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年金、税制、雇用、空洞化、格差、生活保護 社会保障の真相

前回は、財政赤字、国債暴落、復興増税、産業政策、格付け 国家財政の真相についてまとめた。ここでは、年金、税制、雇用、空洞化、格差、生活保護 社会保障の真相について解説する。

16 年金には膨大な未収がある

積立金が枯渇しても、すぐに破綻はない

公的年金は「賦課方式」で積立金がほとんど必要ないため、積立金が枯渇しても給付を減額すれば、すぐに年金財政が破綻するわけではない。そもそも「破綻」の定義が曖昧なことも不安を煽る原因となっている。

 

「わからないように負担させる」のが政府の魂胆

ほとんどの先進国では、社会保障については「保険方式」がとられている。保険方式とは、保障に必要な財源を保険料で調達するもので、自分の払った保険料と保障される金額がわかるという利点がある。一方、現在進められている社会保障と税の一体改革は、消費税の社会保障目的税化である。税方式では、保障される金額はわかるが、そのためにいくら払ったかがわからないという問題がある。つまり、税方式は「わからないように負担させる」のが狙いである。

いくら払ったかがわからなくなると、払っている感覚が薄れてくる。そうなると、社会保障に求めるものが大きくなりやすい(財政錯覚)。また、全国の特別養護老人ホームには、1施設当たり約3億円、全国で2兆円が内部留保されており、国からの補助金が高齢者に還元されていない。これは税金を2兆円余計にとられたということだが、納めた感覚が薄いため問題になりにくい。

 

「歳入庁」をつくれば、税と社会保険料の納付率は高まる

国税庁と日本年金機構を合体させた「歳入庁」をつくれば、税と社会保険料の納付率は高まる。どの国にも同じ機能の省庁があり、歳入庁がないのは日本くらいである。納付率の低さを物語るのは、日本年金機構が把握している法人数の少なさだ。本来であれば赤字黒字が関係ない日本年金機構の方が押さえる法人数が多いはずだが、国税庁が280万件の法人を把握しているのに対し、日本年金機構は200万件にすぎないのである。つまり、日本年金機構は10兆円もの保険料を取り逃がしていると推計されている。

 

未収額は18兆円。消費税増税は不公平

世界には「納税者番号制」を導入している国が多い。納税者番号制にすれば脱税は難しくなり、5兆円程度は税収が増える可能性がある。また、消費税に「インボイス方式」(仕入れ時に負担した消費税を納品書によって明らかにすること)を導入することで、3兆円程度の徴収漏れを解消することができる。

社会保険料の未収10兆円と脱税分の5兆円、消費税の未収3兆円を足すと、合計18兆円。社会保障と税の一体改革で増税するより大きな効果があるだろう。不公平をなくしてから税率を議論するのが正論である。

 

17 雇用不安・空洞化の原因は政府による円高の放置

すべてのしわ寄せが、新卒者や非正規雇用者を襲っている

雇用悪化によって最初に割を食うのは社会経験がない新卒者で、次いでパートなどの非正規雇用者にしわ寄せが来る。原因は、政府の無策によって不況が続いているからであり、学生に責任はない。バブル期にはどんな学生にも複数の内定が来て、就職の心配などなかったのだ。

 

円高を放置していると、企業は海外に逃げていく

円高を放置していると、企業は海外に進出して国内の空洞化が進む。海外に工場をつくって現地の労働者を雇った方がコストを押さえられるからだ。TPPに加盟しても、円高のままでは経済効果は吹き飛ぶだろう。

 

日銀は「雇用促進」の責務を明文化すべき

日銀は「雇用促進」の責務を明文化すべきである。その理由は、デフレを脱却して物価上昇率をプラスにすれば、失業率は下がるからだ。デフレを脱却するためには、お金を刷って円高を解消すればいい。雇用について厚労省に任せたり、下手な補正予算を組んだりするより、日銀の方が強力な対策が打てるのである。

 

18 格差是正の良策は所得底上げ

最下層の所得が減少する、希望のない格差拡大

現在は景気低迷による希望のない格差拡大である。経済成長による格差拡大では最下層の人の所得も上がるため、格差は気にならないことが多い。その意味で、格差是正よりも、まずは最下層の所得を上げるほうが不満は減る

 

責められるべきは不正受給より無策ぶり

2013年6月には生活保護受給者数が215万人を超え、過去最多を更新した。不正受給が増えているという報道もあるが、問題の本質は景気が悪いことに尽きる。格差拡大も、生活保護受給者数の増加もデフレが原因だ。考えるべきは経済を成長させること。所得税には所得再分配機能があるので、経済全体のパイを大きくして税収を増やせば、所得格差はある程度是正できるのだ。

 

最後に

年金は賦課方式なためすぐには破綻しない。社会保障と税の一体改革は負担者と受益者の関係が明示されないため、無責任になりやすい。歳入庁、納税者番号制、インボイス方式の導入で18兆円の未収金を回収できる。雇用不安・空洞化の原因は政府による円高の放置。格差拡大も生活保護受給者数の増加もデフレが原因。社会保障と税の一体改革より経済成長に全力を注ごう

次回は、公務員改革、大阪都構想、地方分権、失言報道 日本政治と報道の真相についてまとめる。

日本経済の真相


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