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メグ・ジェイ 「30歳は昔の20歳ではありません」

「30歳は昔の20歳ではありません。20代は今も昔も人生を決定づける重要な10年間です」メグ・ジェイははっきりと語りかける。ここでは、350万ビューを超えるMeg Jay のTED講演を訳し、成人期を有効に活かすための3つのアドバイスを理解する。

要約

臨床心理学者メグ・ジェイは、社会通念とは逆に20代は無駄にしても良い10年間ではない、と20代の若者に対してはっきりとしたメッセージを投げかけます。ジェイはこの刺激的なトークで、結婚や仕事や出産が人生の遅い段階で起こる傾向があるからといって今計画を始められないわけではないと語ります。人生を決定づける10年間を20代の若者が成人期を有効に活かすための3つのアドバイスを贈ります。

In her book “The Defining Decade,” Meg Jay suggests that many twentysomethings feel trivialized during what is actually the most transformative — and defining — period of our adult lives.

 

1 20代のときに心理カウンセリングで初めて患者を診た

20代のときに 私は 心理カウンセリングで初めて患者を診ました。当時私はUCバークレーで臨床心理学を学ぶ博士課程の学生でした。その患者はアレックスという26歳の女性でした。初診のとき アレックスは ジーンズとダボッとしたシャツを着て 診察室のソファーにストンと腰掛けると ペタンとした靴を脱ぎ、男の子の問題について相談に来たと言いました。それを聞いて私は ほんとホッとしました。私のクラスメイトなんて初めて診たのが放火犯だったんですから (笑)。それに比べ 私のは20代女性の男の子に関する悩み相談 これなら 問題なくこなせると思ったのですが。

 

2 「30歳は昔の20歳よね」問題は先送りにしていた

どうも甘く考えていたようです。毎回 アレックスが持ち込む愉快な話を聞き 私は彼女に同感し 問題は先送りにしていました。「30歳は昔の20歳よね」とアレックスが言えば 私もそんなものだと 思っていました。就職も結婚も出産も昔より遅くなって 死ぬことだって先になってる。そんな20代の私やアレックスに時間なら いくらでもありました。

 

3 結婚を考えるのは結婚するような相手に会う前が最適

しかし しばらくすると私の指導教授が恋愛に関して アレックスに とやかく指図するようにプッシュしてきました。私はこう言って 押し返しました。「彼女が 釣り合わない人と付き合って バカな男と寝ているのは確かですが その人と結婚するというわけでもないでしょう」すると指導教授はこう言いました。「今は大丈夫でも次の彼とは結婚するかもしれない。とにかく アレックスが結婚を考えるのは 結婚するような相手に会う前が最適なんです」

 

4 自己実現に格好の時期を無為に浪費していた

心理学者が「アハ体験」と呼ぶ瞬間です。この瞬間 30歳が昔の20歳では無いことを悟りました。確かに 身を固めるのは昔よりも遅くなりましたが、だからと言って アレックスの20代が自己実現の努力をやめて良い時期になったわけではなく むしろ遅くなったことで自己実現に格好の時期となったのに 私たちはその時期を無為に浪費していたのです。そのとき私が悟ったのは アレックスと彼女の恋愛に限らず20代の若者全般が キャリアや家族 未来などについても こんな風に静観して過ごすのが真の問題で 重大な影響を及ぼしているということです。

 

5 20代が本当に重要ということ

現在 アメリカには 20代が5000万人います。アメリカ人口の15%を対象とした話をしているわけですが 20代を経験もせずに大人になる人など いないことを鑑みれば 100%の人が該当することになります。現在20代の方は手を挙げて? 何人かいると良いのですが あっいますね!素晴らしいです。20代の人と仕事で関わったり20代の人と付き合っている方 20代の人を心配して夜も眠れない方は?どうぞ手を挙げて ありがとう。素晴らしいです。20代が本当に重要ということです。

 

