前回は、お金の正体として貨幣と信用についてまとめた。ここでは、経済のあやしい主役とされる株について解説する。
1 世界最古の株式会社
東インド会社が株式会社の始まり。主に貿易と植民地経営をやっており、ヨーロッパ各国にいくつもあった。例えば、1600年に設立されたイギリスの東インド会社や1602年に創設されたオランダの東インド会社。イギリス人やオランダ人がお金を出し合って船を仕立て、胡椒のような香辛料を仕入れに行っていた。
初期の会社は、一企業一プロジェクトが基本で、1つのプロジェクトが終われば解散というシンプルな形だった。それが継続的な組織となり、出資分を証明する権利を売買する形になったのが株。このように、企業は続くが持ち主は常に入れ替わって売買できる、流通できるというのが株の仕組み。だから株式のことをシェア(share)という。
重要なことは、株式会社は有限責任であること。つまり、出資者は会社が倒産しても、その責任は株を損するだけである。この株式会社の制度が資本主義の一大発明だといわれている。なお、株は会社側から見てストック(stock)とも呼ばれる。
2 株価を動かしているもの
株価は長期的には金利と株価(配当の利回り)が均衡するところで落ち着く。株は預金や社債よりは安全性が低いため、利回りはいい(仮に前者を5%、後者を3%とする)。また、配当は株主総会で年に1回しか決まらないため、それほど変わらない。ここで、1株100円の株価が倍の200円になっても配当が5円のままならば、利回りは2.5%となる。そうすると、今後は株を売って銀行に預金するようになり、株が安くなる。このようにして金利と株価が均衡するところで落ち着くのである。
3 株式と美人コンテスト
株は美人コンテストに例えられる。美人コンテストにおける投票は、個人が誰を美人と思っているかではなく、みんなが美人だと思っている人を当てることが重要である。つまり、株もみんなが上がると思っている会社に投資することが重要というような空気に左右されやすいというデメリットがある。
何か大きな物事がなされるときは、実行するときとお金を出す人は違う。コロンブスが典型的なベンチャー企業であり、彼に投資したイザベラ女王は典型的なベンチャーキャピタル(エンジェル)である。
4 経済議論のキーワード「期待」
会社の価値としての株価は期待と金利で決まる。期待はその会社が未来に上げるであろう利益の予測で、金利は将来のお金の価値と現在のお金の価値の差による割引率である。例えば金利が10%なら、10000/1.1=9090円と、来年の10000円は今の9090円として換算するというものである。
資本主義経済の中にいる限り、株式からは逃れられない。だからこそ、マーケットはボラタイル(volatile:気まぐれ)であるということを理解する必要がある。
5 会社は誰のもの?—経営と所有の分離
経営と所有の分離とは、会社を経営する人と所有する人を分ける仕組み。これは、オーナーがいい社長になれるかどうかはわからないため、経営者はプロを雇ってマネジメントしてもらうというもの。
また、1980年代からコーポレート・ガバナンス(corporate governance)という考え方が出てきた。これは、会社は所有者のもので、会社をよくするためには株主がしっかりと経営を監視しなければならない。そのために、経営に対し発言する株主の権利が機能していなければならないとするものである。
しかし、日本の企業の株主は別の企業という場合が多い。つまり、企業同士が株式の持ち合いをしているため、コーポレート・ガバナンスが働きにくい。日本の上場企業の8割が一斉に6月に株主総会を行っているのも、株主総会に誰も来ないというのを前提にしていることの現れである。
6 コーポレート・ガバナンスは諸刃の剣
多くのサラリーマンが会社が自分の会社であると思う要因の1つは、オーナーが見えないからという説がある。そのため所属意識が強く、一生懸命に働くが、会社の金を交際費として湯水のごとく使ってきた。負の側面もある一方、利益を配当をせずに内部留保として貯め、それをさらに設備投資として活用できたという面もある。
7 日経の記者は株を買えない!?
株価に対して故意に期待を上げることができないように、インサイダー取引への規制がある。例えば、日経新聞の記者は株を買うことができない。また、チェック機能を保証するために監査役制度を導入した。こうした制度はアメリカのデラウェア州の影響が大きく、こうした州の競争がアメリカの強みの1つである。
8 ダウとは
ダウ平均とは、ダウ・ジョーンズ社が30社の会社の平均株価を求めて、マーケットがどちらの方向に向いているかを知るための手がかりにするものである。ブリッシュ(bullish:上向き)とベアリッシュ(bearish:下向き)という言葉が使われる。
また、日経平均はダウのやり方を日経がお金を払って始まったものであり、225社の平均が有名である。さらに、ナスダックという全米証券業境界が管理運営するコンピュータによる店頭市場銘柄の株価報道システムは、売買高でニューヨーク市場を抜く規模に成長している。
9 株を上場する意味
上場とは取引所に置く(プレイス)という意味。上場するには連続黒字や株主の偏りのなさといった基準があり、それを満たすことが必要。なお、証券取引所は証券会社がお金を出し合っている証券業協会が委託で行っている社団法人である。
株式市場の種類は基準が低い順に、店頭市場、マザーズ、市場第2部、市場第1部の4つがある。店頭市場は証券業協会の定めた基準をクリアしたもので、証券会社を通じて売買される。マザーズ以降は東京証券取引所の審査基準をクリアしたもので、証券取引所で売買される。
上場をしないことのメリットは、オーナー個人の意思が強く反映させることができたり、継続して黒字を出し続けるといった硬直的な基準を無視することができる点である。
10 とっつきにくい株用語
株用語には「冴えない」「反発」「気配」などといった特殊な用語が多い。こういった用語は夕刊に多く、相場を表す夕刊に対し、経済を表す朝刊といわれている。
最後に
株価は期待と金利で変動し、長期的には金利と配当の利回りが均衡するところで落ち着く。「株」という仕組みを用いる株式会社は400年以上もの歴史を持つ。多くの人が自分の取れる範囲でリスクを取ってきたからこそ、多くの繁栄をもたらすことができた。まずはその歴史から学ぶことが必要だろう。
次回は、払うのか取られるのか税金の話についてまとめる。
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