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ナイジェル・マーシュ 「ワークライフバランスの実現」

「ワークライフバランスは、雇用者の手に委ねるにはあまりに重要すぎます」マーシュはこう語りかける。ここでは、Nigel Marshの140万ビューを超えるTED講演を訳し、ワークライフバランスを実現するために必要なことを提案する。

要約

ナイジェル・マーシュによれば、ワーク・ライフバランスは、雇用者の手に委ねるにはあまりに重要すぎます。TEDxSydneyにおいて、マーシュは家族と過ごす時間と生産性との理想的なバランスについて述べ、それの実現に向けたいくつかの心を揺さぶる提案をしました。

Nigel Marsh is the author of “Fat, Forty and Fired” and “Overworked and Underlaid.

 

1 働いていないときには仕事と生活のバランスをとるのが至極簡単だ

以前からしたかったことなんですが、まず一つの簡単なリクエストから始めましょう。まずは少し立ち止まって、哀れな弱虫で悲惨なあなたの存在を見つめ直してください (笑)

これは15世紀に 聖ベネディクトが、いささか驚くべき数の信者に 与えた忠言ですが、私が40歳になった時に 自らを従わせようと決めたものです。その瞬間までは私は古いタイプの企業戦士でした。食べ過ぎ 飲み過ぎ 働きすぎ、家庭をないがしろにしていました。私は人生を 好転させようとし、特に ワーク・ライフバランスという厄介な問題に 対処しようとしました。会社を辞め 妻と4人の子供とともに 家で1年間過ごしました。しかしその期間で ひとつのことを学びました。働いていない時には– 仕事と生活のバランスをとるのが 至極簡単だ(笑)。もっともお金が尽きる頃には、このスキルはあまり役立ちませんがね

 

2 問題解決の最初の一歩は現実認識

そして再び働き始めました。それ以来7年間 ワーク・ライフバランスに 取り組み、勉強し 執筆してきました。今日はみなさんに 4つの所見をお話させてください。まず1つ目, 社会がこの課題になんとかして取り組むのなら。誠実な議論が必要です。やっかいなのは 多くの人が、ワーク・ライフバランスについて 全く馬鹿げたことを話すこと– フレックスタイム制 カジュアルフライデイ 父親の育児休暇。これらに関する議論は、日常的に世話をすべき 子どものいる家庭において、特定の仕事やキャリアの選択肢は 基本的に互換性がないという問題の本質を 覆い隠すだけです。問題解決の最初の一歩は、今おかれている状況を現実的に認識することです。私たちの現実社会は、要りもしないものを買うために 好きでもない人を感動させるために 大嫌いな仕事に何時間も費やし 絶望を叫びつつも 静かな生活を送る、そんな無数の人々で 溢れています(笑)。金曜日にはTシャツにジーンズで働くなんて これっぽちも問題の核心に迫っていない(笑)

 

3 自分の人生に責任を持つ

2つめの所見– 政府や会社は この問題を解決する気がない という事実に向き合わなければなりません。外に助けを求めるのはやめましょう。自分の送りたい人生をコントロールし 責任を持てるかは 自分次第なのです。自ら人生をデザインしなければ 誰かが勝手にしてしまうでしょう。しかしそのバランスは あなたには合わないはずです。特に大切な事は– インターネット上には載っていない。クビにされそうですが– とても大切です。生活の本質を決して営利企業の手に 委ねてはなりません。なにもブラック企業に限った話をしているわけではなく– ”魂の食肉処理場”と私は呼んでいますが (笑)、 全ての会社についてです。営利企業は 本質的に あなたを出来る限り利用し 持ち逃げしようとする性質上のもので、DNAに刻まれているのです。健全で、善意のある企業でさえ やっていることなのです。一方で 職場に保育所を設けるのはすばらしく、賢明な行動です。しかし、悪夢でもあります。忙殺された職場で、さらに時間を割かなくてはならなくなります。生活に必要な境界線を 設定し、実行することに 責任を持たなければなりません。

 

