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国際ローミング、FMC、位置情報、番号ポータビリティ 携帯電話の付加機能

前回は、OFDM、スケジューリング、MIMOといったLTEによる高速通信についてまとめた。ここでは、国際ローミング、FMC、位置情報、番号ポータビリティといった付加機能について解説する。

1 携帯電話網のネットワークサービス

ここでは、携帯電話網のネットワークサービスとして注目されている以下の4つの機能について説明する。

  1. 国際ローミング:日本で使っている携帯電話のサービスを海外でも使えるようにすること
  2. FMCサービス:固定電話と携帯電話を組み合わせて、安く便利に使えるサービス
  3. 位置情報サービス:衛星や携帯電話網の仕組みを使い、携帯電話端末がどこにいるかを把握して便利に利用するサービス
  4. 番号ポータビリティ:契約している携帯電話事業者を変えても同じ電話番号を引き続き使えるサービス

 

2 ぶらぶら歩きが海外にまで広がる国際ローミング

ローミング(roaming)とは元々、家畜などがぶらぶらと歩き回ることである。以前は、携帯電話を持ち歩いてどこへ行っても継続してサービスを受けられるという意味で使っていた。現在は、1台の携帯電話端末を複数の事業者のネットワーク間で持ち歩いて利用できるサービスである。国際ローミングとは、個人が直接利用契約をしていない外国の通信事業者のサービスエリアでも、その事業者の通信設備を使って利用できるサービスのことである。

ヨーロッパの第2世代携帯電話方式GSM(Global System for Mobile communications)方式を採用している携帯電話事業者間やCDMA事業者間では、それぞれの方式のグループ間でローミング協定を締結している場合が多くある。一方、通信方式が異なる携帯電話事業者間では簡単にローミングサービスを利用することはできなかった。しかし、2002年1月にフランスのブイグテレコム(GSM事業者)と韓国KTフリーテル(CDMA事業者)の間で国際ローミング協定が締結され、世界で初めてGSM/CDMA方式間のローミングサービスが実現した。

ローミングサービスを実現する方法を大きく分けると、着信転送、UIMカードローミング、1端末ローミングという3種類がある。

 

3 外国の端末に国内から着信を転送する

第一に、着信転送によるローミングとは、外国の通信事業者の携帯電話端末を購入するかレンタルするかして、自分の携帯電話番号宛にかかってきた電話をその新しい携帯電話端末に転送する方法である。携帯電話端末が外国の通信事業者の端末である点が、他の方法との大きな違いである。

 

4 UIMカードで外国の端末がいつもの電話番号に

第二に、UIM(User Identity Module)カードを外国の携帯電話端末に差し込んでローミングする方法である(チップローミング)。このカードはUSIM(Universal Subscriber Identity Module)カードと呼ばれることもあるが、最近は単にSIM(Subscriber Identity Module)カードと呼ばれるようになった。このカードには、電話番号などの加入者情報のデータが書き込んであり、日本で利用している第3世代携帯電話の端末に搭載されている。これを取り外して購入またはレンタルした海外用の携帯電話端末に差し込めば、外国でもいつも利用している電話番号で使えるようになった。

 

5 同じ端末をそのまま海外でも使える

第三に、1端末ローミングとは国内で使っている携帯電話端末をそのまま外国に持ち出して使える方法である。無線通信方式などが、国内と外国の携帯電話事業者間で同じ方式であれば簡単に実現できる。無線通信方式が異なる場合は、両方の通信方式を搭載し、切替えて使えるデュアルモード端末が必要である。

 

6 携帯電話と固定電話が連携する融合サービス

FMC(Fixed Mobile Convergence)とは、携帯電話と固定電話が連携するサービスである。携帯電話端末に近距離用のアクセス機能としてBluetoothや無線LANを搭載し、家の中に設置したアクセスポイント(基地局)を経由して、従来の固定電話網やインターネットに接続することで実現する。

FMCサービスでは、携帯電話網と固定電話網が1つのホームメモリーを参照して、相手携帯電話端末の位置を屋内・屋外も含めて確認する。屋内にいるときは固定電話網経由で、屋外にいるときは携帯電話網経由で着信する。また固定電話網の一部または全部をIP網で置き換えれば、通信料金を大幅に安くできる可能性がある。

