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シンシア・ブリジール パーソナル・ロボットの台頭

「なぜ火星ではロボットを使っているのに、私たちのリビングルームにはいないの?」ブリジールは語りかける。ここでは、80万ビューを超える Cynthia Breazeal のTED講演を訳し、パーソナル・ロボットの可能性について理解する。

要約

大学院生の頃 シンシア・ブリジールはなぜ火星ではロボットを使っているのに 私たちのリビングルームにはいないのか考えました。彼女が気づいた鍵は、人々と交流できるようにロボットを学習させようとするものでした。今彼女は、そのような考えのもとで、人に教えたり、学習し、一緒に遊べるようなロボットを作っています。子ども達のための新しいインタラクティブ・ゲームの驚くべきデモをご覧ください。

At MIT, Cynthia Breazeal and her team are building robots with social intelligence that communicate and learn the same way people do.

 

1 私はパーソナル・ロボットというアイデアに魅了されてきた

小さい子どもの頃から 『スター・ウォーズ』を見てからというもの 私はパーソナル・ロボットというアイデアに 魅了されてきました。子どもの頃は ロボットが私たちと交流し合い 私たちを助け 信頼できるパートナーとなるというアイディアが大好きでした。私たちを喜ばせ 人生を豊かにしてくれたり 銀河の一つか二つ救う手助けをしてくれるのです。そのようなロボットは実在しないことは知っていましたが それを作りたいと強く思っていました。

 

2 ロボット工学は物とのやりとりにのみ注力されていた

20年後 私はMITの大学院生となり 人工知能を勉強していました。時代は1997年です NASAが火星に始めてロボットを着陸させた年でした。でも皮肉なことに ロボットはまだ私たちの家にはいませんでした。なぜそういう結果となったのか その理由について考えていたのを覚えています。でも何より衝撃的だったことは ロボット工学が物とのやりとりにのみ注力されていたことです。人とではありません。これは間違いなく 社会的に日常生活において 人々がロボットを受け入れる 手助けとなる方法ではありませんでした。私にとって それがまだロボットたちにできていない分野でした。そこでその年に このロボット キスメットの製作に取りかかりました。世界で最初の社会的なロボットです。3年後 多くのプログラミングと 研究室の他の大学院生との作業によって キスメットが人と交流し始める準備が整いました。

(動画)科学者:君に見せたい物があるんだ。 キスメット:(言葉) 科学者:この時計は僕の彼女がくれたものなんだ。 キスメット:(言葉) 科学者:見てごらん 中に小さな青い光が光ってるでしょ 今週は 気が変になりそうだったよ。 シンシア・ブリジール:キスメットは人と まったく話せない もしくはまだ話せない子どものように接します。今までに類を見ないものであったので ひとまずこれでよしとしました。言葉はしゃべりませんが 大したことではありません。この小さなロボットは どういうわけか 私たちの奥底にある社会的な何かを引き出してくれました。これによって まったく新しい方法で ロボットと交流する展望が開けたのです。

 

3 ロボットによる対人的側面についての研究

数年前から今にかけて 私はロボットによる対人的側面について メディアラボの自分の研究室に在籍する 非常に才能ある学生達と共に探求し続けています。私のお気に入りのロボットはレオナルドです。レオナルドはスタン・ウィンストン・スタジオと共同で開発しました。レオとの特別なひと時を皆さんにお見せしたいと思います。レオと接しているのはマット・ベルリンです。レオに新しい物体を紹介しています。新しいため レオはどうしたらいいのか判断できません。でも 私たちと同じように 彼も マットの反応を見ながら学習が可能です。(動画)マット・ベルリン:やあ レオ レオ これはクッキーモンスターだよ。クッキーモンスターを探せるかな? レオ クッキーモンスターはとても悪い奴なんだよ 彼はとても悪い奴だ。レオ クッキーモンスターはとてもとても悪い奴さ。彼は怖いモンスターだよ。君のクッキーを取り上げたいんだ(笑) CB:ええ レオとクッキーとの 初顔合わせは若干難があったようですが 今はとても仲良くしています。

 

