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増税の前にやるべきことがある! 財務省による10の増税誘導

「財務省による増税マインドコントロールから解き放つことが本書の目的である」著者は語りかける。ここでは江田憲司『財務省のマインドコントロール』を4回にわたって要約し、増税に頼らない国家運営について理解する。第1回は、財務省による増税誘導。

1 国債は子どもや孫たちへの付け回しではない

日本国債は95%を日本国民が買っているため、子どもや孫たちへの付け回しではない。たとえ国債発行したとしても、償還(返済)は将来世代の日本国民に向けて行われるので、差し引きゼロで負担が増えるわけではない。つまり、国の借金は増えるが、その分、国民の資産は増えるため、日本全体としては借金を負っているわけではないのである。

一方、ギリシャ国債は75%を外国人が買っているため、その分の償還は外国人に向けて行われるので、将来世代の負担となる。

なお、学習院大学の岩田紀久男教授(現・日銀副総裁)は、日本の国債を外国人が買う場合も、日本の対外純資産がプラスの場合は、将来世代が負担をすることはないとしている。国債の償還分のお金は外国に行くが、その外国の日本資産を取り崩せば差し引きゼロになるからである(2012年度末の日本の対外純資産は296兆円

 

2 国家の財政を家計にたとえるのは大間違い

国家の財政を家計にたとえるのは間違いである。あえて家計にたとえれば、夫が妻にお金を借りている状態(=国債を自国民で買っている)といえる。「わが国の財政を家計にたとえると、月収40万円で、このうち14万円は借金の返済。実際に使えるお金は26万円なのに、この家は家計費に33万円。新たに18万円の借金をし、その残高は4600万円に達する」(平成20年度)と言われるが、これには以下の続きを入れることで正しくなる。

しかし一方で、現金と預金が200万円ある。新たに18万円の借金をし、その残高は4600万円に達するが、それはほとんど同居の妻に借りているもの。それに株式等の運用資産(有価証券・出資金・貸付金)が2600万円あって、自宅や別荘の資産価値(有形固定資産)も計1500万円あるから、当面は破産などあり得ない」といえる。

なお、財務省のいう「ローン(借金)残高4600万円」は、国の公債残高553兆円を世帯数(約5300万世帯。この数字で割ると残高は868万円)で割ったものではなく、月収40万円×12=480万円と税収等57.7兆円の比率で割った数字であり、無理のある数字だといえる。

 

3 「国の借金はGDPの2倍」?それがどうした

たしかに国の借金はGDPの2倍(約1000兆円)といえる。しかし、同時にGDP分(約500兆円)の資産を持っている。つまり、今日生まれた子ども1人の背中には700万円を超える借金はあるが、500万円の預金通帳を手にしていると言わなければ公平ではないのである。

そもそも、GDPはフロー(単年度の数字)であるにもかかわらず、国の借金はストック(これまでの累積額)なため、これをそのまま比較して表現することにそれほど意味はない。

たしかに国のバランスシート上には300兆円の純債務はある(日本の純債務は300兆円にすぎない 日本の資産と負債参照)が、これをいきなり増税で解消しようとするのは優先順位として間違っている。これは企業にたとえると、つぶれかかった企業がいきなり商品価格を値上げすることに近い。一般的に、倒産危機の会社は、①社長・役員の退陣・給与カット、②社員の給与・人員削減、③事業の効率化・遊休資産売却等、④様子見、⑤商品価格の値上げという順に会社更生を行う。財政危機の国の場合も、①国会議員(閣僚)の給与・定数カット、②公務員の給与・人員削減、③ムダ遣い・埋蔵金解消・政府資産の売却、④デフレギャップ解消→景気回復→経済成長、⑤増税という順に施策を行う必要がある。

 

4 ギリシャの教訓は増税しても、税収は上がらない

ギリシャと日本を比べて「対岸の火事とは言い切れない」という者がいる。しかし、ギリシャは日本以上の「公務員天国」であり、増税しても税収は上がらず財政破綻したということである。

まず、ギリシャ国民は4人に1人が公務員である。しかもギリシャの公務員は民間の2〜3倍の高給をとっており、その背景には政権交代のたびに政治家が支持者を公務員にしてきたという事情もある。また、ギリシャは年金が高すぎる。現役世代の給与水準との比較(所得代替率)でいうと、ギリシャは96%で、老後も現役時代の給料並みの年金をもらっている(日本は夫40年勤続・妻が専業主婦のモデル世帯で59%、男性単身世帯で34%)。さらに、ギリシャには観光産業のほかに、これといった成長産業がない。

