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財源、地方交付税、消費税、新たな利権 大阪維新の経済政策

前回は、道州制、金融政策、増税、省庁再編 大阪都構想の真相についてまとめた。ここでは、財源、地方交付税、消費税、新たな利権 大阪維新の経済政策について解説する。

7 「3ゲン」を地方に。国の采配は百害あって一利なし

「権限」「人間」「財源」をセットで地方に移す

中央の出先機関から「3ゲン」を全部地方に移すというのが、一番簡単な地方分権である。

 

「中央からお金が降ってくる」という錯覚を消す

国交省の出先機関の仕事は橋やダム、道路を作ることである。国交省地方整備局の予算を出先機関が使うのだが、地元にしてみれば予算が降ってきたという感覚だ。すべて地方のお金で作るという話になれば、もっとシビアに考えるはずである。

地方整備局は特定財源を財源にしているが、特定財源はガソリン税という形で財務省が吸い上げ、それを国交省が国庫補助金という形で地方に還元している。ガソリン税は道州の税にして、道州がそのまま使えばいい

 

8 地産地消が進めば地方交付税はいらない

お金を配るから中央と地方に「上下関係」が生まれてしまう

地方交付税は現状では地方自治体の重要な財源である。総務省によれば、国が地方に変わって徴収する地方税(固有財源)という性格を持っている。その内訳は所得税・酒税の32%、消費税の29.5%、たばこ税の25%(地方交付税法第6条)と記されている。

しかし、それは自治体の間で相談・調整すればよく、国がやる必要はない。地方交付税のような制度は世界ではあまり例がないし、あっても十何兆円という大きな金額ではない。

また、地方交付税の悪いところは、配分のルールがわかりにくいことである。ルールは電話帳2冊分ぐらいのボリュームがある。そのため、地方は総務省を敬い、総務省の言うことを聞くようになる。

過去のデータを見ると、地方交付税の配り方の95%以上は、人口と面積の2つの要素で説明できる。総務省は「きめ細かくやる」と反発しているが、それは「裁量」の余地をつくるためである。

 

「自治体の格差」は大きな問題ではない

自治体に格差があっても、住んでいる人に格差がなければ問題がならない。税収を増やす仕掛けを考えればいいし、無駄なものを削って歳出を抑えればいい。また、地方自治体の間で財政を調整する制度を考えればよい。いずれにせよ、最終的には住民の判断にまかせればよい。

 

自治体は財政への危機感が足りない

自治体にも破綻があるという危機感を持つために法整備をすればよい。行政サービスの供給停止に陥らないよう、債務の一部凍結といった再建手続きがとれるようにする制度(自治体破綻制度)である。北海道夕張市は「破綻」でなく「再生」したが、呼び方の違いにすぎない。

 

大阪財政の悪化も国に責任がある

収入を増やすという点については国がどうにかするしかなく、国が担うべき分野にしっかりと取り組むべきである。例えば、金融政策によって円安にすれば大阪の企業業績は回復し、法人税の税収も増えるだろう。反対に、支出の改善については地方でもできるため、外郭団体といった特別会計などの見直しや民営化などについては取り組む必要がある。

 

9 増税は大いなるまやかし。消費税を地方へ

消費税をすべて「地方のお金」にする

消費税を移さなければ地方分権はままならない法人税ゼロ、寄付控除、地方分権の財源 税と地方分権の問題点でも述べたように、分権には20兆円程度の財源移譲が必要である。

消費税の5%は、4%の国税と、1%の地方消費税に分けられる。1%はそのまま自治体の税収となるが、4%は国が吸い上げ、そのうちの3分の1程度が地方交付税として地方に渡っている。さらにごく一部が国の一般会計に入り、そこから国庫支出金という形で地方に回る。たしかに現時点でも地方に回っているのだが、そもそも国が間に入ることなくそのまま地方の一般財源にすればいい

 

「消費税を社会保障に使う」ことを橋下市長が批判

消費税を社会保障目的税にしている国などない。社会保障には所得の再分配という意味合いもあり、所得の再分配に使う税は稼ぎの多い人が多く負担する所得税や法人税が適しているからである。

「消費税を社会保障に使う」というのは、増税したい財務省と、予算を大きくしたい厚労省の合作である。地方分権が進展すると消費税は地方に移譲せざるを得ないため、社会保障の名を借りて国税に固定化しようとしているのである。

 

「消費税の地方税化」は世界の常識

地方分権されている国では、消費税は地方の一般財源であるケースが多い。財務省はヨーロッパを例に出して反論するが、ヨーロッパは一国の規模が小さく、日本のGDPから見れば日本は欧州の国が7〜8つくらい集まった規模である。つまり、EUを1つの国に見立てれば、そこに属する1つひとつの地方がそれぞれ消費税を導入しているという見方もできる。

 

10 軽減税率は新たな既得権益の温床

消費税を地方税化すると税率はどうなるか?

「消費税を地方税化すると、地方自治体の間で税率の引き下げ競争が起きる」という主張がある。しかし、こうした主張も民間経済から考えるとおかしい。むしろ地方自治体が切磋琢磨し、結果的には自ずと似たような水準になるはずである。

以前、地方債の金利を自由化した際に、総務省内は「財政状況がよくない自治体の債券は、金利が高くなり自治体が破綻しかねない」と反対だった。しかし、結果として、各自治体の金利差は予想された0.2%程度の範囲内で、総務省の意見は間違っていた

「消費税を地方税化したら日本でも道州間で税関を設け、国境措置を適用しなければならない」という主張もある。国境調整措置(輸出入時と同じ扱い)が必要になるというものである。これについて、例えばカナダは州によって税率が異なるが混乱など起きていない。商業統計などの計算に基づいて配分すれば問題ないのである。

 

地方に差が出ることより、地方が決められないことが問題

「消費税率が低いところに消費者がなだれ込む」という人もいる。しかし、少しの差ならそんなことをするのは面倒だし、そもそも店によって価格が違うというのもよくあることである。

重要なのは、自治体が住民の意思を反映して税率を決められることである。現状でも水道料金や介護保険料など、自治体によって違うものはある。こうした違いがあるからこそ、努力や競争ができるのである。

 

軽減税率は「レントシーキング」の温床でしかない

軽減税率は、特定のものについて消費税の税率を通常より低くすることである。生活必需品については軽減税率を適用するというのが基本的な考え方だが、どこまでが必需品かを明確に線引きするのは不可能である。例えばカナダでは、同じドーナツでも数で税率が異なり、5個以下は標準税率(5%)で、6個以上は軽減税率(0%)といった奇妙な税制になっている。

経済学では、細かい規則をつくって既得権を獲得しようとする活動などをレントシーキング(超過利潤を求めること)というが、軽減税率はその温床になる。それが社会的にロスというのは経済学の基本である。

 

マスコミが「軽減税率の真相」を報じられない理由

マスコミがこうした軽減税率の真相を報じない理由は、新聞社も軽減税率の適用を受けたいからではないか。日本新聞協会は新聞は必需品であるという発想で軽減税率の適用を要求している。新聞協会に加入していない夕刊紙や書籍では軽減税率の弊害が取り上げられるが、新聞では報じられないのはこうした理由があるのだろう。

 

最後に

中央の出先機関から3ゲン(権限・人間・財源)を地方へ移すのが最も簡単な地方分権。地方交付税は人口と面積で決めればよい。消費税は地方税にすべきで、増税と軽減税率によって新たな利権を作らせてはならない。ニュースの背景を学ぼう

次回は、生活保護、歳入庁、負の所得税、ストック課税 大阪維新の格差対策についてまとめる。

大阪維新の真相


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