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ステファノ・マンクソー 植物が持つ知性の根

「捕獲者と戦ったり、エネルギー摂取の機会を最大限に高めたり、植物は時に知性的な振る舞いをします」マンクソーは語りかける。ここでは、80万ビューを超える Stefano Mancuso のTED講演を訳し、植物が持つ知性の根について理解する。

要約

捕獲者と戦ったり、エネルギー摂取の機会を最大限に高めたり、植物は時として不思議で知性的な振る舞いをします。ですが、我々はそれらを独自の知性を持ったものとして認識できるでしょうか?イタリアの植物学者であるステファノ・マンクソーが興味深い証拠を提示してくれます。

Stefano Mancuso is a founder of the study of plant neurobiology, which explores signaling and communication at all levels of biological organization, from genetics to molecules, cells and ecological communities.

 

1 ノアの方舟に植物は描かれていない

時々とても古い雑誌を パラパラ見ます。そこでノアの箱舟の話をもとにした 観察力のテストを見つけました。このテストの絵を描いたアーティストは 間違いをいくつか盛り込んでいます。12個ぐらいの間違いがあり とても簡単なものもあります。煙突やアンテナやランプがあったり ゼンマイ仕掛けのネジがあります。動物やその数についての間違いもあります。でもノアの箱舟の全体的なストーリーには ここには描かれていない もっと根本的な 間違いがあります。問題は「植物はどこだ?」ということです。神様がいて 永久に または 少なくともかなり長い間 地上を水に沈めようとしているのに 誰も植物のことを考えていないのです。ノアはあらゆる種類の鳥 すべての種類の動物や動く生物の つがいを連れて行かねばなりませんでした。でも植物に関しては何も記述がありません。なぜか? 同じ物語の別の部分では 地上の生物は すべて箱舟からきた 生物であるとしています。鳥や家畜や野生動物のことです 植物は生物ではないわけです。これが問題なのです。これが聖書に記されていない 問題なのです。でも植物は常に人類と 共にあったものです。

 

2 植物は命があるだけでなく感覚も持っている

ルネサンス時代の本に まとめられていた理論を見てみましょう。自然法則について 説明があります。なかなか良い説明で左から 石があり 石のすぐあとに 命がある植物が続き 命があって感覚もある動物があり ピラミッドの頂点に 人間がいます。これは一般的な人間ではなく 「ホモ・スチュージオス」つまり学識ある人間です。教授である私のような人間が 生物の頂点にいるのは とてもうれしいことです。でもこれは全く間違っています。教授が頂点ということもそうですが 植物に関しても間違っているのです。植物は命があるだけでなく 感覚も持っているからです。動物よりももっと発達した 感覚を持っています。1つ例をあげると すべての根端は 少なくとも15種類の化学物質と 物理的要素を 同時にそして持続的に 感知して監視することができます。更に植物は複雑な 素晴らしい行動を示すことができます。「知性」と言えるものです。それにしてもこのように 植物を過小評価することは 今までずっと私たちがしてきたことです。

 

3 地球上で一番大きな生物はセコイヤデンドロン

この短い映画を観てみましょう。デイビッド・アッテンボローです。アッテンボローは植物愛好家で 植物の特性に関する 非常に素晴らしい映画を作りました。でも彼の植物の解説には 間違いはないのですが 動物の解説になると 植物が存在するという事実を 無視することが多いのです。シロナガスクジラは地球上で 一番大きな生物である。それは違います。全く違います。シロナガスクジラは地球上に存在する 本当の最大の生物に比べたら 小人のようなものです。一番大きいのはこの素晴らしい 壮大なセコイヤデンドロンです (拍手) これは質量が少なくとも 2,000トンにもなる生物です。さて 植物が低レベルな 生物だという話は だいぶ前にアリストテレスによって まとめられています 「デ・アニマ」は 西洋文明に非常に影響を与えた本です。この本は植物を命のあるものと ないものの境目に位置づけています。低レベルな魂があるだけのものとしています。植物魂と言いますが 動くことがないため 感覚が必要ないとしています。そうでしょうか?

