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ティモシー・バルティック 幼児教育の経済論

「子どもに十分な教育を与えることの経済的利益は、自己犠牲愛をはるかにしのぐ結果となります」ティモシーは語りかける。ここでは、35万ビューを超える Timothy Bartik のTED講演を訳し、幼児教育の経済論について理解する。

要約

ティモシー・バルティックはマクロ経済の観点から幼児教育について論理的に訴えます。そして子どもが該当する年齢ではない人(もしくは子どものいない人)にとっても、子どもへの投資が喜ばしいものである理由を説明します。そして子どもに十分な教育を与えることの経済的利益は、自己犠牲愛をはるかにしのぐ結果となるのです。(TEDxMiamiUniversity にて撮影)

The author of “Investing in Kids,” Timothy Bartik studies state and local economies — and analyzes the benefits of preschool as an economic development program.

 

1 幼児教育の公共投資としての意味

今日は少し違った視点で 幼児教育に投資することがなぜ 公共投資として意味があるかを お話したいと思います。どこが違う視点なのかというとー 幼児教育の話になると どんなすばらしい効果があるかが 通常 議論されます。こんな幼児教育をうけた子ども達は 他の子どもより 学校のテストでより良い点数を取り 大人になってより高い収入を得るとか それはとても重要な事です。しかし私がお話ししたいのは 幼児教育が 州の経済安定や発展を促すのに どんな役割を果たしているかです。

実はこれはとても重要です。なぜなら初期幼児教育への投資を増やすのに 必要なのは 州政府に興味を持ってもらう事だからです。連邦政府は手一杯なので 州政府が推し進めることになるからです。ですから私達は州の議員達に 訴えかけなければいけません。そして 州の経済発展を 促進しなければならないと 理解させるのです。経済的発展を促すといっても 魔法を使うわけではありません。早期幼児教育はもっと多くの より良い仕事を 産み出す可能性があり それゆえ 州の一人あたりの所得アップを 促進してくれるのです。

 

2 早期幼児教育プログラムはよりよい雇用を生む

ところで通常人々は 州や地域の発展を始めから 育児や幼児教育プログラムに 結び付けるようなことは あまりしないですよね。その通りです。私はこれらの問題に ほとんどの研究生活を費やしてきました。そして経済発展局の役人や 多くの議員達に これらの議題について話をしました。経済発展について考える時 彼らがまず考えるのが 優遇税制や資産税減税 雇用創出控除についてです。こんなプログラムは 至る所に山ほどあります。例えば 州がとても精力的に 新車工場や自動車工場拡大を促したとしましょう。彼らは全種の事業税制措置を施します。それらが本当にビジネスを誘致できるなら これらの計画には意味があります。これがもっと多くの より良い仕事を生み出す事によって 雇用率を上昇させ 州住人の個人所得を上げるからです。企業の税が安くなることで 州住民が 支払うコストに 見合う恩恵を受けられるのです。

私の議論は本質的に早期幼児教育プログラムが まさに同じ事ができる そして もっと多くのより良い雇用を生むというものです。違う方法でですが 確かにより間接的ですがね。これらのプログラムがより多くの良い雇用を生み出すには 質の高い幼児教育に投資し 将来的に地域の労働者の技術を向上させる事です。教育を受けた子どもの多くがその土地に残れば 今度は その質の高い労働力が 地域社会の 雇用創出や 一人当たりの所得向上を 推進させる鍵となります。

 

3 幼児教育は3倍の利益を産み出す

では これに関する数字に目を向けてみましょう。ここで広範囲に渡る研究の結果に注目します。まずは 早期幼児教育プログラムが どれほど 現在の大人の学業成績や賃金やスキルに 影響を与えているかを示す研究 ― この効果はすでにわかっています。また どのくらいの人が移住せずに 州に残って地方経済に貢献するか ― そして彼らの能力がどれくらい 雇用を生み出せるか ― これら3つの研究結果から 導き出された結論です。幼児教育に投資する1ドルに対して 州住民の一人あたりの所得は 2ドル78セント上昇するというもので つまり3倍の利益を産み出します。これを16倍のリターンまで上げることも可能です。もし犯罪がもっと減り ― 幼児教育を受けた人が 誰一人州から出ていかないと 仮定すればですが ― しかしこの3ドルに注目するには 正当な理由があるのです。なぜならこれは 行動するべき州の 州議員や政治家にとって重要な数字だからです。経済発展を考えた時 州の政治家が考慮すべき 重要なメリットがここにあるのです。

 

