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シュクラ・ボース 「1度に1人の子どもを教える」

「子どもが自分よりも良い生活を送ることは可能です。子どもたちが探究心を追求できる学習環境を整えてあげればいいのです」シュクラは語りかける。ここでは、35万ビューを超える Shukla Bose のTED講演を訳し、教育によってスラムに希望をもたらす仕組みづくりを学ぶ。

要約

貧しい人々を教育するには数字以上に必要なものがある” とシュクラ・ボースは言います。過去の統計データを振り返り、1人1人の子どもを個人として扱うことに重点を置き、インドのスラムに希望をもたらす革新的なパリクラマ慈善財団の物語を語ってくれます。

Shukla Bose is the founder and head of the Parikrma Humanity Foundation, a nonprofit that runs four extraordinary schools for poor children.

 

1 小さな机の上からパリクラマ慈善財団を始めた

今日は私がこの6年間歩んできた。教育 奉仕という 世界での 軌跡についてお話ししたくて この場に 立たせて頂いてます。私は学者でもなければ 経験豊かなソーシャルワーカーでもありません。企業という世界で26年間 組織がより有益になるよう努めてきました。そして2003年 小さな机の上から パリクラマ慈善財団を 始めたのです。

 

2 バンガロールには800のスラムがあり、200万人が生活をしている

まずはスラムを歩き回ることから始めました。しかしバンガロールには 800のスラムがあり 200万人が生活をしています。私たちは行ける限りのスラムを 訪れました。学校に通ってない― 子どもがいる家を見つければ両親と話し 子どもを学校に 通わせるように説得をしました。子どもたちと共に遊び ヘトヘトになり家に帰っても 子どもたちのイキイキした顔 キラキラ輝く目を思い浮かべ 眠りにつきました。

 

3 4人に1人の教師は1年間1度も学校に来ない

みんなワクワクしていました。しかし2億人もの 4歳から14歳の 子どもたちは 学校に通っておらず 学校に通う 1億人の子どもたちは 文字を読めず 算数の基礎ができません。また学校教育にあてられた2500億ルピーの 約9割が教師を含む職員の― 給料に費やされてるという 話を聞きます。それにも関わらず インドの教師欠勤率は 世界トップクラスで 4人に1人の教師は 1年間 一度も学校に来ないのです。

 

4 「私たちは数を気にしているのではありません」

とても理解しがたいものがあります。多くの人から尋ねられました “いつ学校を始めるのか?何人受け入れるのか?何校くらい開校するのか?基準をどうやって決めるのか?どうやって学校を広げていくのか?” 不安にならなかったと言えば嘘になります。しかし 断固として言いました。“私たちは数を気にしているのではありません” 一度に一人の子どもを 小学校から大学まで 確実に送り届け より良い生活と仕事の為の準備を してあげたいのです。

 

5 6年間で4つの学校と短大1校を設立し、1100人が28か所のスラムと4つの孤児院から通学している

そうしてパリクラマを始めました。最初の学校は 7万人が― 貧困線以下で暮らす― スラムから始まりました。最初の校舎は スラム内に唯一の 二階建ての建物の 屋上でした 天井はもちろんなく 気持ち程度のトタン屋根があるだけでした。これが最初の学校です。生徒は165人 インドの新学期は 雨季である6月に始まります。雨が降る度に屋根下に身を寄せ合って― 雨が止むのを待ちました。その経験がどれだけ私たちの絆を深めたでしょう。あの時― 経験を共にした仲間は今も一緒です。次の学校― 3つ目 4つ目の学校 そして短大まで設立しました。6年間で 4つの学校と短大1校を設立し 1,100人が28か所のスラムと 4つの孤児院から 通学しています (拍手)

 

6 国際社会に出るには英語を話さなければなりません

目標は至って簡単です。1人1人の子どもたちの これからの人生 教育への準備を手伝い この問題の多い 混沌とした世界で 平和に暮らしていけるようにすることです。この国際社会に出るには 英語を話さなければなりません。したがって 我々の全学校では 授業は全て英語で行われます。しかしスラム出身の子は 家族 又はその世代で 誰ひとり英語を口にしたことがないため 英語を上手く話せるようにはならない という迷信がありますが 大きな間違いです。

 

