silk

フィオレンゾ・オメネト 絹、歴史ある未来の素材

「自然界で最も品のある素材の1つ、絹。光の伝送、持続可能性の向上、医療の飛躍や限界への挑戦など、20以上の絹の新利用法を紹介します」オメネトは語りかける。ここでは、65万ビューを超える Fiorenzo G. Omenetto のTED講演 を訳し、歴史ある未来の素材「絹」の可能性について理解する。

要約

自然界で最もエレガントな素材の1つ、絹。フィオレンゾ・オメネトが、光の伝送・持続可能性の向上・耐久性の増加・医療の飛躍や限界への挑戦など、20以上の驚くべき絹の新利用法を紹介し、ステージではこの万能素材でできた品々を披露します。

Fiorenzo G. Omenetto’s research spans nonlinear optics, nanostructured materials (such as photonic crystals and photonic crystal fibers), biomaterials and biopolymer-based photonics. Most recently, he’s working on high-tech applications for silk.

 

1 古くて新しい素材「絹」

ありがとう。ここに来れてうれしいです。古くて新しい素材についてお話します。私たちを驚嘆させ続けていて 材料科学や高度技術に対する 考え方に影響を与えるかもしれない素材です。今後もしかすると 医学や 世界的保健や森林再生にも貢献するかもしれません。少し大胆な発言ですね。もう少しお話しましょう。この素材は実際信じられない特性を備えています。素材は持続可能で 全ての加工は常温の水の中でされます。時間設定した生分解ができ コップの水に瞬時に溶けるようにも 何年も変化しないようにもできます。食べることもでき 免疫反応を起こさず 人体に埋め込むこともできます。実際 身体と一体化してしまいます。技術的な特性もあるので ミクロ電子工学にも使え 光通信学的なこともできそうです。その素材は このようなものです。見たとおり この素材は透明です。構成要素は水分とタンパク質のみです。

 

2 構成要素は水分とタンパク質のみ

この素材は絹でできています。なじみのある絹とは 少し違います。では5千年の歴史があるものを どうやって作り変えるのか? 発見過程とは概して自然からヒントを得るものです。そこで蚕の興味を向けます。この蚕は繊維を紡いでいるところです。蚕は驚くことをします。分泌腺から出るタンパク質と 水の2つの材料を使い 非常に耐久性のある保護素材を作るのです。ケブラーのような 工業用繊維に匹敵します。私たちが知っていて なじみのある リバースエンジニアリングで 繊維工業を見ると 繊維工業は繭をほぐして 華やかなものを作り出しています。知りたいのは どうやって水とタンパク質を ケブラーの溶液 この自然ケブラーにするかです。

 

3 フィルムの作り方は自己組織化ができることを活用

実際にこれをどのように リバースエンジニアして 繭から分泌腺へと逆行し 出発物質である水とタンパク質にたどり着くかです。これに関しては 私も一緒に働く光栄にあずかった デイビッド・カプランという人物が 約20年前に解き明かしました。そして出発物質が得られ これが基本的な構成要素に戻ります。そしてこれを使って様々なもの 例えばフィルムなどを作ります。非常に簡単なことを利用します。フィルムの作り方は タンパク質に高度な特性が あることを活用したものなのです。自己組織化ができることです。レシピは簡単で 絹の溶液を流し込み タンパク質が 自己組織化するのを待ちます。そして水分が蒸発しタンパク質が集合したら フィルムになったタンパク質を取り外します。

 

4 ミクロ電子工学やナノスケール技術などと連結できる

フィルムは技術的でもあると言いましたが それはどういう意味か? それは典型的な技術のいくつかと 連結できるということです。ミクロ電子工学やナノスケール技術などです。このDVDの画像は 絹は表面の非常に僅かな 起伏をたどることを説明するためで このため ナノスケールで起伏を複製できるということです。つまりDVDに記録された 情報を複製できるということです。情報を水とタンパク質のフィルムに記録できるのです。試しに絹の一片にメッセージを書いてみました。これです。メッセージはここです。DVDのように光学的に情報を読み取れます。手が震えるとダメなので ステージで大勢の人たちを前にしてやれるか やってみましょう。透明のフィルムですが こうすると― (拍手) ここで一番すごい業は やっている間 手が震えなかったことです。

 

5 光学素子や光ファイバーなど様々な形態にすることができる

そして一旦 素材のこのような 特性が手に入ると たくさんのことができます。実際フィルムに限られません。この素材は様々な形態にすることができます。ちょっと凝ったことをして 色々な光学素子や ランニングシューズの反射テープのような マイクロプリズムを作ったりできます。美しいものも作れます。カメラで写せますか? フィルムに立体感を加えて ちょうどいい角度で見ると 絹のフィルムにホログラムが浮かび上がります。他のこともでできます。純タンパク質で光を導くことが できるかもと考え 光ファイバーも作りました。

