spectroscopy

ガリク・イスラエリアン 星の中には何がある?

天体が放射するスペクトルを研究すれば、その天体の組成と振舞いを明らかにすることができます」ガリクは語りかける。ここでは、50万ビューを超える Garik Israelian のTED講演を訳し、生命が存在できそうな惑星を見つけるのに役立つ分光学について理解する。

要約

ガリク・イスラエリアンは分光学者で、天体が放射するスペクトルを研究し、その天体の組成と振舞いを明らかにします。講演はこの学問を見る事のできるまれな機会で、その研究から、生命の存在できそうな惑星の発見も近づいているようです。

Garik Israelian’s stargazing on the Canary Islands has led to high-profile discoveries about space’s big disasters — including the first evidence that supernova explosions make black holes.

 

1 分光学は「誰かそこにいるの?」(SETI)に答えられる

私は非常に困難な課題を抱えています。私は分光学者です。星雲や銀河といった写真を1つも見せずに 天文学について語らなくてはなりません。私の仕事が分光学だからです。私は写真を扱ったことがありません。しかし私は、分光学が 世界を変えうるものだと、あなた方を 納得させてみましょう。分光学はおそらく次の質問に答えられます: 「誰かそこにいるの?」に。私たちだけなの? SETI(地球外文明探索計画)ですね。分光学の研究はそんなに面白くはありません。ブルガリアにいる私の同業者の一人、 ナヴィアナ・マルコヴァは、20年かけて この曲線を研究しています。この主題に関する論文を 42本も発表しています。想像できますか?毎日毎晩、20年間、 同じ星を観察し、考える 信じられない。しかし我々はイカれていて、それをやっているのです (笑)

 

2 リチウム6は惑星や小惑星には存在する

私はそんなに極端ではありませんが この曲線に取りかかって8ヶ月が経ちます。なぜなら、私は この惑星の主星のスペクトルに ごくわずかな非対称性を認めたからです。そして考える。ふむ、この恒星にはリチウム6が存在し、それはこの恒星が惑星を飲み込んだ 証拠かもしれない、と。なぜなら、リチウム6のような壊れやすい同位元素は 太陽型の恒星の大気には存在し得ないからです。しかし惑星や小惑星になら存在する。だからもしその恒星が、惑星か、大量の小惑星を飲み込めば 大気にリチウム6の同位元素が 見つかるかもしれない。だから私は、8ヶ月以上も この星のリチウムの輝線を研究しているのです。

 

3 惑星が恒星に飲み込まれている証拠

実際それはすごいことで、 その証拠にあちこちの記者から電話を受けています: 「惑星が恒星に飲み込まれるのを見たのか?」と。なぜなら、望遠鏡を持っていればあなたは天文学者で、 つまり天文学者ならば 望遠鏡を眺めているだろう、ということです。そして惑星が恒星に飲み込まれるのを見たかもしれない、と だから私は言います:「申し訳ないですが 私が見ているのはこれです」って (笑) 信じられないよ。誰もわかってないんだから。きっと私が言っていることが わかっている人はほとんどいなかったんでしょう。だってこれこそ、惑星が恒星に飲み込まれている証拠なのだから 驚くべきことです。

 

4 地球上で最も高解像度で正確な分光器「HARPS」

実際のところ、分光器の威力について 1973年にすでに気づいていたのは (ロックバンドの)ピンクフロイドでした (笑) 彼らは、スペクトルの中から お望みのどんな色でも取り出せると 言っています。必要なのは自分の分光器を作る お金と時間だけだ、と。これが、地球上で最も高解像度で 最も正確な分光器で、HARPSと呼ばれ、 太陽系外の惑星や、恒星の大気の 音波を発見するために 使われています。どうやってスペクトルを得るのでしょう? 皆さんは学校の勉強で、基本的には 白色光を分解してたくさんの色にするのだと 習ったでしょう。そして、もし溶けるほど熱い物体があれば それは連続スペクトルと呼ばれるものを発生しています。熱いガスは輝線だけを放射し、 連続スペクトルは発しません。もし熱い物体の前に、冷たいガスを 置くと、 吸収線と呼ばれるものが 得られます。それを使って 冷たい物体の化学元素を特定することができます。冷たいガスが、まさに その周波数の光を吸収しています。

 

5 スペクトル線で宇宙の物体の視線速度を調べることができる

さて、スペクトル線でなにができるでしょう。宇宙の物体の視線速度を調べることが できます。そして恒星や銀河や星雲の 化学組成と物理定数も 知ることができます。恒星は一番簡単な物体です。その中心核では熱核融合が起きていて いろいろな化学元素を生み出しています。そして冷たい大気がある 私に言わせれば「冷たい」のです。つまり3000度から5000度程度です。同僚の赤外線天文学者は マイナス200度くらいなら冷たいといいます。すべからく相対的なわけです。私には5000度はとても冷たい (笑)

 