6 仕事、恋愛、幸福、世界への貢献の可能性さえも決める

そこで私は20代を専門としています。5000万人にも上る20代の皆に 心理学者 社会学者神経学者 生殖受胎の専門家には 既に常識となっていることを知ってもらいたいからです。色々な方法がありますが20代を有効に活かすのは 最も単純ながら 最も影響力を持っていることの1つです。仕事 恋愛 幸福に関してそして場合によっては 世界への貢献の可能性さえも決めるのです。

 

7 人生を決めてしまうような出来事の80%が35歳までに起こる

これは私個人の意見ではなく事実なのです。人生を決めてしまうような出来事の80%が 35歳までに起こることが知られています。つまり人生を決定付ける – 重要な決断 経験 アハ体験の 10個中8個は 30代半ばまでに起こるのです。40歳以上の方でも取り乱さないで! 会場の皆さんは大丈夫だと思います。キャリアの最初の10年間が その後稼ぐであろう金額に 指数関数的に影響します。アメリカ人の半数以上が 30歳までに結婚するか 将来のパートナーと付き合うか同棲しています。脳は 20代のうちに成人期に向けて 配線し直されると同時に 人生最後の2回目の成長をしぐんと伸びて仕上がります。つまり 自分を変えたいと思うなら 20代こそがその時なのです。性格についても 20代ほど 変化を見せる時期はありません 女性の妊娠しやすさも28歳でピークを迎え 35歳以降は 色々と難しいことが出てきます。身体についても 人生の選択肢についても よく理解すべき時期は20代なのです。

 

8 成人期の発達はあまり話題とならない

子どもの発達においては 言語能力や愛着や脳が育つ為に 最初の5年間が臨界期だということは広く知られています。その期間は 何の変哲も無い日常生活が 人格形成にことのほか大きな影響を与える期間です。しかし 成人期の発達なんて あまり話題となりません。20代は成人発達の重要な期間であるにも関わらずです。

 

9 文化として成人期を形成する上で最も重要な10年間を軽視してきた

しかし20代の人はそんなこと耳にしないわけです。ニュースになるのは人生設計の時期が変化してきたとか 研究者でさえ20代はまだモラトリアム期間だとか ジャーナリストも20代に「パラサイトシングル(すねかじり)」や 「キダルト(子ども大人)」といったふざけたあだ名を付けています。本当です。文化として 私たちは成人期を形成する上で 最も重要な10年間を軽視してきました

 

10 偉業を成し遂げるには計画と焦りが必要

レオナルド・バーンスタインはこう言いました。偉業を成し遂げるには計画と焦りが必要だと。まさしく真実ではありませんか? 20代の頭をなでながら 「人生を始めるにはあと10年ある」 と言ったら 何が起こるでしょう? 全く何も起こりません。その人から切迫感と大志を奪うだけで 絶対に何も起こりません。

 

11 賢く興味深い20代の人たちが私の診察室に来て言うこと

そして毎日 皆さんのお子さんや皆さん自身のような 賢く 興味深い20代の人たちが 私の診察室に来てこんなことを言うんです。「彼は私にはふさわしくないって わかってるけど 真剣な交際までの時間つぶしだからいいでしょ」 または「30歳になるまでに働き始めれば 大丈夫だよと 皆が言うんです」と。

 

12 大学を卒業した直後の方が履歴書の見栄えが良かった

しかし そのうちこんな風に言い始めます。「もう20代も終わりかけなのに何も自慢できることがないんです。大学を卒業した直後の方が履歴書の見栄えが良かった

 

13 30歳のときに一番近くにあったイスが夫だった

さらに進むと そのうちこんな風に言い始めます。「20代の私のデートはイス取りゲームの様でした。色々な人と楽しく付き合っていたんですが 30歳頃になるとまるで音楽が止まった時のように みんなイスに着席し始めたんです。私だけ座り損ねるなんてイヤでした。だから時々こう思うんです。夫と結婚したのは 30歳のときに一番近くにあったイスが夫だったからだと」

 

