「舞台恐怖症の曲を演奏してもいいですか?」コーワンは語りかける。ここでは、110万ビューを超える Joe Kowan のTED講演を訳し、どのように舞台恐怖症を克服したかを理解する。
要約
人類に備わる恐怖心とは見事なもので、かつて人類の歴史が浅かった頃から集中して自らを敵から守ることに役立ってきました。でも、火曜日の夜のステージで20人のフォークソングファンを前に、恐怖に体を乗っ取られるような体験をするのは素敵なことではないでしょう。手の平が汗ばみ、手が震えだし、視界がぼやけて、頭が「逃げろ!」と言います ― そう、これが舞台恐怖症です。魅力いっぱいの講演で、ジョー・コーワンが美しい旋律と共に、どのように舞台恐怖症を克服したか語ります。
By day he’s a graphic designer, and by night Joe Kowan is a quirky folk singer-songwriter.
1 私はひどいあがり症で、昔から舞台に立つのが怖い
私は あがり症です。昔から舞台に立つのが怖いです。それも ちょっとではなく ひどい あがり症なんです。それでも27歳まで問題ですらありませんでした この頃から曲を書き始めていましたが 自分で歌うだけでした。ルームメイトが同じ屋根の下にいるだけでナーバスになりました。
2 曲を書いたり練習するにつれて人前で演奏したくなった
数年後 曲を書くだけではもの足りなくなりました。沢山のストーリーやアイデアがあって皆と共有したくなったのです。でも生理的には無理でした。なぜか 怖かったんです。それでも曲を書いたり練習するにつれて 人前で演奏したくなりました。
3 皆が怒っているように見えたが、深呼吸をしたらかなり良い気分になった
そこで30歳の誕生日の週です。地元の飛び入り参加のステージで歌おうと決めた私は 恐怖を忘れ去ろうとしました。行ってみると 会場は大入り満員でした。20人もいたんですよ(笑)。皆が怒っているように見えました。でも深呼吸をして参加登録をすると かなり良い気分になりました。
4 良い気分だったのは本番10分前までだった
良い気分だったのは本番10分前まででした。体中が反応し不安の波が押し寄せてきました。さて皆さんが恐怖を抱くと交感神経が刺激されます。するとアドレナリンが分泌され動悸がします。呼吸も速くなります。次に関係のないシステムが停止します例えば消化系です (笑) すると口の中が乾いて手足に血液が行かなくなります。指が思うように動かなくなり 瞳孔が開き 筋肉が収縮します。スパイダーセンスがチクチクし 体全体がトリガーハッピーになります(笑) フォーク音楽を演奏するのに嬉しくない事態ですよね (笑) 神経系って本当に おバカなんです。頭にきますよね?20万年の人類の進化を経ても 火曜日の夜のステージで サーベルタイガーと20人のフォークソング歌手の 見分けがつかなくなるなんて (笑) あの時ほどの恐怖はありません ―この瞬間を除いては (笑)(拍手)
5 最初の歌詞を歌おうと口を開けると、完璧に最悪なビブラートがかかった
いざ自分の番がやってきました。何とかステージに上がり演奏を始めます。最初の歌詞を歌おうと口を開けると 完璧に最悪なビブラートがかかりました。声が出る時に震える あの感じです。しかもオペラ歌手のような良い感じのビブラートでもなく 体全体が恐怖で激しく震えている感じです。まさに悪夢でした。恥ずかしかったしお客さんも明らかにバツが悪そうで 私の不快感にだけ注目していました。本当に酷かった。これがソロのシンガー・ソングライターとしての最初の経験でした。
6 毎週 舞台に立ったが、全然良くならなかった
でも良いこともありました。願っていた お客さんとの繋がりを ほんの少しだけ感じ取ることができたのです。でも もっと繋がりたかった。それには恐怖症を克服する必要がありました。あの夜 私が自らに誓ったのは舞台恐怖症を克服するまで 毎週 舞台に立つぞ ということでした。実際にやりました。毎週 舞台に立ったのです。案の定 週を重ねるごとに ― 全然良くなりませんでした。毎週あがりました (笑) なかなか治りませんでした。
7 舞台恐怖症についての曲を書き始めた
この時 ある考えがひらめいたのです。この時のことは良く覚えています。滅多に ひらめいたりしないので (笑) そのアイデアとは自分の恐怖症を歌にすること。舞台で あがった時の唯一の真実に思えたし ナーバスになればなるほど 良い歌になるでしょう。簡単です。そんな訳で舞台恐怖症についての曲を書き始めました。まずは体に表れる反応 自分がどんな風に感じるか、お客さんがどう思うかについて歌いました。そして自分の震える声なんかを 半オクターヴ高い声で歌うだろうなと分かっていました。とにかく緊張していましたから こんな感じの曲ですが歌っている最中の自分に 何が起こったかというと お客さんに あがり症について考えてもらえたのです。不憫に思ってもらう必要はないんです。私は事実ナーバスなんですから 一緒に体験してもらえて 会場全体がハッピーでナーバスでぎこちなくなりました (笑)
8 舞台恐怖症の曲を演奏してもいいですか?
お客さんについて考え、自分の問題を受け入れて 逆手にとることで 私の進む道を遮っていた何かを取り払うことができ それを成功に欠かせないものに変化させたのです。舞台恐怖症の曲は演奏のしょっぱなから 大きな問題を克服させてくれるのです。すると前に進むことができて ちょっとだけ楽に最後まで歌い終えることができます。そして 次第に 舞台恐怖症の曲を全く歌う必要がなくなりました。まさに この瞬間のように。本当にナーバスになった時を除いてね (笑)舞台恐怖症の曲を演奏してもいいですか? (拍手)
9 僕のあがり症はゆっくりだけど確実に治ってる
お水いただけます? (音楽) ありがとう 冗談じゃないよ 本当にあがり症なんだ。もし僕が震えながら歌っていたら どうか気持ちを察してね。僕がさらしている失態は 体中が震えて声がトレモロになってしまうこと。僕を見て きまり悪そうにしているそこの君 恥ずかしがらなくていいよ。ちょっと位は仕方ないね (笑) そしたら僕は君達が服を脱いだ姿を想像してみよう。裸の他人の前で歌っているなんて何よりも恐ろしいね。長い説明はいらないだろうけど 僕だって自慢できる体型じゃないよ。だから皆ちゃんと服を着ておくれ。ああ皆 裸ですらなかったね。しかも問題があるのはこの僕だ。君は「心配しないで、きっと上手くいく」って言うけれど これは僕の問題だし どうしても あがってしまうんだ。君のアドバイスはありがたい。でも遅かったみたい。ちょっと高飛車な その皮肉っぽいトーンは僕が歌う時に何の役にも立たないよ。でも こんな話はここで止めようね。だって僕はステージの上で君は客席にいるんだから、ハーイ 恐怖に襲われているからってそれを馬鹿にしている訳じゃない。だって これに対峙できなければ ステージには立てなかったハズ。最後に言わせて欲しいんだ。僕のあがり症は ゆっくりだけど確実に治ってる。もしかすると来週はギターを弾きながら 水みたいに清らかな僕の声に合わせて皆が歌いだすんだ。そうしたら僕は立ち上がって音楽にのり始めるよ。僕の声が 音楽より少しだけ早く踊りだすんだ (拍手)
最後に
あがり症を曲のネタにして克服しようとしている。対峙してステージに立つコーワンが素敵。
和訳してくださった Mari Arimitsu 氏、レビューしてくださった Yuko Yoshida 氏に感謝する(2014年1月)。