7 「私はわくわくするような本が好き」

私はわくわくするような本が好き。お気に入りは ヒッチコックだとか ハーディー ボーイズ! ジャンルの違う本を いろいろ読むわ 探偵ものから幻想的なものまで。こういう本が好きなのは 使われている言葉や 文章の書き方とか 何か特別なモノがあるから 私は一度 本を手にすると それを読み終わるまで 止められないの。もしそれが 読み終えるのに 何時間もかかるような本でもね。

ボク 世界一速いバイクについて― たくさん調査したんだよ! お気に入りは ドゥカティ ZZ143! これが世界でイチバン速い― バイクだからね! パルサー 220 DTSI も好きなんだ これはインドでイチバン速いんだよ!

 

8 子どもたちはICSEカリキュラムを抜きん出ている

あの女の子の父親は 道端で花を売っています。男の子は学校に通い始めて5年になります 不思議ですよね?世界中の男の子は なぜか速いバイクが好きなんですから。そのバイクに乗ったことも 見たこともない でもグーグルを使って一生懸命調べたんです。英語で授業を行うシステムを取り入れた時 ICSE(International Conference on Software Engineering)という― 最も優れたカリキュラムも 取り入れることにしました。しかし 人は笑い こう言いました。“あの子どもたちが そんな厳しいカリキュラムについて行けるワケない。どうかしてるんじゃないか?” と。しかし ついて行けるどころか 抜きんでているではありませんか。いかに子どもたちがよくやっているか― 是非 見に来て欲しいものです。

 

9 子どもが自分よりも良い人生を送ることは可能

またスラムの親たちは “子どもを学校に通わせるくらいなら― 働かせた方が良い” と思っていると言われていますが 全くのデタラメです。親であれば誰もが 子どもには― 自分よりも良い人生を送ってもらいたいものです。そしてそれが可能であることを信じなければいけません(ヒンディー語)

 

10 子どもたちが親に文字を教えている

親と教師の集会は 出席率 80%で 100%の時だってあります。多くの有名学校よりも高い水準です。父親も参加し始めました。興味深いことに 以前は― 出席確認の際 母印を押していた親たちですが 今では署名をするようになりました。子どもたちが教えたのです。子どもたちの影響は素晴らしいものです。

 

11 毎日25人の母親たちが放課後勉強しに学校に来る

昨年末になります。数人の母親たちが― やってきて こう言いました “私たちも読み書きを習いたいんだけど 教えてくれないか?” そうして 母親たちの為の アフタースクールを始めたのです。毎日 25人の母親たちが― 放課後 勉強しに学校に来ます。今後もこれを続け― 他の学校にも広げていきたいです。

 

12 アルコール依存症の父親が子どもたちの給食を作っている

98%の父親はアルコール依存症です。子どもたちの生活環境が いかに大変か想像できます。私たちは父親たちを更生施設に送らなければなりません。そして戻ってきたら 再びお酒に走らないよう 彼らの仕事を見つける必要があります。これまで3人の父親が調理の訓練を受けました。栄養 衛生面について教え― キッチンの設置も手伝い― 今では 子どもたちの給食をつくっています。とてもいい仕事をしていますよ。自分の料理を 子どもたちが食べるわけですからね。何よりも重要なのは 初めて子どもから尊敬され― 自分がしていることの価値を実感することです。

 

13 年上の子どもには職業訓練を受けさせ、通学を止められないようにする

教師以外の職員の9割以上は 両親と その家族や親戚などです。子どもたちが 学校に来れるよう― 多くのプログラムを始めました。年上の子どもには職業訓練を受けさせ― 子どもたちが通学を止められないようにするのです。

 

14 スラム出身の子どもも他の学校の子どもと馴染める

スラム出身の子どもは 他の学校の子どもと 馴染めないと言われていますが こちらをご覧ください。彼女はアフマダーバードにある インド経理大学で行われた デューク大学の 人材育成プログラムに選ばれた 28人の― 生徒の内の1人なのです。

このプログラムに参加できて とても光栄でした。みんな仲良くしてくれて たくさん友達ができたの! 友達やそこで会う人たちと話すことで 英語も上達したと思うの。違う社会からの生徒 物の考え方や水準が違う― 生徒に会うことができたし みんな すごくやさしくて ほとんどの人と仲良くできたわ! デリーやムンバイから来た― 生徒とすごく仲良くなって 今でもFacebookで連絡を取ってるわ