なお、Bluetoothは10m程度の比較的近距離での利用を目的とした無線通信方式である。2.4GHz帯の無線を使用し、超小型で安価なシステムである。通信速度は当初1Mbps以下だったが、現在では3Mbpsとなっている。携帯電話とヘッドセットや、PDA/PCとその周辺機器などをワイヤレスで接続する際に利用されている。

 

7 欧米で始まったFMCサービス

こうしたFMCサービスは、韓国のKT(Korea Telecom)やイギリスのBT(British Telecom)がすでに始めている。BTが2005年6月からサービスしている「BT Fusion」では、近距離用のアクセス機能としてBluetoothを採用している。2006年12月からは企業向けに無線LANを使った「BT Fusion Wi-Fi」のサービスも始めた。

フランスでも固定電話網事業者のFT(France Telecom)が、自社の網と子会社である携帯電話事業者オレンジの携帯電話網とをシームレスに接続する「Unik」というサービスを2006年10月から提供中である。また、米国のベルサウスは携帯電話事業者のシンギュラー・ワイヤレスと組んで「FastForward」サービスを提供している。さらに、スイスの固定・携帯電話事業者であるTDCスイスは「Onevoice」と呼ばれるサービスを提供している。

なお、Wi-Fi(Wireless-Fidelity)とは、無線LANの標準規格IEEE 802.11a、IEEE 802.11b、IEEE 802.11g、IEEE 802.11nに対して、業界団体であるWECA(2003年にWi-Fi Allianceと改称)が名付けたブランド名である。

 

8 FMCを実現する技術「UMA」と「VCC」

FMCを実現する技術には、UMAとVCCがある。UMA(Unlicensed Mobile Access)とは家の中に設置したアクセスポイントを経由して、従来の固定電話網やインターネットに接続する技術の1つである。UMAは2004年に通信機器メーカーが共同で規格化し、2005年には第3世代携帯電話の標準化グループ「3GPP」(3rd Generation Partnership Project)もGAN(Generic Access Network)という名称の仕様として承認した。

UMA技術は、欧州の第2世代携帯電話方式GSMの音声サービスや同じく第2世代のデータ通信方式GPRS(General Packet Radio Service)を利用している。その仕組みは、無線LANなどのネットワークに接続すると、UNCで認証後に携帯電話網のホームメモリーに位置登録する。無線LANのアクセスポイントから遠ざかると、携帯電話網にハンドオーバーするというものである。

VCC(Voice Call Continuity)とは、回線交換接続を基本とした移動通信網と、パケット交換接続を基本とした固定通信網であるIMS(IP Multimedia Subsystem)とが連携することによって、1つの携帯電話端末に移動通信網経由と固定通信網経由のシームレスな接続と、それらの間のハンドオーバーを提供するものである。VCCは第3世代携帯電話システムの標準化グループ3GPPで仕様化された方式である。

なお、GPRSはGSM方式の携帯電話網を使ったデータ通信方式で、欧州などで普及している第2世代の携帯電話技術である。パケット方式でのデータ送受信ができ、通常のGSM(9.6kbps)より高速の最大115kbpsでのデータ通信が可能である。料金体系は情報量に比例するパケット課金制で、インターネット接続サービスに使う。

 

9 FMCサービスの行方

FMCサービスの課題は電話番号方式である。FMC用、固定電話用、携帯電話用と1人にいくつもの電話番号を割り当てていると、現在の電話番号体系では電話番号が足りなくなってしまう可能性もある。

日本では2007年3月にFMCサービス導入に向けた電話番号制度について答申を出し、「060」「050」「090」などで始まる電話番号をFMCサービス用に割り当てることになった。

 

10 携帯電話端末の場所を知る位置情報サービス

位置情報サービスは、大きく2種類に分けられる。携帯電話端末の持ち主以外の人が携帯電話端末の位置を知るサービス「第三者検索サービス」と、携帯電話端末から自分自身の現在位置の情報を通知する「自己位置通知サービス」である。まず、両方のサービスを実現するために必要な、位置を測定する(測位)技術を説明する。その方法は以下の3つである。

  • セルベース方式:携帯電話端末が通信している無線基地局のエリア(セル)の中の、ある地点を現在位置として認識する
  • 電波到達の時間差による測位方式:3つ以上の無線基地局から電波が届く時間を測定することで、携帯電話端末の位置を計測する。OTDOA(Observed Time Difference Of Arrival)とも呼ぶ
  • GPS(Global Positioning System)測位方式:3つ以上の衛星からの距離を測定して測位する。無線基地局から情報を補助的に使うこともある

