前回は、市場・信用・流動性・取引・法的・システム 金融工学とリスクについてまとめた。ここでは、本質は収益のバラツキとリスクを小さくすること ポートフォリオ理論について解説する。
資産運用の2つの評価基準
資産運用の2つの評価基準として、①予想収益の平均(高収益⇔低収益)、②リスクの大きさ(大⇔小)があげられる。誰しも「高収益・リスク小」のものを求めがちだが、そうしたものはほとんど不可能なため「高収益・リスク大」か「低収益・リスク小」のどちらかを意図的に求めていく必要がある。
ポートフォリオ理論の考え方
ポートフォリオ理論とは、複数の企業の株や債券などを組み合わせて持つことで、資産運用の効率を高めるものである。ポートフォリオとは書類カバンのことである。具体的には、いろいろな要因(為替、金利、石油価格など)に対して株価の変動が逆になるような企業の株を組み合わせて持つことで、収益の変動を相殺し、リスクを小さくしようとすることである。
リスクを減らす資産運用
ポートフォリオ理論の本質は、収益のバラツキを小さくすることで、全体的に収益を高くするものではない。組み合わせる株の数とリスクの大きさは反比例の関係にあり、例えば日本の株式市場だけでなく世界各国の株式市場で分散して運用すれば、株が持つ共通のリスクは軽減させることができる。ただし、その場合には為替リスクが別でかかってくる。
効率的な運用は可能か?
ポートフォリオ理論を用いれば必ず効率的な運用ができるわけではない。現実には予想収益率の確率分布は無限に書くことができるためである。ただし、低収益でリスクが大きい非効率的な運用に陥るものを避けることはできる。
株価予想の難しさ
株価予想をするには「毎年の利益/発行株数=1株当たりの利益」を求めて、現在価値で計算すればいい。ただし、株価の現在価値は実質金利分が割り引かれるため、実質金利が上がると株価も下がる。このように、株価予想には企業業績等と金利予想が関係してくるため難しい。
金融市場のスキをつくサヤ取り
サヤ取り(裁定取引)とは金融市場のスキをつく取引のことである。例えば、違う場所で同じ企業の株が売買されており、もし現時点での株価に違いがあったら、安い方で買って高い方で売れば確実に儲かるというものである。現実的にはこうした単純な例は少ないが、買いと売りを同時に行って儲けようとするのがサヤ取りの基本である。
サヤ取りを主体とした資産運用
さらに複雑なケースとして、類似性の高いポートフォリオを作ってその価値を比較するものがある。2つのポートフォリオを比較して、もし両者の価値に差があるならば、その差はやがて縮小すると考えて、過大評価されたポートフォリオを売り、過小評価されたポートフォリオを買う取引を行うのだ。
最後に
資産運用の2つの評価基準は予想収益の平均とリスクの大きさ。ポートフォリオ理論の本質は収益のバラツキを小さくすること。株価予想には企業業績等に加えて金利予想も必要になる。サヤ取りとは金融市場のスキをつく取引。類似性の高いポートフォリオを作れるかがカギ。ホームランか三振より連続ヒットを狙うもの。
次回は、先物・オプション・スワップ取引の合成と組み合わせ デリバティブについてまとめる。
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