4 スキルを測る尺度はその地域の大学卒業率

さて よく聞く反対派の意見ですが みんな遠慮して言わないから もしかしたら聞いたことがないかもしれませんね。なぜ他人の子ども達に投資するために より多くの税を払わなければいけないのかとか 自分に何の得があるのかというものです。この反対意見が問題なのは 全くの誤解を反映しており 地域社会はどれ程 持ちつ持たれつの個々人を 巻き込んでいるか理解されていないことです。とりわけここで言う相互依存とは 技術による大規模な波及効果のことです。他人の子ども達がよりスキルを得る場合 実はスキルに変化のない人々を含む 他の全ての人も より繁栄するという事なのです。例えば何が実際 都市地域の成長を 促しているかという 莫大な調査の結果が示すのは 低課税 低コスト 低賃金の状況などではなく その地域のスキルの高さです。スキルを測る尺度は その地域の大学卒業率です。例えばボストンやミネアポリス セントポール シリコンバレーのような都市地域を見ると これらの都市は低コストだから 経済的にうまくいっているというわけでは ありません。シリコンバレーで家を買うなら まったく安くはありません。ハイレベルなスキルを持っているため これらの都市は成長できるのです。ですから他人の子ども達に投資し 彼らのスキルを高める事は 都市部全体の雇用率を 上げる事なのです。

他の例を挙げてみましょう。何が個人の賃金を決定するのかという 統計の研究を見ると 個人の賃金は 部分的には受けた教育に 関係するという事が わかります。例えば大卒かどうかということです。もう一つ付け加えると 面白いことに あなた個人の教育水準が一定に 保たれている場合においても 統計的に見ると 都市地域の他の人全ての教育水準が あなたの賃金に影響を与えます。あなたの教育背景が変わらなくとも 都市地域の大卒率を上げたなら あなたの賃金にとても良い影響を 与えるという事がわかるでしょう。実際その効果はとても高いので ある人が学位をとった時 都市地域の他の人達の賃金に 与える波及効果は 実はその直接的な影響より大きくなります。学位をとった場合 その人の生涯賃金は 70万ドル以上も上がります。都市地域の大卒率を上げるという事は その地域の全ての人への影響があります。一個人だけでは小さな影響ですが 都市地域全ての人の教育水準を上げた場合 実際 合計すると 1人当たりの賃金を 100万ドルほど上げる事になります。教育を受ける事を選んだ本人が 直接受ける利益より 実際はるかに大きいのです。

 

5 絶大な教育の波及効果の説明

ここで何が起こっているのか これら絶大な教育の波及効果を どう説明できるのでしょうか。こう考えてみましょう。私が世界で最もスキルを持った人物だったとします。しかし自分の会社の 他の全ての人にスキルがなければ 雇用主は新しい生産技術を導入する事は 難しいと思うようになるでしょう。結果として雇用主は生産的ではなくなり 私に良い賃金を払う余裕はなくなるでしょう。たとえ会社の人がスキルを持っていたとしても 会社の仕入れ元の人々が 優秀なスキルを持っていなければ 私の会社は 国内・国際市場で戦うには 競争的ではなくなるでしょう。また同様に 競争力の低い会社は 私に良い賃金を払う事はできないでしょう。そしてハイテクビジネスでは特に 絶えず他のビジネスからアイデアや人材を盗んでいます。ですからシリコンバレーの会社の生産性は明らかに その会社で働いている人達のスキルだけではなく 都市地域の他の会社の人達のスキルと 大いに関係しているのです。結局 質の高い幼児教育などを通して 他人の子ども達に投資する事ができれば その子ども達を手助けしているだけでなく 都市地域の全ての人々が高い賃金を受け取ったり 職を得ることの支援に なるのです。

 

6 60%以上のアメリカ人が職務キャリアのほとんどを生まれた州で積んでいる

幼児教育投資に関して ここで 時々見かける別の反対意見は 移住する人達についての問題です。例えばオハイオ州が コロンバスの幼児教育に より力を注ぐことを 検討しているとします。しかしオハイオ州の子ども達が 将来的に ミシガン州のアナーバーに移住するのではと 心配します。そしてミシガン州は アナーバーの幼児教育に投資しても ミシガンの子ども達が結局移住して オハイオ州の住人になるのではと心配します。みんな移住してしまうのだからと 両者ともに投資を控えてしまいます。データを見ると実は 人々が思うほど アメリカ人は移動に 積極的ではありません。60パーセント以上のアメリカ人が 職務キャリアのほとんどを 生まれた州で積んでいるとデータは示しています。その比率は州によってそんなに変わりません。州の経済や 好景気 不景気かによっても そんなに変わらない 時代によってもそんなに変動しない つまり子ども達に投資をしたならば 実際その子ども達は その州に留まるであろうという事です。あるいは少なくとも 彼らのうち州経済に 還元するのに十分な程には留まるでしょう。