なお、GPSとは全地球測位システムと呼ぶ。元々は米国の軍事用衛星が発射している電波だが、民間利用に開放されており、これを利用する。以前から船舶や航空機で利用してきたが、現在は自動車のカーナビやスマートフォンなどで利用されている。

 

11 所在地確認や緊急通報で使う

第三者サービスは、宅配便の運転者が持っている携帯電話端末の位置を会社が把握したり、子どもや高齢者の携帯電話端末の位置を家族が確認する場合などに使うものである。

自己位置通知サービスは、携帯電話端末を持つユーザーが近くの地図や店舗の情報などを得るときに利用するものである。GPSを使った測位では、携帯電話端末自身が位置を測定して自己位置通知サービスを実現できる。

 

12 携帯の番号を変えずに済む「番号ポータビリティ」

番号ポータビリティまたはナンバーポータビリティMNP:MobileNumber Portability)とは、ユーザーが電話番号を変更せずに携帯電話事業者を変更できるサービスである。このようなサービスは、外国では既にシンガポールシンガポールが1997年に開始したのを初めに、オーストラリア、香港、韓国、EU加盟国の一部や米国でも導入されている。

携帯電話事業者を変更したときに番号ポータビリティを利用したユーザーへ電話をかけた場合、変更後の携帯電話事業者に接続する方法には大きく分けて2つある。元の携帯電話事業者から新しい事業者へ転送して接続する転送方式と、元の携帯電話事業者につないだ回線を切断して、改めて変更後の携帯電話事業者へ回線をつなぎ直すリダイレクション方式(方向変更)である。

転送方式は番号ポータビリティのためのソフトウェア変更が不要で、比較的簡単にサービスを実現できる。しかし、多くの事業者を介して音声をやりとりするため、ムダが多くなる。

 

13 ムダを省いた「リダイレクション方式」

こうしたムダを省いたものがリダイレクション方式である。ただし、発信側の関門交換機のソフトウェアに、リダイレクトする機能を新たに追加しなければならない。そこでリダイレクション機能を追加するのは、現状では発信側が携帯電話事業者である場合にしている。

 

14 第4世代の携帯電話へ

将来の第4世代携帯電話では、データ通信速度の高速化や携帯電話網のIP化などを実現し、最大通信速度は下り1Gbps、上り500Mbpsと大幅に速くなる見込みである。新たに3GHz帯が割り当てられることが、世界無線主管庁会議(WRC:World Radio Communication Conference)で既に決まっている。

また、データ通信はもちろん、制御用の共通線信号も音声通信も含めて、すべてを統一的にIP網で伝送する方向に進んでいる。音声をIP網で伝送する方式を「VoIP」(Voice over IP)と呼び、固定電話網ではすでに一般的なサービスとなっている。

さらに、LTEでは無線アクセスを収容するコア・ネットワーク「EPC」(Evolved Packet Core)と固定ブロードバンドアクセス網との間での相互接続を実現すべく、「3GPP」と「BBF」(BroadBand Forum)が連携して仕様を検討している。固定通信網で音声サービスをVoIPで実現するNGN(Next Generation Network)とも技術的な観点では親和性が高い。

このIPで統一する次世代網「NGN」に対応する第4世代携帯電話のネットワークでは、近距離のアクセスを目的としたBluetoothや無線LAN、光通信ネットワークなどとも連携して、「いつでも、どこでも、どんなサービスでも」移動しながらシームレスに(途切れることなく)受けられる「ユビキタス・モバイルネットワーク」を実現しようとしている。

 

最後に

『携帯電話はなぜつながるのか』を7回にわたって要約し、スマートフォンを支える3G/3.9G高速通信のしくみをまとめた。

携帯電話は急速に普及され、複雑で膨大な技術が積み上げられてきた。著書では音声通信とデータ通信の2つの柱を元に、そこで使われている無線アクセス技術とコア・ネットワーク技術の活用、そしてLTEや国際ローミングといった付加機能など、広範に渡って説明されている。「携帯電話はなぜつながるのか」少しでも気になった人は、ぜひ手に取ってみてほしい。

携帯電話はなぜつながるのか 第2版 知っておきたいモバイル音声&データ通信の基礎知識


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