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予想される結果のバラツキと平均的に予想される利益 リスクとリターン

前回は、長期の円定期預金にはインフレの恐怖がある 長期預金についてまとめた。ここでは、予想される結果のバラツキと平均的に予想される利益 リスクとリターンについて解説する。

確率を意識してリターンとリスクを測る

リターンとは平均的に予想される利益(期待値)のことで、リスクとは予想される結果のばらつき(標準偏差・ボラティリティ)のことである。つまり、リターンとリスクの大きさを正しく知るためには、それぞれのケースが生じる確率を知る必要がある。また、結果としてのリターンは、過去の結果としての利益のことなので、将来を推測するリターンとは区別する必要がある。

 

コストの重要性

金融用品を選ぶ際に重要なのは、表面上のリターンから予想されるインフレ率やコスト(手数料や税など)を差し引いた実質価値である。コストの中で最も重要なのが手数料で、競争原理が働いているかどうかが大きな意味を持つ。多数が参加している市場で直接売買できるかどうかによって大きく異なるのだ。

例えば、上場企業の株式やETF(日経平均株価などに連動して価格が上下する株式投資信託)の売買は、ネット証券会社などが先導して、かなり安い手数料で売買できるようになった。また、国債などの債券も市場が大きいため、売買コストが安くなっている。反対に、特定の金融機関などを相手に売買するしかない金融商品(株式投資信託、年金保険、地方債など)は、売買コストが高い傾向にある。

 

善玉リスクと悪玉リスク

金融取引のリスクには、以下の5つがある。また、個人が金融取引を行う場合には、情報リスク(間違いや情報不足による損失)と知識リスク(間違った知識に基づく判断による損失)が加わる。

  1. 価格変動リスク:株価、為替レート、金利、債券価格、地価などの資産価格が変動することで損失が生じるリスク
  2. 信用リスク:企業倒産などのために、約束された金利や元本などの受渡が行われなくなることで損失が生じるリスク
  3. 流動性リスク:取引しようとする資産の市場での取引量が少ないため、適正価格よりも安く売る(あるいは高く買う)しかなくて、損失が生じるリスク
  4. 法的リスク:取引相手や取引そのものが違法であるために損失が生じるリスク
  5. 操作リスク:取引操作の間違いや、取引の管理方法の問題などのために損失が生じるリスク

善玉リスク(リスクを受け入れるとリターンが高まる可能性のあるもの)は価格変動リスク、信用リスク、流動性リスクで、それ以外のリスクは悪玉リスク(不要なリスク)といえる。信用リスクを取っている企業の典型例が、消費者金融サービスである。

 

株価リスクとポートフォリオ理論

個人の資産運用で注目すべきなのは、価格変動リスクであり、その代表は株価リスクである。ポートフォリオ理論はこうしたリスクをなるべく小さくして、効率よくリターンを高めるものである。例えば、株価リスクを抑えるために複数の株式を保有する分散投資などある。また、資産をできるだけ広い範囲で考えて、金融資産だけでなく不動産、働く能力、子どもなども考慮することが大切である。そうすることで、本当の意味でのリスク分散を図ることができるだろう。

また、個人の資産運用では流動性リスクを負うことにメリットは少ない。なぜなら、急にお金が必要となったときなどに、個人は金融機関に比べてより大きな損失を被りやすいからである。その意味でも、価格変動リスクに焦点を当ててポートフォリオを組むことが重要である。

 

最後に

リスクとリターンの定義は誤って使われやすい。リスクとは予想される結果のばらつきで、リターンは平均的に予想される利益である。過去の結果としての利益という結果としてのリターンもある。リスクには善玉と悪玉があるが、個人が流動性リスクを負うことは勧められない。リスクとリターンには確率を想定し、不要なリスクは負うな

次回は、外貨預金・FX・外貨MMFにはコスト比較が必要 外貨運用についてまとめる。

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