こうした中で、ギリシャは消費税を段階的に引上げ、2006年の18%から2010年には23%へ、計5%増税した。にもかかわらず、ギリシャは財政破綻したのである。この教訓に従えば、日本でも公務員制度改革と成長戦略なくして、増税はあり得ないといえる。

なお、CDS(Credit default swap)という国債が債務不履行した場合の損失をカバーする保険料率のような指標がある。これは債務不履行の危険性が高いと見込まれるほどレートは高くなる。この数字は、ギリシャ国債の場合は最大で250%超まで上がった(2012年3月8日)が、日本国債はここ5年間で最大1.5%にしかなっていない。現在は、ギリシャ12%、日本0.6%、アメリカ0.2%、イギリス0.4%、ドイツ0.3%、フランス0.7%、ロシア1.8%、中国1.2%、韓国0.8%程度で推移している(いずれも2013年8月現在。各国のCDS保証料率チャート参照)。

 

5 デフレ下で増税しても、税収は上がらない

景気が悪いときに増税すれば、景気がさらに悪化し、税収は落ちる」これが歴史の真実であり、学ぶべき教訓である。実際に日本でも1997年に消費税を3%から5%に引き上げたが、税収(国税)は53.9兆円(97年)を最後に、2010年には41.5兆円に下がっている。つまり、消費税としては2%アップ分で6兆円から10兆円に増えたものの、景気の悪化により所得税は19兆円から13兆円にダウン。法人税も13兆円から9兆円に大幅減収となったのである。

民主党政権の「社会保障と税の一体改革大綱」では、消費税を5%上げて13.5兆円の税収を確保することが前提とされている。しかし、これはあくまで予算上のものであり、財務省の「歳出権」の拡大にしかならない。実際に税収が上がろうが上がるまいが、税率を上げれば歳出権が増えるため、財務省は増税(税率アップ)がしたいのである。

増税の前にデフレ脱却が最優先課題である。

 

6 国外では「日本の財政は確固としている」と主張する財務省の二枚舌

財務省は、国内では日本の借金は1000兆円と財政危機を煽る一方で、国外では「日本の財政は確固としている」と主張している外国格付け会社宛意見書要旨)。日本のファンダメンタルズ(一国の経済状態を示す基礎的指標=日本の支払能力=国債の信認)を見ると、①貸借対照表:778兆円(資産)/1135兆円(負債)=357兆円(差額)、②個人金融資産1488兆円/5619兆円(国全体)、③対外純資産252兆円、④経常収支17兆円、⑤外貨準備100兆円と、非常に資産が多いのである。

また、国債を購入しているのは6割以上が日本の銀行や生損保といった金融機関なため、個人金融資産が減ってきたからとってすぐに国債の信認が落ちることもない。さらに、貿易収支が赤字になったことを問題にする者もいるが、配当や利子収入といった所得収支も加えた経常収支を見れば、いまだに日本は黒字で問題ない(4月経常収支7500億円の黒字 所得収支85年以降最大参照)。

 

7 なぜ世界で例のない「伏魔殿」を廃止しないのか

国債整理基金特別会計にある10兆円超の剰余金、これが財務省のへそくり(伏魔殿)といえる。国債整理基金特別会計とは、毎年、一般会計から「将来の借金返済のための資金」と称してこの特別会計に10兆円ものお金が繰り入れられているのである。つまり、この繰り入れ停止を行えば、今すぐ10兆円を捻出することが可能なのである。

この特別会計の背景には、国債の「60年償還ルール」がある。これは、総体的には借金をしたときから60年で完済せよ、というものである。その理由は、道路(公共事業)を造ったら60年にわたって利益が及ぶだろうから、その60年で費用を負担して返済を終えるのが適当だという考え方に基づいている。

60年償還ルールがあるため、国債の1年当たりの償還率は「100%/60年≒1.6%」の定率となる。つまり、「国債残高に1.6%をかけた分=約10兆円」が、借金(元本)返済原資として一般会計から国債整理基金特別会計に毎年繰り入れられているのである。これに加えて国債の利払いも必要なため、利率を年2%と想定すると、利子分としてさらに10兆円程度が一般会計に計上される。一般会計の「国債費」という項目が20兆円程度なのは、この元本分10兆円と利子分10兆円の合計だからである。

たとえ今年度の繰入れを停止しても、借金返済が滞るわけではない。剰余金10兆円を元本返済に充て、10兆円の予算措置で利子を返済すれば、例年どおり10兆円の返済は可能であり、特別会計の剰余金がゼロになるだけなのである。そもそも「借金をして金利を払ってまで償還資金を積み立てるようなことは、実業界では例のないこと」(桜田武財政制度審議会会長)であり、引当率が妥当でない証拠なのである。

さらに、60年償還ルールは「建設国債」の話であり、「赤字国債」には通用しない。こうした「国債整理基金」や「減債制度」を廃止しても、借金(国債)の元本10兆円分は「借換債」で対応し、利子の10兆円分だけを毎年の予算で返済していけば問題ない。借換債は既に毎年110兆円以上も発行されており、国債の年間発行額は170兆円前後に達している。借換債が120兆円になったとしても、国債市場で順調に消化されれば何の問題もないのである。

 

8 米国債の償却金15兆円をなぜ使わない?