6 太陽のスペクトルでさえちゃんとわかっていない

これは太陽のスペクトルです。2万4千のスペクトル線があり そのうち15パーセントはまだ同定されていません。驚きです。21世紀なんですよ今は。なのにまだ太陽のスペクトルでさえ ちゃんとわかっていないのです。時には、非常に小さな、 弱いスペクトル線を使って 大気中の化学元素の組成を調べる場合もあります。例えばここに見える金の吸収線は 太陽のスペクトル中、唯一の吸収線です。この弱い線を使って 太陽の大気の 金の組成を調べるのです。

 

7 オスミウムは超新星の熱核爆発で生まれる重い元素

これはまだ作業途中です。私たちはまた、同様に弱い特徴である オスミウムも調べています。これは超新星の熱核爆発で生まれる 重い元素です。オスミウムはそこでしか生成されません。惑星を有する恒星のオスミウムの 割合を比較することで なぜそこに大量にこの元素があるのかを 理解しようとしています。ひょっとしたら超新星爆発自体が 恒星や惑星の形成の引き金だ ということかも知れないのです。

 

8 ブラックホールが超新星爆発からできる最初の証拠

この間、バークレーの私の同業者 ギボールバスリが、非常に興味深い スペクトルをメールしてきて 言いました:「ちょっとこれ見てくれる?」 それから2週間、私は眠れませんでした。その恒星のスペクトルに、莫大な量の 酸素その他の物質を見たからです。銀河系にこんなものは見たことがありません。信じられませんでした。この事象の唯一可能な結論は その星系で超新星爆発が起こり、 この恒星の大気を汚染した証拠だと いうことです。爆発の後に、連星系に ブラックホールが形成され 太陽の約5倍の質量があることが わかっています。これは、ブラックホールが超新星爆発からできるという 最初の証拠と考えられました。同僚は、様々な銀河の恒星の化学組成を 比較していて 私たちの銀河に外来の恒星を発見しました。恒星の化学組成を調べるだけで ここまでわかるのはすごいことです。スペクトルの中にある星の一つが 別の銀河から来たのだ、というのです。銀河同士が干渉し合うことがあることがわかっています。そのときに相手の星を捕まえてしまうのです。

 

9 連星系 FH Leoで「スーパーフレア」が見つかった

太陽フレアは耳にしたことがあるでしょう。私たちは「スーパーフレア」を発見して 驚きました。それは太陽で見るものより 何百億倍も強力です。私たちの銀河にある連星系 FH Leoで それが見つかりました。後に、私たちはスペクトル線を調べ その物体になにか変わったことはないか見てみました。すべて正常でした。まるで太陽と同じ。年齢も、その他全部正常でした。ですからこれはミステリーです。未だにミステリーのままです スーパーフレアは 同様の事例が、文献には 6、7件報告されています。

 

10 化学元素を作り出す方法は非常に複雑

さて、こちらに移りましょう。私たちは宇宙の化学的進化を理解したいと思っています。それはとても複雑で、それをこの場で皆さんに 理解してもらおうとは思っていません (笑) むしろ、化学元素を作り出す方法の全体がいかに複雑かを お見せしたいのです。2つの経路があります。巨星と矮星で 宇宙の物質や化学元素を生産し、またリサイクルしています。それを140億年続けると、結果として この図のようになります。これは大変重要なグラフで 太陽型の恒星と星間物質の 化学元素の組成の 割合を示しています。

 

11 ドップラー効果は太陽系外の惑星の発見に利用されている

つまり、硫黄がシリコンの10倍、また カルシウムが酸素の5倍ある天体を見つけるのは ものすごく困難だということです。本当に難しい そしてもし見つかったとしたら それはSETIと関係があるということなのです。自然の作用ではできないのですから。ドップラー効果は、基礎的な物理学からみると とても重要です。それは移動している物体の 周波数が変わるということです。ドップラー効果は太陽系外の惑星の発見に利用されています

 

12 地球型の惑星を見つけるには毎秒9cm程度の精度が必要

太陽型の恒星の周りで 木星型の惑星を見つけるために 必要な精度は 毎秒28.4メートル程度です。地球型の惑星を見つけるには 毎秒9センチメートルほどが必要です。これらは未来の分光器で可能になるでしょう。私自身も42メートルの E-ELT望遠鏡のための、CODEXという 高解像度の次世代分光器の開発に 携わっています。そしてそれが、太陽型恒星の周りに 地球型惑星を発見するための 道具となります。それは天文地震学という驚くべき道具で 恒星の大気の中の 音波を検出できます。

 

13 地質学的および火山学的活動性なしに生命はあり得ない

これがアルファケンタウリの音です。太陽型恒星の大気の 音波を検出できるのです。それは、まだ誰も知らない 可聴域以下の領域の周波数を持っています。最も重要な質問に戻ります: 「誰かそこにいるのか?」 それは、惑星の地殻変動や 火山活動の程度に関係しています。生命と 放射性核の関係は 直接的です。地質学的および火山学的活動性なしには 生命はあり得ません。地熱エネルギーの殆どが ウラン、トリウム、カリウムなどの崩壊によることがわかっています。

 

