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ヘンリー・エヴァンズ&チャド・ジェンキンス 人類のためのロボットを

「ロボット工学の目標はすべての人に内在する力を解き放つことです」ヘンリーは語りかける。ここでは、85万ビューを超える Henry Evansら のTED講演を訳し、「人類のためのロボット」によっていかに彼が自分の人生を生きられるようになったかを理解する。

要約

脳卒中による四肢麻痺を抱えながらも、ヘンリー・エヴァンズは、テレプレゼンス・ロボットを駆使してステージに立ち、この新しいロボット―「人類のためのロボット(Robots for Humanity)」という団体が彼のために微調整してくれたロボット―によって、いかに彼が自分の人生を生きられるようになったか語ります。彼は、チャド・ジェンキンスのチームが開発した機敏な小型ロボットを飛ばすことで、自らの意思で空間を操れるようになり、再び、庭や大学のキャンパスを見てまわれるようになったのです。(TEDxMidAtlantic)

In 2003, Henry Evans became quadriplegic and mute after a stroke-like attack. Now, working with Robots for Humanity, he’s a pioneer in adaptive robotic tech to help him, and other disabled people like him, navigate the world.

 

1 要修理物件だった家からお話ししている

カリフォルニア州ロスアルトスから ヘンリー・エヴァンズさんです(拍手)こんにちは ヘンリー・エヴァンズです。2002年8月29日までは 私なりのアメリカン・ドリームを生きていました。私は 典型的なアメリカの町セントルイスで育ち 父は弁護士 母は主婦でした。兄弟姉妹6人は良い子でしたが それなりにトラブルも起こしていました。高校卒業後私は実家を離れ もっと世界について学ぶことにしました。ノートルダム大学に行き 会計学とドイツ語学の学位を取り卒業しました。在学中にはオーストリアに1年留学しました。それから スタンフォード大学でMBAを修め 高校時代からの恋人ジェーンと結婚しました。彼女と一緒になれて今でも幸せです。一緒に素晴らしい4人の子どもを育てました。私は 仕事にも勉強にも励み出世もしました。そして シリコンバレーで最高財務責任者にまで 上りつめました。本当に好きな仕事でした。初めて 家族で住むマイホームも手に入れました。2001年12月13日に カリフォルニア州ロスアルトスの美しい一角の 要修理物件を買いずっと そこに住んでいます。今は その家からお話しさせてもらっています

 

2 先天異常による脳卒中のような発作に見舞われた

改築を楽しみにしていたのですが その家に移り住んで8ヶ月後 私は 先天異常による脳卒中のような発作に見舞われました。一晩で 両手両足が不自由になり声も出せなくなりました。働き盛りの40歳のときでした。それから 何年もかかって 家族の力強い支えもあり ようやく 生きようと思えるようになりました。私は 重度の障害者を支援するテクノロジーに夢中になりました。マデンテック社が販売している 体の動きを捉える器具のおかげで 私は 頭をちょっと動かすだけでカーソルを動かし 普通のパソコンを使えるようになりました。ネットサーフィンもできればメールのやり取りもできます。オンラインの言葉ゲームで友人のスティーブ・カズンズを いつも打ち負かしています。このテクノロジーのお蔭で私は社会との交わりを保ち 活発な気持ちでいられ 社会の一部であると感じられます。

 

3 「人類のためのロボット」プロジェクトを始めた

ある日 ベッドで横になってCNNを見ていると ジョージア工科大医療ロボティクス研究室の チャーリー・ケンプ教授がPR2ロボットの デモをしていました。私はすごく感動して チャーリーと ウィロウガレージ社のスティーブ・カズンズにメールし 私たちは「人類のためのロボット(Robots for Humanity)」プロジェクトを始めました。このプロジェクトで約2年をかけて PR2ロボットを 私の身体代わりに使えるようにしました 私は10年ぶりに自分で髭剃りもできました。カリフォルニアの自宅から アトランタにいるチャーリーの髭も剃ってあげました(笑) ハロウィーンのキャンディーを渡したり 冷蔵庫を自分で開けたり 身のまわりのことがこなせるようになってきました。私は かつては思いもよらなかった可能性を見出しました。自分や同じ境遇にいる仲間のために 生き そして貢献をすることです。

 

4 人間 誰しも何らかの形で障害を抱えている

人間 誰しも何らかの形で障害を抱えています。例えば 時速100キロで移動しようとすれば お互い補助機具が必要ですね。つまり 自動車です。障害があったからと言ってあなたの価値は変わりませんし 私の価値も変わりません。私の愛車 カッコイイでしょう(笑) 私たちは 生まれながらに欠陥があって 自分では空を飛ぶことができません。

 

