sculpture

アパルナ・ラオ 注目を集めようとするアート

「内部にロボット技術を組み込んだ彫刻の動きをご覧ください」ラオは語りかける。ここでは、85万ビューを超える Aparna Rao のTED講演を訳し、注目を集めようとするアートについて理解する。

要約

アーティストのアパルナ・ラオが最新の作品をチャーミングに紹介します。内部に巧妙なロボット技術を組み込んだクールでコミカルな彫刻が、皆さんの知覚をあやつり、注目を集めようとします。少し時間をとって、心ゆくまで楽しんでください。

A part of the Bangalore-based artist duo Pors & Rao, TED Senior Fellow Aparna Rao works with electro-mechanical systems and interactive installations.

 

1 観客がパネルに緊張感を与えているような『インペリアル・モノクローム』

今日は作品の制作過程を ご覧いただきます。どの作品も具体化の途中で 今も直感を頼りに 手さぐりで制作しています。これから説明したいのは 作品を通して私達が探っている 体験についてです。

1つ目の作品 『インペリアル・モノクローム』です。観客は何も知らずに 部屋へ入ってきて 壁にでたらめに配置された パネルを目にします。ところがパネルはすぐに 観客の存在に気づいたかのように あたふたしながら 左右対称に整列します (笑) 両方の状態のスケッチです。一方はバラバラ 一方は完ぺきな秩序です。面白いのは わずかな変化だけで どちらの状態にも なることです。ここで連想されるのは 全く違う2つの絵画様式です。1つは15世紀の祭壇画 ― もう1つは100年ほど前の マレーヴィチの抽象絵画です。スケール感がわかるように ビデオを用意しました。大きなパネルの高さは約2m 一番小さいのはA4サイズです。観客が展示室に入ると パネルは あっという間に整列します。観客がその場に しばらくいると 観客の存在に パネルが慣れてきて どれも だらしなく 緩んできます。でも人の気配や 動きを感じたとたんに また サッと整列します (笑) まるで観客が パネルに緊張感を 与えているようです。あるいは反対に パネルがあまりにも 条件づけられた動きに こだわるせいで 観客に暴君役を 押し付けているようにも見えます。

 

2 紙自体が不安定に動く『ハンドヘルド』

これに続いて もっと こぢんまりとした作品 ― 『ハンドヘルド』を制作しました。観客が目にするのは 壁に貼ってある1枚の紙ですが 近づいていくと A4か レターサイズの 白い紙の両端を 2つの小さな手が 支えているのが見えます。細心の注意を払って 小さな木片から 彫り出したように見えます。また 観客は 作品全体が わずかに 動いていることに気づきます。まるで2つの手が 紙を動かさないように ずっと支えていて ついに耐えきれなく なったようにも見えます。この不安定な動きは 手持ちカメラを通して見た 映像が不安定なのと とてもよく似ています。2つの映像を見比べてください。1つは固定カメラ ― もう1つは手持ちカメラで撮りました。お気づきだと思いますが 映像が不安定だと 撮影者の主観的な 視点が表れてくるのです。そこで私達はカメラを通さず 紙自体が不安定に 動くようにしました。ビデオをご覧ください。反対の手は 想像してください。これによって 恥ずかしがる様子を 表現しようとしています。まるで両腕を いっぱいに広げた小人が 巨大な紙の背後にいるみたいです。この動きは緊張度も表しています。見ている人の役に立とうと 目の前の観客に この紙を そっと見せようとしているのです。

 

3 人の注意をひく『おとり』

次は『おとり』です。こちらは模型ですが 私と同じ位の背丈です。体は丸く2本の腕と 頭に見える長いアンテナがあります。このオブジェの唯一の狙いは 人の注意をひくことです。だから観客が通りかかると 体を左右に揺らします。そして その人が近づくにつれて ますます激しく 腕を振ります。これは初回の動作テストです。体と腕が一緒に動くようになり オブジェが全身を使って 必死にアピールして いるように見えます。でも一度 注意を ひいてしまったら もう興味を失って 別の人を探します (笑)