4 ロボットは「私たちの社会的なボタンを押す」魅力的な社会的技術

これらを作り上げることで 学んだこととしては ロボットは実際に 魅力的な社会的技術であるということです。彼らは実際に 私たちの社会的なボタンを押し まるでパートナーのように接してくれます。それが彼らの中心となる機能なのです。そのように考えを変えることで 私たちはロボットに対して今まで考えたことがなかった 新しい問いかけや可能性を想像することが可能になりました。でも「私たちの社会的なボタンを押す」事とは何でしょうか? 私たちが学んだものの一つとして 同じボディ・ランゲージを使い 私たちと コミュニケートできるようにロボットをデザインしたら 例えばこの人形ロボットのネクシーのように 人が使う言葉にならない仕草を使えるようにしたら 人々はロボットに対して人と同じように 反応するようになることを発見しました。人々はこれらの仕草を使って 相手にどれだけ説得力があるか どれだけ好きか どれだけ魅力的か どれだけ信用できるかを判断するために使います。どうやらロボットにも同じことが言えそうです。

 

5 一瞬の出会いから相手の信用度をどのように評価するのか?

実際にはロボットは 人間の行動を理解するためのとても興味深い 新規の科学的ツールになりつつあります。例えばこのような問いに答えようとしています。一瞬の出会いから相手の信用度をどのように評価するのか? 人をまねることで理解の一翼を担うと信じられていますが どのように? 特定の仕草のものまねがそんなに重要なのか?といった問いです。どうやらこれらの問いに対して 人への観察から学び 理解するのは困難なことが分かりました。なぜなら 私たちは人と交流する際 自然とこのような仕草を行うからです。無意識で行うため 制御することはできません。でもロボットなら制御が可能なのです。

 

6 人がロボットと接する時でも人として接するからうまくいく

この動画はノースイースタン大学の デービッド・デステノ研究室で撮影されました。彼は共同研究先の心理学者です。この問いについて研究するため ネクシーの仕草を 制御している科学者が実際にいます。これがなぜ上手くいくかというと 人はロボットと接する時でも 人として接するからです。このような見識によって ロボットの新しい利用方法を 考え始められるようになりました。例えば もしロボットが私たちの言葉にならない仕草に反応したら 非常にクールで新しいコミュニケーション技術となるでしょう 想像してみてください。携帯電話用のロボットアクセサリーはどうでしょう? 友達に電話し 彼女が電話をロボットに取り付けると ジャーン!ミーボットの完成です。友達と話すことはもちろん アイコンタクトもできます。動き回ることもできますし ジェスチャーを行うこともできます。実際に その場にいるみたいですよね?

 

7 3つの異なる技術を使って参加者とやり取りした

この問いを探求するため 私の学生のシギー・アダルゲリソンは 私たちの研究室の外にいる研究協力者と 共同作業を行ってくれる 参加者を研究室に集めました。この作業には 例えば テーブル上に設置された物を見て 特定の作業を行う上で それぞれの重要性や関連性を議論することが含まれます。最終的には お互いがどれだけ相手を 信頼できたか評価しました。研究室の外にいた研究協力者は私たちの研究室のメンバーで 彼らは3つの異なる技術を使って 参加者とやり取りしました。ひとつは ただのスクリーンを使用したものです。現在のビデオ会議と同じですね。次は スクリーンに移動能力を追加したものです。これは テレプレゼンスロボットを知っている方にとって とても見覚えのある光景でしょう。最後に 表現豊かなミーボットです。

 

8 移動能力や表現力を取り入れることはとても効果がある

やり取りのあと 実験参加者に 研究室の外にいた研究協力者との それぞれの技術を利用した 交流の質を評価してもらいました。私たちは 相手に対してどれくらい共感できたか その心理的関与について見てみました。全体的な関わりや 協力への欲求について見てました。そしてこれが スクリーンのみを使用した時の場合です。テーブル上を動き回れる移動能力を追加すると もう少し評価が高くなります。表現を豊かにすると さらに評価が高くなります。このように移動能力や表現力を取り入れることは 実際にはとても効果があるようです。

 

