるのを見つけました。この箱は私のもので システムは今も稼働中です。ペンギンたちはワイヤーを眺めていますが どうも好かないようです。ワイヤーを抜いてしまいました。データが消えましたね(笑)

ペンギンは本当に素晴らしい生物です。さて一番大切なことは 自分を変えることができるのは 自分自身だということです。世界を人とペンギンに とってよいものにできるのも あなた自身なのです。ありがとうございました。

 

最後に

根本的な問題は大量消費と人口増加。ペンギンは真のアスリートで、見張りとしても科学的に優れている。エルニーニョはペンギンにとって一大事。上昇流がなくなるので食糧は無くなってしまう。1987年から21%ほど減ってしまった。ある年は60%以上のひなが油まみれだった。ペンギンにもそれぞれ個性がある。ペンギンも人間も変わらない

和訳してくださったYumi Akiyama 氏、レビューしてくださった Takahiro Shimpo 氏に感謝する(2010年4月)。

ペンギンが教えてくれた 物理のはなし (河出ブックス)


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