これが完成した 『おとり』の外観です。まるで大量生産された 製品のようです。工場から出荷される ― 掃除機や洗濯機みたいです。私達は いつも個人の領域を 起点に制作しています。ですから消費者向けの デザインのせいで オブジェが個性を失い 一見 人との間に 距離ができる点を 気に入っています。これには少し悪意があります。注意を払うべきものから 私達の目を 逸らせようとするからです。一方で 多くの助けを 必要とする存在でもあります。

次の作品は オブジェであり 楽器でもあります。この円形劇場の大きさは 舞台の上から見た お客さんのサイズに 合わせています。私が立っている場所からだと 皆さんは この位のサイズです。私の視野一杯に 観衆が広がっています。席には996体の 人形が腰掛けます。人形はそれぞれが意志をもって 拍手する仕組みになっています。つまり拍手をするかどうか ― いつ拍手するか ― 強さや長さはどうするか ― 周りに合わせるのか 自分が影響を与えるのか ― 新たな拍手に参加するかは それぞれが自分で決定します。見に来た人が 観衆の前に出ると 反応が返ってきます。拍手は まばらな時も 大きい時もありますが その後は何も起きません。見に来た人がステージを去る時 観衆は再び反応します。数人がパラパラと 拍手するだけの時もあれば 盛大な拍手喝采の時もあります。そして私達は 観衆全体をオブジェや 生き物として見る事になります。

また 観衆は音楽的な 要素も持つようになります。楽器というわけです。作品を見る人は とても複雑で多様で微妙な 音のパターンを引き出せます。でも観衆から思い通りの反応を 引き出す事はできないので 評価される感覚や 気まぐれな感じ ― そして 不安がつきまといます。魅力的でありながら 罠のようでもあります。頭が2つに割れて 両手になるイメージには ワクワクします。これが完成イメージです。まるで左脳と右脳が ぶつかり合うことで 二重性と緊張関係を 理解しているようです。これがプロトタイプです。早く996体に囲まれてみたいものです。

 

4 3種類の木枠でできた『フレーム・ランナー』

さて次が最後の作品 『フレーム・ランナー』です。発想のきっかけは窓でした。これはスタジオにある実際の窓です。ご覧の通り幅の違う ― 3種類の木枠で出来ています。この窓と同じ構造に基づいて オリジナルの枠を作り 部屋に吊るして両側から 見えるようにしました。この枠の中には 小さな人形の一族が住んでいます。この一族にも サイズが3種類あって 1つの平面上なのに 遠近感や風景を表すようです。人形はそれぞれフレーム上を 行き来することができ 中間に隠れる事ができます。とても堅固なフレームとは対照的に 人形はドタバタ喜劇風の コミカルな動きを目指しました。人形つかいが手に持って 操っているような動きです。

私達が気に入ったのは こんなアイデアです。人形達は 何も気にせず 心配もなく のんきに スキップしています。でも観客の気配を感じたとたん ― 一番近くの壁に 隠れてしまうのです。この作品には矛盾があります。人形たちは 牢獄のような 頑丈な枠に囚われていますが そこは砦でもあるのです。枠があるおかげで 心配もなく 純粋に 外の世界を忘れていられるからです。まるで生き物のようですが その性質は特殊な機構で 表現しています。幸運にも試作段階で チューリッヒ工科大学の 協力を得られました。アニメを見て 彼らが機構を作り 頭が上下する動きと 前後移動を組み合わせて ちょこまかした動きができました。とても小さくて 手のひらにのる程です。アトリエで実際に動くところを 見た時は興奮しました。これが その様子です(笑)どうもありがとう(拍手)

 

最後に

観客がパネルに緊張感を与えているような『インペリアル・モノクローム』。紙自体が不安定に動く『ハンドヘルド』。人の注意をひく『おとり』。3種類の木枠でできた『フレーム・ランナー』。魅力的でありながら罠のようでもある作品たち

和訳してくださったKazunori Akashi 氏、レビューしてくださった Yuka Ito 氏に感謝する(2013年8月)。

世界の彫刻 1000の偉業


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>