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パヴァン・スクデフ 「自然に値札をつけろ!」

「生態系の価値は完全に帳簿外である。資源の価値に支払をしなければならないとしたらどうなるでしょう」スクデフは語りかける。ここでは、50万ビューを超える Pavan Sukhdev のTED講演を訳し、自然の持つ資産に評価額をつけるという発想を理解する。

要約

私たちは毎日、考えもなしに地球の資源を無料で使用しています。もし、こうした資源の本当の価値に対して支払をしなければならないとしたら?私たちはもっと無駄遣いに敏感になるのではないでしょうか?パヴァン・スクデフは大自然の管財人のような存在です-彼は自然の持つ資産に評価額をつけます。彼が提示する空気の、水の、そして森の値段についてのチャートに、みなさん驚かれることでしょう。

A banker by training, Pavan Sukhdev runs the numbers on greening up — showing that green economies are an effective engine for creating jobs and creating wealth.

 

1 不都合にも大自然は人類に請求書なんて出しません

自然の 見えざる経済についてお話します。不都合にも 大自然は人類に 請求書なんて出しません。とはいえ 放っておけない問題です。私はキャリアをマーケッターとして スタートし 今も関心があります。一方で 最近は 大自然から人類が受ける 値段がつけられることのない 恩恵の価値に着目してます。

 

2 TEEB(生物多様性の経済学)は2007年に発足した

TEEB(The Economics of Ecosystems and Biodiversity:生物多様性の経済学)は2007年に発足しました。G8+5の環境大臣たちによる プロジェクトです。スターン卿のスターン・レビューに 触発されて発足しました。彼らは こう思いました。経済要因が環境へのアクションを かくも素早く起こさせるなら 環境保護も同じようにならないか? 自然保護に対して 同じように できないものか? 答えは:イエス。でも そう簡単なことじゃありません。生物の多様性 地球が織りなす生態系は 幾層にも折り重なってます。例えば 生態系 生物種 遺伝子 が 国際的 国家的 そしてローカルな規模で スターン卿と 彼のチームが成し遂げた事は そう簡単なことではありません。

 

3 自然資源2~4兆ドルもの価値が失われた

とはいえ プロジェクトはスタートし 中間報告を まとめました。無数の情報が多くの研究員から 寄せられました。調査結果の中には 驚くべき情報も含まれ 人類が大自然から受けている恩恵- 自然資源が異常なスピードで 失われつつあるのです- しかも 2~4兆ドルもの価値が 失われたのです。報告は2008年になされ ご存じのようにリーマンショックの年で 金融資本のなんと 2.5兆ドルが消え去った年です。そのくらいの損害規模があるのです。以来 調査は続き 報告をしています-国際社会に 政府に 地自体 企業 そして 私たち一般の人々に 昨年 国連で発表された大量の報告は 大自然の見えざる経済と 私たちができる事を示しました。

 

4 アマゾンの熱帯雨林は雨も作り出している

ご説明します。お馴染みの アマゾンの熱帯雨林- 炭素や生物の多様性の宝庫 あまり知られていないのは 雨も作り出していることです。北東貿易風は アマゾンを通過する際 効率的に水蒸気を吸収します。なんと1日に200億トンもの水蒸気を 北東貿易風は吸収します。それらは凝縮されラ・プラタ流域に 雨をもたらします。こうした雨をもたらすサイクルは 2,400億ドルもの価値を ラテンアメリカの農業に もたらします。さて質問です:ウルグアイ パラグアイ アルゼンチン そしてブラジルといった国々は 雨をもたらすアマゾンに対して いくら支払っているでしょうか? 答えは:ゼロ。全くのゼロ これこそが大自然の見えざる経済 放っておけない問題です。経済効果はとてもインパクトがあるため 政策決定の要因となります。私たちがこの見えざる 経済を 可視化しない限り 今も続く 貴重な大自然の資産の 損失を止めることはできません。

 