9 遠くに住む孫の日常に積極的に参加することが可能になる

それではこれをもう少し具体化させましょう。現代において 家族は互いにますます遠くに住むようになり 家族関係や絆に対して確実に 悪影響を及ぼしています。私の場合 3人の小さな男の子がいますが 彼らと祖父母にはとても良い関係を 築いてもらいたいと考えています。しかし 私の両親は数千マイルも遠くに住んでおり あまりお互い会える機会がありません。Skypeや電話は かけたりしますが 子ども達はまだ小さく しゃべるよりも 遊びたい年頃です。彼らはロボットを遠くでも遊べる 新しい技術として好意的にとらえてくれています。そこで今からそう遠くない未来を私はこんな形で想像します。私の母はコンピューターの前に座って ブラウザーを立ち上げ 小さなロボットに接続します。するとおばあちゃんロボットは 私の息子達である孫達と 現実世界において 本物の彼らのおもちゃで一緒に遊べるのです。私の祖母が 孫娘や友達と遊び 家の中で 寝る前におとぎ話を聞かせたりするなど 様々なことを行う事ができると想像できます。この技術を通して 現在では実現ができないような形で 彼らの孫の日常に積極的に 参加することが可能になるのです。

 

10 ロボットが人々のダイエットや運動を管理してくれる

それでは 他の領域に目を向けて見ましょう。医療を例にあげます。現在 アメリカ合衆国では 65%以上の人々が肥満であり 子ども達にとっても大きな問題となっています。年を重ねるにつれて 若いうちから肥満である場合 慢性的な疾患として 日常生活の質を損なうばかりか 医療サービス制度に大きな経済的負担がかかることに気づきます。でも もしロボットが魅力的で 彼らと協力しあうことができ 説得力があるものであれば ロボットが人々のダイエットや運動を 管理してくれるかもしれません。人々の体重管理をしてくれるかもしれないのです。有名なおとぎ話に出てくる ジミニーのデジタル版みたいなものです。とても親切な存在で 健康的な習慣を身につける上での 正しい判断を 適切な方法で 時間内に行う手助けをしてくれるのです。そこで実際にこのアイディアを試してみました。

 

11 ダイエットや運動のコーチ用のロボット「オートム」

このロボットは オートムと言います。コーリー・キッドが博士課程の研究でこのロボットを開発しました。ダイエットや運動のコーチ用のロボットとしてデザインされました。簡単な言葉にならない仕草を行うことが可能です。人とアイコンタクトすることができます。下の画面を見て情報を共有することができます。スクリーン上のインターフェースに対して 例えば その日どれくらいのカロリーを摂取したか どれくらい運動したかといった情報を入力します。すると それらの情報を追う手助けをしてくれるのです。運動させるために ロボットは合成音声で トレーナーと患者とのやり取りを手本に 作られた指導に関するせりふを しゃべり始めます。そして 指導用のせりふを通して 協調関係を築こうとするのです。目標の設定や進捗を記録してくれたり やる気を出させてくれるのです。

 

12 社交的な機能の実装やロボットであることに意味はあるか?

ここで問われている興味深い質問は 社交的な機能の実装に意味があるのか?ロボットであることに意味があるのか? 提供するアドバイスと情報の質のみが重要なのか?といったことです。それらの問いに答えるために ボストンエリアで 3つの異なる内容を数週間にかけて それぞれの人々の家で実験を行いました。1つ目はロボットのオートムです。次は 同じタッチ・スクリーンインターフェースと 同じ会話内容を表示するコンピュータです。アドバイスの質はいずれも同じです。3つ目はただのペンとメモ用紙です。これは ダイエットや運動プログラムを始める時に 大抵利用するものだからです。

 

13 体重を落とす事よりも維持することが課題

私たちが最も注目していたのは どれだけ人々が体重を落としたかではなく 実際にどれだけ長くロボットとやり取りしたかです。なぜなら体重を落とす事よりも 維持することが課題であり これらの対象と長くやり取りするほど それだけの期間うまくいっていることを意味するからです。そこで私はまず始めに どれだけ長く これらの対象と人々がやり取りできたのか確認しました。どうやら人々はアドバイスの質が コンピュータと同等であったにも関わらず ロボットとより長くやり取りをしていることが分かりました。協調関係の質について評価を人々にお願いした所 人々はロボットに対して他よりも高く評価し 信頼していていたようです (笑) 感情的な関わりに目を向けると まったく異なっていました。人々はロボットを名付けます。彼らはロボットに服を着せます (笑) しかも 学習の後にロボットを回収しに来た時も 彼らは車から出てロボットにさよならを言いに来るのです。コンピュータの場合はこんな対応はありませんでした。