4 ワークライフバランスの時間枠を広げる

3つ目の所見– 私たちはワーク・ライフバランスをどのような時間枠で求めるのか 気をつけなければいけません。一年間の休養を経て 仕事に戻る前、 私は座り 1つ1つ細かく順番に 私が望む 理想のバランスの日を 書き出しました。こんな感じに: たっぷりと睡眠をとって 気持ちよく起きる。セックスする。犬の散歩。妻と子どもたちと朝食をとる。またセックスする(笑)。車で仕事場へ行く途中、子どもたちを学校まで送っていく。3時間働く。友人と昼休みに運動する。もう3時間働く。夕方早くからパブで仲間と飲む。車で帰って 妻と子どもたちと夕ご飯を食べる。30分ほど瞑想する。セックスする。犬の散歩。またセックス。寝る(拍手)。こんな日がどのくらいあると思いますか? (笑) もっと現実的になりましょう。全てを1日でやるのは無理です。私たちの人生におけるバランスを 計る時間枠を延ばさなくてはいけません。ただし気をつけなくてはいけないのは ”退職したとき、子どもたちは家を出て、妻には離婚され、健康は損なわれ、 友達も趣味もない 第二の人生がスタートする” といった罠に陥らないことです (笑)。1日は短く、退職した後は長すぎます。ちょうどいい方法があるはずです。

 

5 バランス自体を捉え直す

4つ目の所見- バランス自体を バランスの取れた見方で捉えなおす必要があります。去年友人が私と会ったとき– ちゃんと許可はとってありますよ – その友人が言いました ”ナイジェル あなたの本を読んで 自分の人生のバランスが完全に崩れてるのに気付いたわ。仕事で一杯よ。1日10時間働いて、通勤には2時間かかるわ。交際関係も全て駄目。仕事以外に私の人生には 何もないの。だからしっかりしなきゃと思って ジムに通うことにしたわ(笑)。 馬鹿にするわけではありませんが、 10時間働く健康な従業員になっても バランスが取れたのではなく、もっと働けるだけです (笑)。運動はすばらしいですが、 人生には他の部分もあります。知的な部分 感情的な部分 精神的な部分、バランスを取るには これらすべての部分を 考えなくてはいけません– 腹筋50回だけでは足りないのです。

 

6 「パパ、今日は今までで1番楽しかった日だよ」

これは厳しいものがあります。人はこう言います。”そんな無茶な 僕には時間がない; 教会に行って母と話せっていうのか” 私にはわかります。それがどんなに大変か、確かにわかります。しかし数年前、1つの出来事のおかげで 新たな視点を得ることができました。今日この客席のどこかにいる妻が職場に電話してきて、“ナイジェル 一番下の子のハリーを学校に迎えに行ってあげて” と言いました。妻は夕方 他の3人の子たちと出かけなければならなかったのです。私は1時間早く仕事を上がり、学校でハリーを拾い、二人で近くの公園に行き、ブランコに乗ったり、おかしな遊びをして、その後丘の上にあるカフェに行き、 おやつにピザを食べ、丘を下って我が家に帰り、息子を風呂に入れ バットマンのパジャマに着替えさせました。そしてロアルド・ダールの 「おばけ桃の冒険」を読んであげ、 ベッドに寝かせ、 ”おやすみ ぼうや” とおでこにキスをして 部屋から出て行きました。その時です。息子が“パパ?”と呼ぶので ”なんだい?”と答えると、 彼はこう言いました。”パパ、今日は 今までで1番楽しかった日だよ” 私は何もしていません。ディズニー・ワールドに連れて行ったり、プレイステーションを買ってあげたのでもない。

 

7 最小の投資を適材適所で行おう

つまり 小さいことが重要なのです。バランスを良くしても 人生が劇的に変わるわけではありません。最小の投資を適材的所に行うだけで、人づきあいや人生の質までも 劇的に変えることができます。さらに私は 社会を変えることもできると思います。なぜなら充分な人が実践すれば 世間一般の成功の定義を愚かで単純な「死ぬ際お金を一杯持っていた人の勝ち」というものから、もっと思慮深くバランスの取れた人生に 変えることができるからです。私はこれこそ、 広める価値のあるアイデアだと思います。

 

最後に

すべての人に共通かつ有限の資源である「時間」を、あなたの責任で適材適所に投資しよう。要るものを買い、好きな人を感動させ、(可能な限り)大好きな仕事に何時間も費やし、希望を叫びつつ、fuckingな生活を送ろう。果報は寝て待てなんて、糞食らえ

和訳してくださったTaihei Matsuda 氏、レビューしてくださった Hidetoshi Yamauchi 氏に感謝する(2011年2月)。

改訂版 ワークライフバランス -考え方と導入法-


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