「海洋探検はいまやジェームズ・キャメロンでなくても誰もが参加できます」ラングは語りかける。ここでは、25万ビューを超える David Lang のTED講演を訳し、インターネットが広げたオープンソースの実績について理解する。
要約
デイビッド・ラングは、独学でアマチュア海洋生物学者になりました―というより、彼の代わりにロボットを海洋生物学者にしました。素敵なトークで、TEDフェローのラングは、どうやって海洋愛好家たちが力を合わせて、オープンソースで低コストの水中探査機を作り上げたか語ります。
David Lang is a maker and the co-founder of OpenROV, a community of ocean lovers who build underwater robots.
1 海底研究室「アクエリアス」で撮影されたビデオ
(水中の音)このビデオは 海底研究室「アクエリアス」で撮影されました。フロリダ州キーラーゴ島沖 6キロ 海面下18メートルの場所です。NASAはこの極限環境を使い 宇宙飛行士や潜水技術者の訓練を行っていますが 昨年 研究室の招待で私たちも同乗させてもらったのです。その一部始終を私たちのオープンROV― ガレージで作ったロボットで記録しました。
2 ROVは遠隔操作探査機のことで、オープンソース化している
ROVは遠隔操作探査機のことで 今回使った小さなロボットは ライブビデオを あの極細のテザー・ケーブルを通じて 海上のコンピュータに送信します。これはオープンソース化しており 全ての設計ファイルやプログラムを オンラインで公開していますので 誰もが その設計を修正 改良・変更することができます。ほぼ既成部品で組み立てられ そのコストもタイタニック号の探索に ジェームズ・キャメロンが使ったROVの 千分の一くらいです。ROVは新しいものではなく 数十年前からあります。科学者が海洋探索に使ったり 石油・ガス企業が海洋調査や建設に 使ったりしています。私たちが作ったものはユニークではありませんが その作り方はとてもユニークでした。
3 インターネットで支援を募って作り上げた
ここで その経緯を簡単にご紹介しましょう。数年前 友人のエリックと私は この水中洞窟の探検をすることにしました。シエラネバダ山脈の麓にある洞窟で ゴールド・ラッシュ時代に盗まれた金が 隠されていると聞きそこに行きたくなったのです。残念ながら当時はお金がなくて なんのツールもありませんでした。エリックには ロボット設計の基本構想はありましたが 細かい部分を自分たちでは解決できなかったので こんな状況下では誰もが考える通り インターネットで支援を募ったのです。このウェブサイトopenROV.comを立ち上げ そこで目的や計画を公開しました。最初の数ヶ月そこの掲示板で やり取りをするのはエリックと私だけでしたが まもなく 様々な物作り愛好家からフィードバックをもらうようになり そして ついには海洋技術者の方々からも 何をすべきか提案を受けるに至りました。この取り組みを続け多くを学びました。プロトタイプを重ねて ついに洞窟への出動を決めました準備万端でした。ちょうどその頃この小さな調査旅行の話が広まり ニューヨークタイムズ紙にも取り上げられ 私たちは感無量でした。多くの方からこのオープンROVの― 製作キットがほしいとの声をいただいたからです。
4 Kickstarterでプロジェクトを発表し、開始2時間で目標の資金を集めた
そこで 私たちは Kickstarterでこのプロジェクトを発表し 開始2時間で目標の資金を集めました。急に このキットを作れるお金ができたわけですが どうやって作るか学ぶ必要がありました。というのも 小ロット生産が必要だからです。すぐに 今までのガレージでは 狭すぎると気づきましたが やってのけました。キットを作れたのは TechShopのお蔭でした。とても助かりました。私たちは このキットを世界中に出荷しました。ちょうど昨年のクリスマス前のことで まだ数ヶ月しか経っていません。でも すでに世界中から ビデオや写真が集まってきています。この南極の氷の下から撮った写真もそうです。ペンギンがロボット好きだということも分かりました (笑)
5 長期的な可能性を秘めているのは、世界中に広がりつつあるDIY海洋探検家コミュニティー
今も 私たちは 全ての設計図をオンラインで公開し 誰もが 自分で組み立てられるようにしています。こうすることが唯一の方法だったのです。オープンソースとすることで この研究開発ネットワークを広げ どんなベンチャー企業よりも早く開発を進めています。とはいえ ロボット製作自体はまだ始まりにすぎません。真の可能性長期的な可能性を秘めているのは 世界中に広がりつつあるこのDIY海洋探検家コミュニティーなのです。こうした機械が何千も海中を漂っていたら 見つけられるものは計り知れません。
6 海洋探検は誰もが参加できること
さて あの洞窟はどうなったでしょう? 金を発見したかって? いいえ 金なんてありませんでした。でも それ以上に価値があるものを見つけました。海洋探検がもたらす素晴らしい未来を 垣間見ることができたのです。これは 世界のジェームズ・キャメロンでなくとも 誰もが参加できることなのです。水中の世界を 一緒に探検しましょう。ありがとうございました。
最後に
海洋探検は誰もが参加できること。それを可能にしたのはインターネットとオープンソースという公開の精神。日本では家入一真(@hbkr)氏が政治の世界で探検中。
和訳してくださった Yuko Yoshida 氏、レビューしてくださった Reiko Bovee 氏に感謝する(2013年12月)。
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