外貨準備とは、前もって保有しておく対外支払のための外貨のことで、外国通貨、外貨建て証券・ローン、預金などである。日本では100兆円もの外貨準備があり、他の先進国の10倍もの資金を保有している。外貨準備がここまで膨れた原因は、為替介入を繰り返してきた結果である。しかし、日本は既に先進国であり、しかも変動相場制のもとでは為替介入に効果はないため、早急に適正な外貨準備高の水準まで縮小していく必要がある。

外貨準備を適正な水準まで縮小する理由は、為替リスクがあるからである。先の民主党政権時代の円高によって、外貨準備は40兆円もの為替評価損(含み損失)を出していた。これは、国民一人当たり100万円の外貨預金をしているようなもので、円高時には40万円の損を出していたということである。しかし、財務省はその責任を認識せず、評価損を盾に「外国為替資金特別会計(外為特会)」の20兆円の積立金について取り崩せないと開き直っていた。

この外貨準備の中に、米国債の償却金が15兆円含まれている。この満期になった米国債の米ドル資金で復興債を引き受けることで、15兆円の復興資金を生み出すことができる。米国には「今の日本には米国債の償還金を改めて米国債に再投資し、米国の財政を支えていく余裕はない」と伝えればよいのだ。その方法も、例えば政府がドル建ての国債(復興債)を発行し、「ドル円の為替スワップ」などを活用して、為替市場に有意な影響を与えないようにゆっくりと米国債を売却していけばよい。

 

9 消費税を社会保障の財源にする国なんてない

民主党政権では「消費税を社会保障の財源に」といった議論がされていたが、そのようなことをしている国は1つもない。そこには「社会保障のため」といえば増税が認められるだろうと考える、財務省の思惑があるだけである。

消費税は景気に左右されにくい税収なため、地方税に向いている財源、地方交付税、消費税、新たな利権 大阪維新の経済政策参照)。みんなの党は「地域主権」を結党の原点とし「道州制」を提案している。地域主権型道州制では、まず国(中央)から基礎自治体(市区町村等)に「権限・財源・人間」の”3ゲン”を移す。そして福祉や子育てなど、住民の生活周りのことはすべて、身近な市区町村で最終的に処理・対応できるようにするのである。

もちろん、基礎自治体ではできない仕事や効率的でない仕事もある。例えば、市区町村を横断する道路などのインフラ整備や広域的な災害対策、産業振興などである。こうした仕事を「道州」に任せるのが、地域主権型道州制である。つまり、国が直接行う仕事は減り、基礎自治体や道州の仕事の割合が増えるのだ(道州制、金融政策、増税、省庁再編 大阪都構想の真相参照)。

 

10 増税の訴えは、責任ある政治家の証ではない

橋本龍太郎総理(当時)のもとで、1997年にも消費税増税は行われた。しかし、そのときは、①景気回復をさせる手を打つ(減税)、②我が身を切る改革を断行する(省庁再編)、③増税の前に国民に信を問う(選挙)という3つのプロセスを経ていた。しかし、今回の民主党政権では①も②もされることなく、③のみが行われ、結果として選挙で惨敗している。

1997年当時の増税では、9兆円の負担増だった。しかし、今回の増税では、少なくとも14.2兆円の負担増と推計されている。やるべきことをやる前に増税をすることは、決して責任ある政治家の証ではないのである。

 

最後に

①国債は自国民が消化していればプラスマイナスゼロである。②財政を家計にたとえるのは、徴税権と貨幣発行権の面で無理がある。③国の借金はGDPの2倍だが、資産もGDP分保有している。④ギリシャの教訓は増税しても破綻するということ。⑤デフレ下で増税しても、税収は上がらない。⑥日本のファンダメンタルズならば、財政は決して破綻しない。⑦国債整理基金特別会計を廃止し、借換債で対応せよ。⑧外貨準備を縮小し、米国債の償還金15兆円を復興財源に充てよ。⑨消費税は地方の財源とし、地方分権型道州制を推進せよ。⑩増税する前に景気対策と我が身を切れ。増税マインドコントロールから自らを解放せよ

次回は、増税なしでも10年で80兆円賄える 増税によらない財源案についてまとめる。

財務省のマインドコントロール


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