14 トリウムを検出するのは非常に困難

ならばどう評価するか?もしある惑星で これらの元素が少ければ、 その惑星は地質学的には「死んだ」状態で、 そこに生命はいない 一方、もしウラニウム、カリウム、トリウムなどが多すぎる場合も 生命は存在しないでしょう。なぜならあらゆるものが沸騰しているところが想像できますか? 惑星にエネルギーが過剰なのです。さて、私たちは太陽系外の惑星を有する恒星の1つで トリウムの量を測定しました。ゲームのルールは同じです。ごくわずかな特徴しかない。このような曲線を測定し、トリウムを 検出しようとしています。非常に困難です。難しい まず自分自身を納得させなくてはいけない それから同業者を説得し そののちに、全世界へ向かって 100パーセク離れたどこかの惑星を有する恒星の 大気にこういうものを発見した、と 納得させなくてはならないのです。非常に難しいです。しかしもし太陽系外の惑星での生命について知りたければ これをやる必要があるのです なぜなら、そこの系にどれだけの量の放射性物質があるかを 知る必要があるからです。

 

15 異星人を発見する方法の1つはバイオマーカーを探すこと

異星人について発見する1つの方法は 電波望遠鏡を使って信号に聞き耳を立てることです。何か興味深いものが見つかるか、と それがまあSETIがやっていることで 長年それをやっています。一番将来性がありそうなのは バイオマーカーを探す事です。これは地球のスペクトルです。地球光のスペクトル 非常に明瞭なシグナルです。この傾いているところをレッドエッジと呼びますが、 植生のある部分を示しています。光学スペクトルから植物繁茂がわかるのだから 驚きますよね。それを他の惑星に対して あてはめたと想像してください。

 

16 宇宙の奇跡は SETI に関係づけることができる

最近、非常にごく最近、 ここ最近の6-8ヶ月間で、 水、メタン、二酸化炭素が 太陽系外の惑星のスペクトルから 見つかりました。驚くべき事です。これが分光学の威力です。太陽系から、遥かに遠く離れた 惑星の化学組成を発見し、研究する事が できるのです。生命存在の必要条件がそこにあるかを確かめるには 酸素かオゾンを検出する必要が あります。宇宙の奇跡は SETI に関係づけることができます。何か驚くべき天体や 説明不能な現象があって お手あげ状態で「だめだ 物理学では 説明できない」となったとします。つまりSETIに言及し「ふむ 誰かが何かやってるに 違いない」というような事です。既知の物理法則を使ってです。フランクドレイクが指摘し、 何年も前にシュクロフスキーが述べたような 事です。もしも、惑星を有する恒星のスペクトルに 奇妙な化学元素を発見したら それは文明の痕跡かもしれず 彼らも信号を発したがっているかもしれません。彼らは、実際この恒星のスペクトル線で 彼ら自身の存在を 発信したがっているのです。

 

17 太陽型恒星でテクネシウムが見つかることは起こり得ない

他の方法を使うかもしれない 一例はテクネシウムで 崩壊時間が420万年の 放射性元素です。もしも太陽型恒星に、突然 テクネシウムが見つかったら 間違いなく誰かがそれを 大気に放出したのです。なぜなら、自然界ではそれは起こり得ないからです。我々は太陽系外惑星を持つ、約300個の恒星の スペクトルを見直しています。2000年からこのプロジェクトを行っていますが 非常に大きなプロジェクトです。一生懸命研究しています。その中で、まだ説明できない 面白いケースや候補が見つかっています。そして近い将来、それらを 確認できると期待しています。

 

18 スペクトル線から答えが出る

そこで元の問題:「我々は一人ぼっちなのか?」 その答えはUFOからは得られないでしょう。電波信号からも得られないでしょう。こういうスペクトル線から答えが出るのです。それは地球型惑星のスペクトルで 明らかな生命の印としての 窒素酸化物、酸素、オゾンの 存在を示すものです。もしも、15年か20年後の ある日 こんなスペクトルが見つかれば その星には生命が存在すると確信できるのです。5年以内に、私達は 太陽からの距離が地球と同じくらいの 太陽型恒星を巡る惑星を発見するでしょう。5年くらいかかります。その後さらに10年か15年くらいかけて 宇宙プロジェクトで 先ほどお見せしたような地球型惑星のスペクトルが得られるでしょう。そしてもし、窒素酸化物と 酸素が見つかれば 我々は完璧なE.T.を手に入れたわけです。どうもありがとう (拍手)

最後に

分光学は「誰かそこにいるの?」に答えられる。リチウム6は惑星や小惑星には存在する。地球上で最も高解像度で正確な分光器「HARPS」。スペクトル線で宇宙の物体の視線速度を調べることができる。ドップラー効果は太陽系外の惑星の発見に利用されている。スペクトル線が地球外生物を見つけるだろう

和訳してくださった Masahiro Kyushima 氏、レビューしてくださった Natsuhiko Mizutani 氏に感謝する(2009年7月)。

分光測定の基礎 (分光測定入門シリーズ)


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