 

4 植物も開花や遊び、睡眠を取る

植物の動きにはよく知られているものもあります。これは早送りした映像です。これはハエトリグサ 別名ハエジゴクが ナメクジを捕らえているところです。ナメクジには気の毒ですが これは何世紀にも渡って否定されてきています。証拠があるにもかかわらずです。誰も植物は動物を食べることができると言えませんでした。自然の法則に反していたからです。でも植物はたくさんの 動きを見せることもできます。よく知られているのは開花などです。低速度撮影のような技術の利用が 必要というだけです。もっと精巧な動きもあります。この豆の芽が光を受けようと 常に動いているのを見てください。非常に優雅です。天使が踊っているようです。植物は遊ぶこともできます。これは本当に遊んでいる様子です。これらはヒマワリの芽ですが この動きは 遊んでいるとしか言えない 動きです。動物の子どもがよくやるように 大人になるための 練習をしているのです。大きくなったヒマワリは一日中 太陽を追うことになるからです。植物は重力に対応することも当然できます。つまり発芽すると 重力の向きに反して育ち 根は重力に向かって伸びるのです。植物は眠ることもできます。これはオジギソウです。夜の間は 葉をまるめて 動きを減らしています。日中は葉が開いていて もっと活動的になっています。これは興味深いことです。こうして眠っている個体は しっかりエネルギー節約しています。これは植物でも昆虫でも 動物でも同じです。ですから睡眠の問題を研究したい場合 例えば植物で研究すると 動物よりもやり易いです。倫理的には更に楽になります。ベジタリアン実験と いうわけです。

 

5 植物はコミュニケーションに長けている

植物はコミュニケーションすることもできます。コミュニケーションに長けているのです。植物は他の植物とやり取りをし 同類かそうでないか区別することができます。植物は他の植物や 異種 そして 動物ともやり取りしますが 揮発性化学物質を生成して行います。例えば受粉のときなどそうです。受粉は植物にとって重要な問題です。花粉を花から花へと運ぶ際 自分は動くことが出来ないからです。そこで媒介生物が必要となり この媒介生物は 通常動物です。多くの昆虫が 媒介生物として植物に利用され 花粉を運んでいます。昆虫だけでなく 鳥や爬虫類 コウモリやネズミのような哺乳類までが 花粉を運ぶため普通に利用されています。これは重要な仕事です。植物によっては動物に 糖分の一種で エネルギー源になるものを 花粉を運ぶ代わりに提供するものもあります。でも植物によっては動物を巧みに扱うものもあり この蘭のように セックスと蜜を期待させるだけで 花粉を運ぶ代償を 何も払わないものもあります。

 

6 「幼根の先端が下等動物の脳のような働きをしている」

さて 私たちが見てきたこのような習性を考えると 大きな問題があります。脳がないのにどうしてこのようなことができるのか? この疑問に対する答えは1880年に 偉大な チャールズ・ダーウィンが 革命的で素晴らしい驚きの本を 発表するまで待つことになります。「植物の運動力」という題名です。チャールズ・ダーウィン以前は 誰も 植物の動きについて述べられませんでした。この本の中でダーウィンは ケンブリッジで世界初の植物生理学の 教授となった息子のフランシスに手伝ってもらって 植物のありとあらゆる動きを考察し 500ページにまとめました。そしてこの本の最後の段落で 最も重要なポイントを 最後の段落に記すのが ダーウィンのやり方で 彼の本の特徴なのですが ここにダーウィンは 「幼根の先端が 下等動物の脳のような 働きをしていると言っても 過言でない」と述べています。これは比喩ではありません。ダーウィンは友人の一人で 当時英国王立協会の会長として英国最大の科学的権威者であった J.D.フッカー宛てに 植物の脳について語った とても興味深い手紙を書いています。

