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ヴィージェイ・クーマー 協力し合う飛行ロボット

「クワッドローター型の小さく敏捷な飛行ロボットは、群れを作り、互いの存在を認識し、臨機応変にチームを組むことができます」クーマーは語りかける。ここでは、300万ビューを超える Vijay Kumar のTED講演を訳し、協力し合う飛行ロボットの可能性について理解する。

要約

ペンシルベニア大学のヴィージェイ・クーマーの研究室で開発しているクワッドローター型の小さく敏捷な飛行ロボットは、群れを作り、互いの存在を認識し、臨機応変にチームを組んで、建設や災害時の調査やその他様々なことをこなします。

At the University of Pennsylvania, Vijay Kumar studies the control and coordination of multi-robot formations.

 

1 自律的で敏捷な飛行ロボットについて

おはようございます。今日お話しするのは 自律的に飛行するビーチボールについてです。違った こういう自律的で敏捷な飛行ロボットについてです。このようなものを作る難しさと この技術の応用にどれほどの可能性があるかお話しします。この技術の応用にどれほどの可能性があるかお話しします。このロボットは 無人航空機と似ています。しかし無人航空機はずっと大きいものです。何千キロもの重さがあって とても敏捷とは言えず 自律的でさえありません。無人航空機の多くは実際 人間によって遠隔操作されていて 複数のパイロット センサのオペレータ 作戦指揮官などが関わっています。

 

2 重さは50グラム程度で直径20センチほどの大きさ

私たちが興味を持っているのは 私の手にあるようなロボットの開発で 左の写真の2つは実際 お店で買うことができます。これはローターが4つのヘリコプターで 大きさは1メートル前後 重さも数キロ程度です。私たちはそれにセンサやプロセッサを後付けして GPSなしで屋内を 飛べるようにしています。私が今 手にしているロボットは 私の学生アレックスとダニエルが 作ったものです。重さは 50グラムほど 消費電力は15ワットで 見ての通り 直径20センチほどの大きさです。このようなロボットの仕組みを 簡単にご説明しましょう。

 

3 静止、加速、進行等の基本的な仕組み

4つのローターが すべて同じ速さで回っているとき ロボットは空中で静止します。4つのローターの回転速度を上げると 上に加速し 上昇します。ロボットが傾いていれば当然 その傾いた方向に 進むことになります。ロボットを傾けるには 2つの方法があります。この写真で 4番ローターは速く 2番ローターは遅く回っています。そうするとロボットを 「ローリング」させる力が働きます。一方 3番ローターの回転を速く 1番ローターの回転を遅くすると ロボットは手前側に「ピッチング」します。最後に 向かい合った2つのローターを 他の2つより速く回転させると 垂直軸を中心に「ヨーイング」します。オンボードプロセッサは 行うべき動作に対して必要となる これらの方法の組み合わせを求め モーターに対して 毎秒600回送る命令を 決めています。それがこの基本的な仕組みです。

 

4 サイズを小さくするほどロボットの動きが敏捷になる

この設計が有利な点は サイズを小さくするほど ロボットの動きが敏捷になることです。ここでRは ロボットの大きさを表す数字で 実際には半径です。Rを小さくすると 様々な物理的パラメータが 変わります。中でも一番重要なのは 慣性 すなわち動きに対する抵抗力です。回転運動を支配する 慣性の大きさは Rの5乗に比例します。ですからRを小さくすると 慣性は劇的に減るのです 結果として ここでギリシャ文字の αで表している角加速度は 1/Rになります。Rに反比例するのです。小さくするほど速く回ることができるようになります。

 

5 360度宙返りを0.5秒未満で行っている

ビデオを見ると そのことがよく分かります。右下の映像でロボットが 360度宙返りを 0.5秒未満で行っています。連続宙返りにはもう少し時間がかかります。オンボードプロセッサは 加速度計やジャイロからの フィードバックを受け取って 計算をし ロボットを安定させるために 毎秒600回命令を出しています。左下の映像では ダニエルがロボットを宙に放り投げています。制御能力がいかに強いか分かるでしょう。どんな風に放り投げても ロボットは体勢を立て直して戻ってきます。

 

6 災害の初動調査や建築、輸送時など多くに応用できる

このようなロボットを作る 理由は何かというと 多くの応用があるからです。例えばこのような建物内に送り込み 侵入者 生化学物質の漏洩 ガス漏れ等があった際の 初動対応として 調査を行わせることができます。建築のような作業に 使うこともできます。ここではロボットが梁や柱を運んで 四角い構造物を組み立てています。これについては後ほど もう少し詳しくお話しします。このロボットは貨物輸送にも使えます。小さなロボットは 運搬容量が 小さいという問題がありますが 複数のロボットで運ぶ という手もあります。この写真は最近行った実験で・・・ もうそんなに最近でもありませんが 震災直後の仙台で行ったものです。自然災害で崩れた建物や 核施設内にロボットを 送り込んで 状況の確認や 放射能レベルのチェックを 行わせることができます。