5 生態系、生物種、遺伝子レベルで価値を生み出している

アマゾンや熱帯雨林だけの問題ではありません。この問題のどのレベルを見ても- 生態系 生物種 はたまた遺伝子レベル 各階層で同じ問題が見られます。生態系レベルにおける熱帯雨林による 降雨サイクルと水量の管理― 生物種のレベルでは 昆虫が果物などに行う受粉 こうした作業は 1,900億ドルもの価値があり これは地球上で 農業が 生み出す価値の8%を占めます。こうした価値は完全に帳簿外です。ハチが請求書を持ってくるようなことはないでしょ? ついでに言うと 遺伝子レベルでは 60%の医薬分子が熱帯雨林で 捜し求められ見つかったのです。大自然はこれらの請求はしません。

 

6 貧困層が最も生態系からの恩恵を受けている

また 別の側面からこの問題を捉えると 一体 誰が支払を受けるべきなのでしょう? こうした遺伝子素材は 誰かのものであるならば 現地の貧しい人々のものでしょう。彼らが研究者たちをこうした分子に導き 医薬品が作られるのです。彼らもまた支払を受けていません。では生物種のレベルを見てみましょう。水産資源について 今日 水産資源の減少は深刻で 貧しい人々 伝統を重んずる漁師達 そして 漁業で生計を立て 家族を養う人々に 大打撃を与えています。およそ10億もの人々が海がもたらす 水産物に依存しています。10億もの人々が動物性蛋白質を 水産物から得ています。水産物の減少スピードは多くの側面で 人類がもたらした問題であり これまでにない 健康被害をもたらします。最後に生態系のレベル 森林がもたらす洪水対策や干ばつ対策 そして貧しい農民による 飼料のための 落ち葉拾い はたまた燃料となる マキ集めなど 貧困層が最も 生態系からの恩恵を受けています

 

7 貧困層にとっての恩恵はGDP比で90%にもなる

私たちの計算によると ブラジル インド インドネシアといった国々では 生態系の恩恵は- 無償で大自然より人類へもたらされ- GDP比では- 2~5%と低めです-。しかし 貧困層にとってのインパクトの パーセンテージは大きく 45%、75%そして90%にもなります。こんなに違いがあるのです。こうした恩恵は貧困層には重要です。一方で 最も重要な 発展資源である生態系の インフラを破壊しつつ もう一方で 最適な発展など 望めないでしょう。

 

8 生物の多様性の平均値を表す

どのくらい深刻なのか? こちらは生物の多様性を図にしたものです。トラ カエル ダニなどなど 生物の多様性の 平均値を表します。緑色であれば 80~100%という意味で 黄色であれば40~60% 工業時代以前の1,750年の 状態を基準にした割合です。

 

9 問題の原因は公共の利益と私的利益の違いを認識できないこと

ご覧ください。経済活動がどんなに 影響を与えていることか。インド 中国 ヨーロッパ サハラ以南のアフリカ 人類を持続できなくなるスピードで 生物の多様性は失われています。ご覧ください 緑色のままの地域-朗報ではなく- これらはゴビ砂漠 ツンドラ地域 サハラ砂漠といった 最初から生物がほとんどいない 地域ばかりです。大きな問題なのです。問題の原因は 突き詰めれば 私たちが 公共の利益と 私的利益の違いが 認識できない点にあります。私たちが公益をないがしろに しがちなのは それが共有のもので みんなのものだからです。

 

10 マングローブは伐採され、エビの養殖場へと転換されつつある

タイの例を見てみましょう。マングローブの価値は調査を行った9年間で― 約600ドルと大したことありません。- エビの養殖場に転換した場合 その価値は9,600ドルに上がります。こうしてマングローブは伐採され エビの養殖場へと 転換されつつあります。もちろんキチンと計算すれば 8,000ドルは 補助金なのです。さて 比べてみましょう。今や1,200ドル対600ドル そんなに差はありませんね。

 