5 ドローンを使えば寝たきりの人たちの世界を広げてあげられる

去年 ウィロウガレージ社のカイジェン・シャオが 私をチャド・ジェンキンスに紹介してくれました。チャドは どれだけ簡単に ドローン(無人飛行機)を買って飛ばせるか教えてくれました。それで気付きました。ドローンを使えば 寝たきりの人たちの 世界を広げてあげられると。飛ばすことで自分の意思で動く感覚が持てるのです。素晴らしいことでしょう。頭を動かしてマウスでカーソルを操り 私はこれらのウェブ・インターフェイスで ロボットから送信されたビデオを見て指示コマンドも送れます。それも ブラウザのボタンを押すだけです。ちょっと練習すればこのインターフェイスにも慣れて 自分で 自宅の周りをドライブできるようになりました。庭を見てまわって ぶどうの育ち具合も見ることができます。屋根の上のソーラーパネルもチェックしましたよ(笑) パイロットとして難しいと思うのは ドローンを バスケットボール用のバスケットに着陸させることです。さらに私は頭装着型ディスプレー 「オキュラス・リフト」をFighting Walrus社に 改造してもらい使えるか試しました。ドローンで飛行する世界に 没頭するためです。ブラウン大のチャドのグループと 私は ドローンを彼の研究室のまわりで 週に数回 5千キロ近く離れた自宅から飛ばしています。四肢麻痺でもよく学び よく遊べと 時間を見つけては楽しいゲームもします。ロボット・サッカーとか(笑) 私自身 気軽にブラウン大のような キャンパスを自由に動きまわれるとは思いもよりませんでした。授業料が払えたらいいんですけどね(笑)

 

6 ヘンリー、パイロットの腕前を見せてよ

ヘンリー ジョークはさておき きっと ここにいる皆さんは あなたが このドローンを 5千キロ離れたカリフォルニアの自宅から飛ばすのを見たいはずだよ(拍手)ヘンリー 最近 ワシントンDCには行ったかい?(笑)TEDxMidAtlanticに来れて最高だろう?(笑)(拍手)どんな気持ちが教えてよ(笑)さて 仕上げだ。パイロットの腕前を見せてよ(拍手)もう少し調整は必要ですが 大いに期待できます。

 

7 ロボット工学を身近なものにして誰もがその一部になれるようにしたい

ヘンリーの話が素晴らしいのは ヘンリーのニーズを理解しているからです。ヘンリーと同じ境遇にある人たちが テクノロジーに何を求めているか理解し さらに 先端技術で 何ができるのかを把握し そして それらを組みあわせて 賢く 信頼できる形で使うのです。私たちは ロボット工学を身近なものにして 誰もがその一部になれるようにしたいのです。私たちは手頃な値段でロボット・プラットフォームを提供しています。例えば A.R.ドローンは300ドル Suitable Technologies社のBeamはたった1万7千ドルで オープンソースのロボット・ソフトウェアもあり あなたも一緒に取り組むことができます。私たちは こうしたツールを提供することによって 皆さんが より良い方法で 障害のある人を動けるようにし 高齢者のケアをし 子どもたちにより良い教育をし 将来 中産階級の仕事が どうなるのか考え 環境を監視しながら保護し 宇宙も探検してほしいのです。

 

8 寝たきりであってももう一度世界を飛び回ることができる

ヘンリー どうぞ。ありがとう チャド。このドローンを使ってお見せしたいのは 寝たきりであってももう一度 世界を飛び回ることができるということです。ロボット工学によりすべての人に公平な場ができたのです。鋭敏な精神と想像力が全ての世界です。障害がある人でも 他の人と同じように活動できます。むしろ 上手いくらいかもしれません。テクノロジーによって 現在 植物人間とみなされている多くの人々に 人としての喜びも感じさせてあげられるのです。100年前なら 私は 植物人間として世話されていただけでしょう。でも 実際のところ 私は死んでいたと思います。

 

9 今は全て私たち次第

今は 全て私たち次第なんです。私たちは ロボット工学をどう使うか決められます。良いことにも 悪いことにも 人間をただ置き換えることにも 人々を良くすることにも使えるし 私たちがもっと色々活動し楽しめるようにもできます。ロボット工学の目標は すべての人に内在する力を解き放つことです。私や 世界中にいる私のような境遇にある人たちが より世界と関われるようにするのです。皆さんのお力添えがあれば この夢を現実にすることができます。ありがとうございました(拍手)

 

最後に

ロボット工学の目標はすべての人に内在する力を解き放つこと。今は全て私たち次第

和訳してくださった Yuko Yoshida 氏、レビューしてくださった Reiko Bovee 氏に感謝する(2013年11月)。


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