 

7 1つの地点から別の地点へ移動する方法を見出すことが必要

自律的なロボットが 解決すべき基本的な問題は 1つの地点から別の地点へ 移動する方法を見出すということです。これが簡単でないのは このロボットの力学的特性が極めて複雑なためです。実際12次元空間で考える必要があり そのためちょっとしたトリックを使って 曲がった12次元空間を 平らな4次元空間に 変換しています。その4次元空間は X, Y, Z座標とヨー角からなっています。

 

8 スナップを最小化した結果、滑らかな動作を生み出せる

そうするとロボットがするのは 最小スナップ軌道を求めるということになります。物理学のおさらいですが 位置の変化を微分していくと 速度 加速度 ジャーク スナップとなります。このロボットはスナップを最小化するようになっています。それは結果としてなめらかできれいな 動作を生み出すことになります。また障害物の回避も行います。この平らな空間における最小スナップ軌道を 複雑な12次元空間へと 逆変換して それによって制御や 動作の実行をするわけです。

 

9 最小スナップ軌道の例

最小スナップ軌道がどのようなものか いくつか例をご覧にいれましょう。最初のビデオでは ロボットが1つの地点から別な地点へ 中間点を経由して移動します。どんな曲線軌道でも問題なく こなすことができます。これは円軌道で 約2Gの加速度になります。ここでは上にあるモーションキャプチャカメラが ロボットに現在位置を毎秒100回伝えています。また障害物の位置も伝えています。障害物が動いていても対応できます。ここではダニエルがフープを宙に投げていますが ロボットはその位置を計算して 中を通り抜ける最適な経路を求めています。私たちは学者として いつも研究予算獲得という曲芸をさせられているので ロボットにも同様の曲芸をさせているわけです(拍手)

 

10 自分で見つけた軌道やプログラムされた軌道を記憶できる

このロボットにできる別なこととして 自分で見つけた軌道や プログラムされた軌道を 記憶するというのがあります。ここではロボットが 基本動作を組み合わせて 加速して 向きを変え 元の所に戻るという一連の動作をしています。このようにする必要があるのは 通る隙間の幅がロボットよりわずかに広いだけだからです。そのため 飛び込み選手がするように 飛び込み板からジャンプして勢いを付け つま先回転をして1/4宙返りをして通り抜け きれいに体制を立て直すという動作を このロボットはしているわけです。ロボットにはこの難しいタスクをこなすために 軌道の断片をどう組み合わせれば良いのか分かっているのです。

 

11 たくさんのロボットをどうやって協調させるか

ちょっと話題を変えましょう このような小さなロボットの短所はその大きさです。そこで 先ほども言いましたように 大きさによる制限を克服するため たくさんのロボットを使おうというわけです。ここで難しいのは たくさんのロボットをどうやって協調させるかです。そこで私たちは自然に目を向けました。ご覧いただく映像は スティーブン・プラット教授の研究室の アシナガアリがものを運んでいる様子です。イチジクの切れ端です。実際どんなものでも イチジクの果汁を付けると アリたちは巣に運んでいきます。このアリたちには中央で指示を出す者は誰もいません。そばにいる他のアリを知覚しますが 明示的なコミュニケーションは行いません。それでも他のアリと 食料を知覚することで 集団として暗黙の調整が行われるのです。

 

12 編隊飛行中の他のロボットとの距離を監視する

これはまさに私たちが ロボットに持たせたい調整方法です。ロボットが 他のロボットに 囲まれているときに・・・ ロボットiとロボットjを見てください・・・ ロボットにさせたいのは 編隊飛行中の他のロボットとの距離を 監視するということです。そしてその距離を 許容範囲内に保とうとするわけです。そのため ずれの大きさを監視して 制御のための命令を 毎秒100回算出し それが毎秒600回のモーターへの命令に変換されます。これもまた分散的に 行わせる必要があります。ロボットがたくさんある場合 これらすべての情報の処理を中央から ロボットのタスク実行に必要な速さで行うのは無理です。また ロボットは 近くのロボットを 感知することによる周辺情報のみで 行動する必要があります。最後に どのロボットが隣に来ても 構わないようにしてあり これを匿名性と呼んでいます。

 