 

14 未来の子どものメディアについて

最後にお話したいのは 未来の子どものメディアについてです。現在 子ども達はテレビにせよ コンピュータ・ゲームにせよ 多くの時間を画面の前で過ごしています。私の息子達は本当に画面が大好きです。でも私は母親として 彼らに現実世界で遊んで欲しいと 思っています。そこで今日は 私のグループの新しいプロジェクトである プレイタイム・コンピューティングをご紹介します。これは デジタルメディアにおいて 人を引きつけるものとは何か 真剣に考え それらを画面上から子どもの現実世界に 文字通り引っ張りだして 現実世界の様々な遊びの特性を持たせることを目的にしています。これはこのアイディアを初めて試した時のものです。キャラクターは物理的でも仮想的でもよく デジタルコンテンツは 画面上から抜け出して 現実世界を行き来します。私はこの 現実と仮想が混じりあった遊びを アタリ社のポンのように捉えたいと思います。

 

15 子ども達はキャラクターが現実化することを喜ぶ

しかもこのアイディアは更に広げることができます もし (ゲーム)ネーサン:きたよ ほら! CB:キャラクター自体が皆さんの世界に現れたらどうですか? どうやら子ども達は キャラクターが現実化することを喜ぶようです。そして現実化した時 彼らはスクリーン上で行っていた遊びとは 根本的に異なる方法で遊ぶことができます。次に重要なのは キャラクターによる現実との間の継続性についてです。子どもが現実世界で起こす変化は 仮想世界でも反映される必要があります。ここでは ネーサンが文字Aを数字2に変更しています。このような記号はキャラクターが仮想世界に 戻った際に特殊な力を与えるものと考えてください。彼らはこれからキャラクターを元の世界に戻してます。これで数字の力を得ました。

 

16 子どもたちが物語の一部となり、没入できる体験を作り出す

私がここで行おうとしているのは まるでその物語の一部となり 子ども達が没入できる 体験を作り出す事です。そして私が小さな頃に『スターウォーズ』をみて 感じたことと同じく 彼らの創作意欲をかき立てたいのです。更にもう一歩踏み込んで 彼らにそれらの体験を創造してほしいと思っています。文字通り彼らの想像力を元に このような体験を作り出して欲しいのです。このように テレプレゼンスや合成現実を通して 子ども達のアイディアをこの空間に反映させ 他の子ども達が遊んだり それらを元に新しいものを 作れる様々なアイディアをご紹介してきました。想像力や学習力 イノベーション性を育てる 子どものための新しいメディアを切に用意したいと考えています。これはとても重要なことだと思います。

 

17 ロボットは私たちの人間らしさを呼び起こしてくれる

そこでこの新しいプロジェクトを発足しました。このような空間に多くの子ども達を招待し 彼らにはなかなか好評でした。でもこれだけは言えます。彼らが最も愛していたのは ロボットです。彼らが関心を持っていたのがロボットでした。ロボットは私たちの人間らしさを呼び起こしてくれます。私たちの想像力を 底上げしてくれたり 遠く離れていても人との繋がりを より強く感じられるようにしてくれたり 自分が目指す個人的な目標を達成するための 信頼出来るパートナーとなってくれるなど 様々な面がある中で 私にとってロボットとは人々のためのものだと思っています。ありがとうございました(拍手)

最後に

ロボットは「私たちの社会的なボタンを押す」魅力的な社会的技術。ロボットに移動能力や表現力を取り入れることはとても効果がある。ダイエットや運動のコーチ用のロボット「オートム」。ロボットは私たちの人間らしさを呼び起こしてくれる

和訳してくださった Yuki Okada 氏、レビューしてくださった Hidetoshi Yamauchi 氏に感謝する(2010年12月)。

トコトンやさしいパーソナルロボットの本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)


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