 

7 根端には数百ものニューロンのような機能を持つ細胞がある

さて これは斜面を上って 伸びている根端です。このような動きは見覚えあると思いますが ミミズや蛇など 地上を足なしで動く すべての動物が見せる動きと 同じです。これは簡単な動きではありません。このような動きをするには 根の様々な部位を動かす必要があり 脳がなくても これらの別々の部位を 同時に動かさなくてはなりません。そこで私たちは根端について研究し 特定の場所があることを見つけました。ここです。青で示されている部分です。移行領域と呼びましょう。この部位は非常に小さく 1ミリ以下です。そしてこの小さな領域で この植物の最も高い 酸素消費量が見られます。更に重要なのは このような種類の信号があることです。みなさんが見ているこれらの信号は活動電位で 私たちの脳のニューロンが 情報交換をするのに使用する信号と 同じものです。根端には数百もの このような機能を持つ 細胞があると 今では分かっていますが ライ麦のように小さな植物でも 大きな根端があることも分かっています。140万本にも及ぶ 根があり 115万の根端が あります。合計600キロ以上の長さとなり 非常に大きい表面積となります。

 

8 90%の根の組織を取り除いても植物は生き残ることができる

ここで一つ一つの根端が 他の根端とともに ネットワークを作っていると考えてください。こちら左にあるのはインターネットで 右にあるのは根の組織です。両方同じように機能しています。これらは小さなコンピュータが ネットワークを形成して 動いているようなものです。でもなぜこのように似ているのか? それは両方が同じ 理由で進化したからです。捕食に耐えるためです。両方同じような働きをします。90%の根の組織を取り除いても 植物は生き残ることができ 90%の接続が切れても インターネットは存続できます。ですからネットワークの 研究者たちに勧めたいのは ネットワークをいかに進化させるかについて 植物は良いアイデアを 示唆できるということです。

 

9 人造植物からアイデアを得よう

そして別の可能性として 工学的可能性が挙げられます。想像してみてください。植物からアイデアを得た ロボットを作れるとします。今までは 人は人間や動物からのみ ヒントを得て ロボットを制作していました。動物をもとにした普通のロボット 人造動物があり また人造昆虫などもあります。人間にヒントを得た 人造人間もあります。ではどうして人造植物はないのか? 飛びたい場合は 鳥を参考にして 鳥からヒントを得るといいですね。でも土壌の研究や 新しい土地を 開拓したい場合 一番いいのはそのようなことに長けている 植物からアイデアを得ることです。別の可能性として 私の研究室で行っているのは ハイブリッドを作ることです。ロボットより作るのがもっと簡単です。ハイブリッドというのは 半分生物で半分機械のものです。この場合植物を扱う方が 動物よりもずっと簡単です。植物には計算能力があり 電気信号もあります。機械との接続もずっと簡単で 倫理的にももっと叶っています。藻類でできたもの 葉の先端で動くもの そして 植物の最も力のある部分である 根で動くもの、この3つがハイブリッドを作るうえで 私たちが取り組んでいる 可能性です。ご清聴ありがとうございました。最後に このプレゼンテーションの作成において ナメクジに危害を与えていないことを 保証します。ありがとうございました(拍手)

 

最後に

ノアの方舟に植物は描かれていない。植物は命があるだけでなく感覚も持っている。地球上で一番大きな生物はセコイヤデンドロン。植物も開花や遊び、睡眠を取り、コミュニケーションに長けている。幼根の先端が下等動物の脳のような働きをしている。根端には数百ものニューロンのような機能を持つ細胞がある。90%の根の組織を取り除いても植物は生き残ることができる。植物から学ぼう

和訳してくださったSawa Horibe 氏、レビューしてくださった Yuki Okada 氏に感謝する(2010年7月)。

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