13 編隊飛行ができれば協力してものを運ぶこともできる

次にお見せする 映像では 20個の小さなロボットが 編隊飛行しています。互いに隣のロボットの位置を監視しながら 編隊を維持しています。編隊の形を変えることもできます。平面的な編隊を組むことも 立体的な編隊を組むこともできます。ご覧のように 編隊が立体型から平面型に移行しています。障害物をよける際には その場で編隊を変形して対応します。ロボットは互いにとても近い距離で飛んでいます。8の字飛行をしていますが 互いに数センチまで近づいています。プロペラの空力的干渉が あるにもかかわらず 安定した飛行を維持できます(拍手)。編隊飛行ができるようになれば 協力してものを運ぶこともできます。ご覧の通り 近くのロボットとチームを組むことで 運ぶ力を2倍 3倍 4倍と 増やしていくことができます。このようにすることの短所は 規模を大きくするにつれ たくさんのロボットで 1つのものを運ぶため 慣性が大きくなり 敏捷に動けなくなることです。しかし運搬能力の面では増大します。

 

14 作りたい構造の設計図を与えるだけで自律的に組み立てる

もう1つお見せしたいのは これも うちの研究室のものですが 院生のクエンティン・リンゼイが 取り組んでいます。彼のアルゴリズムは 桁のような部材から 四角い構造物を組み立てる作業を ロボットに自律的に行わせるものです。どのパーツを どの順に取り上げ どこに置くかを アルゴリズムが決めています。映像は 10倍から 14倍早回ししています。ロボットが3種の構造物を組み立てています。ここでもすべてが自律的で クエンティンがするのは 作りたい構造の 設計図を与えるということだけです。

 

15 Kinectカメラとレーザーレンジファインダーで航行できる

ここまでご覧いただいた実験はどれも モーションキャプチャシステムの 助けを借りています。では実験室を離れ 外の 現実の世界に出た場合はどうなるのでしょう? もしGPSもなかったとしたら? そこでこのロボットには Kinectカメラと レーザーレンジファインダーを搭載しています。それらのセンサを使って 周囲の環境の地図を作ります。地図の内容は様々な目印になるもの ドアや 窓 人間や 家具などで それらの目印に対する 自分の位置を把握します。グローバル座標系は使っていません。ロボットがどこにいて何を見ているかに基づいて 座標系を定義しています。そしてそれらの目印を使って航行しているのです。

 

16 「中に入って地図を作り、戻って様子を教えてくれ」

フランク・シェンと ネイサン・マイケル教授が開発した アルゴリズムの映像をご覧いただきましょう。ロボットが初めての建物に入り リアルタイムで地図を作っていきます。ロボットは目印になるものを把握し 地図を作成します。目印に対する 自分の位置の算出を 毎秒100回行い 前に説明した制御アルゴリズムによる 制御を行います。このロボットはフランクが 遠隔操作していますが どこに行くかを 自分で決めることもできます。どういう建物なのか分からない 建物の中に送り込もうという場合は 「中に入って地図を作り 戻って様子を教えてくれ」と 指示するだけでいいのです。ここでロボットは1つの地点から別な地点に行くという 問題を解決するだけでなく 最良の次の地点を見つけるという問題も 絶えず解決しているのです。基本的には 最も情報の少ない場所を 次の目的地にします。そうして地図を埋めていくのです。

 

17 9つのロボットが6種類の楽器を演奏する

次にお見せするのが 最後の例になります。この技術には多くの応用があります。教育者として私は教育に情熱がありますが このようなロボットは小中高の教育を 大きく変えうると思っています。しかし我々は今ロサンゼルスに近い 南カリフォルニアにいるので エンターテインメント関係のもので 締めくくることにしましょう。ミュージックビデオを用意しました。作者のアレックスとダニエルを ご紹介します(拍手)。ビデオをご覧いただく前に 彼らはクリスから直前に連絡をもらい この3日間で 作り上げたことを言っておきたいと思います。出てくるロボットは 全く自律的に動いています。 9つのロボットが6種類の楽器を演奏します。TED 2012のため特別に作ったものです。ではご覧ください(音楽)(拍手)

 

最後に

サイズを小さくするほどロボットの動きが敏捷になる。災害時の初動調査や建築、輸送時などにも応用できる。編隊飛行中の他のロボットとの距離を監視すれば、協力してものを運ぶことができる。Kinectカメラとレーザーレンジファインダーを搭載しているため、GPSがなくても航行できる。ドローンの仕組み

和訳してくださった Yasushi Aoki 氏、レビューしてくださった Sawa Horibe 氏に感謝する(2012年2月)。

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