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日本は国会審議で予算と法律を採択する法治国家 ニッポンのしくみ

「ニッポンを変えたければ法律づくりを学ぼう!」著者らは語りかける。ここでは、政策工房『ニッポンの変え方おしえます』を7回にわたって要約し、日本を変える法律づくりについて理解する。第1回は、ニッポンのしくみ。

法律はなぜ必要か

法律が必要な理由は日本が法治国家だからである。ある問題を解決するためには「政策」をつくる必要がある。その政策を実施するには「財源」と「法的根拠」が不可欠である。つまり、国会で所定の手続に則って議論し「予算」と「法律」を採決する必要があるのだ。

 

三権分立とは

三権分立とは、立法、行政、司法のもと、それぞれの機関がルールに則って牽制・抑制し合う「法による支配」に基づいた統治構造である。歴史的には、王や独裁者など権力者が国を治めるという「人による支配」だったが、1人の権力者による恣意的な暴走を許さないために、みんなで法律を定めてそれに則って国を動かすという構造に変わったのだ。

法律をつくるのが「立法府」、法律を運用し執行するのが「行政府」、その法律の運用が適切に行われているかをチェックするのが「司法府」である。法治国家である以上、政治上の権力を行使するにあたり、憲法を頂点に、国会が制定した法律、明文化された法令などに基づかなければならないのだ。

 

議院内閣制と大統領制

日本やイギリスのような議院内閣制とは、議会で多数を占めた与党が内閣を組閣するもので、内閣を直接選ぶのは議会である(間接民主制)。他方、アメリカのような大統領制とは、行政府の長である大統領も国民の投票によって選ばれるため、議会の意思とは独立した形が取られている(直接民主制)。

 

立法と行政の境

日本では立法と行政のバランスが崩れている。大統領制の場合、立法府の議員たちは大統領・閣僚など行政府の要職を兼務することができないため、立法権と行政権が一体化しにくい。しかし、議院内閣制は、与党議員が中心となって内閣を組閣し、行政府を統治する。つまり、首相・閣僚は、行政権を握る内閣構成メンバーであると同時に、立法権を持つ議員でもあるという二元的地位にあるのだ。また、日本の総理大臣は、制度上アメリカ大統領以上の権限を持っている。しかし、長期安定政権となることが少ないのは、任期途中で総理大臣が辞任しても国民の審判を経ずに総理大臣が選ばれてしまうからである。

 

法律は誰が作るのか

立法には行政府である内閣が提出する「政府提出法案」と立法府である衆参両院の議員が提出する「議員提出法案」という2つがあるが、前者が8〜9割を占める。そもそも行政とは、総理大臣を頂点にした1府12省庁のことで、地方と区別して中央官庁と呼ぶ。ここに所属する職員のことを官僚という。行政権は合議体としての内閣(総理大臣が主宰する閣議)に属している。閣議(定例閣議は毎週火曜と金曜の午前中に開催)などを通じて所管大臣に指示を行い、官僚たちを使って予算案や法律案を作成し、政策を実施していく。しかし、実際は行政府を動かす一部の官僚たちが実質的な政治上の権限を掌握するようになっていった

 

国会は何をしているのか

国会とは「全国民を代表する選挙された議員」(日本国憲法第43条)で組織された「国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関」(同第41条)である。国会は憲法上唯一、主権者である国民の直接投票によって選出される国の代表機関であり、法執行による統治を行う「内閣」、憲法と法令などとの適合性について審査する法令審査権(同第81条)をもつ「裁判所」よりも優位性が認められている。

国会は政策(法律案と予算案)を審議して、最終的に多数決で決めるのが大前提である。政策調整のために議論を行い、与野党で合意形成を行えばよい。しかし、イギリスの議会は対立関係が明確で議論が白熱しているが、日本は官僚のお膳立ての下での想定問答が続くだけである。また、国会審議ではない場面で既に与野党間で駆け引きを行っており、いわゆる政局(多数派工作)によって流れが決まっていることも多いのだ。

 

最後に

法律が必要なのは日本が法治国家だから。三権分立とは立法、行政、司法の三権を法による支配で統治すること。行政府を選ぶ方式には、議院内閣制と大統領制がある。法律は行政府か立法府がつくるが、日本では前者が8〜9割を占める。国会は政策を審議して、最終的には多数決で決める役割を持つ。三権分立と議院内閣制を採る法治国家

次回は、議員立法のモデルケース NPO法ができるまでについてまとめる。

ニッポンの変え方おしえます: はじめての立法レッスン


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