このプログラムに参加して 多くの人と交流したことで とても変わったような気がするの。前までは 人とうまく交流できなかったし 初対面の人と すぐ話すなんてできなかった。英語の発音もすごく良くなったと思うの サッカーやバレーやフリスビーなんかの ゲームもたくさん習ったわ。バンガロールに戻りたくなかったの ここに居させて! と思ったわ。食べ物がすごく美味しくて サイコーだったの! 店員の“お嬢さん 何にしましょう?” っていうのも聞けてうれしかったわ(笑) (拍手)

この子は学校に来る前は メイドとして働いていました。今では神経科医を目指しています

 

15 スポーツでも最優秀校に3年連続で選ばれている

子どもたちはスポーツでも大活躍しています。とても優秀なんですよ。バンガロールで毎年開催される 140校 5000人が参加する 対校運動競技会で 最優秀校に― 3年連続で選ばれているのです。メダルに賞賛― 友達をたくさん手に入れて帰ってきました。昨年は エリート校から 数人の生徒がやって来て 転入させて欲しいと 言って来ました。

 

16 子どもたちが探求心を追求できる学習環境を整えてあげることが教育

この現象 自信の理由は何でしょう?学校にはMIT バークレー スタンフォード インド理科大学などから 教授がやって来ては― 化学公式や実験から 表現の手段、癒しにもなる― 音楽や芸術と 勉強以外のことも― たくさん教えてくれます。重要なのは その内容 その学校で― 実際に起こっていることであり 図書館やトイレなどの 施設や設備ではないということを― 信じています。本当の教育というものは 子どもたちが探求心を追求できる学習環境を― 整えてあげることだと思います。

 

17 量より質が大事。数字は勝手についてくる

パリクラマを始めた時― どこに辿り着くのか見当もつきませんでした。計画を練るのに専門家に尋ねたわけでもありません。けれども私たちが やりたいことは明確です。数にとらわれず 一人一人の子どもを 確実に見届け 子どもが持つ可能性を 最大限に引き出してあげることです。量ではなく質が大事なのです。そうすれば 数字は勝手についてきます。現在 企業の協力のおかげで 次の そしてその次の開校も可能ですが 今でも一度に一人 という考えは変わってません。

 

18 3カ月間で英語を話せて理解できるようになる課程がある

5歳のパルシュラムは 数年前 バス停で― 物乞いをしていたところを拾われ― 今は孤児院に住んでます。学校に通い出して4カ月半 幼稚園に通っていて 英語を習っています。ここでは3カ月間で 英語を話せて理解できるようになる 課程があります。パルシュラムは カラスの物語や ワニさん キリンさんのお話も 英語で教えてくれます。何をするのが好きかと質問すれば “食べることでしょ 寝ることでしょ― あと遊ぶこと!” と答えるでしょう。何をしてみたいかを聞けば “馬がしたい!” と言うでしょう これは “乗馬がしたい” という意味です。パルシュラムは私の部屋に毎日やってきて お腹をさすってくれます。それが私に幸福をもたらせてくれると信じているからです。

 

19 パルシュラムこそパリクラマ

パリクラマを始めた時 世界を変えてみせる! という― 傲慢な考えがありました。しかし気付くと 私自身が変わっていました。子どもたちから多くのことを学んだのです。想像力や創造力― 思いやりの気持ち― そして愛情をパルシュラムこそ パリクラマなのです。始まりは簡単ですが その道のりはとても長いのです。数年後 このTEDの舞台に― 私たちのパルシュラムが立っていることでしょう。ありがとうございます (拍手)

 

最後に

パワフルで素直な人だ。子どもから学んでいる。大人を変えるために子どもの環境を変える。母親にも学ぶ環境を提供し、父親にも職として役割を与えている。仕組みづくりがとてもうまい。数は結果。質のいい環境を整えればいい

TED公式和訳をしてくださった Taro Yoda 氏、レビューをしてくださった Takako Sato 氏に感謝する(2010年3月)。

いつまでも美しく: インド・ムンバイの スラムに生きる人びと


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