前回は、特別会計の資産負債差額、繰越利益・本年度利益 「埋蔵金」入門についてまとめた。ここでは、ガソリン税はピグー税 国のお金はどう動くのか—財政入門について解説する。
アメリカはエゴの国
アメリカはガソリン税が低く、ガソリンがもたらす排気ガスなどの問題について気にしていない。ガソリン税は経済学では「ピグー税」と呼ばれ、公害を出すものについては課税をすべきというものである。世界のガソリン税はほとんどこの考えになっていて、ヨーロッパは日本より圧倒的にガソリン税が高い。
B/Cは事後しか計れない
また、道路特定財源のように道路に全部ガソリンの税金を使うというのはあり得ない。公共投資をやる以上は、コストを上回る便益がなければならない。「B/C(ベネフィット・オーバー・コスト)」という、便益が費用より事後的に見て、1より大きくなければならない。コスト計算の見積は甘くなりがちなため、事前が3倍ないと認めないと決めればよい(高速道路無料化、子ども手当、成長戦略 民主党の政策の問題点1参照)。
道路特定財源のおかしさ
つまり、道路を作るのは一般財源化にして、ガソリン税率を上昇(せめて維持)させればよい。ただし、自民党の道路族議員の反発があるため、野党との協力を取り付ける必要がある。
中川氏が国際公約
中川秀直議員(当時)は「一般財源にするのはすぐにはできないのではないか」と懸念していた。それは55年間もガソリン税は道路のために使うと言い続けてきたからである。しかし、2008年1月、スイスのダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)で「ガソリン税はピグー税だ」と話した。ピグー税を英訳すると、一般財源という意味になるのだ。
財政政策はもう効かない
日本経済を大きく動かすのは財務省と日本銀行である。財務省は財政政策、日本銀行は金融政策を担う。財政政策の方が国家予算で大きなお金が動くため影響があるように見えるが、これは為替が変動相場制か固定相場制かで大きな違いがある。変動相場制のもとでは金融政策しか効果がなく、財政政策は効かないのだ。固定相場制の場合は反対になる。つまり、公共投資は単独では意味がないのだ(変動相場制では財政政策は効果なし 物価の安定が目的の金融政策参照)。
その理由は以下の通り。財政政策では国債を発行して公共投資をする→民間から資金を集めるため金利が高くなる→為替が円高になる→輸出が減る→公共投資が輸出減で相殺される。一方で、輸入は増えるため他国は輸出増となり、他国に効果が波及するのだ。反対に、金融政策ならば金利が下がる→為替が円安になる→輸出が増える→設備投資が増えるなどと効果があるのだ。
日本人はマンデル・フレミング理論を知らない
これが1999年にノーベル賞をとった、マンデル・フレミング理論である。世界の常識だが、日本人は固定相場制のイメージが残っていたためあまり知られていない。その結果、国債発行が増えてしまっているのだ。
センセイの無知にお付き合い
財務省はこうした理論を知っているが、無知の政治家に付き合っているのだ。日本銀行も1998年の日銀法改正まで独立性がなかったため、金融政策を積極的に行わなかったのだ。
いい人に丸投げすればいい
結果的に、小泉純一郎氏が首相になるまで財政政策しか行われなかった。ただし、竹中平蔵氏は知っていたため、経済理論を知っている人に丸投げすればいいのだ。自分の選挙区のことだけを考えている国会議員では、公共投資を行わざるを得なかったのだ(四分社化、政策の数値化、竹中平蔵と小泉純一郎 郵政民営化の全内幕参照)。
最後に
道路特定財源は一般財源化され、ガソリン税もピグー税として徴税し続けるべき。財政再建にはマンデル・フレミング理論を知る必要があり、金融政策を有効に活用すればよい。変動相場制のもとでは金融政策が有効。
次回は、金融政策と国際金融のトリレンマ 国のお金はどう動くのか—金融入門についてまとめる。
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