14 全てを30代の間にまとめて行うのは困難かつ多くのストレスが伴う

さっきの20代の方はどこですか? そんな風にはしちゃダメよ。少し軽々しい言い方ですが 間違ってはダメです。利害はとても大きいんですから。多くの物事を30代まで後回しにすると 30代でのプレッシャーは巨大なものになります。キャリア構築を始め 住む街を決めパートナーを探して 後回しにした分 さらに短い期間に2~3人の子どもを出産することになります。これらの多くは同時にはできません。ごく最近 研究で明らかになってきたように、全てを30代の間にまとめて行うのは 単純に困難かつ多くのストレスが伴うことなんです。

 

15 私は20代の人たちの思考や行動を変えたい

2000年以降の中年に起こる危機は 真っ赤なスポーツカーを買う形では現れず 望むキャリアを歩めないということや、子どもが欲しくなったのに産めなかったり子どもに兄弟を作ってあげられないことに気付くことで訪れます。あまりに多くの30代 40代の人たちが 診察室の反対側に座りながら自分と 私を見比べて 自身の20代に関して決まってこう言います。「私は今まで一体何をしてたの?一体何を考えてたの?」と言います。私は 20代の人たちの 思考や行動を変えたいんです。

 

16 「家族は選べないけど友達は選べる」

その変化を示すのに 打ってつけの話があります。エマという女性の話です。エマは25歳の時診察室にやって来ました。彼女の言葉を借りれば自己喪失に陥っていたからです。芸術・娯楽の分野で働くのがいいのかなと思いつつも まだ決心がつかずその代わり 数年間 ウェイトレスとして働いて来たと語ってくれました。当時エマは安く済むからという理由で 将来の夢があるわけでもない気性の荒い彼氏と同棲していました。彼女の20代も困難なものでしたが それ以前の人生はもっと困難に溢れていました。診察中 何度も涙を流しましたが 「家族は選べないけど友達は選べる」 とそのたびに言って 気持ちを落ち着かせていました。

 

17 「緊急の場合こちらに連絡してください」の欄が埋められなかった

ある日 エマがやって来て ひざを抱えうなだれて 診察時間の大半をむせび泣いていました。彼女はちょうど新しい連絡帳を買って その朝は 多数ある連絡先を書き込みながら過ごしていましたが 「緊急の場合こちらに連絡してください」 という言葉に続く空欄を じっとただ見続けるだけで埋められなかったんです。彼女はヒステリー気味に私を見て こう言いました。「ひどい自動車事故に遭ったら誰が来てくれるの? ガンにかかったら誰が面倒を見てくれるって言うの?」

 

18 「私がするわ」と言いたいのを必死にこらえた

その瞬間 「私がするわ」と言いたいのを 必死にこらえました。エマが必要としていたのは親身に面倒をみてくれる セラピストではありません。必要なのは素敵な人生でこれが人生を考える転機になると思いました。アレックスの初診以来多くを学んでいたから エマが大切な十年間をムダにするのを 何もせず眺めているわけにはいきませんでした。その後 数週間数ヶ月にわたって 私はエマに 男女問わず 全ての20代が知らされるべき 3つのことを伝えました

 

19 自身の価値を高めるようなことをする

まずはアイデンティティ・クライシスに陥っていることを忘れて 何かアイデンティティ・キャピタルを築くよう伝えました。「アイデンティティ・キャピタルを築く」とは 自身の価値を高めるようなことをするという意味です。自分の将来の― 理想像に近付くために自分への投資になる何かをすることです。エマの将来のキャリアは私にはわからなかったし 未来の仕事は誰にもわかりませんがこれだけは確かです。アイデンティティ・キャピタルはアイデンティティ・キャピタルをどんどん呼び込みます。つまり 今こそが やってみたいと思っていた 国際的な仕事やインターンシップや起業などをすべき時なのです。20代に色々と模索することを軽視しているわけではありませんよ。ただ 人生に意味をもたらさないような模索を軽視しているんです。ただそれだと模索とさえも呼べないものです。それは先送りしているだけに過ぎません。私はエマに職を模索し、また目的に合うものを選ぶようにと伝えました。

 