 

6 極細の針、歯車やネジ、頭蓋骨、電子装置なども作れる

でも絹は万能で光学以上のことができます。様々な形態が考えられます。例えば医者に行って注射されるのが怖いなら 極細の針を作ればよいのです。画面にあるのは人間の髪の毛に 絹でできた針を重ね合わせたものです。細さが分かると思います。もっと大きなものも作れます。歯車やネジやボルト これらはWhole Foodsで買うことができます。歯車は水中でも使用できます。機械の代替部品について考えると ケブラーの溶液は 例えば末梢静脈や 骨丸ごと1本を交換する耐久性のあるものとして 使えるかもしれません。ちょっとした見本として ミニチュアの頭蓋骨があります。ミニ・ヨリックと呼んでいます (笑) でも例えばカップのようなものも作れます。金と半導体を少し加えれば 食品の表面に貼り付けられるセンサーが作れます。折り曲げたり包んだりできる 電子装置も作れます。ファッションに敏感な人なら絹のLEDタトゥーでも。

 

7 身体に埋め込んだ後取り除く必要がない

ご覧のとおり 絹には 素材形態の 多用途性があります。まだ他にも独特の特性があります。どうして実際にこれが役立つのか? 最初に少し述べましたが タンパク質は生分解性や生体適合性があります。これは組織切片の写真です。生分解性と生体適合性があるから何だと言うのか? 身体に埋め込んだ後 取り除く必要がないということです。つまりお見せしたすべての装置や形態は理論上では 身体に埋め込まれた後 消えてしまうということです。この組織切片に見えるのは 実は反射テープです。車からあなたのことが見えるように 光を当てれば組織の奥まで見ることが できるというアイデアです。絹でできた反射テープがあるからです。更にこれは組織と一体化します。人体と 一体化するだけではなく 環境と一体化することも重要です。タンパク質の時間設定をすると このような絹のカップができ 罪悪感なしで捨てることができます (拍手) 残念なことに埋立地に日々溜まっていく 発砲スチロールのカップとは違います。食べることもできるので そのまま調理できる 食品用のスマート包装も作れます。味はよくないので 助けが必要なんですが。

 

8 最も素晴らしい点は元に戻るということ

でも最も素晴らしい点は元に戻るということです。絹は自己組織化の過程で 生体物質の繭として機能します。そこでレシピを変えて 流し込む時に何か加え― 絹の溶液に何か加え それが酵素であろうが 抗体やワクチンであろうが 自己組織化の過程が これらのドーパントの生体機能を守ります。つまり素材は環境に対して活性を持つようにも 持たないようにもできるのです。先ほどお見せしたネジも 実際に折れた骨を 繋ぎ合わせるネジとして使えるのです。骨が治癒している間 同時に薬品を投与することもできます。要冷蔵の薬品を財布に入れておくこともできます。そこでペニシリンの入った 絹カードを作りました。これを2ヶ月間摂氏60度 つまり華氏140度で保存しましたが ペニシリンの薬効は失われませんでした。ですからこれは― (拍手) これはソーラー冷蔵庫を背負った ラクダより良い案かもしれません。もちろん使用できなければ保存の意味はありません。

 

9 素材の分解を設定することができる

それにはもう1つの独特の素材特性があります。素材の分解を設定することができるのです。ここに見えるのがその差です。上は分解しないよう設定されたフィルムで 下は水中で分解するよう設定されたフィルムです。ご覧のとおり 下のフィルムは 中身を放出しています。このように保存したものを使用することができます。時間制御した薬品投与や 環境への還元も可能となります。見て頂いた形態のどれでも可能です。これらの発見を繋いでいるのは実際に糸なのです。静脈や骨の差し替えや もっと持続可能な ミクロ電子学を行うこと コーヒーを飲んだあと罪悪感なく カップを捨てたり 薬をポケットに入れて持ち歩て それをそのまま飲んだり そのまま砂漠を渡って届けたり したいことが何であれ 答えは絹糸に あるかもしれないことには感動させられます。ありがとう(拍手)

最後に

構成要素は水分とタンパク質のみの絹。光学素子や光ファイバーなど様々な形態にすることができる。極細の針、歯車やネジ、頭蓋骨、電子装置なども作れる。身体に埋め込んだ後取り除く必要がない。元に戻ることや素材の分解を設定することができる。時間制御した薬品投与や環境への還元も可能。答えは絹糸にある

 

和訳してくださった Sawa Horibe 氏、レビューしてくださった Hidetoshi Yamauchi 氏に感謝する(2011年3月)。

熱い絹(上) (講談社文庫)


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