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TPP、ユーロ危機、QE3、中国バブル 世界経済の真相

前回は、円高、デフレ、不況、企業不正、電力 日本経済の真相についてまとめた。ここでは、TPP、ユーロ危機、QE3、中国バブル 世界経済の真相について解説する。

6 TPPはプラスの経済効果あり

TPPは「合コン」と同じ。参加しなければ損

TPPとは、経済連携協定の1つで、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの自由貿易協定として2006年に発効。その後、米国、豪州、ベトナム、マレーシア、ペルーなどが交渉に加わっている。モノ、サービス、政府調達や知的財産権なども対象とするもので、原則的に2015年までにほぼ100%の関税撤廃をめざす。

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は合コンと同じで、参加しなければ損である。自由貿易に経済的メリットがあることは、約200年の歴史が証明しているからである。これは、英国の経済学者デヴィッド・リカードの「比較生産費理論」でも明らかになっている。たとえ、貿易によって生産者がマイナスを受けたとしても、消費者の経済的メリットを合計すれば、生産者のマイナスより大きくなるからである。

 

本気で反対している人はそんなにいない

TPPに反対している人は、TPPによって生じる損失について補償をもらうために働きかけているだけである。自由貿易のプラス部分をどう再配分するかが政治の仕事であり、それをしっかり行えば、国内の誰もが損しない状況をつくることもできるのだ。

 

TPPとASEANプラスの両方に加盟するべき

日本の貿易自由化にはTPPとASEANプラスという選択肢がある。TPPは米国が参加するが、ASEANには中国が参加している。国際交渉は多様性があった方がうまくいく確率が高いため、日本はその両方に絡むことで都合のいいところだけをとれる可能性もある。

マイナス面を強調するためにISD条項(投資家対国家間の紛争解決条項)が引き合いに出されることもある。ISD条項とは、自由貿易協定を結んだ国同士において、企業と政府との賠償を求める紛争の方法を定めた条項である。そもそも、各国はそれぞれ弱点を抱えており、お互いに壊滅的になるようなことはしない。お互いに不利益をかぶることのないように利害を調節して抵抗していけばよいのだ。

 

不安なら交渉力のある人を連れてくればいい

日本に不利なら拒否すればいいし、交渉の最終段階に国会で決議すればよい。交渉が不安なら外務省に頼らず、官邸直轄にして交渉力のある人を募ればいいのだ。

 

7 ギリシャはユーロ離脱が立て直しの条件

ギリシャのユーロ加盟は間違っていた

ギリシャは最初からユーロに入るべきではなかった。ロバート・マンデルの「最適通貨圏理論」では、国の特質によって通貨統合した方がいい国と悪い国があるとされている。ユーロ全体と経済が連動しているか、変動を吸収できるような柔軟な経済構造(労働者が失業地域から移動できるなど)が存在するか、いずれかの条件が通貨統合には欠かせないのだ。共通通貨制度には市場が広がるというメリットがあるが、金融政策の自由度を失うというデメリットもある。ユーロではなく、EUにだけ加盟して「貿易関税を低くして交流を活発にするが、通貨は残す」という道を選んだ方がよかったのだ。

 

ユーロ離脱し、自国通貨を刷れば経済の立て直しができる

ギリシャは過去の200年で100回程度デフォルト(債務不履行)をしてきた。むしろ、2000年にユーロに加盟した後、10年以上も破綻しなかったのが不思議である。ギリシャはユーロから離脱し、ドラクマという自国通貨を持つことになる。そうすれば、ドラクマを刷ることによって経済の立て直しをすることができるのである。

 

「ギリシャの100回以上のデフォルト」をなぜ忘れた?

ヨーロッパ危機の本質は、破綻常習国のギリシャがユーロに加盟し、しかも加盟時に財政状況で嘘をついた。しかし、欧州金融機関は無防備にギリシャに貸し込み、アテネオリンピックなどで一時は景気が良かったが、やはり破綻しかけて慌てているだけである。それを助長していたのが「ヨーロッパは1つ」とか「米国を超える」といった政治的スローガンだった。経済学的な解があっても、政治的メンツや特定の受益者がいると、合理性によってまとまらなくなることの典型例である。

 

8 米国QE3で債券価格が下落。影響は小さい

QE3で困るのは債券トレーダー

QEとは量的緩和のことで、QE3は3回目の量的緩和をさす。QE3が行われるかどうかは景気次第であり、デフレになりそうなら行うし、インフレになったらやめるだけである。QE3が行われると金利上昇を招き、日本経済が打撃を受けるとされているが、それには金利についての知識が必要である。

金利には名目金利と実質金利の2種類がある。名目金利は一般的に表示されている金利で、実質金利とは名目金利からインフレ率を引いたものである。インフレになると名目金利(実質金利+インフレ率)が上がる確率が高くなる。しかし、名目金利が上がって困る人は債券トレーダーである。

 

QE3で金利が上がれば、債券価格は下落する

債券の価格は金利と密接な関係がある。金利が上がれば債券価格が下がるという逆相関の関係で、金利が1%上昇すれば10年債券の価格は8%程度下がるのだ。これは、利率のいい債券への乗り換えが進むために、利率の低い債券が売られて債券価格が下落するからである。

しかし、債券価格が下がったということは金利が上がったということであり、景気がよくなったということである。設備投資や住宅購入が活発になるため貸付部門の利益はアップし、銀行全体としてみれば問題ないのである。

 

9 中国では日本のバブルが研究されている

多くの中国人がバブル崩壊を予感している

バブルの定義は難しいが、日本には「住宅価格が平均年収の5.5倍以上になったらバブル」という考え方がある。一方、中国では「1㎡当たりの土地価格が月収の2倍以上になったらバブル」とされている。住宅の面積が80㎡とすると、住宅価格は月収の160倍、年収の13倍強を超えるとバブルということだ。中国は日本よりも所得格差が大きいため、バブルの感覚も人によってかなり違ってくるのだ。

 

変動相場制へ移行、人民元の上昇は当然

中国経済の躍進を支えているもののひとつは、人民元の安さである。将来的には切り上げが予想されているが、そのペースはわからない。中国は現在、固定相場制だが、将来的には変動相場制となり、人民元は高くなるだろう。その代わりに「自由な金融政策」が選択でき、インフレ率のコントロールはしやすくなる(「国際金融のトリレンマ」より)。

 

情報統制が「人民元の今後」を決める

所得格差が大きい中国では、インフレ率が上がると下層民から強い不満が出る。不満の出方は中国の情報統制によっても左右されるが、それには限界がある。不満の出方によって「人民元の今後」が決まるが、流れとしては変動相場制になり、5割程度は上がる確率が高いだろう。

 

最後に

TPPは合コンと同じ。複数の交渉参加も選択肢が広がってよい。ユーロ危機はギリシャがユーロ離脱すれば解決する。QE3で名目金利が上がって困るのは債券トレーダーだけ。中国バブルは予感も予見もされている。後は政治情勢次第。冷静に判断すれば、答えは見える

次回は、財政赤字、国債暴落、復興増税、格付け 国家財政の真相についてまとめる。

日本経済の真相


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