要するに 高い質をもって 幼児教育が運営されるなら より高度な熟練したスキルがもたらされるのだと 多くの研究は示しているのです。また研究結果から 州に留まる人達は地元州の経済により関心を持つようになり 高度なスキルを持つ働き手が多くいる事は 地域経済に高賃金と高い雇用を もたらすという事が 証明されています。計算すると 1ドルの投資に対して 州の経済に3ドルほどの利益が あるとわかります。私の意見では この研究の結果は とても説得力があり 論理的です。ではこれを成し遂げるための障害とは何でしょう。

 

7 明らかな障壁はコスト

そうですね 一つ明らかな障壁はコストです。いったいどれくらいのコストがかかるのかー もし全ての州政府が 4歳の全日プログラムの全幼稚園に投資したら その全国内コストは 大体300億ドルにもなるでしょう。300億ドルは大金です。一方合衆国の人口が 3億人以上であることを考えれば 私達は1人当たり100ドルくらいの額の お金について話していると いう事になります。いいですか 1人当たり100ドルというのは どの州政府でも払う余裕のある額です。つまり単に政治的な意思の問題なのです。もちろん先ほど述べたように このコストは利益と比例します。私は余剰収入の800億ドルの観点から 州経済におよそ3倍の 利益があると言いました。ここで何十億という想像しにくい話を 身近な話にたとえましょう。それはつまり 平均的な低収入の家庭の子どもに 幼児教育を受けさせるだけで その子どもの生涯にわたっての収入を 約10%増やせるという事なのです。幼稚園から高校卒業までの教育や 大学の授業料や進学率を改善するわけではなく ただ幼稚園を直接改善するだけで 中流家庭の子ども達は5%高い収入を 得ることができます。ですからこれは 州人口における幅広い所得層に対して 具体的な意味で見返りがあって 多くの明白な利益を生む投資なのです。

 

8 地域の労働力の質を高めれば経済発展が促される

これでコストの障害はクリアです。実はもっと根深い障壁は 早期幼児プログラムのメリットが明らかになるまでに 時間がかかることです。この議論で私が言いたいのは 地域の労働力の質を高めれば 経済発展が促されるという事です。4歳児の幼稚園があったとしても 5歳になったらすぐ悪環境の中で 働かせるわけではないでしょう? 私はそう願います。私達が話しているこの投資は 州経済に与える影響の視点からすると 15~20年は元が取れるものではないでしょう。もちろんアメリカは 短期的思考の社会として悪名高い国です。これに対して お答えできるのは これらのプログラムには特殊教育や補習教育の コストの早期削減において 利益があるということです。また親が早期教育に関心を持ち 良質な幼稚園を求め 移動することによる 経済効果があるかもしれません。その通りなのですが ある意味 重要な点を見落としています。

 

9 究極的にはモラルの問題

結局私達は 将来の為に投資しているのです。最後に皆さんに考えていただきたいのは 究極ともいえる問題です。私は経済学者ですが これは究極的には 経済学の問題ではなく モラルの問題なのです。私達はアメリカ人として また社会としてー 自分達の子どもの為だけでなく 私達の地域共同体の長期的な将来を良くする為に 敢えてもっと税金を払い 今を犠牲にする政治的選択をすることが できるでしょうか? 国としてできるでしょうか? そしてそれは各市民そして有権者が 自分自身に問いかける必要があることなのです。あなたは長期的投資に関心を持ち 投資に値するものだと信じますか。それが投資の概念なのです。後の利益の為に 今を犠牲にするのです。

地域経済の幼児教育利益に関する 研究による証拠は かなり強いと私は思います。しかし 市民としてまた 有権者としての モラルと政治の選択は依然として私達次第なのです。ありがとうございました(拍手)

 

最後に

幼児教育は州の経済安定や発展を促す。早期幼児教育プログラムはよりよい雇用を生む。幼児教育への投資は3倍の利益を産み出す。スキルを測る尺度はその地域の大学卒業率。60%以上のアメリカ人が職務キャリアのほとんどを生まれた州で積んでいる。地域の労働力の質を高めれば経済発展が促される。後の利益の為に今を犠牲にする…究極的にはモラルの問題

和訳してくださったSuzumi Nakamura 氏、レビューしてくださった Masami Mutsukado and Kacie Landrum 氏に感謝する(2012年9月)。

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