税務処理は会社員ではあまり意識しない人が多いだろう。しかし自営業となると、申告納税するために様々な知識が必要となる。ここでは、きたみりゅうじ著「フリーランスを代表して申告と節税について教わってきました。」を参考に、7回にわたって自営業者の税務についてまとめる。
1 税金とは所得の証明である
日本の税制は所得税が中心である。この所得税を納めることで、国から所得を証明してもらえることを意味する。以下に所得税の特徴をまとめる。
超過累進課税
所得に応じて税金の割合が増えること。一番高い人だと所得の5割が税金となる(所得税と住民税の合計)。
税金は引き算とかけ算で決まる
税金の対象となるものが「所得」である。所得から各種控除を引き、所得税率をかけたものが、実際の納付税額となる。
- 所得(稼ぎ):売上(収入)−経費
- 課税所得(税金の対象):所得−各種控除
- 納付税額(最終的な税額):課税所得×所得税率
2 申告納税が自営業者の基本
会社員(給与所得者)は、会社がまとめて年末調整をすることで納税が完結する。しかし自営業者(事業所得者)は、申告納税をすることが必要になる。
白色申告と青色申告
事業所得者が確定申告を行う場合は、「白色申告」か「青色申告」のどちらかを選択する。白色申告は特にメリットがないが、青色申告には10万円控除と65万円控除の2つがある。
控除とは「みなし経費」のこと
事業を法人化する場合、給与所得控除の知識が役に立つ。配偶者や子どもを扶養に入れることで控除として経費扱いすることができるからだ。法人税率は原則一律30%かかるため、所得が高くなった時点で法人化を考えるとよい。
- 給与所得控除:65万円
- 配偶者控除:38万円
- 扶養者控除:38万円
給与所得控除と配偶者控除を足したものが、「103万円の壁」と呼ばれている。
3 税の種類
税の種類は国・都道府県・市町村それぞれに払うものとして様々な分類がなされる。個人事業主が主にかかわるのは以下の5つである。
所得税
個人の所得に対して課税される税金。国に納める。超過累進課税方式のため、下の表のように基づいて税率が決まる。控除額があるため、例えば所得が330万円の人が331万円になった場合、すべての所得に20%の税率がかかるわけではなく、330万円を超えた1万円分だけ20%の税率がかかる。
参照:All About
住民税
個人の所得に対して課税される税金。都道府県と市区町村に納める。一律で10%(都道府県4%+市区町村6%)。後払いであることが特徴。
事業税
事業を営む者が納める税金。所得に応じて税額が決まる。事業主控除額があり、所得が290万円を超えていなければ税金がかからない。(参考:東京都主税局 個人事業税)
参照:計算方法なび
- 第1種事業:物品販売、製造業、金銭貸付業、飲食業、不動産賃貸業など
- 第2種事業:畜産業、水産業、薪炭製造業
- 第3種事業:公認会計士、コンサルタント業、医業、クリーニング業などは5%。助産師、あんま、針灸などは3%
固定資産税
減価償却中の資産にかかる税。税率は1.4%。未償却残高が合計150万円以上の場合だけ課税される。ただし、自動車は自動車税で課税されているため対象外。
消費税
普段買い物するときに支払う税。税率は5%(2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げ予定)。売上が1千万円を超えない限り、原則として「免税事業者」となる。
最後に
税金は安ければいいわけではない。それは「1 税金は所得の証明である」でも述べたように、個人の所得証明という側面を持つからである。税金を払っていないということは、払わないだけの所得しかないということを証明している。これは突発的な事故で休業補償を受けようとする際や、住宅ローンを組む際にかかわってくる。いざという時の保障や社会的信用を得るためにも、工夫をしつつ払うべきものは払っておくほうがよいだろう。
次回は社会保険についてまとめる。
![]() |