20 新たな物事はゆるいつながりからやって来る

2つ目として エマに伝えたのは都会派仲間の生き方は過大評価されているということ。親友は親切にも空港まで送ってくれたりしますが 20代の人が同じ考えの人だけとつるんでいると、友人が知っていることや知っている人 友人の考え方や話し方や友人が勤務する場所などが 限られた範囲だけになってしまいます。新しく自分の資本になるものや新しい交際相手は 必ずと言っていい程内輪のサークルの外にいます。新たな物事は友人の友人の友人のような いわゆる ゆるいつながりからやって来ます。そう 20代の半数は無職か不完全雇用の状態ですが 半数はそうではありません。ゆるいつながりこそが後者の集団に入る方法です。仕事の半分は公募されないため 近所の人の上司に接触することが 公募されない職に就く手段になります。ズルではありません。情報はこのように広がるものだからです。

 

21 仕事と同様に恋愛に対しても意識して行うべき

最後に忘れてはならないのが エマが信じていた「家族は選べないが友達は選べる」という事に関して。エマが育った環境ではその通りでしたが 20代なので もうじきエマは家族を選ぶでしょう。パートナーと結婚し 自分自身の家族を築き上げるのです。エマには 今こそが家族を選び始めるときだと伝えました。30歳は結婚し身を固めるのに 20歳 ひょっとしたら25歳よりも ずっと良いと思われるかもしれません。それには賛成します。ただ Facebook上で結婚報告がされ始める頃に 誰でもいいからと同棲相手や寝た相手を捕まえようとするのは 自分を高めることにはなりません。結婚に備えるのに最適なタイミングは 適した相手に会う前です。つまり 仕事と同様に恋愛に対しても 意識して行うべきなのです。家族を選ぶということは たまたま自分を選んだというだけの人と 漠然と一緒に過ごしたり時間を潰すということではなく 誰とどのようなものを望むか意識して選ぶことなのです。

 

22 「今では緊急連絡先が空欄でも狭すぎると思うようになりました」

では エマはどうなったでしょうか? エマと連絡帳を繰ってみると 別の州の美術館で働いている かつてのルームメイトの従兄弟を見つけました。ゆるいつながりのおかげでエマは美術館で仕事を見つけ その仕事の雇用契約をきっかけに 同棲していた彼氏の元を去りました。5年経った現在では エマは美術館の特別イベント企画を担当しています。彼女は注意深く選んだ男性と結婚し、新たなキャリアを 心から気に入っていて新たな家族を愛しています。エマから届いたハガキにはこう書かれています。「今では 緊急連絡先が空欄でも 狭すぎると思うようになりました」

 

23 20代の人たちは今まさに飛び立とうとする飛行機のようなもの

エマとの体験談を聞くと簡単なことに思えますが それこそが 私が20代に向き合う中で好きなところで とても簡単に救うことができます。20代の人たちはロサンゼルス国際空港から西のどこかに向けて 今まさに飛び立とうとする飛行機のようなものです。離陸直後にちょっと経路を変更するだけで 着陸地点がアラスカになったりフィジーになったりします。同様に 21歳 25歳もしくは29歳でも 1回の素晴らしい会話や1度の転機や 1つの優れたTEDトークが 何年にも または何世代にも渡って絶大な影響を与えることができるのです。

 

24 皆さんは今まさに人生を決めている

これは皆さんの周りにいる20代全員に 広める価値のあるアイデアです。アレックスを診た経験から学んだ 単純なことですが 今となってはこれをエマのような20代に 毎日伝えられる立場なのはうれしいことです。今の30歳は昔の20歳に相当しません。大人として20代を有効に使い アイデンティティ・キャピタルを築きゆるいゆるがりを活かし 家族を選んで下さい。知らなかったことやしなかったことに 縛られてはいけません。皆さんは 今まさに人生を決めているのです。ありがとうございました (拍手)

 

最後に

エマが必要としていたのは親身に面倒をみてくれるセラピストではない。必要なのは素敵な人生。ジェイ・ヘイリーの「家族のライフサイクル」を思い出した。「後悔先に立たず」あなたはいつでも変われる

TED公式和訳をしてくださった Tomoshige Ohno 氏、レビューしてくださった Akinori Oyama 氏に感謝する(2013年5月)。2013年10月21日 NHK Eテレスーパープレゼンテーションでも放送。

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