会社員を辞めて負担に感じることは、税金と社会保険である。特に健康保険は前年度の収入に応じて保険料が増減するため、負担が大きい。ここでは自営業者にかかわる国民健康保険や国民年金といった社会保険と、各種控除についてまとめる。
1 社会保険の種類
社会保険には様々なものがあるが、直接的に自営業にかかわるものは健康保険と年金保険である。健康保険には健康保険と国民健康保険の2つに大別される。
- 健康保険:主に会社員など被雇用者が加入する
- 国民健康保険:自営業者(個人)が加入する
年金は健康保険とほぼセットになっており、健康保険加入者は厚生年金に入り、国民健康保険加入者は国民年金に入る。例外的に任意継続という制度もあり、会社員時代に入っていた健康保険を、退職した後も2年間だけ継続して加入できるものである。
2 健康保険の基礎知識
国民健康保険と健康保険には様々な違いがある。ここでは2つの違いと国保組合についてまとめる。
健康保険は被扶養者に保険料がかからない
国民健康保険は世帯単位で加入する。つまり、扶養者の数によって保険料が増減する。反面、健康保険では被扶養者に対して保険料がかからない。年間収入が130万円未満であれば、被扶養者として無料で相手(夫or妻)の保険などに加入することができる。しかも保険料も会社が半分もってくれる。
ケガや病気をしても傷病手当金がある
健康保険には、傷病手当金というしくみもある。病気やケガによって働けなくなった場合、標準報酬月額の3分の2支払われるものである(最長1年6ヶ月間)。筆者も入院したときがあるが、短期間だったため有給休暇を使用することで済んだ(進路指導の先生のための働き方入門—会社員と自営業の違い)。
国保組合ならば保険料は定額になる
国保組合とは、職能団体などが互助会的側面を持って運営している国民健康保険の組合である。全国に139あり、その多くが保険料が定額である。例えば文芸美術国民健康保険組合、東京芸能人国民健康保険組合、東京技芸国民健康保険組合、京都芸術家国民健康保険組合などがある。例えば、文芸美術国民健康保険組合で会社員の平均年収560万円と同じだけ売り上げたと仮定して、家族4人で保険料を比べると、年間で5万円以上差が出てくる。
3 年金の基礎知識
代表的な年金保険として、国民年金、厚生年金、小規模企業共済がある。国民年金加入者の場合、国民年金基金という制度もある。ここでは税金との兼ね合いも含めまとめる。
国民年金は全額社会保険料控除できる
民間の個人年金保険では、5万円までしか生命保険料控除が認められない。
国民年金基金は自営業者の厚生年金
国民年金基金とは、国民年金加入者向けに用意された、任意加入の上乗せ年金制度である。掛け金は全額社会保険料控除の対象となり、任意に設定することができる。さらに、毎年1回は変更できるため、将来の保障を手厚くしながら節税することもできる。
小規模企業共済は自営業者の退職金積立制度
小規模企業共済の掛け金も、小規模企業共済等掛金控除として社会保険料控除と同様に全額控除することができる。
4 社会保険と税金の関係
国民健康保険や国民年金といった社会保険の掛金は、すべて社会保険料控除という扱いになる。そのため、極力負担を減らす工夫をしつつ、余剰資金が多く出るようであれば、将来への備えに投資して節税することができる。ぜひとも活用していきたい。
最後に
「身銭を切ると学習効果が高い」というのは事実だ。筆者も社会保険などについて、知識としては持っていた。しかし、実際に会社員を辞めてから届いた各種振込用紙の枚数を見て、こんなに払わなければならないんだと実感した。同時にこれだけ会社は払っていてくれたのだと。そして、こういった雑務を会社はやっていてくれたんだと感謝の気持ちがわいた。よし、自分ももっと学ぼうと。人を雇うことができるくらいの実力を付けようと。
次回は記帳業務についてまとめる。
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