11 環境保護は環境破壊よりも理に適っている

一方で 養殖場を再度 生産的なマングローブに 戻すとなると 一体いくらかかるのか? 塩分や化学薬品が一度堆積され その影響後には 答えはなんと12,000ドルです。マングローブがもたらす恩恵― 嵐やサイクロンといった自然災害対策 貧しい人々へ魚をもたらす 養魚場としての価値 それは11,000ドル。別の見方をすると 公共の利益の立場から 私的利益を比べてみると 全く違った計算結果となります。すなわち 環境保護は環境破壊よりも ずっと理に適っています

 

12 ビジネスを維持するための環境コスト調査

タイだけのお話でしょうか? いいえ 地球規模に渡ります。同じようなケースを見てみましょう。最近の調査-ここ10年ですが- TRUCOSTという団体により トップ3,000社に対して環境コストの 調査を行いました。ビジネスを維持するためのコストです。違法なものでなく 通常のビジネスにおいても 環境に悪いCO2は排出され経済的損害を導きます。汚染物質も発生し 経済的損害以外にも 健康被害なども引き起こします。例えば 水の利用。コーラのために 村の畑近くに井戸を掘る 合法ですが 村は影響を受けます。

 

13 最初の取り組みはGreen Accounting Project

どうやって止めるか? まず 自然資源について認識を持つ必要があります。基本的に大自然は自然資源です。認識し 社会に取り込む必要があります。GDPを計算する際 経済の実情を測るわけですが 国レベルでの最大の資産が入っていません。企業のパフォーマンスを測る際 環境に与える影響は考慮されてません。社会に与える負荷も 改めなければなりません。これこそ この問題に取り組もうとしたきっかけで 最初の取り組みはGreen Accounting Projectでした。2000年代初頭 インドがGDPの成長に躍起になって- ちょうど中国の 8~10%の目覚ましい成長を見て 自分たちも!と触発された頃です。数人の友人と私は この成長は社会にとって コストと損失をもたらすものだと結論づけました。そこで大量の計算に取り組み インドにおける緑の会計をはじめました。こうして 私の取り組みは始まり TEEBに至ります。国レベルのこうした計算は始まりました そして世界銀行もこの問題を認識し WAVESプロジェクトを立ち上げました Wealth Accounting and Valuation of Ecosystem Services。

 

14 中国における森林破壊という分野にも取り組んでいる

次のレベル ビジネス分野での取り組みが重要で TEEBの一貫として始まっています。中国における森林破壊という 難しい分野にも取り組みました。重要な課題です。なにしろ 1997年 黄河は9ヶ月に渡り干上がり 地域に多大な農業被害と 損失をもたらしました。翌年には長江が氾濫 約5,500人もの犠牲が払われました。森林破壊の被害は明白で ほとんどの原因は建設業にありました。

 

15 北京の木材市場の価格は3倍であるべきだった

中国政府は賢明な対応をしました。伐採を禁止したのです。この40年を振り返ってみると 森林破壊によるコスト- 表土の流出 水路の消滅 生産性の低下 またこうした損失が 地域社会にもたらす被害 砂漠化などなど- こうしたコストは市場の木材価格の なんと2倍にもなります。ということは 北京の木材市場の価格は こうした社会へ与えた 被害総額も全て加えると その3倍であるべきでした。当然 一度痛い目にあうと賢くなります。

 

16 企業が主導権をもって重要なセクターのコストを開示していく必要がある

企業レベルでの実施は 企業が主導権をもって 重要なセクターのコストを 開示していく必要があります。「ユニリーバとP&Gでは インドネシアのジャングルへ より負荷をかけているのは?」 わかりません。どちらも こうした計算をしていないし 情報開示もありませんから。

 

17 プーマの環境コストは9400万ドル

一方 プーマは- CEO兼会長のザイツ氏が かつて 私に言いました。私よりも先にこのプロジェクトを実施するぞって。まあ 同着だったと思いますが 環境コストを計算しました。プーマは270億円の粗利に対し 3億ドルの利益。税引き後利益は2億ドル それに対し環境コストは9,400万ドル。いい状況とは言えません。しかし 彼らは胸を張って言えます 「数字に落とし込み 管理できるようにするため 環境コストを計算しました」と。

