会社員と自営業の両方を経験してみよう
今ほど進路指導や就職指導が大変な時期はないだろう。大企業のリストラ、国家間の軋轢等様々な問題を抱え、何を頼りに指導を行えばいいか、難しい判断を迫られている。本稿では下記のMay_Roma女史の発言に代表されるノマド話を参考に、私なりの会社員と自営業の長所と短所をまとめてみたい。
本当は、ノマド的な働き方や、会社員の違い、双方の長所と短所は、大学や高校の進路指導や就職担当が説明できないとならない。しかしそういう先生や職員は、会社員も自営もやったことないから、訳が分からない。
— May_Romaさん (@May_Roma) 2月 20, 2012
1 会社員の長所は経済的安定
長所
- 毎月安定的に給料がもらえる
- お金をもらいながら学べる
- 福利厚生がある(有給休暇・傷病手当・失業給付など)
短所
- 感謝しなくなる
- 自律的に学ばなくなる
- 甘えが強くなる
会社員の長所は、何よりも安定的な収入だ。
シャープのリストラやルネサスエレクトロニクスの経営再建が話題に上がるが、まだ大半の従業員には影響が及んでいない。雇用形態にもよるが、たとえ実績が出なくとも給料が半額になることもないし、上司から叱られる程度だろう。国家が経営者という意味で、公務員を会社員ととらえると、その安定感は最たるものがある。
また、いざというときの保障が充実している。
私は以前、病気で12日間入院したことがある。しかし、有給休暇を利用することで、入院中の給料も全額振り込まれたのだ。また傷病手当金という制度もあり、長期間の療養が必要になったとしても、標準報酬日額の3分の2を受け取ることができる。さらに、失業後も雇用保険から失業給付を受けられる。
その反面、会社員の短所は、感謝しなくなることだ。
私はお金をもらえることが当たり前と思っていたときがある。これだけ働いてこれだけ売上を上げたのだから、給料をもらえるのが当たり前だと。
この感覚は怖い。
なぜなら私が普通に働けているのも、店長やアルバイトが店を運営しているからであり、そもそも担当店がそこにあるからである。その店の地主がいて、地主と交渉して店舗を開発した者がいるのであり、その店に商品を運ぶ物流担当者がいるのだ。商品を作っているメーカー(ベンダー)と交渉する商品部の人間がいて、商品や店の広告・宣伝をする販売促進部がある。事件・事故が起こった際に諸々の手続きを代行してくれる総務部があり、財務諸表管理や資産管理をする財務部がある。店長と契約書関係の調整をする担当者がおり、地主と賃料の交渉をする担当者もいる。これらのすべての利害を把握して経営方針を決める経営者がおり、どのような人材を採用・育成するかを決める人事部がある。その他関係者を含めれば、相当な人数がかかわっている。
とんでもない積み重ねがあってこその、自分の仕事なのである。成果へのこだわりはあったが、「なぜその仕事が存在するのか」という想像力に欠けていたのだ。
感謝の気持ちを忘れたくない、この積み重ねのプロセスを実体験したいということが、私がこのサイトを運営している理由になっている。
2 自営業の長所は自律的生活
長所
- 実力主義
- 好きなだけ仕事ができる
- 稼げる
短所
- 圧倒的な技能・実績・対人能力が必要
- 仕事がない(自分でつくる必要がある)
- 一文無しになるリスクが高い
自営業の長所は、自律的な生活ができることだろう。
だれからも仕事をしろとは言われない。だれからもあれしろこれしろと言われない。好きなときに、好きなだけ仕事をすることができる。May_Roma女史によれば、わかりやすいイメージとして「包丁一本持って全国渡り歩く板前や、カンナ持って渡り歩く大工さん」が上げられている。その技能が高ければ高いほど、稼ぎも増える。
その反面、自営業の短所は、圧倒的な技能・実績・対人能力が必要ということだろう。
まず、技能や実績がなければ、仕事自体がない。仕事を取ってきたところで、対人能力がなければ何らかのトラブルを起こす。その結果、続かない。運良く事業が軌道に乗っても、その生活がずっと続くという保障はない。事業がつぶれれば、一文無しになるリスクもある。まわりはみなライバルで、孤独である。
私は今、無職だ。前職を退職してから半年が経つ。
ライフネット生命の出口治明氏の著書を読み、その生き方に感銘を受け、前職の退職を決意し、ライフネット生命の中途採用枠に応募して落選し、自分の実力不足を再認識し、食うためのスキルを身につけようと日々努力している。
このサイトをつくる上で特に参考にしているのが、バズ部のサイトだ。徹底的にサイト訪問者目線で、役に立つ情報を載せている。「数字命!」を信条にしており、共感できる。私もそのようなサイトを目指し、WEB、キャリア、カウンセリングを3本柱に、よいサービスづくりに取り組んでいる。
前職で働いていたとき以上に、支えてくれている人のありがたみを実感している。まだまだ実力不足だが、多くの先人たちから学び、仕事を創り出していきたい。
3 多様な働き方を知ろう
進路指導の先生には、ぜひとも情報収集のアンテナを広げていただきたいと思います。
TwitterでMay_Roma女史や佐々木俊尚氏をフォローしたり、家入一真氏やpha氏のように多様な働き方を模索し、それを懸命に実践している方から刺激を受けてください。
iモードを開発した夏野 剛氏がニコニコ動画のドワンゴで何をしようとしているか、アップルで16年働いた松井 博氏が教育関係の仕事で何をしようとしているのか、東芝でフラッシュメモリ開発をしていた竹内 健氏が中央大学で何をしようとしているのか、「医療とコミュニケーションについて」の著者medtoolz氏がどのような気づきをつぶやいてくれているのか。
ちきりん女史も勧める(“ボタンのありかを知る人”が選ぶ道)ライフネット生命社長の出口治明氏や、鎌倉投信社長の鎌田恭幸氏が、壮年どのような思いで起業するに至ったのか。
せめて、このような働き方をしている人もいる、ということだけでも知っておいてください。きっと、それだけでも救われる子どもがいます。
将来先生になりたい人は、ぜひ自分で商売を経験してみてください。
知り合いの店を手伝う(会社員)もよし、自分で何かを生み出して売る(自営業)のもいいでしょう。アルバイトに力を入れて出世する(会社員)もよし、ブックオフで本を仕入れてAmazonで売る(自営業)のもいいと思います。
「安く仕入れて、高く売る」という商売の原則を体験することで、仕入れた値段と売った値段の差額(売上総利益=荒利)から、自分の給料が支払われていることを理解できます。電気・ガス・水道料金、通信費や交通費などもろもろの経費が引かれ(営業利益)、借金の利子を払い(経常利益)、税金を払って残ったものが、最終的な利益(純利益)ということがイメージできます。
簿記の勉強をするよりも、刺激的で楽しい体験ができる思います。
最後に
子どもの進路指導という大変意義のある仕事をなさっている方を、私は心から尊敬しています。その方たちに少しでも役に立ててもらえれば嬉しいです。そして、May_Roma女史のつぶやきをtogetterでまとめてくださった岸 浩太郎さん、ありがとうございました。
※11/6追記:@May_Romaさんが語る。本当は「貧困」な日本社会。も刺激的
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メイロマさんのツイートからこのエントリにたどりつきました。非常にわかりやすく、丁寧にまとまっていたので自分の生き方の参考になりました。ありがとうございます。
野田英文さん
コメントありがとうございます。参考にしていただければ嬉しいです。
今後とも宜しくお願いします。