 

18 各会社の社会貢献度を比較できる

こうしたケースに 勇気づけられます。もっと多くの会社が参加すれば 多くのセクターで参加者が増えれば 私たちのような一般消費者やNGOが ビジネスを分析し 各会社を並べて その社会貢献度を比較できます。現在 そこまでに至っていませんが 不可能なことではありません。英国勅許会計士協会のような団体が 国際的な協力体制を築いていることは 喜ばしいことです。

 

19 グリーン・カーボン市場は供給過剰のためインフレ状態

お次は私のお気に入り グリーン・カーボン市場の創出です。ところで私のお気に入りは- 環境コストとグリーン・カーボン市場です。TEEBには問題別にグループがあります。例えば 保護区の査定 生態系への投資 そしてエコ認証 その中でも お気に入りはこれ。さて グリーン・カーボンとは何か? 現在あるのはブラウン・カーボン市場 エネルギー排出に関するもので EUのETSが主要な市場です。供給過剰のためインフレ状態で うまくいってません。価格の下落が見られます。これはエネルギーと産業についてです。

 

20 足りないのは他の排出に対する考慮

足りないのは他の排出に対する考慮で 煤煙排出のブラック・カーボン そして海洋のブルー・カーボン これは炭素の供給源では最大です- なんと55% 幸いなことに 海洋から大気への 供給の流れそしてその逆も バランスがとれています。私たちの排出量の 25%ほどは 海で酸性化ないし 弱アルカリ化されます。ほんの1分ほどで。

 

21 REDD Plusと呼ばれる森林破壊による排出量の減少対策のしくみがある

最後に森林破壊と 農業により排出の メタンによる グリーン・カーボン― 森林破壊と農業により排出 そしてブルー・カーボン 2つで地球温暖化ガスの25%を占めます。対策方法は既にあるのです。REDD Plusと呼ばれる森林破壊による 排出量の減少対策の しくみによるものです。ノルウェーは既にインドネシア ブラジルそれぞれに REDD Plus実行のため 10億ドルもの援助を行っています。取り組みは既にはじまっているのです。でも問題はこれだけじゃありません。

 

22 大気中の二酸化炭素の増加は、5億もの貧しい人々を危険に晒している

経済によりすべてが解決されるのでしょうか? そうはいきません。海にはサンゴ礁が広がる地域があります。ご覧のように 地球中で ミクロネシア地域 インドネシア マレーシア そしてマダガスカル さらには西カリブまで 赤い点の地域では サンゴ礁により生活の糧が 5億以上の人々に供給されています。全体のなんと8分の1もの人々です。悲劇なのはこうしたサンゴ礁は失われ- 専門家によると ある一定レベル以上の大気中の二酸化炭素は サンゴ礁には有毒過ぎる- 私たちはサンゴ礁を 絶滅の危機に晒しているだけでなく また海に住む海洋生物の4分の1をも絶滅させ それだけではなく発展途上国に住む 5億もの貧しい人々をも 危険に晒しているのです。

 

23 母なる自然には環境のインフラ、自然資源は残されていない

二酸化炭素の濃度目標を450ppmとし 温度の上昇を2度までと妥協することで ある倫理的な決断を下しました。すなわち こうした地域にサンゴ礁を 維持しないというものです。もっとも こうしたことは 知らずに行われたことですが 一体どういう意味を持つのでしょう? もう これ以上はやめましょう。母なる自然にはもう環境のインフラ そして自然資源は残されていないのです。これ以上余裕はありません。ありがとうございます(拍手)

 

最後に

生態系の価値は完全に帳簿外。大気中の二酸化炭素が増えればサンゴ礁が維持できなくなり、海洋生物の4分の1をも絶滅させる。それは発展途上国の5万人の貧困層を危険にさらしている。大自然の見えざる経済を「見える化」しよう

TED公式和訳をしてくださった SHIGERU MASUKAWA 氏、レビューしてくださった Akari Takenishi 氏に感謝する(2011年12月)。

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